『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』香田洋二著(中公新書ラクレ) 946円
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専門家不在の文民統制
評・堀川惠子(ノンフィクション作家)
ロシアのウクライナ侵攻で世界の安全保障環境は激変した。日本の防衛費も5年間で43兆円の巨費が投じられることになったが、そこに警鐘を鳴らすのは意外にも海上自衛隊の元海将。「各方面から嫌われることを覚悟」で書いたという。
著者は防衛費の増額を歓迎する一方、防衛行政のあり様に疑問を呈す。防衛省と自衛隊(背広組と制服組)の連携不足、官邸が省内人事を握る弊害、兵器の国産化が抱えるリスクなど、提示される「失態」は多岐にわたる。ことにシビリアンコントロール(文民統制)への指摘は深刻だ。
自衛隊は「旧軍の暴走を許した戦前の反省」にたって成立した経緯があり、国会で厳しいチェックに
予算の手当を「継戦能力」の強化にと訴える。国内施設の
新たに敵基地攻撃を可能とする方針が示される一方、日本本土の被害想定などリスクは一向に語られない。戦闘は自衛官任せで、国民に相応の覚悟を問う議論を避け続ければ、のちに国防の根幹が揺らぎかねない。防衛政策を大転換するならば、国民に対して説明責任を果たすべきとの元海将の訴えは決して空言ではない。