『星獣戦隊ギンガマン』第四十七章『悪魔の策略』
◾️第四十七章『悪魔の策略』
(脚本:きだつよし 演出:辻野正人)
導入
第四十四章から続いた各キャラクターのメイン回も今回と次回が最後であり、今回がギンガイエロー/ヒカルの集大成、そして次回が知恵の樹・モークの集大成として描かれ、来週配信分をもって無事にギンガマンは完結を迎える。
ここまで破綻という破綻もなく、サヤメイン回がハズレだったこと以外はほとんど隙なくやってこられた本作だが、今回はギンガイエロー/ヒカルの集大成にして、同時にビズネラとの因縁も納得の行く形で着地した。
本来であれば今回は小林靖子が担当するはずだったのだろうが、どういう事情からか第三十九章以来となるきだつよしが登板しており、個人的には概ねしっかり押さえつつも、疑問に感じるところもある。
そもそもきだつよしは「仮面ライダー響鬼」「仮面ライダーウィザード」でもそうだが、いわゆる「昭和ヒーローへの憧憬」があるのか、今回実は2箇所ほど本作らしくないところが目立った。
1つ目が冒頭のビズネラに尋問をかけるところでギンガマンの5人がベラベラと自らの作戦を話してしまっていたこと、これはどちらかといえば昭和時代のヒーローがやっていたことである。
少なくとも小林靖子がこの回を担当していたらリョウマたちがビズネラに自分らの話をするわけがないだろうし、するにしてもそれはやむを得ない事情の時だろう。
ここら辺は書いてる作家同士のセンスの差なのか、それとも小林靖子の真意をきだが汲み取れていないのかはわかりかねるが、獣撃棒強化のことを味方側が話すとは到底思えない。
実際、本作は序盤から徹底して味方側であるギンガマンの強化に関してはバルバンとは無関係のところで秘密裏に行われており、それがあるからこそ新アイテム登場の時にバルバンの脅威となるのだ。
もう1つはヒカル以外のリョウマ・ハヤテ・ゴウキ・サヤの4人がビズネラの仕掛けた偽物の時限爆弾から謎の生還を遂げるという無敵ぶりを発揮しているが、ここに突っ込んでいる人もいた。
奮戦虚しく猛虎ビズネラに追い詰められるイエローだったが、その時、爆死したかと思われた4人のギンガマンが姿を見せる。
「何故だ?!お前たちは死んだ筈!」
「バルバンを倒すまで、俺たちは死なない! 俺たちは、絶対負けるわけにはいかないんだ!」
某ストロンガーばりの不死身ぶりを見せるギンガマンの根拠不明具合は今作ここまでの積み重ねとはやや波長が合っていないのですが、 脚本のきださんが好まれるという“昭和ヒーローの外連味”というのが恐らくこういったノリかと思われ、2本目の参加で、 ここは好きな事を通させてもらった、という感じ。
そう、GMS氏も指摘しているように、こんな風にギンガマン4人が生き延びているのは良くも悪くも昭和ヒーローの荒唐無稽ぶりが目立っているのだが、思えば本作にこういう演出は一度もなかった。
こういうところからも本作は「古典的デクパージュとしての戦隊の復古・再生」を目指してはいるが中身は決して「無根拠に強い昭和ヒーローの荒唐無稽」までを再現したものではないとわかる。
だからどうしても本作の単品の完成度と面白さに関してはやや評点が低くなりがちではあるのだが、それを差し引いてもお釣りが来るくらいにはしっかりまとまっている。
少なくとも第二十九章から引っ張ってきたヒカルとビズネラの因縁の決着に違和感はなかったし、改めてヒカルというキャラクターの良し悪しがこの回に全て詰まっていたと思う。
今回のレビューポイントは以下の3つだ。
ギンガイエロー/ヒカルの集大成
宇宙の闇商人ならではの「二重の策略」とその末路
終盤で味方の武器が強化されるという異例の展開
さあ、本作最後のヒカルメイン回をごくしめやかにレビューしていこう。
ギンガイエロー/ヒカルの集大成
第四十四章から今回までそれぞれの最後のキャラメイン回が描かれてきたが、その中でもこのギンガイエロー/ヒカルに関しては「集大成」としか言いようがないほどに、ヒカル自身のドラマとして完結している。
ヒカルのドラマは第四章『アースの心』から描かれてきたが、ギャグ回なども挟みながらでありつつ、メンバーで1番未熟だったヤンチャな少年が「大人」になるまでの物語だった。
少なくとも本作の中で一番伸び代があったのはヒカルであり、成長の幅だけで言えばギンガレッド/リョウマ以上だったのではないかと思うし、事実その通りである。
言うなればリョウマはスタート時点ですでに基礎基本は完璧だったから、あとはメンタル面の未熟さや「兄ヒュウガへの憧れと表裏一体のコンプレックス」をどう乗り越えるかの物語だった。
だからリョウマに関するドラマはすでに第二十六章までで完結し、そこからは彼個人のドラマというよりはリーダーとしてみんなを引っ張ることだったり、あるいは戦線から離脱せざるを得なかった兄ヒュウガの救済が目的となっている。
つまりリョウマ自身はもう内面に関するドラマを物語前半で終えたのだが、ヒカルは真逆で最後の最後まで「個人の成長」というところに重きを置いており、そこが同時にハヤテやゴウキとの差別化にも繋がった。
ハヤテは元々ヒュウガと並んで物語開始の時点でキャラクターが完成・安定していたから伸び代というか戦闘経験値以外はほとんど成長していないし、ゴウキの場合は成長というより「本質に気づくまでの物語」である。
そういう意味では「個人の成長」をヒカルに一本化する形で終盤に見せることができたというのはとても大きいし、だからこそ胸を張って今回がヒカルにとっての集大成となった。
第四十六章のハヤテVSシェリンダに関しては役者同士が「あの回ではっきりと決着をつけたかった」というほどだし、実際やや消化不良気味に終わってしまったという印象は否めない。
しかし、ヒカルのドラマに関しては対ビズネラの因縁も含めてカメラに収めるべきものは全てしっかり収めていたし、たった一人で窮地を乗り切ることができるほどに成長した。
アースの使い方を履き違えていた彼が、そのアースを「星を守る」という本来の目的のために使い、決してビズネラの策略に屈することなく最後まで走り抜く。
小林靖子が描いた年少キャラクターの中でも一番成長が著しいキャラクターだった、「シンケンジャー」のシンケングリーン/谷千明も成長はしたが本作のヒカルほどではない。
ジープで縛られながらのスタントというのもどこか懐かしい昭和ヒーローを彷彿させるし、ジープというのも本作らしからぬ懐古趣味で用意されたものだったのだろうか。
いずれにしても、ビズネラの策略に翻弄されるが、これまでとは違い決して感情に流されず反撃の隙を虎視眈々と伺い、ここぞというところで反撃に転じる彼の姿は一人前の戦士だった。
性格面も含めて一番危うかった彼が成長したことは既定路線だったわけだが、近年はこの既定路線として描くべきことすらまともに描けない作品ばかりになっている。
だからこそ、決してふざけるのではなく、ここぞというところで渋くカッコよく見せられるのは本作らしい誠実さがしっかり画面に表現されていると言えるだろう。
宇宙の闇商人ならではの「二重の策略」とその末路
さて、今回は宇宙の闇商人ビズネラならではの「二重の策略」とその末路が示されていたわけだが、二重の策略というのはもちろん「地球魔獣を成長させるための作戦」と「ギンガマンを皆殺しにする策略」である。
ビズネラ自身が今度は前線に出る形となったわけだが、皮肉にも今回はビズネラ自身がこれまでにやってきたことが因果応報という形で返ってくることとなった。
まず1つが「策士策に溺れる」であり、コメントでも触れられているが、最終的にギンガイエロー/ヒカルの雷一走を食らったことで地球魔獣用の急成長エキスを全身に食らうことになる。
「化け物」と呼ばれるほどの異形の生命体に姿が変わったわけだが、これが急成長エキスがどれだけ恐ろしいかを視覚的に訴えていると同時に、彼自身への因果応報となった。
というのもビズネラは星獣を兵器として改造した挙句にギンガマン用の対決戦兵器としてぶつけ、星獣同士の殺し合いを誘発するというとんでもないことをやらかしている。
さらには第四十章で改心できたかもしれないデギウスにバルバエキスを勝手に打ち込んだことも、最終的に一番の相棒だったバットバスに裏切られるという形での落とし所となった。
そして巨大戦ではその彼自身が改造したギガライノスとギガフェニックスから報復を受けるなど、まさにこれまでに積み重ねてきた所業のオンパレードだったといえる。
これに関しては髙寺成紀三部作で描かれた中では割と珍しいものであり、物語後半で参戦した外部の参謀キャラクターが物語終盤まで関わってきたのはビズネラだけだ。
彼の戦いに対するスタンスは徹底して「宇宙海賊の外部委託」でありながら、単なる「やられ役」「無能」「ポンコツ」で終わらなかったのが大きい。
そこが今や第三勢力で元参謀として色々と役立たずだったブクラテスとの大きな違いであり、同じ参謀でもここまで出来が違うものかと思う。
実際ブクラテスは今のナイトアックスの件も含めてなのだが、肝心要の部分で役に立たないことが多く、「なんでお前そのポジションでそんなことするの?」ということが多かった。
特にブドーをイリエスと結託して陥れるところが典型的だが、4クール目でここまで引っ張らなかったら単なる「荒削りで未熟なAI」で終わっていただろう。
対してビズネラは単なる「AI」で終わることはなく、「知識」ではなく「知恵」と「戦略」を持って戦っていたことから、有能なタイプではあった。
ただ、彼は脇が甘すぎた、自身が手を組んでいる相手が「宇宙海賊」である以上、いつ自分が裏切られるかのネガティブシミュレーションが必要である。
そこを怠ってしまい、またギンガマン4人を倒してヒカル一人にすれば簡単に勝ててしまうと思い込んでいたところも今回の敗因につながっているだろう。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とはまさにこのことであり、ビズネラも結局は敗れるべくして敗れだったのだ。
終盤で味方の武器が強化されるという異例の展開
さて、今回改めて驚きというか、当時から今まである種物議を醸していたと思われるのが終盤に来て味方側の武装が強化されるという展開である。
実は本作に限らないが、終盤で味方側の戦力が強化される展開自体が実は珍しい、本作で言うと新獣撃棒がその例ではないだろうか。
もはや髙寺成紀もクリスマス〜正月の商戦を経て縛られなくなったのか何なのか、のちの「クウガ」でも見せる「終盤での戦力強化」という展開がここで散見された。
最終回限定とかならともかく、物語ももう終盤になって既存の武器を強化する展開など本作の他ではほとんど見ないぐらい、実はスーパー戦隊において「終盤の戦力強化」はまずない。
忘れ去られつつあったギンガマン5人とモークの絆の象徴である獣撃棒をここで強化するという展開は異例中の異例であり、しかも今回と次回でしか使われないのである。
尚且つ後日談として描かれた「ギンガマンVSメガレンジャー」では元の獣撃棒に戻っているため、ここで持ってくるには物語の流れとしては少々不自然だった気がする。
ただ、技のエフェクトや「閃光獣撃弾」ということから「対地球魔獣用決戦兵器」として仕上げられた感はあって、しかも生身でも使うことができるのだ。
技のエフェクトが黄金であることから、おそらくモークが「ギンガの光」およびギンガの閃光を分析した上で、擬似的に獣撃棒+ギンガの光としてパワーアップしたのだろう。
そのせいもあってか、ギンガの閃光すら易々と弾き返したビズネラを易々と撃墜しており、普通の作品だったらこんなことしないであろう展開を本作は果敢に入れてきている。
確かにビズネラは第二十九章でもギンガの閃光を吸収してエネルギーに変えていたことから、ギンガの閃光では死なない敵であるという説得力はあるが、ここではモークの獣撃棒がギンガの光を超えたことの象徴になっていた。
私は四軍団の力の格差以上に「味方側の武力強化」の方が見ていて面白く、本作は割とストレートに「想いの強さ・絆の強さ」がそのまま「武器の威力」へ変換されているところが面白い。
アースも星獣剣も機刃も獣撃棒も、ありとあらゆる要素を駆使して味方側の強化にしっかり演出上の必然性を持たせた、そしてれを「設定」「物語」ではなく「映像」として示せたことが今回の白眉だろう。
もはや完全な「バズーカ砲」として固定されている新獣撃棒だが、普通の戦隊はここで「守り」に入るところを本作は「守っている」ようで実は最後まで「攻めている」のだ。
それはもちろん裏方で特訓を続けているヒュウガとブクラテスに関しても言えることなのだが、この二人の関係性については第四十九章と最終章まで取っておくとしよう。
いずれにせよ、戦力的には完全にギンガマン5人だけで乗り切ることができる展開であることを示した上で、物語はヒュウガを肯定も否定もせずに進行していく。
果たしてこの構成がどのように収束していくのか?
総評
今回は最終決戦となる地球魔獣編を前にした最後のキャラクターメイン回であり、そのトリを飾ったのがヒカルというのがとても良かった。
思えばヒカルは第四章で物語の根幹に関わるドラマを担い、その後ギンガマンに欠かせない最高のメンバーへと成長している。
最初はアースを見世物にして濫用していた彼がとうとう仲間たちのために一人で窮地を脱する展開にまで持っていけたのだ。
それだけの冷静さと胆力、そして正義感を全て彼なりの行動として示し、見事な結果を出して、ビズネラとの因縁にもしっかり決着をつけている。
やや演出や物語の上で難はあったものの、全体的にはよくまとまっており、総合評価:A(名作)100点満点中95点。



コメント