なぜ借金が多いのに、格付けが高いのか

第1章:日本国債の「最大リスク」は何か

序章で確認した通り、多くの人が抱いている不安は「日本の借金は多すぎるのではないか」という感覚だろう。確かに、日本の政府債務はGDP比で見れば世界でも突出している。この数字だけを切り取れば、「危ない」と感じるのは自然である。しかし、この直感は、国債の信用がどのように評価されているかという仕組みを正確には捉えていない。

現実には、日本国債は現在も主要な格付け会社から比較的高い評価を維持している。S&Pグローバル・レーティングやムーディーズ・レーティングスは、日本を「いつ破綻してもおかしくない国」とは見ていない。ここに、多くの人が感じる違和感が生まれる。「借金がこれほど多いのに、なぜ格付けは高いままなのか」という疑問である。

この疑問に答えるためには、まず格付け会社が何を見ていないかを理解する必要がある。彼らは、借金の絶対額そのものを直接評価していない。評価しているのは、その国が将来にわたって国債の利息と元本を払い続けられるかどうか、すなわち返済能力とその持続性である。これは企業の信用分析とまったく同じ発想だ。借金が多い企業でも、安定した売上とキャッシュフローがあり、資金繰りに不安がなければ、必ずしも信用が低いとは見なされない。国家も同様なのである。

「国債」と書かれたニュースの見出し
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日本国債が「今は」大丈夫なワケ

では、日本国債はなぜ「今のところ」信用を保っているのか。その理由は、日本の財政や金融の構造にある。国債は自国通貨である円建てで発行され、その多くを国内の金融機関や投資家が保有している。加えて、国債の平均残存期間が長いため、金利が上昇しても利払い負担は一気に増えない。こうした条件が重なり、日本は「借金は多いが、資金繰りが極めて安定した国家」として評価されてきた。

しかし、ここで重要なのは、「今は大丈夫だ」という評価が、無条件の保証ではないという点だ。格付け会社が最も警戒しているのは、突然の破綻や急激な危機ではない。彼らが恐れているのは、もっと静かで、しかし決定的な変化である。それは、「この国は、なぜ借金を増やしているのか」「その借金は将来の成長や税収につながるのか」という問いに、政府が説得力をもって答えられなくなる瞬間だ。