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デジタル庁GCASガイド

ガバメントクラウド概要解説_6 必須検討事項

2023/09/22 公開

本書はガバメントクラウド利用者のためのドキュメントです。
参照利用は自由ですが、質問・コメントは利用者に限定させていただきます。

6.1 モダンアプリケーション化

ガバメントクラウド利用組織は旧来のアーキテクチャを単純移行するに留まらず、マネージドサービスやコンテナ、サーバレス、マイクロサービスなどを活用してモダンアプリケーション化を検討すること。モダンアプリケーション化の検討において、SaaS利用は開発量の削減に繋がるため強く推奨される。ただし、SaaS利用が無条件に推奨されるわけではない。利用者数の段階的な増加が見込まれる場合等、運用段階でSaaS利用料が高額となるケースもあるため、ライフサイクルコストの観点から真にコスト削減効果が発現するかを慎重に評価する必要がある。例えば、SaaSと同様の機能をマネージドサービスで実現することが可能であれば、ライフサイクルコストの観点から両方式を比較して十分に評価すべきである。

移行パターンについて、ガバメントクラウドでは「図 6‑1 ガバメントクラウドへの移行パターン」を想定しており、このうちRebuildをモダンアプリケーションと考え、Replatformは2段階移行における第一段階としての一時的なものと考える。

また、ガバメントクラウドへの移行時にはR1(Replatform)、R2(Rebuild)ともに、従来型のPCに専用のクライアントソフトウェアをインストールするクライアント・サーバー方式はWebシステム(マイクロサービス型やフロントエンド・バックエンド分離型等)に変更することを原則とする。そのため、シンクライアント(以下、シンクラ)、Virtual Desktop Infrastructure(以下、VDI)、Desktop as a Service(以下、DaaS)は原則として使用せず、同技術を必要としないWeb接続のセキュリティ対策を実施することとする。特にガバメントクラウド上でのVDI構成やDaaSの利用は行わない。但し、R1(Replatform)、R2(Rebuild)共通として、以下については例外とする。

  • ガバメントクラウド上でのシンクラ、VDI、DaaS利用における例外ケース(R1・R2共通)
    • 組織内の既存の標準端末がシンクラ、VDI、DaaSであり、標準端末からガバメントクラウド上の利用システムを使う場合。
    • モダン化が予定されているが、それまでの間にオンプレミスで構築したVDI環境等の継続が困難であり、ガバメントクラウド上のDaaSを暫定的に使用することが合理的とガバメントクラウド管理組織で評価される場合。
    • クライアント・サーバー方式等によるPC内のデータ保護が目的ではなく、サービス利用、サービス連携等の手段としてVDI、DaaSの利用がCSPから推奨されており、他に技術的な選択肢がない場合。
図6-1 ガバメントクラウドへの移行パターン:クラウド移行の3つのパターン(R1 Replatform、R2 Rebuild、R3 Repurchase)を比較した表とシステム構成図。R1(Replatform:アプリ一部変更移行)は、アプリケーションの変更を最小限にクラウドのマネージドサービスを活用する方式。基本形では運用・セキュリティ・RDB・ストレージをマネージドサービス化し、バックアップやログの退避先はオブジェクトストレージを利用。構成図は、AP層とDB層の上にStorage、運用/Security、Networkの各層を重ねた4層構造。R2(Rebuild:アプリ再構築移行)は、アプリケーションを変更してクラウドサービスをフル活用する方式。基本形1はマイクロサービスアーキテクチャへの変更、基本形2はフロントエンドとバックエンドを分離してAPI化し、イベントドリブンアーキテクチャでバッチ数を極小化する方式。構成図は、基本形1が3つのマイクロサービスコンテナを並列配置、基本形2がAPI層とDB層の上にStorage、運用、Network/Securityの各層を重ねた構造。R3(Repurchase:SaaS利用移行)は、既存アプリをoff-the-shelfで使えるSaaSへ置き換える方式で、構成図は記載なし。

図 6‑1 ガバメントクラウドへの移行パターン

6.1.1 バッチ処理のモダン化

クラウド移行により、システムリソースの制約からの解放やマネージドサービスの活用によって、以下の効果が期待できるため、従来のバッチ処理の在り方を再考すること。

  • コスト削減
    • クラウドではオンデマンドでのリソース確保が可能となり、バッチ処理用のシステムリソースを常時確保する必要がなくなるため、コスト削減が可能
    • 高額なバッチ処理管理用のミドルウェアからクラウドのマネージドサービスに変更することでコスト削減が可能
  • サービス提供価値の向上
    • システムリソース制約の解放やイベントドリブン型への変更を通じて、バッチ処理タイミングの見直しを行うことにより、利用者や関連システムへの情報連携、情報提供の間隔を短縮することが可能となり、サービス提供価値を向上することが可能
  • 作業工数の削減
    • バッチ処理のタイミングに応じた運用業務を見直すことで、通常業務時間外の運用の削減が可能
    • 各種マネージドサービスを活用し、自動化を推進することで作業工数を削減することが可能

利用組織はクラウド移行による制限の解放(ストレージ容量、物理サーバ、ミドルウェアの機能、外部システム連携など)の観点でバッチ処理の在り方を見直し、クラウドに最適化されたバッチ処理を検討すること。

図 6‑2 バッチ処理の見直しとクラウド最適化: バッチ処理のクラウド移行における判断フローと最適化方法を示す図。左側に「移行するバッチの種類」として、業務要件(所定タイミングでの処理が必要、他システムとの連携、データベースの整合性保持)、技術要件(リソースの負荷分散)、その他(慣例的にバッチ処理としている)の5つの要件と具体例を表形式で示している。中央に「見直しの観点」として4つの判断ポイント(単純移行とクラウドリソースを無駄に消費しないか、ファイル配置等のイベント検知で開始可能な処理が定時開始されていないか、外部データの取り込みがAPI等で常時取得が可能か、オンデマンドにリソースを利用できることでオンライン処理できるか)を配置。右側に「クラウド最適化方法」として、各判断ポイントに対応する4つの最適化方法(マネージドサービス化、イベントドリブン化、オンライン化、オンライン化(計算機のオートスケール)、オンライン化(ストレージのオートスケール))を示し、それぞれのコスト削減効果やサービス価値向上効果を赤字で強調している。左から右への矢印で、要件から見直しの観点を経て最適化方法へと至る判断の流れを表現している。

図 6‑2 バッチ処理の見直しとクラウド最適化

6.1.2 システム間連携のモダン化

クラウドネイティブ化が進む中で、複数のシステムを連携し、迅速に業務処理を遂行することが求められるケースが少なくない。そこで、データ/処理/アプリケーションの連携を考慮しつつシステムの統合や連携を図る必要性がある。システム間連携を行うことで業務スピードの向上、業務正確性の向上、データ統合による全容の可視化、データ管理のコストの削減といったメリットを期待できる。従来の基本的なシステム連携のパターンとしては、ファイル転送、ディスク共有、データベース共有、RPCやWebサービスなどのアプリケーション連携、メッセージングなどであるが、これらの連携方法のアーキテクチャは互いのシステムの依存関係が強く密結合しているケースが多く、1つのシステムの障害や変更の影響が全体に及びやすい。そのため比較的規模の小さいシステム間の連携に向いている。一方でガバメントクラウドにおいてはモダン化の観点からAPI連携の使用を推奨する。

6.1.3 運用監視のマネージドサービス化

モダン化の第一段階として、運用監視のマネージドサービス化は必須となる。まずは、運用監視においては、ログベースアラートや通知設定で運用監視を自動化し、ジョブ管理においては、CSPから提供されるマネージドサービスの利用を検討すること。

なお、時間がなく改修費用を賄えない場合等(ただし、次期更改時のマネージド化は必須)については、少なくとも、監視やログ収集、バックアップといった運用監視はマネージドサービスを利用した上で、ジョブ管理においては、AWSであればEC2を利用したジョブ管理サーバを構築することは可能である。この場合もジョブ管理以外の監視はマネージドサービスを活用すること。

6.1.4 移行パターンR2でのアーキテクチャ見直し

移行パターンR2(Rebuild)ではアプリケーションを変更しクラウドサービスをフル活用したアーキテクチャとして、2つの基本形と例外形を定義しており、それぞれのアーキテクチャにおける検討事項を示す。
なお、移行パターンR2におけるコンピュートサービスはサーバレス、コンテナを用いることを前提としている。
加えて、このR2のアーキテクチャを採った場合でも、クラウドの柔軟性を活かし、定期的にシステムのスコープ見直しや技術進歩に伴う改修、BPR等を行い、システムの統廃合やSaaS・共通機能の利用を検討すること。

(1) 基本形1(マイクロサービスアーキテクチャ)

マイクロサービスとは、対象となるアプリケーションをコンポーネント分割して開発を行うアプローチやアーキテクチャを指し、システムをマイクロサービスアーキテクチャへ移行することによって以下のような利点が得られる。

表 6-1 マイクロサービスアーキテクチャの利点

利点説明
高い変更容易性他のコンポーネントとの独立性が担保されたマイクロサービスアーキテクチャは、CI/CDとの親和性が高く、新機能のリリースやロールバックが容易となる。
開発サイクルの改善マイクロサービスアーキテクチャでは、コンポーネントの分割単位で小規模のチームを組成することが望ましく、これによりチームメンバのサービスへの理解向上やきめ細かな権限付与を実現し、より自発性、俊敏性が高い開発サイクルへ促すことが可能となる。
高い耐障害性特定コンポーネントに障害が発生しても、他のコンポーネントとの独立性によりアプリケーション全体がダウンすることを回避できる。
柔軟なスケールアプリケーション全体をスケーリングさせず、高負荷状態のコンポーネントのみを迅速にスケールアップ・スケールアウトさせることができ、突発的な需要増へも対応が可能となる。

従来システムアーキテクチャではリリースに係る調整コストがシステムメンテナンスに係る人件費の増加要因のひとつであったが、マイクロサービスアーキテクチャを採用することにより、コンポーネントごとのチーム組織やデプロイとなるためリリースに係る調整コストの低減も期待できる。

  • マイクロサービスアーキテクチャの基準
    システム企画を進めるうえで、マイクロサービスアーキテクチャであるかどうかについて一定の仮定を置き検討することが必要と想定される。そのため、便宜のため、以下に基準を示す。

表 6-2 マイクロサービスアーキテクチャの基準

#基準備考
1マイクロサービス化するアプリケーションが何であるか、それを達成するコンポーネントを構成図に示せる状態であること。
下図であれば、アプリケーションをコンポーネントAとBに分割し、それぞれのコンポーネントでデータベースを分割している。
用途の異なる業務が混在していることが判明した場合、環境単位で分離すること。
2コンポーネントが互いに疎結合であること。独立してデプロイできること。
下図であれば、コンポーネント間はAPIで連携し疎結合化しているため独立した変更を行える。
疎結合とはコンポーネントごとに別チームで開発・デプロイが進められる状態を指す。
実際にチームを分けるべきという趣旨ではない。
3コンポーネント単位で調達が分れている、もしくは同じ調達であっても開発チームや開発スプリントが分かれており、並行開発が可能であること。
下図であれば、開発チームやスプリントがコンポーネントA、Bで分かれており独立して開発が行える状態。
アーキテクチャとして左記が可能な状態をマイクロサービスというのであり、実際に行うべきという趣旨ではない。
4各コンポーネントの開発チームの人数は10人以下であること。アーキテクチャとして左記が可能な状態をマイクロサービスというのであり、実際に行うべきという趣旨ではない。
5各コンポーネントが、それぞれビジネス側の体制分けに合致していること。行政機関職員という性質上、本基準の達成が難しい場合は必ずしも遵守することはない。

補足説明:
上記基準2~5のうちチーム体制やシステム要件などの観点とのトレードオフで実現が困難がある場合、基本形1で明確化する構成図上のコンポーネントにて下記の点を明らかにし、今後の見直しに向けて計画する必要がある。

  • 具体的に達成できていない個所
  • トレードオフの背景と内容
  • どういった契機で見直し、どういった方向にしていくか
ガバメントクラウド利用システムのマイクロサービス化該当部分を示すシステム構成図。接続元からAPIゲートウェイを経由し、マイクロサービス領域内のコンポーネントA・Bがそれぞれ専用DBに接続。外接システムとも連携し、開発体制としてチームA(調達A)とチームB(調達B)が各コンポーネントを担当

図 6‑3 マイクロサービスアーキテクチャ構成例と基準マッピング


(2) 基本形2(フロントエンド・バックエンド分離)

フロントエンド・バックエンド分離型Webシステムは、ユーザーインターフェース(フロントエンド)とデータ処理やサーバーサイドロジック(バックエンド)が明確に分離されているアーキテクチャのことを指し、分離することによって以下のような利点が得られる。

表 6-3 フロントエンド・バックエンド分離の利点

利点説明(「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」 再掲)
高い再利用性これまで画面生成に埋め込んでいた同じコードの繰り返し再利用による無駄(開発規模の肥大化)を解消でき、開発コストを削減できる。
開発規模の適正化利用者体験(ユーザーエクスペリエンス)を踏まえた全体アーキテクチャ検討の後に、UX 設計をワイヤーフレーム(画面レイアウト)まで具体化したフロントエンドを作成することで、真に使いやすいシステムにできる。使いやすいシステムは多階層の大規模な画面構成とならないため、開発規模の適正化(開発コスト削減)にも寄与する。
高い変更容易性フロントエンドとバックエンドを API によって独立させ、疎結合にすることで変更に強いアーキテクチャとなる。画面表示の修正はフロントエンドのみの修正、業務処理の修正はバックエンドのみの修正となり、将来の改修時の改修対象が限定、極小化され、保守費用が削減される。
通信量やサーバ負荷の軽減分離型にすると、バックエンドではインタフェースが API のみとなるのでアーキテクチャがシンプルになり、画面処理もなくなるのでセッション情報の維持なども減る。また、これまでサーバー側で処理していたレンダリング(画面生成)をクライアント側で行うので、サーバー(クラウド)側に必要なコンピュートリソースも少なくなってコスト削減につながる。更には、クライアントとサーバー(クラウド)間の通信も最小化され処理の高速化、ネットワーク負荷の軽減にも寄与する。
ガバメントクラウド利用システムの構成を示すシステム構成図。左側に「接続元」として、スマートフォンとパソコンのアイコンが配置されている。接続元から右方向に矢印が伸び、「フロントエンド」の枠内にある「SPA」に接続している。SPAからは双方向の矢印が接続元に戻っている。SPAからさらに右方向に矢印が伸び、「APIゲートウェイ or ロードバランサー」を経由して、「バックエンド」の枠内にある「サービス」に接続している。サービスの右側には「DB」(データベース)が配置されている。図の下部には「マネージド」という灰色の帯が横断している。全体は「ガバメントクラウド利用システム」という大きな枠で囲まれている。

図 6‑4 フロントエンド・バックエンド分離構成例

また、複数の異なるシステムやサービスに対して共通機能や蓄積データを提供するシステム(一般的にAPI連携基盤、認証基盤、データ連携基盤、分析統計・データレイクシステムと称されるシステムを念頭に置く)は、必ずしもユーザーへ提供する業務機能や業務画面を有しているわけでなく、かつ必ずしもマイクロサービスアーキテクチャが相応しいとは限らない。
このようなシステムであっても、管理用の画面や機能などのフロントエンドがある場合においては、R2基本形1・2に沿った実装を行うこと。
管理用の画面や機能などのフロントエンドを全く有さず、かつ、マイクロサービスアーキテクチャが適さない場合においても、R2基本形2のバックエンド部分に準じた構成を行うこと。その際、バックエンドは適切な粒度まで機能分割をすること。

(3) 例外

R2例外は以下状態のシステムを念頭に置く。

  • 統廃合やSaaS利用、共通機能の利用へ切り替えなどによって将来的に廃止となるシステム
  • 将来のアプリケーション改修を経てR2基本形となるシステム

また、システム企画を進めるうえで、R2例外の「長期塩漬けシステム」や「今後の運用コストが極小のシステム」かどうかについては一定の仮定を置き検討することが必要と想定され、便宜のため以下に基準を示す。なお、政府情報システムを念頭に置いた記載となる。

表 6-4 R2例外 基準

R2 例外基準
長期塩漬けシステム• ガバメントクラウド移行に係る整備費用が1,500万円以下を目安とし、アプリケーション改修はシステムの脆弱性発覚やバグによる改修に留まり、外的要因による改修が想定されないシステムのこと。
• その上で、費用対効果を見て、統廃合時期を明確にした上で現行基盤を維持し廃止を行うことや、SaaS利用、共通機能利用をするなどを検討していること。
運用経費が極小のシステム• 移行前において、年間のシステム運用経費が400万円以下であること。
• システム自体のスコープを見直し、今後のシステム統廃合やSaaS利用、共通機能利用を目指しており、プロジェクト計画書にその方針と時期の記載があること。
• なお、上記の金額については、全ての政府情報システムの4~5年分の運用経費を概観し、統計的に割り出したものであり、あくまでシステム計画に活かしていただくための目安である。そのため、数万円の高低を確認する趣旨で設けたものではない。

6.2 データの可視化

ガバメントクラウド利用組織は利用システムの成功を判断するために、KPIの達成状況を計測・追跡するためのデータの可視化を検討すること。

利用システムとして成功しているかどうかの基準を数字で定義表現し、その数字を計測できるよう元となるデータを収集・加工・可視化を行う。たとえば、実際の利用者が増えることがそのシステムの成功とする場合、毎日の利用ユーザー数が増えていくことを数字で表現することを考え、その日ログインしたユニークユーザー数をアクセスログの収集・分析して算出し、グラフとして可視化する。毎日または週次の運用でこのグラフを確認し、必要に応じて改善策等を検討する。

日次のユニークユーザー数というKPIはデジタル庁にも共有し、デジタル庁としてもシステムごとのKPIの数値を収集し、ガバメントクラウド全体での統計的分析に利用する。KPI情報の共有方法については別途定義し、GCASの運用に伴い順次整備を進めていく。

デジタル庁の管理アカウントと複数のガバメントクラウド利用組織の関係を示すシステム構成図。管理アカウントから各利用組織へデータが集約され、利用組織から管理アカウントへデータが閲覧される双方向の関係性を表している

図 6‑5 データの集約と閲覧

データの可視化はオンプレミスの常識に囚われずに以下のような観点で抜本的に見直すこと。

  • サービス/アプリケーションとしてのKPIとコストを監視する
  • 不必要なアラートを発砲しないため、インフラの監視は原則実施しない
    • サービス/アプリケーションとして監視する
  • 1ヶ月遅れの状況を見ても意味がないため、Word/Excelで月次運用報告書を作らない
    • 準リアルタイムに状況を可視化するダッシュボードを用意する
  • 運用監視要員の貼り付け(常駐)を前提としない
    • 手順化できるものは自動化できるため、すべての監視とその対応を人間不要の自動化する
  • Word/Excelの月次報告書を成果物や納品物として定義しない
    • 報告する側と報告を受けるだけの側に役割を固定せず、ダッシュボードで一緒に監視していく
    • 監視項目や可視化は運用中つねに相談しながら見直していく
    • 報告書が不可欠の場合は、ダッシュボードを報告書として整理する

可視化したデータを運用監視に活用する際は表 6‑5のようなオンプレミスとスマートなクラウド利用の違いを意識して活用すること。

表 6-5 運用監視に関するオンプレミスとスマートなクラウド利用の違い

異なる点運用監視への影響理由オンプレミス型監視を維持することによる悪影響
クラウドではリソースを即時(秒〜分)に用意できる中長期的なリソース監視は不要

→サーバごとのCPU使用率やディスク使用率などの月次運用報告書は不要
3ヶ月前や半年前にリソース不足傾向を把握しなくても、不足しそうになったら調達や搬入設置なしで即座にリソース追加変更可能。適切なマネージドサービスを使えば、CPUやストレージ容量は無限に使える(正確には無限ではないが、基本的に意識する必要なし)CPU 100%はむしろ有効活用している証拠中長期的なリソース監視報告をやり始めると、逆に、CPU利用率が低くリソース縮小してコスト削減すべきものを見逃す低利用率のCPUこそ監視すべきだが、月次報告ではなく、クラウドサービスとして空きリソースを発見しアラートする機能があるのでこれを使うべき
クラウドでは、インフラ構成の追加変更は自動化できるリソース監視アラートは必須ではない

→アラート上げてもよいが、それよりも対応の自動化が重要
リソース不足を検知したらリソースの追加を自動でできるため、人手を介する必要がなく人がリアルタイムにリソース不足を知る必要がないリソース追加や削減イベントの発生だけ事後的に把握すれば負荷状況などわかるため有用(リアルタイム監視ではない)リソース監視アラートをあげると、それを見張る要員が必要になり、対応の手順等を用意していくことになり、運用費用増加の原因になる
クラウドのマネージドサービスでは、インフラが落ちたか意識する必要がないインフラ単体での障害報告や月次報告でのインフラ障害状況報告は不要

→サービス/アプリケーションとして 利用できない状況にならないことが重要で、インフラ単体の障害の監視は意味がない
インフラ単体で障害が起きても自動で切替や復旧するよう構成し、サービス/アプリケーションとして利用できない状況にしないことが重要マネージドサービスを使えば、インフラの障害は見えないインフラ障害報告を月次報告書として出すと、1ヶ月前の障害の調査や整理に時間使い、大事な未来の対応に時間を割けない
クラウドではインフラ稼働データは自動で集まる監視システム構築は不要

→データは自動で集まるので、網羅的 なリソース監視一覧の作成は不要で、どういうデータをどう見せたいかに頭を使う
クラウドでは、監視サービスが標準で稼働しており、かつ他サービスと最初から連携されており、設定なし、または簡単な設定でCPU使用率等稼働データが収集保管される監視設計は大きく変わり、監視一覧の作成ではなく、何をどう見せたいかから設計する監視システム構築費用が無駄監視設計も大きく変わるため、クラウドに適した監視設計をしないと、こちらも工数が無駄になる

なお、データの可視化に関しては、各CSP利用ガイドの「定量的計測の実装方法」を参照のこと。

6.3 クラウドに適したディザスタリカバリ環境

クラウドのディザスタリカバリ(以下DRと称す)環境は、オンプレのような本番環境と同環境を用意する考え方と違い、データコピーの容易性、環境構築の俊敏性、リソースの柔軟性等、クラウドの特徴を活用し検討することに加え、DR環境のリージョンで利用できるサービスに不足がないことを確認しながら設計することが必要となる。また、関東圏全域といったリージョン全域にわたる大規模災害(以下大規模災害とする)への対策を想定するか否かもシステムアーキテクチャ、システム構成、及びコストに大きな影響を与えるために重要な要素となる。

ガバメントクラウドでは4つのDRパターンを定義しており、基本的にはこのパターンに従い、コスト効果の高いパターンを選択する。4つのDRパターンは、図6-6のとおり、

  1. 大規模災害を想定しないが、コスト効果が高く冗長性を担保したマルチゾーンパターン
  2. 大規模災害を想定し、データをクラウドの機能で遠隔保管することで発災時もデータを保護できコスト効果の高いバックアップパターン
  3. コストはかかるものの災対リージョンでは縮小構成を保持しておき被災時には災対リージョンで稼働を続けるウォームスタンバイパターン
  4. コストをかけてでも被災時にサービスを変わらず継続する必要のあるアクティブ-アクティブパターンである。

職員向けシステムや、一部領域や地域の国民向けサービスは、基本的にパターン(1)または(2)になり、広く国民向けサービスのうち、停止すると国民生活に影響のあるもののみ(3)または(4)を検討することになると想定する。

なお、各CSPにおける具体的な実装方式は、各CSPマニュアルを参照すること。

災害復旧レベル(Level 1~3)ごとのRPO/RTO、バターン、概要、構成パターンを示した対応表: 災害復旧レベルを4段階に分類し、それぞれのRPO、RTO、パターン、概要、システム構成を示した表。Level 1はバックアップパターン(RPO:数秒~日次、RTO:数時間以内~24時間)、Level 2はウォームスタンバイパターン(RPO:数秒以内も可能、RTO:数分~数時間以内)、Level 3はアクティブ-アクティブパターン(RPO/RTO:数秒以内)で構成される。

図 6‑6 DR環境の構成パターン

ただし、システムの複雑化と高コスト化の要因となるため、パブリッククラウドが全面的に利用不能となるレベルの災害を想定する場合を除き、オンプレミスを災害対策用に利用することは避けることとする。

6.4 クラウドに適したバックアップ

オンプレミスではアーカイブ、レプリケーション、世代管理などをバックアップソフトウェアやジョブ、運用で実現するケースが多かったが、クラウドではマネージドサービスを活用することで、バックアップに係る機能を容易に実現できるため、コスト削減(バックアップソフトウェアが不要になる、余分なストレージ容量が不要になるなど)や作業工数の削減が期待できる。

なおCSPが公表している耐久性などのSLAは、満たされなくても返金処理されるだけとなり、消失したデータが復旧する訳ではないため留意すること。

表 6-6 バックアップ要件毎の実現例

要件種類クラウドでの実現例
「法令・監査」
法令順守や監査の方針(期間、場所、保護など)に沿ってデータを保管したい
データ• データの利用頻度に応じたアーカイブストレージを活用することでバックアップのコストを最適化する
データ• マネージドサービスにてデータをリージョン間コピーすることで遠隔地へ保管する
データ• マネージドサービスにて意図的なファイルの削除や更新を防止することで過剰なバックアップを抑止する
「操作ミス」
ユーザの誤操作によるデータ消失から復旧させたい
データ• オブジェクトバックアップにおいて、マネージドサービスにてバージョニングを行う
システム• データベースのシステムバックアップにおいて、マネージドサービスにて特定時点へのリカバリを実現する
「災害対策」
大規模災害時にシステムを継続させたい
システム• マネージドサービスにてsnapshotやマシンイメージをリージョン間コピーすることで遠隔地でのシステム継続を可能とする
「ソフトウェア障害」
ソフトウェアの障害などにより遡って復旧させたい
システム• マネージドサービスにてsnapshotやマシンイメージを取得する
システム• データベースのシステムバックアップにおいて、マネージドサービスにて特定時点へのリカバリを実現する
「ハードウェア障害」
ハードウェア故障時にシステムを継続させたい
-• ハードウェアはCSPの責任範囲となるため、ハードウェア故障時の検討は不要
• ハードウェア故障によりソフトウェアに異常があった際は「ソフトウェア障害」のために取得しているバックアップで対応する
「クラウド以外への保管」
データ消失に万全の対応が必要(年金データなど)
データ
システム
• クラウドとオンプレミスをプライベートネットワークで接続し、クラウドとオンプレミスにデータを保管する

6.5 オンプレミス-クラウド間のハイブリッド構成

クラウドとオンプレミスを組み合わせてデータを処理・保存する利用形態(オンプレミス-クラウド間のハイブリッド構成)については、オンプレミスからクラウドへの移行期、データの多重バックアップ、ネットワーク遅延が許容できない場合を除き、システムの複雑化と高コスト化の要因となるため、その適用を避けることとする。ガバメントクラウドにおけるオンプレミス-クラウド間のハイブリッド構成の許容方針を表 6-7に示す。

表 6-7 ガバメントクラウドにおけるハイブリッド構成の許容方針

類型構成の詳細許容方針備考
オンプレミスから段階的移行オンプレミスから段階的にガバメントクラウドへ移行するよう構成する。未移行分がオンプレミス、移行済み分はクラウドとなる許容• 将来的なガバメントクラウドへの移行が、プロジェクト計画書において計画されていること(2段階移行)。恒久的にオンプレミス環境が残存することは「ネットワーク遅延が許容できない場合」「データの多重バックアップ」を除いて認められない
• PoCを行う事例も移行計画の一部として実施される範囲においては、当類型に当てはまるものとする
データの多重バックアップガバメントクラウド上のデータをオンプレミスへバックアップするよう構成する許容• 高頻度で実施するものではなく、年1回等、複数あるデータバックアップの1つとしての補助的な利用にとどめる
• オンプレミス上のデータをガバメントクラウドへバックアップするような、ガバメントクラウドをバックアップの保管先としてのみ利用することは想定していない
ネットワーク遅延が許容できない場合ネットワーク遅延が許容されない部分はオンプレミスで構成し、他はガバメントクラウド上で構成する許容• 外部システムと数msec以下のレイテンシー通信を求める場合に本構成を検討する
機密情報保護機密性の高い情報をオンプレミスで配置し、他はクラウドで構成する原則禁止• ガバメントクラウドでは、「3.2 対象システム」で定めるシステムに関して、機密情報保護を目的としたハイブリッドクラウド構成を想定していない。ただし、ガバメントクラウド上への機密情報の保管は、所属する国の行政機関や地方公共団体のセキュリティポリシーに準じて検討すること
クラウドの部分適用オンプレミスの現行システムを維持しつつ、一部をクラウド化する原則禁止• オンプレミス部分が責任範囲の異なる外部システムである場合は含まない
<例>
• 閉域網はオンプレミス、インターネット部分はクラウド
• 基幹系はオンプレミス、情報系はクラウド
クラウド環境単独で構成不可クラウド環境単独でサービス提供ができず、オンプレミス側と協調してひとつのシステムを構成する原則禁止• 一部機能がオンプレミス上の構成が必須としているなど、サービスの全てをクラウド上に構築できない場合を想定
• オンプレミス部分が責任範囲の異なる外部システムである場合は含まない
災害対策クラウドサービス被災時、オンプレミスで縮退運用する構成とする原則禁止・ガバメントクラウドでは、ディザスタリカバリ環境をクラウド上に構成することを想定している
・パブリッククラウドが全面的に利用不能となるレベルの災害を想定する場合はその限りではない

6.6 クラウド最適を実現するためのCSP選択の在り方

前節ではオンプレミスとクラウド間のハイブリッド構成について述べた。本節では、複数のCSP間での構成(マルチクラウド)について方針を示す。

6.6.1 マルチクラウド構成の基本方針

可用性や冗長性の確保を目的とした1つのシステムで複数のCSPを利用するマルチクラウド構成は、コスト増加や運用の複雑化を招くため推奨しない。真に必要な場合を除き、原則禁止とする。

6.6.2 マルチクラウドを許容するケース

一つのシステム内でも、特定用途においては異なるCSPの利用も一部想定される。例としては、データ分析やAIサービスの利用時に主たるCSP環境のサービスで要件を満たせない場合等が挙げられる。また、システムの一部としてのSaaSの活用は積極的に検討すること。

なお、異なるシステム間の連携において、データ連携や業務要件により、複数のCSPを利用することは問題ないものとする。

6.6.3 データ可搬性の確保

PJMOの判断にて将来的なCSPの変更の可能性を考慮する必要がある場合は、システムやデータの可搬性について考慮に入れておくことが望ましい。

CSPの変更を可能とする構成の検討においては、アプリケーションやシステムの可搬性に加え、データの可搬性の確保も必要である。逆に、アプリケーションやシステムだけを可搬にしても意味はないため、データの可搬性含めてトータルでの考慮を行う。CSPの変更は、数カ月から数年かけて行うことになることが想定されれるため、その前提での可搬性を検討する。

なお、本項における「データ」とは、アプリケーションが利用する業務データ(構造化データ、非構造化データ、設定情報、メタデータ等)を指す。経済合理性や事業戦略に応じた柔軟な対応を実現するため、以下の点を考慮すること。

  • データの可搬性を確保した設計を行うこと
  • 運用中においてもデータ可搬性を維持できる仕組みを整備すること
  • SaaS利用時においても、契約終了やサービス変更に備え、データのエクスポートや移行手段を確保すること

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