ホームタウンのJICA。アフリカからの留学生たちの可能性
アフリカからの留学生たちの可能性
世間では、JICAが発表しそして取り下げたホームタウン構想で、「アフリカって何?」「日本にはまだまだ縁遠いのではないのか?」「アフリカ含む途上国支援など不要なのでは?」といった報道などをしばしば目にするようになった。
私たちは、JICAの留学生という側面しか知らないが、私たちの会社とその周辺では、アフリカからの留学生たちが卒業後に大活躍している。
その実際を実名で説明したい。
私たちアセンティア・ホールディングスは日本のビジネスを世界各国にフランチャイズ展開することを支援している。
既に東南アジアやオセアニア、欧州には数多くのフランチャイズを展開済みである。
私がこの会社に入社した2015年には確か17か国に日本のビジネスをフランチャイズ展開していた。
フランチャイズ展開するということは、現地の企業に加盟店となってビジネスを展開してもらうということで、単に意欲や投資余力だけではなく、日本のフランチャイズ本部との信頼関係の構築が何より重要になる。
私が入社した当時、アフリカは私たちにとって空白地帯であったので、「次はアフリカにフランチャイズを広げよう」という意思を持って2017年から本格的にアフリカへの接触をした。先ず日本国内での勉強から開始した。
その中で、アフリカ各国からは数多くの留学生が来日していることを知る。
一つは最近アフリカホームタウン構想で有名となったJICAが扱う留学制度と、アフリカ開発銀行(AfDB)が扱う留学制度である。何れも、大学院での留学を中心としているところが興味深い。
単に四年制大学への留学ではなく、いったん母国で政府や民間企業での就業経験を持つ若者に日本の大学院での専門教育を提供している。
JICAのこの制度の中心には、ABEイニシアティブという名前の制度がある。
ABE(アベ)・・・。そうこの制度は安倍元首相時代に中華人民共和国(China)のアフリカ支援がインフラ開発を伴う投融資やChina企業進出であったのに対し、日本は若者の教育でアフリカに貢献するという方針を掲げて作られた制度である。毎年200名~300名のアフリカ各国の若者が来日し、2年間日本の大学院で学ぶ。渡航費・旅費・学費が血税で賄われているので、ホームタウン構想の余波で批判めいた論調も見受けられる。
この制度は実に日本企業に有益であるのだが、JICAの広報不足で99%の日本企業や日本人が知らない。
どういう制度なのか?というと、目的は産業人材の育成で、日本とアフリカとの懸け橋となる人材の育成としている。そのために、大学院に通う2年間の間の夏休みなどに2週間の企業でのインターンシップが用意されており、大学院修了後にも最大6か月のインターンシップが用意されている。
実は私たちアセンティア・ホールディングスと、弊社の顧客企業の中で、アフリカへもフランチャイズを目指す企業は、このABEイニシアティブ制度をフル活用して、アフリカへのフランチャイズ展開を成功裏に展開しているのだ。
私たちも一朝一夕でABEイニシアティブ制度を活用できているわけではない。
複数年にわたる試行錯誤の中でようやく良い方法が分かってきた。
そして今、それは確信に変わっている。
『アフリカ進出はフランチャイズ方式に限る。しかも可能ならフランチャイズ加盟店は日本への留学経験者の中から選ぶべし』と。
ABEイニシアティブ制度を活用する反面、アフリカの既存企業に対しては非常にネガティブな印象を持つようになった。
それはこの間(2017年から2025年の間)に、2度にわたり日本で開催されたTICAD(アフリカ開発会議)のビジネス展示会にブース出展し、日本のフランチャイズをアフリカ企業に提案するということを繰り返してきた経験による。
企業への提案は展示会の日だけでなく、その後もZOOMや直接の面談で継続したが、2019年の時も2025年の時も、展示会の一瞬は「非常に強い需要を感じポジティブになる」一方で、細かい詰めの打ち合わせの段になると、ネガティブな結論となる。
それは、一つには商習慣の違い、投資に関する考えの違い、長年の途上国時代から何でも支援を受けようとする姿勢などによるものだ。
また国によってではあるが、ハードネゴシエーターが多いのも事実だ。
遠慮しがちな日本企業が軽々しく交渉できる相手ではないという印象を得た。
特にフランチャイズにおいて重要な「信頼関係」の構築はなかなか難しい相手であるということだ。もちろん言語の壁が日本側にあることも大きな問題でもある。
そしてこれらが、JICAやAfDBによる留学性との関係の優位性をより際立たせている。
ここからは具体的な事例をご紹介したい。
ケーススタディ:エノラ・ラ・ボーヌ(セーシェルアイランド)JICA ABEイニシアティブ制度 三重大学
2021年3月から6か月のインターンシップで弊社に来たエノラは、のちのTOKYO8マイクロフランチャイズのビジネスの立ち上げに大きく貢献した。現在はTOKYO8の親会社である株式会社太陽油化に正社員として勤務し、国際営業の責任者を務めている。
ケーススタディ:グローリー・シバレ(マラウイ)AfDB
弊社にインターンシップに来ていた同大学の方からの紹介で弊社にアプローチ。本人の持つ課題感から太陽油化を紹介し、インターンシップを経て正社員に、現在はマラウイにてTOKYO8の原液生産工場の立ち上げと、マラウイにおけるTOKYO8フランチャイズの普及に貢献している。
ケーススタディ:セルジオ・モライス(モザンビーク)JICA ABEイニシアティブ制度 国際大学
「母国にランドリーをフランチャイズで持ち帰りたい」と直訴して2023年6月から5か月間弊社のインターンシップに参加。
日本国内の複数のランドリー機器製造メーカーと交渉したのちに、中古ランドリー機器を扱う会社と、ランドリーを新規事業で展開している会社と親密に付き合い、ランドリーフランチャイズの基礎をインターンシップ中に構築。
帰国後の2024年10月末に、セルフサービスランドリーのSELFIEをモザンビークの首都マプトに開業。
2025年11月には2号店の出店を計画中。
ランドリービジネスの理念を店名に込めたSELFIE Laundromatとして、アフリカ各国でのフランチャイズ展開が開始されるにいたる
ケーススタディ:アビガエル・キップロプ(ケニア)JICA ABEイニシアティブ制度 東京大学農学部
2024年3月から弊社にてインターンシップ。
実は彼女は農学部出身で農業経済が得意であった。TOKYO8のフランチャイズ加盟も考えていたが、母国ケニアは輸入規制や肥料の規制が厳しくTO<YO8のすぐの加盟は難しく断念し、セルフサービスランドリーのSELFIEに加盟する。同じJICAから日本に留学経験のある3名を巻き込み事業化。
ケーススタディ:ジェームス・マトコマララ(マダガスカル)JICA ABEイニシアティブ制度 東京農業大学
2025年3月から弊社でインターンシップ経験 9月末に帰国後はTOKYO8に加盟し、母国の商工会議所などと連携し、農村支援と食品事業を立ち上げる。
ケーススタディ:マリック・マンジ(ガボン)JICA ABEイニシアティブ制度
パリで成功している土鍋味噌ラーメンたけさんに加盟したいと訴え、2025年6月から弊社でインターシップ。たけさんでの実務研修も織り込んだインターンシップでラーメン店経営も学んだ。同時に、マルチフランチャイジー戦略を学び、帰国後は先ずSELFIE LAUNDROMATに加盟し、財務的体力を付け、1年後にたけさんを開業する計画を持つ。
ケーススタディ:太陽油化(東京都板橋区、石田太平社長)
創業60年を超える太陽油化は平成元年から東京23区の汚水汚泥処理の事業を微生物を使って行っていた。本業の効果性向上のために研究していた微生物研究からTOKYO8が生まれた。TOKYO8は微生物による土壌改良剤で、農地に散布するだけで収穫量が増大する効果があるが、汚泥由来という理由から国内ではほぼ売れていなかった。そんな折にアフリカの多くの国での課題が、農村部の活性化であることを知っていた弊社は、TOKYO8のアフリカでの展開を提案。
恐る恐る実験してみると大きな成果が上がることが分かり、アフリカで現地生産できる形にビジネスモデルを進化させ、既にアフリカ4か国での現地生産が始まったいる。
アフリカでの実験は、ABEイニシアティブ卒業生の中で農業に関心のある者を集めてWEBINARを開催し、栽培実験希望者を募り、2021年末からアフリカ10か国での栽培実験を開始できた。説明はオンライン、TOKYO8の輸送は日本郵便のEMSで送れる範囲とし、非常に低価格で一気にアフリカ10か国での栽培実験が可能となった。
栽培実験は成功が5割であったものの、様々な知見が日本の本部に蓄積されることとなった。最大の知見は「TOKYO8には害虫忌避効果がある」というもの。リベリアで栽培実験したジョナサンは、栽培していたメイズ(トウモロコシ)の葉が大量発生したバッタの幼虫に食い荒らされている際に、TOKYO8を濃度濃く散布することで害虫が居なくなり、3週間後には新しい葉が成長してきたと報告。それにより害虫忌避効果を日本本部は認識することとなった。
太陽油化では、毎年夏の2週間インターンシップと、卒業後インターンシップでTOKYO8の母国での展開に関心を持つ若者を受け入れている。一緒に仕事をする中で信頼関係を醸成しフランチャイズ加盟につなげている。
ケーススタディ:立石コーポレーション、ライフブリーズ(長野県塩尻市、立石宗一郎社長)
ガソリンスタンドを本業に持つ同社は、新規事業で古くはベーカリーレストランサンマルク、最近はエニタイムフィットネスやコインランドリーを展開している。
モザンビークからの留学生がセルフサービスランドリーの展開を希望した際に弊社が相談した相手の一社で、立石宗一郎社長は受け入れてくれた。
その背景には、立石社長が高校大学社会人と10年間カナダに留学・居住の経験があり、英語が堪能なこと。長野県で地域密着のビジネスをしているものの、将来はグローバルへの夢を持っていたことなどが要因ともいえる。
当初は、途上国支援の寄付的に考えていたそうだが、半年間近くにわたり、留学生と事業についての議論を深める中、本格的に事業展開の可能性を感じて、ランドリー機器をレンタルする形のフランチャイズモデルを構築し、2024年にモザンビーク、今年はケニアでの展開を開始した。
TICAD9の展示会に出展し、多くのアフリカ企業から加盟のオファーを受けるも、「信頼感」の観点からABEイニシアティブなどの留学生を第一に考える方針となっている。


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