イランへの攻撃 米ニューヨーク・タイムズ紙社説がトランプ大統領を痛烈批判「なぜこの戦争を始めたのか」

高橋浩祐
米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員
ドナルド・トランプ米大統領写真:ロイター/アフロ

米主要紙のニューヨーク・タイムズは2月28日付の社説「Why Have You Started This War, Mr. President?(なぜこの戦争を始めたのか、大統領)」で、ドナルド・トランプ大統領がイスラエルと協力してイランへの新たな軍事攻撃を命じたことを強く批判した。

社説は、トランプ氏が2024年大統領選で「戦争を終わらせる」と公約したにもかかわらず、就任後1年余りで7カ国に軍事攻撃を命じてきたと指摘。今回のイラン攻撃についても、昨年6月の核施設空爆を大きく上回る規模になる可能性があるとされる中、「なぜ米兵の命を危険にさらし、大規模な報復を招くリスクを負うのか、説得力ある説明がない」と批判した。

また、アメリカ合衆国憲法が宣戦権を連邦議会に付与しているにもかかわらず、議会承認を得ていない点も問題視。6月の攻撃でイランの核計画は「壊滅した」とするトランプ氏の発言についても、米情報機関の分析や今回の追加攻撃がそれを否定しているとし、「真実を語る責任を軽視している」と断じた。

一方で同紙は、イラン政権について「同情の余地はない」と明言する。革命以来47年間にわたり自国民や周辺国に苦難をもたらし、反体制派の弾圧や女性、LGBTQの人々、宗教的少数派への抑圧を続けてきたと指摘。核兵器取得を目指す姿勢は重大な脅威であり、歴代米大統領が超党派で阻止を誓ってきた点は正当だと評価している。

そのうえで社説は、軍事行動が将来的に正当化され得る可能性を完全には否定しない。イランが北朝鮮のように核兵器保有に至る事態は避けるべきだとしつつも、重要なのは「責任ある大統領」であれば、①目標を明確に説明すること、②なぜ今攻撃するのかを示すこと、③議会の承認を求め同盟国と連携すること――が不可欠だと強調。トランプ氏はそのいずれも果たしていないと批判した。

米連邦議会下院では、カリフォルニア州選出のロー・カンナ氏やケンタッキー州選出のトーマス・マシー氏らが、議会承認なき対イラン戦争を制限する決議案を提出。上院でもバージニア州選出のティム・ケイン氏やケンタッキー州選出のランド・ポール氏が同様の法案を進めている。

社説は、かつてのイラクやアフガニスタンでの失敗を例に挙げ、出口戦略のない「レジーム・チェンジ(政権転覆)」の危うさを警告。最後に、軍事作戦に従事する米兵の安全と、抑圧に苦しむイラン市民の無事を願いつつ、「戦争という重大事を、トランプ氏はその重みにふさわしく扱っていない」と結び、軍事的エスカレーションがもたらす深刻な帰結に強い懸念を示した。

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「日本から世界へ」をモットーに対外発信に注力。英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。Naval NewsやNK News、Nikkei Asia、世界の観船、軍事研究、東洋経済、週刊文春、英紙ガーディアン、ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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