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小出しにしない弓兵/Novel by きの

小出しにしない弓兵

15,278 character(s)30 mins

遅くなりましたが、槍弓の本の感想、web拍手からありがとうございました。とてもとても嬉しかったです。

今回はキャス弓を書きました。キャス弓の世界と槍弓の世界は違うと言う設定です。

2人でわちゃわちゃ会話をしています。よくわからないタイトルですいません。気にっていただけたら嬉しいです。

表紙素材はid=3989101湯弐(yuni)様よりお借りしました。

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 さて、どうしたものか。

 キャスターのクーフーリンは、床に胡座をかいたまま考え込む。
 仕上げたばかりのルーン石を手の中で転がしながら、こっそりと少し先にいる人物を盗み見た。
 そこには椅子に座りテーブルに向かって何やら熱心に描いている、アーチャーエミヤがいる。

 もうその姿のみでも珍しい。

 本日は赤い外套を羽織っていない全身黒服のアーチャーだが、料理をしているわけでもない、洗濯物を畳んでいるでもない、故障した機器を修理すらしていない。

 何かを描いている。
 クーフーリンの記憶を探っても、まず出て来ない姿だ。


     ●  ●  ●


 話は半日ほど前に戻る。

 四六時中働いているエミヤに、何度も何度も休んでくれとマスターは頼んでいた。しかしエミヤはその都度きいているふりをして全くきいていなかった。

 結果、マスターがとうとうキレた。

 令呪をもって命じられた。

「エミヤは私がいいって言うまでキャスタークーフーリンの部屋から出ちゃだめ!」
と言うものだ。

 カルデアのマスターの令呪は魔力補助等の使い方が主流なので、その命令には全く効力はないのだが、エミヤ自身がそんな事に使わせてしまったと言う事実に衝撃を受け、流石にそれを承諾した。そういう意味では効き目はあった。
 なぜキャスタークーフーリンの部屋が指定されたのかと言うと、マイルームに霊力を溜めているのがダヴィンチにバレたからだ。
 そしてマスターが令呪を使用している場に、たまたま居合わせていたからだ。

 カルデアはレイシフト等の特別行動をする場合を除き、霊力は基本的に均一配給である。大量に消費する宝具解放は勿論、霊体化、魔術攻撃も出来ない程度しか与えられない。
 その毎日自分に配給されている霊力を、キャスターのクーフーリンは自分から少しずつ取り出して室内に貯めていたのだ。
 魔術道具を作る際の養分として、また、いざという時に足りなくなった場合の補給用として貯蓄していただけで他意はない。
 キャスターと同じように貯めているものは他にもいるはずだ。なのに自分に白羽の矢が当たったのは幸運値の低さ故か、腐れ縁か。

 なんで俺が部屋を提供しなくちゃならないんだと文句を言おうとしたら、ごめんねクーフーリン、エミヤを部屋にいさせてあげてくれる? とマスターに先手を打たれてしまった。すまなそうに上目使いで訴えかけられ、すぐさま嫌だとは言いにくい。
 マスターの命令に従う事に決めたエミヤは、もう不満を言わなかった。よろしく頼むキャスター、と明らかに仏頂面を向けて言われた程度で。
 クーフーリンは諦めたように大きくため息をつくほかなかった。


 クーフーリンとエミヤは、カルデアに召喚される以前から顔見知りである。腐れ縁と言う言葉が一番しっくりくる。
 会いたいわけではない。だが、自分が召喚されていると高確率で相手も召喚されている。

 カルデアでもお互いまたかと思った。しかも今回はクーフーリンが複数いる。それを知った時のエミヤのうんざり顔は今でも明確に思い出せる。
 カルデアはしかし何もかもが通常とは異なる召喚だったので、クーフーリンもエミヤも、積極的には接触していなかった。
 食堂で会えば会話をするし、酒のつまみをリクエストしたりもする。レイシフト先で種火収集も一緒に行うし、チーム編成の相談をマスターと共に請け負ったりもしている。
 槍のクーフーリンとはたまに言い争いもしているようだが、大喧嘩にまで発展したのは見た事がない。
 その程度の付き合いだった。


 廊下を連れ立って歩いていた時のエミヤは不機嫌を隠しもしなかったが、クーフーリンのマイルームに入った途端、目の色が変わった。

 キャスタークーフーリンの内装アレンジはかなり凝っている。
 色とりどりの文様が描かれた沢山の大きな布でつるりとした冷たい壁を覆い、部屋の印象を丸ごと変えている。カーテンのように天井から下げて部屋の区切りにも使っているので、巨大なオブジェの間を通っているような気持ちになる。更に魔術師の道具が所狭しと置かれていた。
 天井から吊されている乾燥したいくつもの薬草の束。木製の薬棚には色とりどり大小様々の硝子瓶。山積みになった古びた分厚い本。天秤、フラスコ、アルコールランプ、粉の入った小鉢、薬研。机の上には作業中の石が数十個。ベッドサイドに置かれた香炉からふわりと優しい香りが漂ってきていた。
 エミヤはきょろきょろと物珍しげに当たりを見回している。懐かしそうに目を細めて見つめたりもしていた。
 クーフーリンのマイルームは更に霊力が満たされている。エミヤの顔から中々消えなかった疲労の色が、じわじわと薄れていくのがクーフーリンにも見て取れた。

 しばらくはそこで道具や本などを眺めては時間を潰していたが、次第に手持ち無沙汰になった。マスターに家事関係をクーフーリンの部屋でするのも駄目だよと言われているので、掃除も出来ない。

 クーフーリンは作業途中のルーン石制作を始めた。エミヤは暇そうにぼうっとベッドに腰掛けてしばらくそれを眺めていたが、ふと何かを探すように辺りを見回し始めた。
「なんだどうした」
 出来上がったばかりのルーン石を床に置きながら、クーフーリンはエミヤに声を掛ける。
「……すまないが……何か、書く物を貸してはもらえないだろうか」
「レシピでも思いついたか? 家事関係は止められてるんじゃなかったかい?」
「止められているとも。だからレシピではない。ちょっと……メモのように書き留めておきたいことが出来たんだ」
 上手く説明出来ないのか、エミヤは視線を揺らしつつ答える。
 何のことかクーフーリンには全く分からなかったが、今は他人の部屋で、数時間何もせずに過ごさなければいけないエミヤに若干同情しているところもあった。クーフーリンは立ち上がり、黙って薬棚に向かい、そこの引き出しから電子板とペンを取り出した。
「ダヴィンチからもらったもんだ。紙みたいに使い捨てにならねぇしデータも保存出来る。ま、あんたも同じようなのもらってんだろ。説明はいらねぇよな」
「……このマイルームには似合わない電子機器だな」
「黒板でも出して欲しかったか? なくはないが書く方の材料が足りないんでね」
 手渡された電子板を見つめながら、エミヤは少しつまらなそうに唇を尖らせた。
 クーフーリンはこの時、顔にこそ出さなかったが、かなり驚いていた。
 おいおい、そんな顔初めて見たぞと突っ込みたかった。

 お前はそんな顔も出来るのか。

 皮肉を言う時の小馬鹿にしたような顔でもなく、口を引き結んで何かを堪えているような顔でもなく。眉をきゅっとひそめ、呆れたようにため息をつくでもなく。
 全部それらを口にしてしまいたかったが、クーフーリンはご期待に添えずすいませんねと少し笑って言い、また先ほど座っていた場所に戻り作業を再開した。


     ●  ●  ●


 そして今、その電子板にエミヤが何かを描いている事に気付き、クーフーリンは興味をそそられているのだった。

 レシピは書けないと言っていたから、なにやら気付いた事を書き留める程度の使い方をするのだろうと思っていた。
 しかし手元の動きは、どう見ても絵を描いている。

 あのエミヤが。絵を。

 しまったな、戻らなきゃ良かった。クーフーリンは心の中で舌打ちをする。エミヤの手元を見るには立ち上がり近づき、覗き込まなければならない。
 勿論ここは自室であるから、他の方法もある。
 今作ったばかりのルーンを込めた石でエミヤの背後に鏡を一時的に作り、そこから見る事はたやすい。マイルーム内での魔術使用は多少黙認されているから、その程度は簡単だ。
 槍の自分であるならば、何描いてんだよ、アーチャーが珍しいことしてんじゃねぇよとか言いながら電子板を奪って見るだろう。小学生か。
 どう頼めばいいだろうかとあれこれ考えてみたが、やはりここは正攻法でいくことにした。


「なぁ、アーチャー」
 さりげなく声を掛けた。エミヤはすぐに顔を上げ、クーフーリンの方を向く。
「それ、俺に見せちゃくれねぇか」
 顎をしゃくってそう言えば、すぐに何のことか分かったようだった。
「……これを、かね?」
 ペンを持ったまま、人差し指で電子板を指さす。
「そう、それを、だ。おまえさんがそんな熱心に何かを描いてる姿なんざ、初めて見るぜ」
「……そうか、そういえばそうかもしれないな。絵を描くのは嫌いではないのだが、機会がなくてな」
「嫌なら勿論無理強いはしねぇが」
 やはり絵を描いているのかと思いながら、クーフーリンは慎重に続けた。
「……嫌なわけではない……が……果たしてわかるだろうか」
 腕を組み、ペンを持った手を顎に当て、考え込むようにエミヤは言った。難解なパズルでも描いているのだろうか? クーフーリンは逸りそうになる気持ちを抑え、軽く笑って肩を竦める。
「見なけりゃそれこそわからねぇな」
「それはそうだな」
「ならそっちへ俺が行ってもいいかい?」
 緩く腕を上げ、エミヤの方向を指さす。
「……ここは君の部屋だ」
 クーフーリンを暫く見つめた後、エミヤはぼそりと呟く。
「許可等必要ないだろう」
「……そうかい、ならあんたの正面に邪魔するぜ」
 ゆっくりとクーフーリンは立ち上がり、エミヤの方へ向かう。
 差ほど大きくない木製のテーブルを挟んでクーフーリンは向かいの椅子に腰掛ける。
 そしてエミヤの手の中にある電子板に目を移し、固まった。
「……ほう」
 覗き込んでくるクーフーリンの方へ、エミヤはわざわざ電子板の向きを変えて見せてくれた。

 と言う事はこれが正面の向きなのか。

 クーフーリンはこっそり心の中で呟く。
 エミヤの描いた絵は下手とか上手とかのレベルではなかった。なぜなら何が描かれているのか、解明するところから始めなければいけないようなものだったからだ。
 絵は大体画面の中心にあった。黒と赤の二色で描かれている。黒く細長い棒状の塊が数個繋がっており、中心から赤い色がそこら中に飛び散っている。
 なんだこれは。何が描いてあるんだ。クーフーリンは困惑した。どうしたものかとこっそり前にいるエミヤを伺うと、少々自慢気な顔をしているように見えた。

 駄目だ、これはなんだと聞いてはいけない空気。

 クーフーリンは脳内の葛藤を表情に微塵も出さず、電子板の画面を見つめる。そしてその塊が、下の方だけ二股になっていることに気が付いた。
「……これは……………ひ……人……だ……な?」
「何故そんなに躊躇いがちなんだ。どう見ても人だろう」
 そろそろと聞いたクーフーリンに、エミヤは不思議そうに返事をする。
 良かった合ってた! クーフーリンは心の中でほっと胸をなで下ろしつつ、ではこの赤いのはつまりあれか、血だな。何かがぶしゃーって吹き出しているんだな。結構物騒なもん描くんだなこいつ、と思いつつ更に眺めた。
 これが人で有るならば、頭や胴体、腕、手足があるわけで。下の方の二股に分かれている物体が足という事なら、このぽっきり折られた枝みたいなのは腕となるがそれで正しいのだろうか。腕なら骨折とか切断とかされているような曲がり方をしている。関節が多すぎる。
 位置的に恐らく頭であろうと思われる場所の継ぎ目からも血が勢いよく噴き出している。
 事故現場かなにかを描いていたのだろうか。
「おお、そうだ。そうだな。人だ。うん。しかしそうすっとすごい絵だな。なんでこんなに血みどろになっているんだ」
「服だぞ」
「ん?」
「これは赤い服を着ているんだ」
「ふ……」
 服……だと……? 血飛沫じゃねぇのかよ。
 クーフーリンはその言葉も飲み込んでまた改めて画面を見直す。
 服、服と言われればまぁ服と見えない……なんて事はなくてやはり見えない。全然見えない。血飛沫にしか見えない。が、服だと言うのなら服なのだろう。本人がそう言っているのだから。
「……んん…するってぇとこの……あり得ない方向に曲がっている……腕か。これは別に骨折とかじゃなくて」
「骨折? 普通に立っているだけだが?」
「やっぱりか」
 立っているのか。地面無いけど。傾いているけど。足の長さが揃っていないけど。
「片方は腰に手を当てているのだが。やはり凝ったポーズは難しいな」
「凝ったポーズ」
 エミヤは椅子の背もたれに寄りかかり、腕を組む。軽くため息をついて呟くので、クーフーリンは思わず繰り返してしまった。
「なるほど、お前さんが人物を描いていた事は分かった。で、これをどんな理由で描いていたんだ?」
「……う」
「そこで何故口ごもる」
 割と自信ありげな様子で描いた絵は見せてきたのに、その理由は答えにくいと言うのが分からず、クーフーリンは重ねて訊ねた。
 ほんの少し迷うように視線を揺らしたが、エミヤはゆっくりと口を開いた。
「君は……此度はキャスターで現界しているだろう?」
「あぁ」
「そうだとすれば、私も……その可能性がわずかでもあるのではないかと、ふと思ってだな」
 君の部屋に来て、キャスターとして作業をしている様子を見ていてそこに思い至ったと続ける。
「ほう」
「……ならば召喚された時の為に、キャスターの私のデザインを決めておこうと……どうしたキャスター」
 クーフーリンはエミヤが話している途中でテーブルに突っ伏してしまった。力の抜けた両腕で頭を抱え込む。
「いやもう、さっきから俺の知らないお前さんをばんばん見せてもらっていてな。流石に脳の処理が追いつかねぇ」

 この部屋に来てからのエミヤは今までのクーフーリンが見たことのない顔ばかりする。
 思いも寄らない行動をするし、考えつかない事を言い始める。
 今まで何度も腐れ縁でなんやかんやと顔を合わせていた。けれどその時それぞれの自分の記憶を探っても、こんなエミヤは見た事がない。
 例外もあるが大体は七日間の聖杯戦争で自分たちは呼ばれる。
 そもそも戦いに関する事以外の会話はしないから、当然と言えば当然なのだ。一度も会話をせずにどちらかが消えている事も多々ある。
 カルデアは異例中の異例の現界だ。何ヶ月も同じ場所にいる。受肉状態で人間のように生活をする。何十人も英霊が交流をする。どれをとっても初めての事だ。
「ほう、それは大変だな。突っ伏してしまうほどの労力が必要だったのかね。栄養のあるものを作る……には、ここを出ないといけないのだったな。耐えられるかね? キャスター」
 頭を抱えているクーフーリンの上から、楽しそうな声が降ってきた。すこし頭を上げて見てみれば、両肘をテーブルについて手を組み、そこに顎を乗せて笑っているエミヤがいた。
「……だから、ばんばん見せるなっつってんだろ」
 その表情すら初めて見る。ほんの少し悪戯っぽく、何かを期待しているような楽しそうな笑み。ぼそりとクーフーリンが文句を言えば、目を細めて微笑みを深くする。
「まだ処理をしているのか」
「あぁしてるしてる」
 こんな顔もするのか、こんな風に笑うのかと、端からどんどん追加されていく。珍しいな覚えておこうとその度に思う。しかし本日一気に来られるとクーフーリンには色々追いつかない。脳の処理がと言うよりは、気持ち的に、感情がもう落ち着かない。

「しかし君に見てもらってすぐに分からないようでは駄目だな……。私は座に還ってしまうと記憶が消えてしまうから、データで残してもらおうと思っていたのだが」
 そんなクーフーリンの葛藤などに全く気がつかないエミヤは、電子板に描いた自分の絵を眺めながらため息をつく。
「既に決まっている図案を描き写すのは得意なのだが、一から描く絵に関しては生前にも難解だと言われていたのだ。ここに来てそれがこのような弊害になるとは……」
 口をまた尖らせて不満そうな顔をする。先程もしていたあの顔だ。見た瞬間、あまりにも珍しすぎてぶわりと心臓のあたりに何かが広がった気がした、あの表情。
「……描いてやろうか」
 くすぐったい何かに押されて、クーフーリンはそう提案していた。
「君が?」
「俺はキャスターで召喚されているからか、そっちの技術は通常の俺より高いんだ」
 そう言うと、エミヤは電子板の自分の絵とクーフーリンを交互に何度も見てしばらく考え込むように黙り込んだと思ったら、まぁ私よりわかりやすく描けるのならお願いしようか。と、やや偉そうに頼まれた。

 少なくともお前のよりは絶対わかりやすく描けるし、そうじゃなかったら提案しませんけど?? と喉元まで出かかった文句も、やはりクーフーリンはぐっと堪えた。

「そんじゃ描きますか。まずは……お前の全体図を……軽く下描き……っと」
 クーフーリンは電子板に新しいファイルを作成し、薄水色をペンに指定する。そのまま板にアタリを入れていく。腰に手を当てたポーズだったと言うエミヤの要望に応え、片腕はそのように描く。
「……すごいなキャスター! 人間の形をしているぞ!」
「おまえは人間の形、してねぇのかよ。ホント、まだぽんぽん出しやがって。いい加減にしろ?」
 すぐさま正面から感嘆の声がする。そんな子どもみたいな口調で話せるのかよと突っ込みたいのを堪えて、顔を上げて苦笑した。腹の辺りからくすぐったい気持ちがわき起こってどうしても顔が笑ってしまう。
「あ、すこし待ってくれキャスター」
 ペンの色を変えて今度はアタリの上からもう少し詳細な形を書き始めたところ、エミヤから制止の声がかかった。
「ん?」
「逆さではよく見えないから、君の隣へ行こう」
 了承を待たずにエミヤはそう言うと立ち上がり、いそいそと自分が腰掛けていた椅子を片手で持ち、テーブルを回ってクーフーリンの隣にやってきた。ぴったりとくっつけるように椅子を並べて置くと、そこに腰掛ける。
 左側なのでペンの動きは邪魔されないが、同じ視点から見たいのか、身体をぴったりと寄せてくる。身を乗り出すようにしながら片方の腕を回してクーフーリンの椅子の背もたれに手を置いた。
「……」
 近いだろ。近すぎだろ。ちょっと顔近付けたらくっつくぞ。
 クーフーリンは心の中で突っ込みまくった。しかしそれを口にしなかったのは、とても期待に満ちた目で電子板を眺めているエミヤの表情を見てしまったからだ。
「うん、これならよく見える。窮屈かな。君は描きにくくはないかね?」
 一度満足そうに頷いた後、顔を上げてクーフーリンの方を伺う。
「……あーーいや……描けるよ…心配すんな」
 じんわりと自分に伝わってくるエミヤの体温を感じながら、クーフーリンはすこし笑って答えた。

「で? どんな服がいいんだ? いつもの外套とはちと変えてぇだろ」
「そうだな。色が赤なのは同じにしたいが、フードが欲しいんだ。先程の私の絵にも描いてあっただろう?」
 またお前はそういう、突っ込みたいのを我慢しなくちゃならねぇことを。
 喉より先にまで飛び出しそうな心の叫びを、これまたクーフーリンはぐっと飲み込んだ。何度も突っ込みたいのを堪えているので、いい加減慣れてきた気がしてくる。
「……あーー描いてあったかな。フードねぇ。俺とお揃いになるが構わねぇのか?」
「その程度では揃いもなにもないだろう」
「お前さんがいいなら俺はいいがね」
 とんとんと画面を突いて軽く点でアタリを取る。その上をなぞって頭にフードを描いた。
「それと、腰から下は裾の長い……大きな布を巻いているようなものがいいのだが。それを着けたい」
 画面を見つめながら、エミヤが続ける。
「あぁはいはい、なんとなく言いたいこたぁわかる」
 言われたまま描こうとしたら、追加注文が入る。
「フードの付いた上着は裾が短い方がいいな。腰のラインが見えるような」
「それはお前さんのこだわりなのかね。了解」
 一旦ペンを止め、ゆらゆらと揺らしながらクーフーリンは考える。脳内で大体の服装を想像してまとめていく。
「じゃぁよ……こう…インナーを緩めで大きめのにして……ベルトでこう…腰に巻いた布をこう…留めて…履くモンはいつものでいいだろ……靴はちょっと趣向を変えて長めのブーツにするか。今みたいなベルト留めで……で、こうしてみるのはどうよ」
 クーフーリンは言いながら、まず追加注文のフード付き上着の裾を短く描く。
 その後インナーに皺をつけ、ゆったりとした感じを出して描いた。
 パンツは今のエミヤが着ているものと同じように、靴だけをブーツに変更する。その後、一直線に腰から足元へ斜めの線を入れ、身体のラインがわかりやすい巻きスカートを描いた。片足がスカートのスリットから見えるように。これはクーフーリンのこだわりだったがエミヤからは何も言われなかったのでそのまま続行した。
 最後にインナーの腰のあたりから巻きスカートの太もも付近にまで何本かのベルトを重ねて描いた。

「ほう……ほほう……悪くない……いや、これはいいな、いいじゃないかキャスター」
 エミヤは更に身体を寄せてきて、電子板を覗き込む。そしてクーフーリンの方へ視線を向け、嬉しそうに微笑んだまま大きく頷いた。ご満悦と言う単語がこれほどまで似合う表情があるだろうかとクーフーリンは思った。
「気に入ってもらえたようで良かったぜ」
 手を伸ばして頭を撫でてやりたい衝動に駆られる。それを苦笑でなんとかやり過ごし、視線を電子板に戻した。
「髪はどうする」
「髪?」
「魔術師は媒体が必要だろ」
 エミヤの方を見れば、きちんと把握していないなと分かる顔をしていた。
「石とか木片とかがセオリーだが、手持ちがなくなった時に使うのは髪だからな」
 そこまで説明をすると、思い出したようにあぁと小さく呟いた。
「そういえばそうだったな。しかし私が髪を……伸ばす……? 似合うとはとても思えないが」
 そこは特に求めていないのか、あからさまに乗り気ではないようだった。少し口を引き結んで板を見つめている。
 そんな仕草さえ、クーフーリンには微笑ましくて仕方が無い。
「じゃぁ一房だけ伸ばせよ。こんな感じに……で、結んでりゃぁ差ほど邪魔じゃねぇよ。どうだい?」
 言いながらクーフーリンは電子板にペンを走らせる。うなじの所から何本か線を引き、一箇所に結び目を描き足した。
「おお、いいな。本当に魔法使いみたいだ」
 出来上がった絵を見て、エミヤは声をあげ、嬉しそうに頷いた。
「ありがとう、キャスター」
 クーフーリンの方を向いて、屈託のない笑顔を向けてくる。釣られてクーフーリンも目を細めて微笑んだ。


「お前を一定時間部屋から出さないでくれって命令、最初はどうしたもんかと思っていたが。悪くねぇ提案だったな」
 クーフーリンは線画の上から最初に言われた通り、赤で色を塗る。作業をしながらぽつりとこぼした。
「そうかね」
「あぁ、俺の知らないお前さんの意外な一面、大量に見られたしな」
「そのように言われる程、何かを見せていたつもりはないのだがね……君が話しやすいからと言うのもあるのでは?」
 エミヤは少し考えるように視線を揺らした後、こちらに顔を向ける。
「そうかい」
「あぁ、ランサーと同一人物だと聞いているが、話し方も雰囲気も違うだろう」
「そりゃ変えてるからな」
 おかしそうに少し笑ったまま、クーフーリンがそう返事をすると、目を丸くして顔を覗き込んできた。
「そうなのか? なぜ」
 子どもみたいな仕草に、笑みが深くなる。今の自分の状態をきちんとこいつは把握しているのだろうかと心配にもなる。
 大の男二人がぴったりと身を寄せて囁くように話し、くすくすと笑い合っている。エミヤの腕はクーフーリンの座ってる椅子に回ったままだし、クーフーリンもさりげなくエミヤの肩に腕を回している。
「ん~そんな大した理由はないんだが。同じヤツが二人いたってしょうがねぇだろ。それに服装と役職が変わると口調や態度って変わらねぇか?」
 片手でペンを回しながら、時折エミヤの方を見つめてクーフーリンは話を続ける。
「あぁ、なるほど」
「口調を変えているとなんとなく考え方も変わってくるし、接している奴らも槍の俺と違いが出てくりゃ、まぁ別人にも見えてくるわな」
 描き終わった絵に、クーフーリンは「キャスター・エミヤ」と字を書き足す。それに気付いてエミヤは嬉しそうに少し唇を持ち上げる。
「別人に見えているだけかね? やはり同じであると?」
「そこは人それぞれの接し方じゃないのかね。意識交換とかをしてるわけじゃないし寝泊まりしてる部屋も違う。だが同じと言えばそれはそうだ。違うと言えばそれもそうだ」
「……そうか」
 エミヤの目を見つめながら説明を続ける。数秒考えているように瞳を揺らしたが、すぐに小さく頷いた。
「なんだ? 難解すぎたかい?」
 その仕草がやけに幼いように見えて、クーフーリンは微笑む。
「そんなことはない。こちらの対応、意識次第という事だろう?」
「まぁそういうこった」
「私としては、やはり違う人物と捉えてしまうかな。カルデアに召喚された当初は同じであっても、分岐された別ルートを進んでいるような印象か。最終的にはほぼ別人格になるような」
 考え考え話しているのか、空を見つめながら瞳を緩く動かしている。
「あぁ、それ、なんとなく知ってるぜ。……確か……ゲームとかで聞いたことある。合ってるか?」
 クーフーリンはエミヤの顔を覗き込むようにしながら訊ねる。こちらを向かせたくて少しわざとらしいほど首を傾げて見せた。
「そうだな。色々な場合に用いるがそれが一番近いイメージだ」
 エミヤはクーフーリンの問いに頷きながら答える。
「違う人物ではあるが、私にとっては同じクーフーリンだ。粗野で直情型だが、戦いにおいては冷静かつ的確。曲がった事が大嫌いで、何事も楽しむ傾向がある。敵ならば面倒くさいが味方ならば心強い事この上ない」
「へぇ……そんな風に思ってくれてたのかい?」
 不意にさらりと褒められて、クーフーリンは驚きつつも嬉しさに目を細めた。
「意外かね? 常に態度で示していたつもりだが」
「いや、伝わってなかったぞ」
「そうか。単純かつ分かりやすく、口頭で伝えねばならなかったか」
「お、今日初めてお前さんらしい、遠回しな言い方を聞いた気がするな」
 記憶でよく見かける、シニカルな笑みと共に紡ぎ出される言葉。素直にそのままを解釈すれば完全に嫌味だが、よくよく考えればそうではない場合の方が多い、そういった類のもの。
 槍の自分はまずそのまま解釈する。ゆえに過去は九割以上の確率で言い争いになる。
 だが自分は槍ではないし、本日はエミヤの新たな一面大放出セールかと言う状況に身を置いている。逆にほっとしてしまった。
「まぁいいさ。俺は槍の方じゃねぇ。その程度じゃかちんとすら来ねぇ。お前さんが褒めてくれたとこだけ、きっちり覚えておいてやろうじゃねぇか」
 楽し気にそう言うと、エミヤは少し肩透かしを食らったような顔をしていた。
「なんだ? 言い合いがしたかったか?」
「そんな事はない」
 その表情がまた新鮮で、からかうように問いかければ、すぐさまむっとした顔をして否定してくる。
「今拍子抜けした顔したぜ? しかしこれも今日初めて知ったな。挑発を流すとそんな困った顔するんだな」
「……勝手に私の表情を決めるな」
 からかうと口を尖らせて視線を逸らす。その仕草がまた何とも言えず、クーフーリンをそわそわとさせた。
「遊びましょうって誘ったのに断られた子供みてぇな顔だ」
「君な……」
 からかいすぎると怒らせてしまう。慎重にギリギリを攻めている感覚に心臓が逸る。
「いいじゃねぇか。違うんだろ? 槍の俺とは」
「……そうだ」
「俺はおまえとガキみたいなじゃれ合いはしねぇ。区別が付きやすいだろう?」
「……そうだが……」
 下唇を噛み、困ったように俯いてしまう。眉も下がり視線がうろうろと忙しなく揺れる。
 目まぐるしく表情が変わるエミヤを見るのは、本当に此度の現界が初めてだ。
「ほんとに、おまえさんは全く」
 こんなに楽しい気分は久しぶりだった。ふわふわと甘い空気の中を揺蕩っているような。夢心地と言うのはこういったものかとぼんやりと思う。
「ん? どうしたんだキャスター?」
「……いや、どうだい? これは提案なんだがな」
 エミヤは笑みを浮かべたまま考え込んでいたクーフーリンの方へ顔を向け、覗き込む。そんな仕草さえ、もう愛おしくてたまらない。

 もっと一緒にいたいなと思った。もっと話せば、もっと共に時間を過ごせば、まだまだ知らないエミヤを見られるだろう。その時間が欲しかった。
 あとはもう、単純な気持ちだ。愛でていたい。触れ合いたい。この男を自分のものにしたい。自分だけが触れる権利が欲しい。そう思った。
 しかしどういったものかを少々悩む。エミヤにしてみれば突然の告白だ。

「……なぁ、アーチャー、此度の現界では、俺と付き合わないか」
 だがとりあえず、素直に気持ちを伝えることにした。思いついたら即行動、なのは、槍も術も関係ない。クーフーリンはそういう性質なのだ。恐らく。
「……君と?」
 エミヤは驚いたように目を丸くしてじっとクーフーリンを見つめ返してくる。
「俺と」
 その視線を外さず、大きく頷いた。
 
 そのまましばらく見つめ合いながらエミヤは考えているようで、視線が少し揺れた。
 その後、二度、軽く頷いた。
 あ、これは了承ってことだなとキャスターが浮かれた瞬間、
「ふむ……そうだな……これだけ色々な英霊がいるような状況は稀と言ってもいいだろうし。キャスターの君と組むと言うのも有りだな」

「そう……だろ?……」

 クーフーリンは数秒固まったが、それだけをなんとか口にした。
 まさかここでそんなボケをするとは想定外すぎる。いやまだわからない。遠回しの承諾の可能性もなきにしもあらず……他での召喚時には肌を合わせた事だってあった。そういった記憶を自分は持っている。だからまさかそんな処女ですらしないような勘違いをするわけ……
「君はサポートと言うよりは攻撃の方に特化している。そこはやはりクーフーリン故か。同じ全体宝具だから一掃チームとしては悪くない。そうだな、今度シュミレーションルームで検討してみよう」
 クーフーリンは頭の中が真っ白になってしまい、そうではないとか勘違いしてるぞとかの反論を言い出せなかった。
「……楽しみにしてるぜ」
 なんとかそれだけを言葉にしたすぐ後に、マイルームに設置してあるスピーカーが鳴った。

「クーフーリン、エミヤ、お疲れ様。センターでエミヤの体調が全回復したのを確認出来たよ。もうクーフーリンのマイルームを出ていいよー」
 マスターの元気な声がそこから流れてくる。

「ようやくか。しかし思ったより長いとは感じなかったな。君のおかげだ。世話になった。この礼はまた後程させてもらうとしよう」
 スピーカーの方を見ながら、エミヤはほっと溜息をついた。
「どういたしまして」
 クーフーリンもつられてため息をこぼした。こちらは全く別の意味で、ではあったが。
 エミヤはすぐに立ち上がり、自分の使っていた椅子を元に戻すと、そのままドアの方へ向かった。
「俺が描いた絵、保存しておいたから。いつでも取りに来いよ」
 その後ろ姿に慌ててクーフーリンは声を掛ける。
「了解した」
 エミヤは一度振り返り笑顔で頷くと、ではまたと軽く言って帰って行った。


 しんと静まり切ったマイルームで、クーフーリンはエミヤを見送った状態のまましばらく動かずにいた。
 やがて盛大なため息をついて、がっくりと肩を落とす。
「意外な一面大放出セールが、まさか最後の最後まで来るとはな」
 恨みごとの様に低く呟きながら、テーブルの隅に置いたままの煙草を手に取り、一本を口にする。
 銜えたまま何かを呟き、指先に小さく火を灯す。一度大きく肺に煙を吸い込み、ゆっくりと吐いた。
「まぁ別に今日キメなきゃいけねぇって訳でもねぇ……絶好のチャンスだったって事実は否めねぇが」
 天井を仰ぎ、また大きくため息をつく。
 もう一度煙を吸って吐くと、手近な灰皿を引き寄せ、煙草の灰を落とそうとした時、マイルームのドアがノックされた。
 誰だろうとは思ったし常ならば問いかけるが、その時はなんとなくそのままドアを開けた。

 開いたドアの先には、驚いた顔をしたエミヤが立っていた。
「……失礼。もう休んでいたかね?」
 エミヤは一瞬視線を揺らしたが、いつもの平然とした表情でこちらに向かって少し微笑んで見せた。休んでいたのならノックをされてすぐにドアを開けたりしないだろうに。変な事を聞くヤツだとクーフーリンはぼんやりと思ったが、軽く首を振って否定するに留まった。
「……いや、大丈夫だ。どうした、忘れもんかい?」
「いや忘れ物……では……あぁ、忘れ物と言えるかも知れないが、どうかな…いや、忘れていた訳では…だがそうとも言えるか…いや違うな」
 クーフーリンの問いかけに、エミヤは言いかけては訂正をすると言うつぶやきを繰り返した。
「なんだどうした。お前、面白ぇことになってるぞ」
 腕を組み、片方の拳を口に当てて更にぶつぶつ何かを繰り返してるエミヤが珍しくて、クーフーリンはドアの端に寄りかかって喉で笑った。
「………っ……の…だな……さっきの……話…」
 先ほどよりももじもじと体を揺らし、視線を忙しなく揺らしている。
「ん?」
「いや、言葉という物はどうにもあやふやなもので、意図した事と別に捉えられて仕舞うこともままあるだろう。話の流れで推察することは勿論可能であるが、それをもってしても誤ることもあるわけで」
「………」
 つらつらと焦ったように早口で話す。その様子と若干良くわからないエミヤの言葉を聞いているうちに、あ、これはもしかして? とクーフーリンが気付いた。
「……私は……先程もしや、全く見当違いの返答をしたのではないかと……いや……しかし」
 話している途中でクーフーリンは思わず手を伸ばし、エミヤの手首を掴んで引き寄せた。
「……っ…キャスター」
 よろけながらもエミヤはキャスターのマイルームに入る。途端に後ろのドアが閉じられた。
「さっきのが最後の意外な一面かと思ったのに、まだ出すかこの野郎は」
 クーフーリンは低い声で唸るように言った。両手でエミヤの頭を掴んで引き寄せ、額を合わせた。
「な……なに」
「エミヤが好きだ」
 慌てて離れようとするエミヤを遮り、そのままわかりやすく短く、クーフーリンは言った。
「……っえ……」
「好きだ。すげぇ好きだなって思った。今日一緒に過ごしてそう思った。もっと一緒にいたい。もっと色々なお前を知りたい。だから、付き合わねぇか。恋人として」
 額を合わせたままエミヤを見つめ、囁くように続ける。
「……」
 エミヤが息を飲むのが気配で分かった。
「これで間違わねぇだろ」
「……う」
 至近距離で不敵に笑って見せれば、エミヤは小さく呻いた。瞳が困惑したように震えている。だがそれも少しの間の事で、何かを噛みしめるように目を閉じ、やがてふわりと微笑んだ。
「……そうだな、これなら間違わないな」
 ゆっくりと目を開き、そっと自分の顔に触れているクーフーリンの手に自分のを重ねた。

「あぁ、その話、お請けしよう。私も君を、好ましく思っているよ」
 エミヤは薄いグレーの瞳をとろけさせ、うっとりと柔らかく微笑みながら低く甘い声で囁いた。
 クーフーリンはそれをものすごい至近距離で聞き、見てしまい、思わず力が抜けて一瞬よろけた。
 
「……っ! 最後の最後の最後で! お、ま、え、はっ! もーーー!!!」
「な、なんだ」
 嬉しいやらくすぐったいやら心臓を穿つような衝撃やらが一気に来て、クーフーリンは溜まらず、目の前のエミヤの頭を抱え込んで髪をかきまぜた。
「もう出すなよ! もうホントに出すなよ! いや、今後も出していいけど今日はもうここまでにしてくれ。俺がパンクする。色々なとこが。頭とか心臓とか。他も! 色々!」
「……っ……そう言われても……何のことやら」
 エミヤは必死にクーフーリンの手を剥がそうとするが、逆にその手を捉えられ、引き寄せられた。
「うるせぇ!」
「キャスっ…んっ……!」
 今日一番の怒鳴り声と共に、クーフーリンはエミヤの唇に噛みつくような口づけをした。

 ずっとずっと触れたいのを耐えていたのだが限界を超えた。

 承諾の返事をもらえたのも嬉しかった。至近距離で返事くれたエミヤを見て愛おしさが増した。
 本日エミヤと過ごしてからずっと胸の中にあったふわふわとくすぐったい気持ちが溢れ出て仕方がなかった。

 クーフーリンはエミヤの唇を充分に堪能した後、そっと離れた。
 息を少し荒くしながらこちらを見つめてくるエミヤへ、幸せそうに微笑み返した。


                                            END


Comments

  • わんわんお
    March 2, 2024
  • 理想のキャス弓って感じで大好きです!!!

    November 24, 2023
  • November 24, 2023
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