単位が取れないのなぜ? 大学の知能検査で知った「自分」 困りごとの背景に発達障害
まさか、こんなに悪いなんて。パソコンの画面に表示された成績表に、ぼうぜんとした。 佐賀大大学院1年の健太さん(仮名、24歳)が、九州の有名進学高校から現役で佐賀大学に入学したのは2020年。大学1年の前期終了後、単位が取れた授業科目は二つだけだった。 サボったつもりはない。だが、確認すると未提出の課題が多かった。新型コロナ禍の当時、実家で全ての授業をオンラインで受けていた。大学のポータルサイトはリポート提出や動画視聴の呼びかけであふれていた。それをことごとく見落としていた。 高校でも課題を出せないことがよくあったが、それでも何とかなっていた。「ハードルにつまずいた」。発達障害の特性が関係しているとは、この時は思いもしなかった。【黒田阿紗子、寺町六花】 【図でみる】発達障害のある人にみられる困りごとの例
後で困ることは分かっていても…
2年になると対面授業がスタートし、1人暮らしを始めた。日によって、授業がある時間や教室が違う。出席は不安定だった。 行かなければ単位が取れず、後で困ることは分かっている。それなのにエンジンがかからない。どうして体が動かないのか考えているうちに時間になり、「もういいや」と諦めた。 人に話しかけるのはもともと苦手だ。同じ顔ぶれと一日を過ごす高校までは「自然に」できた友達が、大学ではできなかった。サークルやアルバイトも、授業がないがしろになりそうで手が出せなかった。 3年を目前にして、留年が決定的になった。見かねた母親が、指導教員に相談。紹介されたのが、大学の「キャンパスライフサポート(CS)ルーム」だった。 CSルームは、約5000人が学ぶ本庄キャンパス(佐賀市)の中心に位置する。心理職の資格を持つ4人のコーディネーターが学生の相談にあたる。障害や病気がある学生から申請を受け、学ぶにあたっての障壁を取り除く「合理的配慮」の調整もしている。
得意と不得意が分かる検査
「人並みのことができない。焦っています」。1時間ほどかけて説明すると、臨床心理士でCSルーム責任者の中島俊思准教授(46)に提案された。 「得意と不得意が分かる検査があるのだけれど、受けてみますか」 ウェクスラー式知能検査の成人版「WAIS(ウェイス)」。認知能力の特徴を把握する、いわゆるIQ(知能指数)テストだ。医療機関では、発達障害の診断を補助するものとして使われている。それを大学で無料で提供しているという。 「受けます」。迷いはなかった。