言語学者としてコメントします。要点は
・元ポストの「15分の会話で「まぁ」が92回」は、通常の2倍。
・「フィラーが多い=準備不足・自信がなさそう、致命的」は状況次第。
・「「まぁ」「なんか」を使いたくなったら一呼吸おく」は、無理筋?
以下、連投します。数字は最後に挙げる参考文献です。
Jan 17, 2026 · 4:43 PM UTC
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フィラーを多用するのはよくない、という意見は自然なものでしょう。「えーっと、まぁ、何て言うか、そのー、今回の、おー、件は」という発話は、確かに耳障りです。元ポストにある「営業やコンサルなど」の方がそのように話し始めると印象がよくない(「致命的」)というのは、よく理解できます。
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一方、それぞれのフィラーには言語的な意味があり、談話の中で一定の機能を果たしているのだ、という研究があります[1,2]。言語学的に見れば「フィラー=悪者」と一概には言えない、という立場です。もちろん、私もその側に立ちます。
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水野さんの「フィラーを出す人間を評価しない、という流れには一言語学徒として全力で抗っていかねばならない」というのは、もちろん私も賛成なのですが、元ポストを丁寧に読み解くと、少し違う問題として捉え直せそうです。
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問題は、どういうフィラーがどのくらい使われると耳障りに聞こえるか、という点でしょう。これは「リスナビリティ」の問題とも言えます。少なくとも言語学の中では、あまり研究されていない分野だと思います(実験的にやれそうですが)。
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『日本語話し言葉コーパス』約20時間分(SPSコア)を検索すると、225,079語中3,648の「ま(ー)」が見つかりました。全語数中、1.62%の出現率です。元ポストの「15分の会話で「まぁ」が92回」は、CSJの平均値(188.6語/分)で計算すると、2,829語中92回で、3.25%。ちょうど2倍の出現率ですね。
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元ポストの「15分の会話」で出てきたフィラーは「まぁ」だけではないでしょうし、元ポス主の方が「フィラー(特にまぁ)が多いな」という感じたこと自体は頷けます(「気になりすぎて話の内容が頭に入ってこない」はどうかなと思いましたが)。
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「フィラーを使わない方がよい場面」があるのは確かです。お坊さんの読経で「あのー、南無妙法蓮華経」と言ったり、ニュースのアナウンサーが「今日、えーっと、夕方」と言ったりするのは不自然です[2]。「営業やコンサル」も、お客様に対してフィラーを連発するのは不適切、という点は首肯できます。
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一方、その営業やコンサルの方がお客様から相談を受けた際に、「あー、なるほど、えーっと、そうですねぇ」と言うと、むしろ親身に相談に乗っている感じを出せます。フィラーを使って「一緒に悩んでみせる=親切な態度を示す」という方略です(これは定延利之先生が主張なさっていることです)[1,2]。
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とすれば、むしろ「適切なフィラーを適切な場で適切に使う」テクニックを磨くことが、営業やコンサルにとっても得策でしょう。「フィラーが多い=準備不足・自信がなさそう、致命的」というのはあくまで状況次第で、それほど単純には割り切れないでしょう(元ポス主の方もそう考えていると思います)。
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ただ、元ポストには「改善のコツ」として「「まぁ」「なんか」を使いたくなったら一呼吸おく」とありましたが、「無意識の口癖」であれば、「使いたい!」と意識する前に口から出てしまうでしょう。これは無理筋。また、10秒に1回「一呼吸」があると、むしろ途切れ途切れの印象になりそうです。
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自身のフィラーをコントロールする技術は、訓練すれば身につきます。その点、「フィラーが多いから採用不可」というのは極端では? 採用してから教育すればいいだけでは? と思ってしまいました。多くの人がコメントしているように、フィラーの多寡だけで人の才能を判断するのは間違いです。
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また、日本語学習者にフィラーや延伸を交えた話し方(「えーっと、今日はぁ」など)を教えると、より自然な日本語に聞こえる、という研究があります。学習者にフィラーを教えるとは何事ぞ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ「自然な日本語」とは何か?を考えるべきでしょう[3,4]。
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さらに、AIによる合成音声システムにもフィラーや延伸、言い間違いや言い直しなどを混ぜることで、よりリアルでインタラクティブなインターフェイスが実現できる、という研究もあります。実際に聞いてみると、驚くほど「自然な」話し方に聞こえます[3,5]。
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これらは、「非流暢で自然な日本語」という発想です。非流暢な発話こそが自然である、という見方で、近年、定延利之先生の科研プロジェクトで研究が進められています[3]。以下、参考文献を挙げておきます。まずは目次だけでも見てみてください。
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[1] 定延利之・田窪行則(1995)「談話における心的操作モニター機構 ―心的操作標識「ええと」と「あの(ー)」―」『言語研究』108.
※ 現代のフィラー研究の嚆矢となった論文。
jstage.jst.go.jp/article/gen…
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[2] 定延利之(2005)『ささやく恋人、りきむレポーター ―口の中の文化』岩波書店
※ フィラー以外にも話し言葉の面白ネタが満載。導入に最適。品切れなのが残念。
iwanami.co.jp/book/b257700.h…
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[3] 定延利之ほか編(2024)『流暢性と非流暢性』ひつじ書房
※ 定延科研プロジェクトの集大成(のひとつ)。非流暢性を多角的に分析しています。
hituzi.co.jp/hituzibooks/ISB…
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[4] 鎌田修ほか編(2022)『日本語プロフィシェンシー研究の広がり』ひつじ書房
※ 「非流暢で自然な日本語」のテーマでまとめた、定延科研プロジェクトの成果(のひとつ)。
hituzi.co.jp/hituzibooks/ISB…
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[5] 「非流暢に話す」とは? 京都大学・定延先生に“非流暢性”の研究とその先にあるものを聞いた。
※ ウェブ記事です。非流暢な合成音声も聞けます。
hotozero.com/knowledge/kyoto…
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[6] 『日本語学』2025年 12月号 冬号(特集:フィラーの働き)
※ フィラーの特集号。もう一つの特集と合わせて、超豪華執筆陣。
meijishoin.co.jp/book/b66437…
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[7] 水野太貴(2025)『会話の0.2秒を言語学する』新潮社
※ 我らが「ゆる言語学ラジオ」水野さんの著書。非常に優れた筆致で、読者を話し言葉の世界に引き込みます。超絶おすすめ。
valuebooks.jp/bp/VS006335223…
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