ソフトウェアトークでいい感じの同人誌をやりたいあなたへの覚え書き
――「ホントのことね、」のつくりかた

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合成音声キャラクターに惚れてファン活動をしようと思うと様々なフィールドがあることに気づく
動画を作ってサイトに上げたり、音楽やイラスト、SSを投稿することもできる
オフラインでの活動として同人即売会に参加するのも選択肢の一つだ
近年のオンリーイベントの盛隆を見るに、声のものたちのファンコミュニティの中で特に熱い分野といえるだろう

でもって、どうせ参加するならなんかいい感じの本を作ってドヤろうと考えるのが人というものである
そこで今回はこれからいい感じの本をつくりたいみなさんの参考のために、そして自分自身の記録のために拙作『ホントのことね、』のつくりかたを順を追って見ていこうと思う
何か完成された理論とか卓越した手法があるわけではないが、これを書くことで制作のヒントや参考になることを願う

◆この記事は(ぼすきー Advent Calendar 2025)の参加記事です。

◆はじめに:『ホントのことね、』とは

『ホントのことね、』は2025年2月1日に開催された 声音の宴 4次会にて頒布されたイラスト本とグッズのセットだ
私あるすーかの描き下ろしイラストを中心にゲストイラストと楽曲も掲載している

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◆『ホントのことね、』ができるまで

『ホントのことね、』は大体以下のような段階を踏みながら作ってきた(実際はかなり前後しているが……)
一般的な同人誌も同様の作り方をしていると思う

・1 企画
-コンセプト固め
-プロダクト構想

・2 原稿編集
-原稿依頼
-イラスト作業
-データ整理

・3 デザイン・製本
-台割の作成
-デザインルールの決定
-造本設計
-レイアウト・DTP
-校正
-入稿データ作成
⇒印刷・製本へ

といった具合だ
今回は細かい事には触れず、主に企画とデザイン上の流れを主にみていく


◆初めのコンセプトが9割

私はそれまでに琴葉姉妹でそれぞれ本をつくっている
実在感×ムック的体裁にフィーチャーした本は同人誌としてはやや異端である(悪いことではない)気がしたので、ここで一旦王道を征くイラスト本をやってみたいと思っていた

始めは引き続き琴葉で本を出すことを考えていたが、琴葉は別にやりたいことネタがあったので今回は見送った
次にやりたい子と言えば紡乃世詞音さんかなということでのせちゃんに決定
イラスト本だけだと(私のイラストぢからが)あまりに弱い!ということでゲストも呼んでグッズもつけて……

という調子に順当に構想が固まっていった

まず同人誌づくりにおいて先ず何をすべきかというと、コンセプト固め
心を打つ格言にも「創作はコンセプトが9割」とある

ほらね

ひとつの企画のコンセプトはひとつだけ
自分が決めたコンセプトは誰かに見せるものではなく、作ったものからにじみ出てくるもの、その作品の性格ともいうべきものだ
だから、自分のつくりたい・表現したいものを正直に考えてみるといい

「ホントのことね、」のコンセプトはこうだ

――気を許した人にだけ見せる、偽りないナチュラルな、ほんとうのことば(詞)を聞かせて欲しい

一言でいえば「本音」がテーマだ
紡乃世詞音から感じられる白さ、清さ、自然さをもっと掘り下げたい!
そのために、本当の、ナチュラルな姿を表現するシリーズにしようと決めた

で、コンセプトをコピーに落とし込む作業が始まる

ところで、コンセプトとキャッチコピーは似て非なるものだ
コンセプトはその作品の価値とか本質、いちばん売りにしたいポイントそのものだ
キャッチコピーはその価値を特定の相手に伝えるための一節といえる
コンセプトは作品づくりの軸である概念なのに対して、コピーは対象のはっきりした……これも作品そのものと言っていい

だから、どちらも製作に入る前にはっきりさせると迷わず制作できてよい

「ホントのことね、」のキャッチコピーはこうだ

――きみにだけなら、聞かせてあげる

キャッチコピーは短いほうがいい
ただの説明になってはつまらない
しかも詞音らしく、かわいくなければならない!
素の彼女だけがみせる「言葉と声で真っ直ぐ紡ぐ世界」が見られる気がするコピーにした

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初期の告知


◆声の界隈においてプロダクトは本質的に自由

ここから、実際に製作するプロダクト各種についての検討が始まる
何かと変なグッズが多い声の子たち……
キャラグッズでなく実用しながら愛でられてこそ作る意味がある!という気持ちがあり、使ってもうれしいグッズを軸に考えていった
でも自分の領域である印刷物の範疇からは出ていない
無理せず出来る範囲で作るのが一番だ

実際に頒布したセットは以下の通りである

  • イラスト本「ホントのことね、」
  • 楽曲(本に付属)
  • グッズ
  • A4クリアファイル(2種)
  • 卓上カレンダー(4月はじまり)
  • トートバッグ
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実際に頒布したグッズ

製作以外のあれこれを簡略化するため、今回はすべてをグラフィックさんで製作した

決定にまでに考えたあれこれついて順にみていく


イラスト本

B5版/横位置/CMYK/350dpi
イラスト+ピジュアル+ゲストイラスト合わせて24p
本の仕様としてはさほど変わったことはない
ビジュアルで真っ向勝負だ
横位置にしたことと、遊び紙が入っていることは少し珍しいだろうか紙は完全に金額調整のために選んだので、さほどのこだわりはない
後述するゲストイラストと楽曲配布があるため、ページ数のわりに絵を描かなくよいのは救い

A4クリアファイル

グッズの定番にして実用性の塊
イラストが流用できるので楽
レイアウト変えてヌキにしているのでそのまま貼り付けるだけとはいかないが……
別に要らなくても。あって困らないのがクリアファイルの良いところ


●卓上カレンダー

実用性の鬼
イラストが流用できるので楽
紙で作れるわりに嵩があるのでグッズ全体のボリュームも出る良アイテム
曜日と祝日の確認が大事
日付のレイアウトでセンス露になる……からちょっと上級者向けというか面倒なアイテムではある


●不織布トートバッグ

おまとめ頒布に便利かつ宣伝にもなる良アイテム
布やプラスチックなどいろいろ素材がある中で一番コスパがよかったのがこれ
値段のわりには安みえしなかったのは救い
色もちょうどよい
(次のイベントに持ってきてた人がいてうれしかった)

この辺で予算と頒布価格も決めている
ある程度作るものが決まったら原稿をどうするか考えていく



大変なことはきる人にやらせよやってもらおう

ゲスト依頼をするといいですよ
利点として

  • 単純に描いて欲しい人に描いてほしいものを書いてもらえる
  • 他人を巻き込むことで主催としての責任が生じ、モチベーションになる
  • ゲストのファンにもリーチできるからよりたくさん刷っても大丈夫だろうという安易な気持ちになれる
  • 自分でやらなきゃいけない原稿の量が減る!

などがある
いいことばかりだ

今回はこのお三方にゲスト原稿を依頼した
この場をお借りして改めてお礼を伝えたい
ありがとうございます

白髪氏

Indigo氏

よじね氏

2024年9月末ごろに依頼をかけたので、イベント4ヶ月前、3か月ちょっとの制作期間で動いていった
もちろん声をかけるのは早ければ早いほどよい
信頼できるクリエイターに参加してもらえれば百人力だ


◆台割が大わり~

ついに本を作っていくが、先に造本設計をする
先ず台割をしてどれだけの内容を用意しなければいけないか検討する
そして本文の組体裁、例えばノンブルどこにおくだとか、版面はどこまでとかそういったことは先に決めておく
ゲストに原稿を依頼するときは、この辺りをあらかじめ伝えておかなければならない
この辺りは後で変更しようとすると悲しい思いをするので固めておくのが吉だ

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ページ数と何を入れるかなど見積もって作業量を検討する


◆原稿だ原稿だ原稿だ原稿だ……

設計が終わったらいよいよついに原稿作業に入る
個人的なおすすめだが、表紙から作り始めるのがいい
絵は顔から仕上げるし、動画もサムネイルを先に作るのが好きだ
表紙は本の顔になるから時間をかけたいし、一番楽しい部分かもしれない

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表紙のラフ

また、先に表紙が固まっているなら制作に迷ったら表紙に帰ってきて同じ温度感で作っていけばいい
一貫性があれば、かけた労力に差があったとて表紙倒しということにはならないだろう
表紙だけでも誰かに頼むというのもアリだ

本文の作業はいたって単純で

  • イラストを描く
  • レイアウトする

の繰り返しだ
つくったコンセプトに反しないようにこれらを組み立てていく
ホントのことね、の場合、イラストはSai2で、画像のレタッチはPhotoshopでレイアウトはIllustratorで行っている


結局デザインが9割

デザインについては企画段階で概ねルールを決めていたので、それに合わせて各マテリアルを展開していく


配色

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みどりみのある黄色がアクセントカラーになるようにちょっとエキセントリックな配色にした
心地よい暖かさを感じつつ、どこか本音を言い出せずにいる違和感



●モチーフ

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吹き出し
ホントの気持ちはいつもの会話の中で見つかるのを待っている


ロゴ

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会話のリズム感が感じられるような曲線のロゴタイプ


せっかくなので本以外の各プロダクトについてもデザイン上のポイントを紹介する

●クリアファイル
一番気に入っている女児服蕾とオタク感薄めの使いやすいロゴ入りの2種
W版の使いどころが肝心

●カレンダー
各月にいちばんあうイラストを配置
大きさはかなり悩んだが、思い切って卓上の中では大きいサイズを選んだ

●不織布トート
色がよかったのでロゴだけでシンプルに
美少女イラストが描いてあったらオタクすぎる!


納期が長いトートバッグやカレンダーの締め日を見つつ、ちまちま原稿を続ける
で、なんやかんやで3週間くらいにはすべて入稿データが揃い、いよいよ印刷段階に向けて動き出す……


◆即売会で残りの一割を終わらせよう

完成したデータを校正(何度しても間違いはある)して入稿したら今度は告知を出す

告知はできたらどんどん出していきたいタイプなので早めに出す

お品書きも一週間前にはだしておく

告知を出して周囲を威嚇しておくと優位をとれるかもしれない(そんなことはない)
告知は始めはコンセプチュアルに、イベント直前に向けて具体的にしていくとよい
企画の告知と別に世界観の説明みたいなものがあるとうれしい

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みんなもポエマーになろう

いよいよ作品が刷り上がる
ホントのことね、の場合はグッズとセットでの頒布なので梱包作業がいる
一気に部屋が文化祭になる
ちなみに「コトホリグラフィック部!!」ではもっとたくさんの梱包をやり、地獄を見たのでせめて100セットぐらいまでにしておいた方がいいかもしれない

いよいよ当日だ

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当日は必要最低限の装備で身軽に

頒布はシンプルに会計できるほうがスムーズに流れるから後で自分が買い手に回れる時間が増えたりする
私は計算が嫌いなので基本新刊のみワンプライスにしているが、細かい設定が好きな人もいる……
自分はシンプルなのが好きだ……

これだけ素晴らしい本だから相当売れたと思うかもしれない
しかしまだ赤字だ!
厳しい現実!
俺たちの同人の道はまだ始まったばかりだ!
(在庫はそのうち処分したいですねェ……!)



◆自分が一番好きな"チラシの裏"を作ろう

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自分が好きにやって好きに散れるのが同人誌だ
だから、そこに何か一定のクオリティを求める必要はない
チラシの裏に書くらくがきだって堂々と持ってきていい
(特にソフトウェアトークの界隈)がそういう創作を受け入れられる余裕がある場所であってほしいと思っているし、実際にそうであると思っているから気軽にやってみて欲しい

ただ、私はは自分が作る紡乃世詞音に最大限にかわいくあってほしいし、飾る努力をしたいと思っている
だから、デザインにできる範囲で凝りたいし、創作がうまいひとに頼み込んで自分の企画に参加してもらうし、月にもらえるお金より多いお金をつぎ込んで本を刷る
ぎこちない絵だし、とりとめのないチラシの裏の落書きと変わらないけどできること全部つぎ込んだチラ裏は紡乃世詞音に送る一番好きなチラ裏だ

愛と熱意のあるプロダクトをこれからもいろんなところで見られることを願う
その熱い想いが、創作へ駆り立てる力の9割なのである!

–あるすーか

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