ベネズエラ大統領拘束、米当事者らが明かす作戦の内幕
(CNN) まるでテレビを見ているようだった。
ホワイトハウスが公開した複数の写真やX(旧ツイッター)上のライブ映像によると、トランプ米大統領はその時、フロリダ州の自宅「マール・ア・ラーゴ」のカーテンで仕切られた部屋にいた。自分の視聴用に設置されたスクリーンの周囲で、側近らと身を寄せ合いながら、高度な訓練を受けた米陸軍特殊部隊デルタフォースの兵士たちがベネズエラの首都カラカスにあるマドゥロ大統領の自宅に突入する様子を見守っていた。マドゥロ氏は妻と共に就寝中だった。
マドゥロ氏はすぐに拘束された。鋼鉄で補強された安全な部屋へ逃げ込もうとしたが、失敗に終わった。
数カ月にわたる作戦は、こうして劇的に幕を閉じた。作戦の策定に携わった者たちにとって、その最終目標はかねて明確なものだった。それはマドゥロ氏を権力の座から排除することだ。トランプ氏は作戦の過程で予期せぬ結果が生じる可能性や、米国が長期の戦争に巻き込まれる可能性について懸念を表明していたが、最終的にあらゆる不安を脇に置き、クリスマス前の数日間で作戦の実行を承認した。
天候が回復し、作戦に最適な条件が整ったのは、それから1週間以上経ってからだった。米東部時間の2日午後10時46分、大理石とオニキスの買い出しを済ませ、マール・ア・ラーゴのパティオで夕食を楽しんだ後、トランプ氏は最終的なゴーサインを出した。
「幸運を祈る」。マール・ア・ラーゴに集まった国家安全保障の当局者たちに、トランプ氏はそう告げた。そして「神のご加護を」と続けた。
間もなく、米軍のヘリコプターが漆黒の海面から30メートルの高さを滑るように飛行し、カラカスへ向かった。その数時間後、マドゥロ氏は米当局の拘束下に置かれた。トランプ氏が3日未明に自身のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿した写真には、手錠をかけられ、灰色のスウェットパンツ姿で遮光ゴーグルを装着するマドゥロ氏の姿が写っている。
米軍に拘束されたベネズエラのマドゥロ大統領とみられる画像/From President Donald Trump/Truth Social
トランプ氏は同日会見し、米国が当面の間ベネズエラを「運営」すると宣言。驚くほど詳細を明かさぬまま、「地上部隊の投入」も辞さない姿勢を強調した。
米国は20年以上にわたって血みどろの海外介入を繰り広げてきた。それに反発することで自身の政治運動を推進してきた面のあるトランプ氏にとって、今回の攻撃は際立った方針転換となる。トランプ氏は今後の課題にほとんど言及せず、代わりにベネズエラの膨大な石油埋蔵量へのアクセス確保に焦点を当てた。またマドゥロ氏の同調勢力が権力移譲を拒否した場合には、より強力な米軍の投入も排除しない考えを繰り返し強調した。
攻撃後数時間のうちに、議会スタッフや大統領側近を含むワシントン周辺の情報筋は、今回の行動の長期的な影響について懸念を表明した。懸念は米国の国家安全保障にまつわる内容と、トランプ氏が受けかねない政治的な影響の両面に及んだ。現在支持率の低下に見舞われるトランプ氏を支える有権者らは、米国の海外への介入をあまり好まない層が基盤となっている。
準備は数カ月がかり
今週トランプ氏に同行してフロリダ入りしたのは、マドゥロ氏に対する圧力強化のキャンペーンを主導するルビオ国務長官とミラー大統領次席補佐官だ。作戦開始の数時間前には、トランプ氏と夕食を共にする姿も見られた。3日にトランプ氏が勝利を宣言したときも、両氏はその場にいた。
この襲撃の準備は昨年12月半ばに始まったと、計画に詳しい関係者がCNNに語った。しかし、その構想自体は数カ月前に打ち立てられていた。9月初め、ベネズエラから麻薬を運搬していたとされる船舶に対する米軍の最初の攻撃が行われるその前から、マドゥロ氏を権力の座から追放する計画はすでに動き出していた。
対ベネズエラ作戦遂行中のトランプ米大統領(右)と側近らの様子/From President Donald Trump/Truth Social
米国がカリブ海地域の軍事力を明確に増強し、軍艦その他の物資を移送する一方で、別の増強が密かに進行していた。8月、米中央情報局(CIA)はベネズエラ国内に小規模なチームを密かに配置し、マドゥロ氏の行動パターン、所在、移動を追跡。この情報により、同氏の正確な所在(就寝場所を含む)を把握し、3日の作戦を成功に導いたと、計画に詳しい情報筋がCNNに明らかにした。
ケイン統合参謀本部議長は3日、当該のチームがマドゥロ氏の「移動経路、居住地、旅行先、食事内容、服装、ペットの種類」を把握したと述べた。
作戦内容を説明された情報筋がCNNに明かしたところによると、そうしたアセットにはベネズエラ政府内部で活動するCIAの情報源も含まれる。同情報源はマドゥロ氏の拘束に先立ち、その位置と移動経路の追跡を通じて米国を支援した。
詳細なタイムラインと、CIAのチームがこれほど長い間ベネズエラ国内で活動していたという事実が明らかになったことで、過去数カ月にわたるマドゥロ氏への圧力キャンペーンに新たな光が当てられた。米政府高官は当初、公には「政権交代が(圧力の)目的ではない」と表明していた。
「ほぼ最後通告」
マドゥロ氏を追放する計画が策定されていたにもかかわらず、ホワイトハウスの高官2人がCNNに明かしたところによると、多くのホワイトハウス当局者はここ数週間、同氏が自発的に辞任する可能性に期待を寄せ続けていた。
ある当局者は、昨年11月のトランプ氏とマドゥロ氏の電話会談で、トランプ氏がマドゥロ氏に対し「辞任して国外退去するのが最善の策だ」と繰り返し強調したと説明。この会話が「ほぼ最後通告だった」との見方を示した。
ルビオ国務長官は3日、「一点だけ明確にしておきたい。ニコラス・マドゥロにはこの事態を回避する機会が何度もあった」と主張。「極めて寛大な提案が複数提示されたにもかかわらず、彼は野蛮人のように振る舞い、ふざけた行動を選んだ。その結果が今夜目撃された事態だ」と述べた。
ある当局者はCNNに対し、12月初旬まで米政府はマドゥロ氏の支持基盤に亀裂が生じ始めたと確信していたと明かした。しかし時間の経過とともにその確信は薄れ、作戦計画が開始されたという。
ある当局者によれば、トランプ氏は12月下旬に作戦を承認したが、その時点で決行には至らなかった。ベネズエラの現地の天候やクリスマスのナイジェリアへの攻撃をトランプ氏が決断したことなど、複数の要因が絡んだためだという。
攻撃の条件が整う
ケイン氏は3日、作戦は「数カ月」に及ぶ計画と訓練の集大成だとし、軍と情報機関をまたぐ150の航空機と要員を動員したと述べた。
トランプ氏が作戦開始を承認すると、米軍機は西半球の20基地から離陸を開始した。これらの航空機は防空システムなどのベネズエラの地上目標に精密攻撃を実施。移送チームを乗せたヘリコプターがカラカスへ向かうのを援護した。ケイン氏によれば、米軍は空と地上で作戦を展開する部隊の進路確保のため、サイバー戦の戦術も投入したという。
ヘリコプターは現地時間午前2時、カラカスにあるマドゥロ氏の邸宅に到着した。到着後、ヘリコプターは銃撃を受け、1機が被弾したが飛行可能な状態を維持した。米国は防衛のため反撃した、とケイン氏は付け加えた。
ケイン氏によれば、マドゥロ氏と夫人は米軍要員に「投降」。国外へ移送された。計画に詳しい複数の情報筋がCNNに明かしたところでは、マドゥロ夫妻は米軍艦「イオージマ」に乗船し、米軍グアンタナモ湾基地に寄港した。
キューバ南東部に位置する同基地でマドゥロ夫妻は飛行機に移され、3日の夜に米ニューヨーク州スチュワート空軍州兵基地に着陸した。
「迅速さと激しさ」
トランプ氏はマール・ア・ラーゴの部屋で軍将校たちと共に、この複雑な拘束の模様をリアルタイムで見守った。
政権の高官らと共に対ベネズエラ作戦について記者会見するトランプ米大統領(手前)/Jim Watson/AFP/Getty Images
後のFOXニュースへの電話の中でトランプ氏は、作戦の様子を「文字通りテレビ番組を視聴するように見ていた」と明かした。
その上で作戦が行われる際の「迅速さと激しさ」に言及。このような驚異的な任務を遂行できるのは米軍以外にないと付け加えた。
一方、米国がベネズエラを「運営する」具体的な構想についてはほとんど触れなかった。トランプ氏は同国のロドリゲス副大統領が「ベネズエラを再び偉大にするために必要なことを実行するだろう」と自信を見せたが、ロドリゲス氏本人は2時間後に声明を発表し、自国が作戦によって「野蛮な攻撃を受けた」と訴えた。
ここまで数カ月がかりで計画を練った作戦ではあったものの、実際に遂行した後の展開は驚くほど不透明なものとなっている。
CNNから「独裁者を追放する米国の過去の取り組みが必ずしも成功していない点を考慮に入れたか」と問われると、トランプ氏は自分は他の大統領とは違うとの考えを示した。
「それは別の大統領たちの話だ。私の場合は違う」「私の下では無敗記録が続いている」(トランプ氏)