愛してる、ただそれだけ
エミヤさん消滅ネタで槍弓です。発掘した書きかけの消滅ネタを完成させてみました☆まあ、兄貴ならもっと違う選択肢選ぶんじゃねーかなーと思いつつ、こんなのもあってもいいかな、と。消滅するにしてもひとりきりとかマジ泣ける。残された兄貴とかマジ切ない。だからこれは、私としては、うん。でもやっぱり消滅とか…。・゚・(ノД`)・゚・。
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世界は崩壊を始めていた。
空転していた歯車は堕ち、無数の刀剣は朽ち果て、乾き切った大地はさらさらと端から風化していく。
その世界の中心に立つ座の主は、ただ立ち尽くし、己が世界の崩壊をぼんやりと見つめているだけだった。
とうとうこの時がやってきたかと、無感動にただ眺める。
磨耗しきって久しい彼には、自己の消滅すら何も感じられない。喜びも悲しみも絶望も何もなかった。
世界はひどくゆっくりと崩れているようでいて、その速度は速かった。然程も経たず、座の主をも呑み込むだろう。
消えていく。彼の全てが。記憶も感情も思い出も。愛も悲しみも喜びも絶望も。
その時漏れた溜息は、安堵か諦観か。
誰に看取られることもなく、誰に知られることもなく、ひとり、ただ消えていく。
――――いいや。
ふわ、と空気が揺れた。
次の瞬間には、彼は背後から抱き込まれていた。
座の主以外存在する筈のないこの世界で、誰かが彼に、触れた。
こんな末端の、今まさに消滅しようとしているこの座に、例え他の英霊の侵入が可能だったとして、一体何者が訪れるというのか。
「お前はひとりじゃねえよ」
聞こえる筈のない声が聞こえた。
磨耗しきった彼だったが、何故かその声には聞き覚えがあった。
ぴく、と指先が動く。
ぎゅう、と間違いでも錯覚でもない強さで抱きしめられた。
ぼんやりと虚ろに開いていただけの瞳に、回された腕が映される。目の覚めるような、この世界には存在しない、青。
知っている。この腕、この体温、この色。
震える手を持ち上げ、己を抱きこむ腕に触れる。久方ぶりに動かした身体は、それだけの動きにもぎしぎしと軋むようだった。
「―――エミヤ」
その名を囁かれた瞬間、瞳に光が戻る。