テレビ録画メディアサーバー構築入門(第1回)
予約録画、カット編集、番組整理を全自動化し、複数デバイスで手軽に視聴可能な、自分だけのメディアサーバー構築法を徹底解説。
はじめに
海外の交流サイトReddit上のr/selfhostedの話題の中には、自己ホストするサーバとして最も有用なものは何か、という議論が頻繁に見られます。その結果、常に上位にランクインするのがメディアサーバー(PlexやJellyfin)です。自家製のNetflixのようなもので、ストリーミングサービスが当たり前になった現代において、PCやスマートフォンから手軽に映像コンテンツを楽しめるという点が魅力となっています。
しかし、具体的にどのようなメディアが視聴されているのかを詳細に調査してみると、法的に問題がないかどうかが疑わしいコンテンツも少なくないようです。そもそも、DVDをファイル化する行為自体が法的に問題ありの可能性があります。自身が合法的に購入したDVDであっても、Linuxのようなオープンソースのプラットフォームで個人的に視聴する行為でさえ、厳密に言うと著作権法に抵触する可能性が排除できません。
もちろん、無料放送など、視聴制限のないコンテンツを録画し、個人的な利用に限定するのであれば、こうした著作権上の問題に触れることはありません。つまり昔ながらの録画視聴の延長線上の行為として、地上波テレビ放送を録画して蓄積し、個人的な環境で自由に楽しむためのプライベートなサーバを構築することには、間違いなく実用的なニーズがあるはずです。
ただ、市販の録画機器を使用する通常の場合と比較して、自己サーバー構築には、自由度の高さというメリットがある一方で、手間がかかるというデメリットが存在します。そのため、自己サーバ構築は、すべての人にとって容易な選択肢とは言えないでしょう。
ここでは、そうしたことに興味があり、多少の手間には抵抗がない読者に向けて、インストールメモをまとめることにしました。
PCでのテレビ録画環境は現状とても便利であり、しかも技術的には完熟しています。将来的に革新的変革が生まれる可能性は極めて低い。言い換えると、テレビ録画文化(習慣)は黄金の終末期で、若い世代にすれば「すでに終わっている」。
使用するデバイスは、良く言えば広く利用され尽くされており、悪く言えば古い。実際のところ、ネットに押されるテレビの現状からすると、新製品が見込まれない分野です。これから紹介していく方法は、現状まったく問題なく動作してます。しかし、ネット上の公開されたツールを利用させてもらう都合上、将来的には、同じ手順ではインストールできなくなるかもしれません。
やるなら、いまのうち。予備用であっても、環境構築しておく価値は十分あります。
私自身せっかくサーバを再構築する機会ですので、詳細に記録しておこうと考えた次第です。
読者として想定するのは、1日に1~3時間の録画時間で済ませるライトなテレビ視聴者で、学習用にいじくりまわせるPC機器を持ち合わせる方々、もしくは趣味感覚で時間的コストはさほど重要ではない、数万円程度のミニPCならば入手できる方々です。自分で手間と時間をかけたくない方は本稿の対象外となります。
「ドラマや映画など、適当に撮りだめておいて、ある程度の分量がそろってから、時間があるときに、まとめて視聴する。」という視聴スタイルの方に向いています。
この解説記事では、具体的な手順や設定について、一から詳しく解説していきます。わたし自ら、OSのインストールからはじめ、ひとつひとつ確認しながら作業をすすめています。自己ホストの録画サーバ構築に挑戦してみたい方、特に、はじめての方、ぜひご一読ください。
準備が必要なもの
TVチューナー
PLEX PX-S1UD V2.0、または互換製品 MyGica S270, VASTDTV VT20
mini PC
Ubuntu linux 64-bit (AMD64)が動くこと
自己ホストサーバー(self-hosted server)構築にはLinuxが最適です。
接触型ICカードリーダ
linux対応であれば何でも可。たとえば SCR3310 v2.0
その他
B-CASカード
アンテナケーブル、分配器
おすすめ等
動画の編集・変換処理には、ある程度のスペックを備えたPCが必要となります。とはいえ、デスクトップPCは物理的に邪魔になるので、できればミニPCを使用したい。ミニPCの多くはUSB端子からの接続を前提としているため、利用できるチューナの種類も限られてくるという制約が生じます。
コストパフォーマンスを考慮すると、PX-S1UD v2はライトな用途であれば十分な選択肢となりえます。新製品が見込まれず、昨今は品不足や価格上昇が顕著なことから、5000円程度ならば(悩むが)買ってよいのではないでしょうか。これを推す大きな理由として、最も扱いやすい(USB型)という利便性だけではなく、最も入手しやすい(他のチューナーは入手困難)という現実的な問題もあります。
実のところ、私がこのメモを記すに至った経緯は、サーバの再構築を余儀なくされたことと、チューナの代替品が入手できたこと、そして最新の環境で動作上の不具合を確認したためです。PX-S1UDは品切れで、入荷しても、8000円とかだと買う気はおきません。といって、入手可能なときに入手しておかないと、あとで入手困難になる可能性があります。
おすすめはMyGica S270 で $18+$6.5 (Economy shipping).海外の英語サイトです。配送には時間がかかるかもしれません。購入日4/28、配達日5/6(追記)
カードリーダーについては、1000円程度で購入できるものが多数存在します。安価な製品を購入して正常に動作しなかったとしても、大きな損失にはならないでしょう。
もし、信頼性を重視されるのであれば、定番のSCR3310 v2.0(3000円弱)を選択するのが妥当ですが、こちらも品薄となることがあります。ただこちらは他用途があるため廃れるとは考えにくい。高価な製品を無理に購入する必要はありません。
おすすめはノーブランド品・498円で購入。動作確認済み
アンテナや分配器は、使用中のテレビから信号を分けて利用する際に必要となります。信号の強度によっては、分配器ではなく分岐器を使用する方が適切な場合もありますし、場合によってはブースターが必要となる可能性も考えられます。しかし、ブースターは比較的高価なため、そのような状況に陥った場合は、受信環境を見直すか、諦めるという選択肢も検討すべきでしょう。
予算的に、最も問題となるのはPC本体です。メディアサーバーは、自己ホスト可能なサーバーの中では、リソースを大量消費する部類に入ります。できれば、よいものがほしい。が、市販のnasneが3万円程度で販売されていることを考慮すると、この手の作業を初めて試される方が新規に購入される場合、2〜3万円程度の価格帯を目安に考えるのが妥当な線ではないでしょうか。
細かいことを言い出すとキリがないのでしょうが、スペック的に気にするとすれば、まずストレージ容量でしょうか。動画は編集後でも1時間で2GBとかになります。1TBで約3週間分なので、まぁ500GBはほしい。CPUは、ハードウェアトランスコードしない(もしくはよくわからない)ならCeleronでもいいか、すこし贅沢?して、Intel N100、Intel i3〜i5、もしくはRyzen 3など、といったところでしょうか。
追記:遠隔地に置きっぱなしにするならWake on LAN (WoL) が欲しい。わたしはスマートプラグで代用しているが。
追記2:おすすめ増設手順
1. まず最小構成 mini PC + PX-S1UD1本で試してみて
2. 気に入ったら、S1UD増設+セルフパワーハブ(第23回)
3. さらに PCを1台追加 (第25回)
わたしはmini PC x2 + S1UD互換機 x3 で安定運用しています(常時稼働、数か月間再起動なし)。
自己ホストするメリット
教育的
Linuxによるデバイス情報処理の一連の流れが学べる。Linuxでは、物理的なハードウェアは /dev ディレクトリ内のデバイスファイルとして表現されます。例えば、カメラモジュールやセンサーからのストリーミングデータも /dev/video0などのデバイスファイルから読み取り、通常のファイル形式に変換可能です。
カメラモジュールで取得した動画データをFFmpegでMP4ファイルに変換するコマンドは以下のようになります。
ffmpeg -f v4l2 -i /dev/video0 -c:v libx264 output.mp4ファイル化してしまえば、あとは自由と責任の新世界が開けます。
実用性
自動予約録画
キーワードや正規表現による予約スケジュール設定(例: JCOM以外の映画)
自動編集・整理
録画の空き時間にバックグラウンド処理(CMカット、mp4変換、フォルダ分け)
クロスプラットフォーム
自動分類された録画動画をGoogle TVやスマホで視聴。予約も視聴も基本的にスマホ以外不要
放送時間2時間の映画は編集後は1時間半程度と、新幹線や航空機での移動など、くつろげる空き時間と同程度になります。個人的には、未視聴のテレビ録画をスマホにダウンロードして有意義な時間つぶしになった経験が、生活の質(Quality of Life, QOL)を変える驚き体験でした。メディアサーバーは生活習慣を変えます。自分で自動録画しておいたテレビ番組ばかり観るようになり、ネット配信動画をみる機会が激減しました。
プライベートな視聴環境を、とことん楽にする。そのために必要な、裏方の作業工程を、初心者にも理解できるように、ていねいにたどるのが本稿の目的です。



コメント