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The Works "水曜の迷子【術弓】" is tagged "腐向け" and "キャス弓".
水曜の迷子【術弓】/Novel by 85市

水曜の迷子【術弓】

2,650 character(s)5 mins

ドットコムネタを書きたかったキャス弓。
※ルーム相性ネタバレがあります注意
リラックススペースで暇で困る弓はきっと子どもっぽいと思うんです。
定期的に術に兄みと父親みを求めてしまう…
水曜ネタはまた書こう

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行きたいところには既に人が大勢いた。
配達を終えたエミヤが真っ先に向かったのはスイーツコーナーのキッチンスペースだ。ひょこりと顔を覗かせ、一通り配達が終わったから来た主旨を伝えると今のところそれほど込み合っていないしキッチンに入れる人数も決まっているとやんわり断られる。
それではと、トレーニングルームへ向かえばここも人で溢れかえっていた。他の二ヶ所は比較的空いてはいるらしいが私が使って他の者が利用できないのは困るだろうとエミヤは考え、ふと目に止まったリラックススペースに足を向けた。
この時間帯は今のところ誰も利用していないらしく、エミヤはそっと椅子へ腰を降ろした。次の配達までは一時間五十分。約二時間ほどをここで過ごすことを強いられてしまったエミヤはどうしようかと唸る。
キョロキョロと周りを見回し、手伝えることがないかと様子を伺う。
するとエミヤの真っ直ぐ前、図書スペースからじっとこっちを見る視線に気づいた。目線をやっと合わせたエミヤに読んでいた本を閉じ、にっこりと笑ったキャスターのクー・フーリンはひらひらと手を振る。
その動作に無意識に手を振り替えしたエミヤを合図に、クー・フーリンは重い腰を上げてエミヤに近づいてきた。
「どうした?迷子か?」
「は?」
やって来て早々に投げられた疑問にエミヤは困惑の表情を浮かべた。
「なんだ、違うのか?休憩中でも働いてるお前がそこに黙って大人しく座っているなんて珍しいなって思ってよ。ずっと観察してたらあっちこっちキョロキョロするわ、足先見てはぷらつかせるわ、寂しげに遠く眺めているからてっきり迷子なのかと」
「そんなわけないだろう」
分かってる、ちょっとからかっただけさね。
呆れるアーチャーの前に広がった緑のカーペットに胡座をかいて座ったクー・フーリンは上目遣いで提案を投げ掛ける。
「暇だろ、ちょっと付き合えよ」
「断ると言ったら?」
脚を組み、腕を組み、上から目線で問い返すエミヤに今度はクー・フーリンの方が呆れ顔だ。
「なら俺はもう一回あっちに戻って迷子センターで不安気な顔晒しながら待つ可哀想な子どもを見ているしかねぇな」
「そんな顔はしていない!!」
「へぇへぇ、あと一時間半くらいお兄さんと一緒にいような~」


「ところで、今日は何曜日でしょうか」
「は?配達のし過ぎで曜日感覚もなくなったのかね?」
「ちげぇよ。ただの世間話。こういうのって導入が大事だろぉ?」
自分の膝に頬杖を付いたクー・フーリンは答えろよ、と回答を促す。
「……水曜日だが」
「じゃあ問題だ。この中から水曜日に関係する動物はどれでしょうか」
更に問いを投げようとするクー・フーリンにエミヤは長いため息を吐き出す。
あのなキャスター、じろりと睨む。
「そういうのは、マスターにでも出してやれ」
「んだよ煮えきらんなぁ。お前さん暇なんだろ?参加しろよ迷子」
「暇じゃない、休憩しているだけだ」
「俺だって休憩しているんだぜ?お前は仲間と休憩中に談笑もしねぇのか?」
「……うるさい。それに、私は迷子じゃないと何度言ったら分かるんだドルイドのお兄さん」
「迷子のやつは大体迷子じゃないって言うんだよ」
いいか?もっぺん言うぞ?この中から水曜日に関係する動物はどれでしょうか。
続けようとする姿勢のクー・フーリンに観念したのか、エミヤは渋々と耳を傾けることにした。椅子から降り、同じようにカーペットへ胡座を掻く。どうにも迷子扱いが我慢ならなかったらしい。
同じ場所に座り目線を合わせるエミヤにクー・フーリンはゆるりと笑った。
「一番、ゾウ。二番、キリン。三番、ラクダ。さぁどれ!!」
「そんな声を張るものかね…」
どれかと楽しげに聞かれてもエミヤには全く見当がつかなかった。というかそこまで曜日に執着したことがないのでどの動物が関係する、なんて正直どうでもいいのだが。
「そうだな、強いて言うなら一番のゾウだろうか」
「ほう?理由は?」
理由などない、と言いたいエミヤだったがこれも暇潰しのためと思いそれっぽい理由を考えようとした。
「その、あれだ、ゾウはよく水を利用するから?…あとは顔の形が『水』っぽい…とか?」
百面相しながら理由を絞り出そうとする目の前の男にクー・フーリンは下唇を強く噛み締めた。今、口から声を発すればエミヤの逆鱗に触れると察したからだ。
今日のこいつはなんだか、そうさな、乳くせぇな。目を細める。
「全然ちげぇんだわ」
「ぐっ……いや当たらないのは知っていたさ。で?答えはなんだ?」
「答えは三番のラクダだ」
「ラクダ?」
「お前さんハンプデイって知ってるか?」
「……いや?」
「ハンプってのはラクダのコブって意味だ。あ、ラクダっつってもヒトコブの方な?二つある方じゃねぇぞ?」
自分の手を使ってラクダのコブを表そうとするクー・フーリンにエミヤはくすりと笑う。
「で?そのハンプデイが水曜日とどんな関係があるんだ?」
「そのまんま。水曜日って別名ハンプデイって言われてんだよ」
なんでも水曜日は平日の真ん中に当たるからそれをコブに見立ててそう呼ばれるらしい。さっき本で読んだとクー・フーリンは得意気に話した。
「だから真ん中の日ってことで水曜日はコブの日、ハンプデイってことだ」
それに、とクー・フーリンは付け加える。
「結構前向きな意味でも使われるんだぜ?」
「……真ん中にあるコブを越えたらあとは下るだけ、ということか」
「そうそう。頑張って働いて折り返しまで来たから、ここからは気楽な気分で楽しみな週末に向かって行こうぜってことだな」
まぁサーヴァントだしあんまそういうの関係ねぇけど。
そう言ってクー・フーリンは立ち上がり、エミヤの頭に手を置いた。
「ま、仕事もほどほどに。残りも頑張ろうぜ」
親指で開けた額の生え際を二度、優しく撫でる。そうして離れた手を最初の時と同じように振ったクー・フーリンはゆっくりと配達業務に戻っていった。
ポツンとその場に残されたエミヤが時計を見ると休憩時間がもう終わりを迎えようとしていた。
それほど長く話したという印象はないのだが、なにか時間を早めるための魔法でもあるのだろうか。ふむ、と考える間もなくエミヤを呼びつける声が響く。
「エミヤ~~~!!次の配達なんだけど、」
「ああ、マスター」
すぐに行く。
その場に立ち上がったエミヤはもう迷子の顔をしてはいなかった。


2020.0131

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