インフルエンザが大流行しすぎて史上初めての事態が起こっているので、予防についてまとめてみた。
インフルエンザが、今ヤバいくらい流行している。
どれくらいのヤバいかと言うと、流行しすぎて、史上初めての事態が、今起こっている。
今シーズンのインフルエンザは、例年以上の勢いで広がっている。
「想像以上につらかった」「家族全員に広がった」「学級閉鎖になった」──こうした声を各地で聞く。
実際、東京都内のインフルエンザ定点医療機関からの報告数は、1月下旬~2月初旬の時点で警報基準を再度超えた¹。
これは11月の大流行に続くもので、1シーズンに2度警報レベルを超えるのは、1999年の現行統計開始以来初めてとされている¹。
つまり、インフルエンザが1シーズンに2回大流行するという史上初めての事態が起こっている。
いうまでもないが、インフルエンザは
・高熱
・全身の痛み
・動けないほどの倦怠感
を伴い、特に新生児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方が罹患すると、肺炎やインフルエンザ脳症など、生命を脅かす重篤な状況に陥ることもある²。
コロナ禍ほどではないものの、未曾有の規模で流行している今こそ、「できるだけインフルエンザにかからないための感染対策」について考えたい。
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① ワクチン接種は、最も明確な予防効果が示されている
インフルエンザワクチンは、発症リスクを下げる効果と、重症化を抑える効果が一貫して報告されている。
米国CDCなどの大規模データでは、
•季節性インフルエンザにおいて、ワクチン接種により毎年数百万件のインフルエンザ症状が予防されたこと
•ワクチン効果は流行株とワクチン株の一致度により変動するが、一定の予防効果が確認されていること
が示されている³。
また、CDCがまとめた複数の観察研究では、
•ワクチン接種者は、入院やICU入室、死亡といった重症転帰のリスクが低かった
•特に高齢者や基礎疾患を有する人では、その効果がより重要
と報告されている⁴。
なお、ワクチンの発症予防効果(VE)は毎年一定ではなく、概ね10〜60%程度の幅で変動することが知られている³。
一方で、重症化予防効果については、より安定して有益であることが多くの研究で支持されている⁴。
副反応としては、局所の腫脹や一過性の発熱などが多く、多くは数日以内に軽快する。
重篤な副反応は報告されているものの、極めて稀である⁵。
もちろん、個別の事情からワクチンを接種しないという選択を取る人がいること自体は否定しない。
しかし、「ワクチンは有害である」といった主張を流布し、他者の接種行動に影響を与えることには、医療従事者として強く反対したい。
なぜなら、ワクチン接種率の低下は、集団免疫(感染拡大を抑える効果)に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
季節性インフルエンザの基本再生産数(R₀)は、文献レビューでは概ね1前後〜2程度と推定されている⁶。
理論的には、R₀が1.3であれば約23%、2であれば50%程度の免疫獲得で、感染拡大が抑制され得る計算になる。
これは、
・COVID-19(R₀推定 5以上)⁷
・水痘(R₀ 8–10)⁸
・麻疹(R₀ 12–18)⁹
と比較すると、インフルエンザは比較的低い接種率でも集団効果を得やすい感染症であることを意味する。
言い換えると、適切なワクチン接種が広く行われていれば、少なくともここまでの爆発的流行は抑えやすかった可能性があると考えている。
ただ、これだけ流行してしまった以上、今更ワクチンを打ったところでは、間に合わないだろう。十分な免疫を獲得するまでには2-4週間かかると言われている。免疫がつくまでにインフルエンザに罹ってしまっては元も子もない。
では、どうすればいいのか。
ここで、マスク手洗いの出番である。
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② 基本的感染対策(手洗い・マスク・換気)は現実的な防御
インフルエンザは、主に飛沫感染・接触感染によって広がる。
そのため、
•手洗い
•マスク着用
•換気
といった基本的感染対策が重要であることは、WHOやCDCなど複数のガイドラインで支持されている¹⁰。
RCTやレビュー研究では、
手洗い単独、マスク単独では効果が限定的なことも多い一方で、「マスク+手洗い」の併用により感染やILI(インフルエンザ様症状)が減少した可能性が報告されている¹¹ ¹²。
特に家庭内・集団生活の場では、複数対策の組み合わせが最も現実的な防御策と考えられる。
これだけ流行している状況では、
「できる人はマスクを着け、帰宅後に手洗いをする」
それだけでも、感染連鎖を断ち切る一助になる。
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③ 抗インフルエンザ薬の「予防内服(曝露後予防)」
すでに家族がインフルエンザに罹ってしまい、手洗いやマスクをしても曝露を免れないこともあるだろう。とは言っても、受験前や、絶対仕事を休めないパターンや、高齢者や新生児など重症化リスクのある同居人がいる場合などもある。
そう言う場合に、抗インフルエンザ薬の予防内服が出番になる。
抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビルなど)は、治療だけでなく、曝露後予防(post-exposure prophylaxis)として用いられることがある。
Cochraneレビューでは、
•これらの薬剤が症候性インフルエンザの発症リスクを低下させた
•特に家族内・施設内など、明確な曝露がある状況で有効
と整理されている¹³。
一方で、
•完全に防げるわけではない
•副作用(嘔気・嘔吐など)
•コストや耐性の問題(タミフル予防投与は原則自費)
といった点も指摘されている¹³。
そのため、予防内服は
・医師の判断のもと
・高齢者、基礎疾患のある人、施設入所者など
を中心に検討されるのが一般的である。
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④ 補中益気湯(漢方)の位置づけ
以前漢方を勉強していた時に、補中益気湯がインフルエンザを予防するかもしれないという報告を見かけた。
補中益気湯については、インフルエンザを確実に予防するという高品質なRCTは存在しない。
一方で、
•マウス感染モデルなどで
•粘膜免疫や免疫応答を調整する可能性
を示唆した基礎研究レベルの報告は存在する¹⁴。
したがって現時点では、
「もしかしたら効果があるかもしれない補助的手段」
という位置づけが妥当であり、
ワクチンや基本的感染対策を置き換えるものではない。
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⑤ サプリ・民間療法について
亜鉛、ビタミンC、ニンニク、水うがいなどは、
風邪一般や体調管理としては一定の研究報告があるものの、インフルエンザ予防として明確なRCTレベルのエビデンスはない。
一方で、
•亜鉛・ビタミンC:普通感冒での症状短縮効果
•水うがい:上気道感染症全般での発症低下報告
などは知られており、「やってはいけない」わけではない。
ただし、過信は禁物であるし、亜鉛に関しては多量投与で銅欠乏を起こすので、用法容量を守った方が良い。
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まとめ
•ワクチン接種が、最も確実に発症・重症化リスクを下げる
•マスク+手洗い+換気といった基本対策の併用が重要
•抗インフルエンザ薬の予防内服は、特定状況で有効
•補中益気湯は補助的選択肢
•サプリ・民間療法は過信しない
インフルエンザは、
「きちんと予防すれば、罹患せずに済む可能性がある感染症」でもある。
最後に
私は、普段はバイト医をしている。
普段は各地でスポットや定期バイトをしているが、どこの外来でも今は「インフルエンザ罹患者」が爆発的に増えてきている。
その結果、重症者へ十分なリソースが割けなかったり、定期受診の患者さん達への対応が遅れたり、院内で二次感染を起こしたりして、通常業務への支障が出てしまうという医療機関の声もある。
お互いのためにも、防げる感染は防ぐに越したことはないと思い、今回筆を取った。
今回、インフルエンザの予防について発信したのは、いまの爆発的に感染している状況にも関わらず、マスクなしで出歩いたりする人が多々おられたり、インフルエンザワクチン接種者が減ってきているなど、コロナ禍の終息に伴い、感染対策へのガードが明確に落ち、それによって今のインフルエンザ大流行が増えてきていると感じたからである。
医療系の発信は議論を生むことが多く、とりわけSNS特有の強い言葉の応酬になるネット上の議論があまり得意ではなく、普段は医学的な内容の発信についてはあまり積極的に発信してこなかったが、これ以上罹患者を増やさないための予防策の整理は、いち医療従事者として急務だと感じた。
故に、可能な限り出来るだけわかりやすい表現で書くことを心がけた。至らないところは筆者の文章力の問題である。また、自分自身は内科専門医までは取得しているが、感染症専門ではなく、賢明な諸氏から見ると正確性を欠く記載もあるかもしれない。多少の間違いなら多めにみてほしいと内心思っているが、明らかな間違いなどがあれば、指摘をしてほしい。医師として、出来るだけ正確で、万人が実践可能な内容を書きたいと思っているし、個人的な勉強にもつながる。
最後に、心からの本音を一言言わせてほしい。
俺はこんなこと発信したくねぇんだよ!!!
SNSでは、もっとしょうもないこと言ってたいんだよ!!!!
頼むから早くインフルエンザ落ち着いてくれ!!!!!!!
脚注(出典)
1. 東京都保健医療局 感染症週報 ()
2. CDC Influenza Complications ()
3. CDC. Influenza Vaccine Effectiveness (MMWR) () (DOI: 10.15585/mmwr.rr7305a1)
4. CDC. Benefits of Influenza Vaccination ()
5. CDC. Influenza Vaccine Safety ()
6. Biggerstaff M, et al. Estimates of the reproduction number for seasonal influenza. PLoS Pathog. ()
(PMID: 25255345)
(DOI: 10.1371/journal.pone.0094130)
7. Sanche S, et al. High contagiousness of SARS-CoV-2. Emerg Infect Dis. ( )
(PMID: 32320003)
(DOI: 10.3201/eid2607.200282)
8. Poletti P, et al. The transmission dynamics of varicella. PLoS Med. ()
(PMCID: PMC8954496)
9. Guerra FM, et al. The basic reproduction number of measles. Lancet Infect Dis.
()
(PMID: 28757186)
(DOI: 10.1016/j.epidem.2017.03.002)
10. WHO / CDC Influenza Prevention Guidelines
()
()
11. Cowling BJ, et al. Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission. Ann Intern Med. ()
(PMID: 21282111)
(DOI: 10.1086/650396)
12. Aiello AE, et al. Mask use, hand hygiene, and influenza-like illness. J Infect Dis. ()
(PMID: 19822573)
(DOI:10.7326/0003-4819-151-7-200910060-00142)
13. Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing influenza. Cochrane Review.
( )
(DOI: 10.1002/14651858.CD008965.pub4)
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