進撃の巨人の(未解明)の伏線をいまさら振り返る2
「いってらっしゃい エレン」
これは最序盤に張られて、最終盤で回収された伏線だ。回収したとはいえ、それによって、新たな謎が提示される形になった。
まるで、タイムパラドックスが起こったのか、パラレルワールドが存在するかのような描写だ。最終話を目前にして、大きな謎が提示されて、驚きと戸惑いを覚えた読者も多いだろう。
この謎解きは、最終話でなされる。エレンは最終決戦の前に、「道」で仲間たちそれぞれと出会っていたが、みんなその記憶がない。始祖の巨人は、エルディア人の記憶を操作できるので、その力を使ったのだろう。
最終決戦の直前まで、ミカサがエレンと出会っていた記憶がないことから、終尾の巨人となったエレンは、アッカーマンの記憶も消すことができるようだ(リヴァイの記憶も当然消している)。
「道」の中では、ミカサがエレンに一緒に逃げるよう誘ったことになっているが、これはエレンが記憶を操作した結果だろう。そう思わせるように仕向けたのか、そうしたという記憶を植え付けたのかは分からないが、2人は「道」の中で数年、「余生」を過ごしたことになる。
回想シーンの直後、記憶が蘇ったミカサは、エレンが口の中にいると言い出す。なぜ、そんな事を知っているのかと不思議に思うが、「道」の中で、エレンがミカサに伝えたというのが、素直な解釈だろう。
とすると、エレンは「道」で、ミカサに真実を伝えたのか、一時的にでも記憶を取り戻させたことになる。エレンは自分の本体の場所を教え、自分を討つよう言ったのだろう。それまでのミカサであれば、決して承諾しなかったはずだ。
しかし、「道」の最後でミカサは、「いってらっしゃい エレン」と言っている。これは「道」から現実に戻ることを差していると思われる。エレンが旅立つことを認めたかのような、この発言は、ミカサがエレンを討つことを承諾したということだろう。
第1話でエレンが見た記憶は、この時のミカサの言葉だったと思われる。エレンはこの時点では進撃の巨人を継承していないので、未来の記憶を見ることはできないはずだ。しかし、始祖の巨人の力は時間を越えるということなので、自分で自分にこの記憶を見せたことになる。
エレンがこの記憶を見せたのは、ミカサが自分を討つことに同意した、つまり自分が殺されるという結末が決まったから、物語をはじめていいと言うメッセージだったのだろう。
進撃の巨人とは、徹頭徹尾、エレンで始まりエレンで終わる物語だったのだ。
二千年後の君
最初、エレンがユミルと出会った時、彼女が待っていた「誰か」とはエレンだったかのように描かれている。しかし、最終話まで来ると、その誰かとはミカサだったことが示唆される。
アルミンと話している時点で、エレンが「ミカサが何をするのかは…わからない」と言っていることから、「道」で出会ったのは、アルミン、ミカサの順なのだろう。
この時点のエレンには、ユミルの意図やミカサの決断はわからないが、最後まで読んだ読者には、漠然とその理由は察せられる。
実際には、ユミルはフリッツ王をかばったはずが、最後のコマではフリッツが討たれている。ユミルはフリッツを愛したがために、奴隷のように従って、巨人の力をエルディア人に与えてきた。
ユミルとフリッツの関係は、そのまま、ミカサとエレンの関係に当てはまる。エレンを盲目的なまでに愛するミカサだが、最後にはエレンを愛するが故に、エレンを討ち取ることになる。
ユミルは自分にできなかったことを、ミカサに望んだ。それは、愛による束縛から「自由」になることだったのだろう。
エレンが「道」で出会った相手
エレンはミカサとアルミン以外にも、自分と親しくしていた相手に、「道」で別れを告げている。本編にその描写はないが、他にエレンが出会ったと思われる相手がいる。それはヒストリアだ。
エレンがヒストリアに会ったという、明確な描写はない。しかし、エレンがコニーに母親が元に戻ることを告げたのなら、同時に保護するように、ヒストリアに頼んだ可能性は高い。
そして、もう一人、エレンが会ったと思われる相手がいる。ハンジだ。
ハンジが仲間を逃すために、超大型巨人の足止めをするシーンで、死んだと思われたハンジが生きていたかのような描写がある。しかし彼女の周りにいるのは、すでに死んだ調査兵団の仲間たちだ。素直に読むと、ハンジがあの世で仲間たちに会ったように思える。
ここでアルミンが言うように、ハンジも「夢でも、幻でも、死後の世界でもない」ところにいたのなら、そこは「道」である可能性が高い。
アルミンも「道」で地鳴らしで蹂躙された大地を目の当たりにしている。ハンジがいる地面も超大型巨人の足跡が残っているが、これは現実ではなく、「道」の世界なのかもしれない。エレンがハンジと「道」で出会って、ハンジが目的を達成した世界を見せることは、ミカサに駆け落ちした世界を見せたのと同じように、可能なのかもしれない。
その他の細かな伏線
地鳴らし
壁の巨人が歩き出すことを示唆する伏線。アルミンは一斉と言っているが、文字通り、全ての壁の巨人が歩き出すことになる。
それが兄貴ってヤツだろ
ここでの、ジークが「それが兄貴ってヤツだろ」という言葉は、兄弟関係一般に対する感想だと取れる。しかし、その後、エレンと兄弟関係にあることが明らかになり、自分とエレンの関係と対比させての言葉だということがわかる。
一番下のコマで、ポルコが沈黙しているが、彼も自分の兄のことを考えているのだろう。このページだけで3組の兄弟関係についての伏線が張られている。
コルトがジークに叫びを使わないように頼み込むシーン。ジークはコルトの気持ちを理解するが、それよりも自分の弟であるエレンを助けることを優先する。左上のコマに、重傷のポルコが描かれているが、この直前に、兄であるマルセルの記憶が蘇って、兄の気持ちを理解している。
胸張って生きろよ
ヒストリアの「二度と胸を張って生きていくことができない」は、16巻で、ヒストリアが思い出した、ユミルの言葉から来ている。
ヒストリアが口にした「人類なんか嫌いだ!! むしろ巨人に滅ぼされたらいいんだ!!」という言葉が、エレンの地鳴らしの伏線になっている。
ヒストリアは口だけで言っているが、彼女が本来継承する始祖の巨人の力なら、実際にそれが可能だということも伏線になっている。
人類を救うのはアルミンだ
人類を救うのは、団長ではなくアルミンだとエレンが言うシーン。その人類の敵が、エレン自身ということが皮肉だ。
ただ、最終決戦を前に、アルミンが調査兵団団長を引き継いだことで、団長が人類を救うということが、間接的に正しかったことになる。このダブル・ミーニングはとても巧みだ。
捧げた心臓の…
エルヴィンの盟友のリヴァイが、捧げた心臓の行方について、仲間たちに告げるシーン。
最終決戦を前に、リヴァイが「心臓を捧げよ」とハンジにいうことで、リヴァイも「捧げた心臓」のことを気に留めていたことが分かる。
物凄く細かい伏線
自分で自分の背中を押した奴
エレンの「自分で自分の背中を押した奴」とは、普通に読めば、エレンが自分の意思でマーレを戦場にしたことを指していると思われる。しかし最終話まで読むと、別の意味に取れる。
エレンは未来の記憶によって、自分が引き起こし惨劇をあらかじめ知っていて、その通りに行動していることが判明する。そうすると、「自分で自分の背中を押す」が、現在のエレンが、未来のエレンの記憶によって背中を押されていると読むこともできる。
すると、「その地獄の先」というのが、地鳴らしによって起こる、最終的な物語の帰結を意味していることになる。
エレン・イェーガーは俺の敵じゃない
マーレで、ジークとエレンが相対したシーン。素直に読めば、自分の方が強いと宣言しているように取れる。しかし、その後、エレンとジークが共謀していたことが判明する。すると、このシーンはダブルミーニングにも取れる。
(表の意味)エレンは俺には敵わない
(裏の意味)エレンは俺と敵対していない
人か? 巨人か?
序盤に張られている伏線。エレンが巨人だったことが判明して、尋問を受けるシーン。銃口を向けられて、追い詰められている点も含めて、全く同じシーンが最終話に登場する。30巻も前に伏線が張ってあったことに驚かされる。
序盤では説得に失敗したアルミンが、最終話では説得に成功することが感慨深い。
人類は一丸となり争い事をやめるだろう
序盤、まだ壁外に人類が生存している事を知らない状況での会話。この会話をしているエレン自身が、その後、全人類の敵となるというのが皮肉だ。
強大な敵=終尾の巨人(エレン)に追い詰められて、なお、争うことをやめられない人間たち。
伏線、伏線、伏線
今回、細かな伏線について解説したが、探せばまだまだあるだろう。もしかして、作者しか知らないような伏線もあるかもしれない。
以下、紹介したページが載っている巻。



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