その他

2026.03.07 18:30

米国がイラン製ドローン「シャヘド」の攻撃を阻止できない可能性

2026年3月1日、バーレーンのマナマで、イランの報復攻撃で自爆ドローンが複数の建物に衝突した(Photo by Stringer/Anadolu via Getty Images)

ドローンの生産拠点を分散させることで、イランは空爆を回避

2025年のイスラエルとの「12日間戦争」の後、イランはドローンの生産拠点を分散させる十分な時間を得た。ミサイルとは異なり、ドローンの製造には大型施設や多くの機械は必要ない。製造工程は小型ボートの製造と同程度のレベルで、船体のような機体フレームは複合素材や木材で作られることもある。ウクライナでも、ドローンの生産拠点の多くが分散化されている。

シャヘドに通常搭載されるエンジンは、ドイツのリンバッハL550Eをリバースエンジニアリングして作られた、イラン製の2ストローク4気筒ピストンエンジン「マドMD-550」だ。ただしその性能は 決して高くない。軽いバイクのような音を立てるため、これらドローンは「モペッド(小型バイク)」と呼ばれている。同程度の性能のエンジンであれば、ほぼ何でも代用できる。

弾頭も問題にはならない。ウクライナでは、ロシア軍のシャヘドにさまざまな種類の弾頭が搭載されていることが確認されており、その中には他の弾薬から流用したものや改造したものも含まれていた。要するに、機体内部のスペースに収まり、重量が重すぎなければ、ほぼどんなものでも使える。

ガレージでの生産において難題となる電子部品は、国外から調達し密輸

ガレージでの生産において唯一の難題は電子機器だ。高度で妨害耐性のある衛星航法システムを自宅で作ることはできない。もっとも皮肉なことに、こうした部品こそ、イランやロシアが以前から国外から調達してきたもので、密輸されたり、第三国を通じて入手されたりしてきた。公開情報では、ロシアが運用するシャヘド系機体の残骸から、アイルランド企業タオグラス製を含むアンテナ部品が確認されている。この設計はウクライナで確認されたものと同じだった。

ウクライナの情報分析官は、ロシアが使用しているシャヘドについて、「飛行制御装置や航法システムなどを含め、多数の外国製部品が使われている」と結論づけている

イランは必要な電子部品を大量に備蓄している可能性が高く、今後も密輸によって補充されるかもしれない。つまり、イラン国内には、空爆で破壊できるような生産施設は存在しない。

次ページ > 弾道ミサイル阻止は発射装置の追跡が鍵、一方シャヘドは専用車両などを必要としない

翻訳=上田裕資

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事

経済・社会

2026.03.06 11:30

ウクライナ、湾岸諸国にドローン迎撃技術の提供を表明 低コスト化する戦争

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

中東バーレーンの首都マナマで、イランの自爆型ドローンによる報復攻撃で被害を受けた建物と自動車。2026年3月1日撮影(Stringer/Anadolu via Getty Images)

ウクライナは湾岸諸国にドローン(無人機)迎撃技術の専門家を派遣する用意があると表明した。ただし、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの提案の条件として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に少なくとも2週間、可能なら2カ月間の停戦に合意するよう促すことを求めている。

「提案がある。中東の指導者たちはロシアと良好な関係にある」とゼレンスキー大統領は3月2日、ブルームバーグのインタビューで語った。「彼らならロシアに1カ月間の停戦実施を要請できるはずだ」

中東では2月28日に米国とイスラエルがイラン攻撃に踏み切り、最高指導者アリ・ハメネイ師と複数の高官を殺害。イランは報復としてイスラエル、イラク、バーレーン、クウェート、カタールにある米軍施設をドローンやミサイルで攻撃し、ドバイをはじめ湾岸の各都市にもイランのドローンやミサイルが襲来している。

米民主党のクリス・マーフィー上院議員は3月3日、トランプ政権の当局者が連邦議会で行った非公開のブリーフィングで、イラン製の自爆型攻撃ドローン「シャヘド」を米国は阻止できず、さらに多くの米国人が死亡するだろうとの説明を受けたと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

学ばれなかった過去の教訓

警告の兆しは何年も前からあった。サウジアラビアは2019年、イエメンの武装組織フーシ派が犯行声明を出したドローン攻撃により石油生産量の半減を余儀なくされた。今、同じ脅威が規模を拡大して繰り返されようとしている。3月2日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコはドローン攻撃を受けて、日量55万バレルの生産能力を持つラスタヌラ製油所の操業を停止した。

ウクライナでは2022年にロシアの全面侵攻が始まって以来、限られた防空装備で執拗な空襲に対処せざるを得なかった。パトリオット迎撃ミサイルなどウクライナ側の装備が不足する中、ロシアは2025年までにドローン生産を拡大し、一晩で数百機をウクライナ各地の都市へと投入するまでになった。

2025年12月、ウクライナ軍第47機械化旅団の元将校ミコラ・メルニクは「現状、わが国の防空システムでは全てを迎撃できない。ロシアは今後もドローン攻撃をいっそう拡大し、空襲を続けるだろう」と筆者に語り、こう付け加えた。「米軍が学ぶべき最大の教訓は、敵がこうした兵器を保有していることだけではない。それが安価で効果的だという点だ」

米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』への2025年7月の寄稿で、筆者は「最も高価なシステムでさえ、ドローンのもたらす脅威の規模と適応性に対処するのは困難だ」と警告し、湾岸諸国はウクライナを参考にすべきだと指摘した。この予測は今、2つの前線で同時に現実味を帯びつつある。

次ページ > ドローン撃墜は「非経済的」 おとり利用されれば防空網に穴

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

欧州

2026.03.06 07:00

「プーチンの毒」は誰に盛られるのか? 毒殺国家ロシアの暗殺法

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Sefa Karacan/Anadolu via Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Sefa Karacan/Anadolu via Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の批判者が毒物を使って次々と暗殺されていることは、将来、北大西洋条約機構(NATO)との戦争に発展した場合、ロシア軍が化学兵器を大量に使用することを予兆している可能性がある。英ロンドン大学キングスカレッジでロシアの情報活動を専門とするエレナ・グロスフェルド博士が警告した。

英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダの欧州5カ国の政府は、2年前にロシアの刑務所で死亡した同国の野党指導者アレクセイ・ナワリヌイが、化学兵器禁止条約で禁じられている毒物によって暗殺されたとの調査結果を共同で発表した。これは、ロシア政府が国際条約を軽視していることを浮き彫りにしている。

外国であれロシア国内であれ、プーチン大統領の敵対者に対する暗殺は「国家に代わって情報機関が行う国家統治の一形態だ」とグロスフェルド博士は指摘する。ロシアがウクライナ侵攻で禁止化学兵器を使用し、毒物を持った暗殺部隊を国境を越えて派遣する行為は、国連が支持する法の支配に基づく世界秩序への攻撃を示すものだ。同国が化学兵器禁止条約などの国際的な取り決めを無視する姿勢は、今後、西側諸国との全面戦争が起きた場合、さらに拡大する可能性がある。グロスフェルド博士は次のように指摘する。「NATOとの全面戦争に発展した場合、ロシアがこれまで繰り返し無視してきた条約を気にかけるとは思えない。同国による化学兵器の配備が爆発的に増加する恐れさえある」

グロスフェルド博士は自身の博士論文の中で、1917年のロシア革命後に始まり、ソビエト連邦の指導者ヨシフ・スターリン時代に急増し、その後プーチン政権下のロシアで再び増加している、国家による暗殺の100年にわたる軌跡をたどった。スターリンはかつて自身と権力を争ったボリシェビキの指導者レフ・トロツキーに対し、亡命先のメキシコで暗殺を企てた一方、国内では同志の革命家を次々と排除していった。

昨今、ロシア大統領府(クレムリン)から派遣された暗殺者が、民主主義を訴える政治活動家やジャーナリストといった「国家の敵」を狙う際に拳銃を使うことはあるものの、プーチン大統領に対する著名な批判者らに対しては、大統領に最も近い軍や治安部隊の幹部など、権力の中枢によって独占的に管理されている毒物が用いられることが多い。ソ連が化学兵器として開発した猛毒の神経剤ノビチョクや、原子炉内でしか生成できない放射性のポロニウムといった、国家が製造した特殊な毒物を使用することは、ロシアの反体制派や世界の首脳に向け、この恐怖の道具を作り上げたのはクレムリンだという強力なメッセージを送ることになる。

グロスフェルド博士は次のように説明する。「一般的に、毒殺は特に恐ろしく威圧的な暗殺の仕方だ。暗殺の方法が何であれ、ロシア人の大多数は抗議活動に参加することを恐れている。国内での弾圧はかなり効果的だが、もちろんそうした見せかけの演出も追い打ちをかけている」

プーチン政権下ではクレムリンの工作員による暗殺が急増しており、反体制派を標的にした殺害件数では、ソ連時代の歴代の全ての指導者を上回った。グロスフェルド博士によると、最も劇的な毒物は、英国に亡命した元ロシア情報機関員のアレクサンドル・リトビネンコやセルゲイ・スクリパリのような「裏切り者と見なされる者」のために用意されているという。リトビネンコは英ロンドンでポロニウムによって毒殺された。英政府は数年にわたる調査の末、クレムリンが仕組んだこの暗殺は、首謀者であるプーチン大統領が個人的に承認した可能性が高いと報告した。

次ページ > 刑務所で死亡したナワリヌイの死因も「毒殺」だった

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事