【そもそも解説】トランプ氏、なぜマドゥロ大統領とベネズエラ標的に
ベネズエラの首都カラカスで3日未明に複数の爆発があり、米国のトランプ政権が地上攻撃を命じたと報じられた。ベネズエラのマドゥロ大統領は、「米国による軍事侵攻を拒否する」との声明を出し、全土に非常事態宣言を発した後、拘束されたとされる。そもそも、なぜトランプ大統領はベネズエラを標的にしているのか。
表向きの理由は? なぜ拘束?
表向きの理由は、2期目の大統領就任直後から強調している「麻薬流入対策」だ。トランプ氏は、中南米から米国に密輸される麻薬によって「米国の若者が毒されている」と問題視し、「この闘いには容赦しない」と宣言している。トランプ氏は、かねてベネズエラのマドゥロ大統領が「麻薬組織を先導している」と批判し、米司法省は麻薬密輸の罪で起訴していた。昨年8月には、拘束につながる情報提供に5千万ドル(約78億円)もの懸賞金を出すと発表した。
9月以降には行動を本格化させた。「麻薬運搬船」とみなしたベネズエラなどからの船舶をカリブ海で25回攻撃し、少なくとも95人の乗組員を殺害したとされる。
だが、米国に海路で入る麻薬のほとんどはカリブ海経由でなくコロンビアやエクアドルが位置する太平洋経由。それでもカリブ海側のベネズエラ船を狙い、米軍が攻撃・殺害を繰り返す手法に、トランプ氏の本当の目的はマドゥロ政権の転覆だとの見方が強まっていた。
アメリカとベネズエラ 対立はいつから?
両政権の確執は、1999年に就任したチャベス政権から続く。2013年に就任したマドゥロ氏は、反米的な姿勢や強権的な政治手法を引き継いだ。
これに対し、米国はブッシュ政権の05年からベネズエラへの制裁を始め、オバマ、トランプ、バイデン政権も人権侵害などの理由から制裁を行ってきた。
トランプ氏は、1次政権の時にベネズエラの野党指導者グアイド氏を暫定大統領として承認し、支援していた。だが、グアイド氏が蜂起を呼びかけ、マドゥロ政権転覆を狙った軍事クーデターは失敗に終わった。
その間も、マドゥロ氏の強権化は進み、18年には野党候補を排除した大統領選挙を行い、24年には一方的に勝利宣言を行って3期目に就任した。だが、欧米諸国をはじめ、多くの国がマドゥロ政権を承認していない。25年のノーベル平和賞が、ベネズエラで民主化運動を続ける野党指導者のマリア・コリナ・マチャド氏に贈られるなど、マドゥロ政権に対する国際的な圧力は強まっていた。
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- 【視点】
マドゥロ拘束を受けて、昨年度ノーベル平和賞を受賞した野党指導者マリア・コリナ・マチャドや周辺の人物が、ベネズエラの新たな指導者となる可能性がすでに論じられ始めている。 しかし様々な懸念が残る。マチャドが長年抑圧的なマドゥロ政権と戦ってきたことは事実だが、その平和賞は論争も呼んできた。ワシントン政界と長年関係を持ち、米国による軍事介入をマドゥロ政権打倒の突破口として歓迎する姿勢を示してきたからだ。12月中旬、ノーベル平和賞受賞を受けて米CBS のインタビューに出演したマチャドは、マドゥロ政権打倒のために行われるベネズエラへの軍事行動は、いわゆる「体制転換」ではなく、「愛ある行動」であり、批判されるべきではないと強調し、あたかも軍事介入を促すかのようであった。 トランプ政権のベネズエラへの軍事介入については、麻薬流入阻止は表向きの理由で、親米政権の樹立により石油利権やビジネス利権を得ることが真の目的ではないかとも疑われる。マドゥロ政権による抑圧に代わって、アメリカの帝国主義がベネズエラを支配することはあってはならない。
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- #トランプ再来
- 【視点】
今後、ベネズエラに民主主義をもたらすための行動だなどとトランプが軍事攻撃を正当化しようとすることがあったとしても、そのような主張は到底受け入れられない。民主主義は暴力使用を肯定するシステムではなく、選挙を通じた平和的な政権移行により、政府の正当性を保つシステムだからだ。軍事的な手段によってベネズエラを民主化させるなど、正当性はどこにもない。 トランプはそもそも、民主主義には興味がない。米国内で立法府も司法府もないがしろにして権力集中を図り、メディアや市民社会による言論・報道の自由を抑圧し、選挙の正当性を弱体化しようとする人間が、他国の民主化などに興味があるはずがない。ロシアと良好な関係を築こうとしていることにも、そのことがよく表れている。 厄介なのは、ベネズエラのマドゥロ政権にも正当性が無いことだ。選挙結果を否定して大統領の地位に居座り続けてきたことから、民主主義国との協力関係を模索する民主党にとっても、トランプ政権によるベネズエラ叩きはこれまで批判しにくいポイントであったはずである。ただし軍事攻撃で潮目は変わった。議会が明確にトランプ政権の軍事攻撃を問題と捉えることを望む。 イラク戦争以降、民主化支援分野は悪影響を受けてきた。ブッシュJr.政権がイラクに対する攻撃を、イラクを民主化するためのものなどと正当化したためである。本来は大量破壊兵器の開発と保有が争点であったにも関わらず、である。民主主義に興味などない政権が、民主化を口実に利用して他国を攻撃する。そうした行動は、日々コツコツと民主化支援のためにキャパシティ・ビルディングトレーニングなどを行っている援助分野の人々の活動とは完全に切り離された空間の人々が行っている行動である。 日本政府も、トランプの軍事攻撃を明確に批判しなければならない。米国による他国への軍事攻撃は、他国への軍事攻撃全般を正当化しかねない。超大国である米国が国際規範に与える影響は、他国の比ではない。ロシアのウクライナ侵攻を改めて正当化する結果となるのみならず、中国の台湾に対する軍事併合も招きかねない。
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