なぜ塩野瑛久はこんなにも美しいのか? 『光る君へ』から『未来のムスコ』へ…照明設計から読み解く俳優としての魅力を徹底解説
今期ドラマ『未来のムスコ』(TBS系)、『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(フジテレビ系)にダブル出演し、その人気と高い実力から重宝される俳優・塩野瑛久。彼の溢れ出る美しさと色気の根源には、ある伝統が眠っているという。照明、そしてそれを超えた特異な魅力を徹底解説。(文・加賀谷健)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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塩野瑛久を輝かせるのは「暗さ」である
塩野瑛久は美しい。
大河ドラマ初出演作『光る君へ』(NHK総合、2024)で、誰もが見惚れた、見目麗しい天皇役を演じて以来、それはあまねく知れ渡った。
しかし、彼の繊細な美しさを最も際立たせる「条件」があることは一体どれだけの人に知られているのだろうか?
それはかなり限定的で、厳密な条件だ。
ただ、それを明らかにする前に、文豪・谷崎潤一郎による文化・文明論「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)を参照しなければならない。
谷崎はこの名著の中で、日本人の美意識を「くらがり」に求めた。「くらがり」は、室内全体を明るい電気で照らす現代の空間にはない。
昔は蝋燭のおぼろな光源だけが室内を照らし、食事中の者が手に取る器などに豊かな陰影を与えていた。
現代人には暗過ぎるが、それが美しいのだと。
平安時代でも戦国時代でも、大河ドラマが描く室内にはまさにそういった暗がりが頻出する。
特に夜の場面は蝋燭だらけになる(もちろん撮影現場では蝋燭以外の照明をたいているが)。
平安時代を舞台にした『光る君へ』で塩野が演じた一条天皇は、昼間でも御簾(すだれ)越しにコミュニケーションを取るため、常に室内の日陰側にいた。
昼夜問わず、唯一暗がりにいる人物だった。
陰翳礼讃の法則に従えば、塩野瑛久の美しい魅力は、暗がりに隠してこそ陰影豊かに際立つということになりそうだ。
『未来のムスコ』が心得る完璧な照明設計
『光る君へ』は確かに暗がりベースの作品だったが、塩野が画面に映る全ての場面で、彼の陰影豊かな魅力が最大効果を発揮していたかというと、必ずしもそうではない。
むしろ第15回「おごれる者たち」での初登場場面では、陰影を欠いていた。
場面は夜だった。公卿たちが集まる中に一条天皇がやってくる。カメラは最初、手元を映し、背中、顔の順番で捉えた。
カメラだけが御簾の中に入ることを許されたかのような、特別仕様の演出だが、すだれ越しの塩野の顔がはっきりした輪郭で映り、陰影に乏しい。
彼が座る室内は暗がりだというのに、月明かりの照明が強過ぎたのか…。
いやもちろん、月明かりにくっきり浮かぶ塩野も美しいことは美しい。
でも欲を言うなら、陰影豊かな場所だともっと美しく映ったはず。
すると同回の再登場場面では、龍笛を吹く右顔だけが月明かりに照らされ、左顔は室内の暗がりに溶け込んでいた。
これは文句なしに美しい塩野瑛久だった。
塩野瑛久の美しさはほんとうに繊細そのものである。細心の注意を払わなければ、簡単に撮り逃してしまう。
その意味で、緻密な照明設計に基づく最新出演ドラマ『未来のムスコ』(TBS系)は、第1話冒頭から陰翳礼讃を完璧に心得ている。
大河ドラマから翻って舞台は2026年の下北沢。塩野は、小劇場界隈の「劇団アルバトロス」の座長・吉沢将生を演じている。
照明だけでは説明できない、塩野の色気が垣間見える瞬間も
『未来のムスコ』冒頭場面、塩野演じる将生が、何やら独り言を呟きながら、劇場の舞台上で美術を確認している。
舞台奥ということもあり、口元以外は影がかかり、顔がはっきりとは見えない。
続いてスタッフから「主演の立ち位置入ってもらっていい?」と頼まれ、指定位置に移動すると、顔全体がようやくはっきり見える。が、そこでも独り言を呟いていると、照明が落とされ、今度は顔全体が暗がりに…。
現代劇でも陰影豊かな魅力が浮かぶよう、こうしてタイミングよくシームレスな照明設計に工夫が凝らされている。
後続場面では、将生の元交際相手で劇団員の主人公・汐川未来(志田未来)が劇場入りするなり、将生は暗がりから狭い通路にぬっと出てくる。
しかも歯磨きをしながら。通路もやや薄暗い。目元ははっきりだが、無精寄りの髭が口元にも陰影スポットを作っている。
同話終盤での将生は、未来が端役出演するドラマの撮影現場にマネージャーとして同行する。
出演者控え室場面で夕景の照明が塩野の横顔を照らす。
ここでは『光る君へ』初登場場面と同様に、(ところどころ陰影豊かではありながら)顔全体をくっきり目で照らすが、そもそも演劇人という陰影に富んだキャラクタービジュアルとのいいコントラストではある。
好対照ということでは、塩野が同クールで出演するドラマ『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(フジテレビ系)での自称結婚詐欺師役はなかなかエキセントリック。
ドラマタイトルと連動した居酒屋店名「法螺吹き」に入ってくるなり、女将から「お兄さんお1人?」と聞かれ、「1人です、独身で〜す」と答える軽薄な魅力は、詐欺師ならではなのか(初登場カットは足元で『光る君へ』の手元との好対照でもある)。
色気もある。陰翳礼讃の法則に従うなら、色気は暗がりに隠された中から醸し出されるもの。
でもこの店内はもちろん室内全体に明かりが行き届いている。
ピカピカに明るい店内でも隠しきれない、この色気…。
塩野瑛久のピカピカの色気もまた、礼讃に値する!
【著者プロフィール:加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆してきた。女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載中。
所属プロダクションの主な業務としてはアーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。
他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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