今回のインタビュー記事では、ストーリーインタビューの前半を掲載。なお、ストーリーインタビューの後編や発売後の反響やミーム化、バトルシステムなどに関しては別記事でインタビューしていくので、そちらも合わせてご覧ください。
岡本 基:コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)所属のプロデューサー。『サイレントヒル』シリーズ統括プロデューサーとして短編作品の『SILENT HILL: The Short Message』や、リメイク版『サイレントヒル 2』、『サイレントヒルf』などを手掛ける。
竜騎士07:ゲームクリエイター、シナリオライター。同人サークル“07th Expansion”の代表として『ひぐらしのなく頃に』(2002年)や『うみねこのなく頃に』などの作品を手掛ける。『サイレントヒルf』で、ストーリー制作全般を担当。
Al Yang:『サイレントヒルf』ゲームディレクター。本作の開発を担当するNeoBards Entertainmentに所属。
索引
閉じる――発売前から話題になっていた本作タイトルの“f”ですが、これにはどのくらいの種類の意味が込められているのでしょうか?
――意外と少ない印象ですね。では、ユーザーの間で予想された“f”のうち、とくに意外だった単語はありましたか?
――そもそもタイトルに“f”を付けたのはなぜなのでしょう?
そうしたら岡本さんに、「何の“f”だろう」というところから入る、1つ仕掛けのあるタイトルにしてもらえました。
でも、多くの皆さんが思っている“f”はちゃんと含まれていると思ってもらっていいと思います。
あと、上手に既存のセリフを配置して誤解させるところもでしょうか。順番が変わるだけでだいぶ違いますからね。今見ると本当に騙しが入ってるな、この予告って……本当によくできてました。
――トレーラー制作はどのように進めたのですか?
――ティザートレーラーでは、シリーズでこう象徴的な「トゥルルル」というメインテーマも流れていましたね。
“獣の腕”のシーンなどでは痛みの表現をごまかすことなく伝えたかった【サイレントヒルfインタビュー】
――“獣の腕”の儀式のシーンなど、本作は描写も踏み込んだものが多い印象でした。表現規制的にはスムーズに通ったのでしょうか?
これは読解力の問題ではなくて、人間の感性や性格によって、心の痛みの受け止め方が変わってくるからだと思います。ところが『サイレントヒル』という世界では、それを具象化して表現することによって、100人が100人その心の痛みを理解できるように描くことができる。それが私は『サイレントヒル』の一つのとても興味深い個性だと思うんです。
だから、あの世界で雛子が悩んでいることや痛みを表現しようとしたら、このぐらいの痛みが必要だというのを、私の方で強く提案させていただきました。審査機関が入ることはもちろん分かっていますけど、私の方からは審査機関の方々にも、この痛みの表現をごまかすことなく、マイルドな表現や逃げた表現を描いたら、彼女たちの痛みが伝わらない。だからなんとかこの痛みを伝えていただけないか、ということを言った記憶があります。結果的にはKONAMIさんの方で通していただけました。
KONAMIの長い歴史の中でも初めてではありますが、やはり踏み込んだ表現をすることが本作においては重要だという認識を持った上で、社内的にも理解していただいて、初めてのCERO Zレーティングで出させていただきました。
『サイレントヒル』ファンの“咀嚼力”と考察の深さに驚かされた【サイレントヒルfインタビュー】
――どこまでが現実世界で、どこまでが精神世界かという境目が曖昧なのも『サイレントヒル』シリーズの特徴ですが、本作ではファンの間でもどこまでが精神世界か考察が分かれている印象です。考察のヒントをいただければと思います。
少し私のファン向けの言い方をすると、“猫箱”の中身を内側からの光で透かされている影のように見て、想像していただければと思います。
――1周目エンドの警察無線で“20代女性”という描写がありましたが、あれがかなり重要になるのかなという気がします。
彼女にとって多分、人生の選択の大きな節目、もしくは自分の中で感じる人生の分岐路、よくも悪くも葛藤があったころが彼女の中では高校生ということで、ああいった描写になったのだと考えていただければと思います。
――嫁入りを迷う側の雛子が高校生というのは分かるのですが、嫁入りを決めた側の雛子も高校生の姿だというのが考察では迷うところだと思います。
――それはつまり、●●●●●●を飲んだ時期に関係が?
いろいろと話しているうちに、私が思っている以上に『サイレントヒル』の世界中のファンは顎の力が強いと感じました。どんな直球を投げても、必ず受け止めて噛み砕こうと挑戦してくれる。これは結構厳しめに勝負しても大丈夫だなと。とはいえ本気で勝負しすぎると今度は混乱してしまう人も現れてしまうので、そこは考えましたが。
『サイレントヒルf』には分かりにくい描写も入れ込んだつもりでしたが、それでもけっこう細かいところまで入ってきたり、私でもあえて具体的にしていなかった部分について、かなり高い解像度で考察してきている人もいらっしゃいました。やっぱり『サイレントヒル』のファンの方々を信じて良かったと思わされました。
――キャラクターごとに真相を読み解く動画が多数投稿されていますよね。
とくに海外には『サイレントヒル』シリーズのファンサイトが今もあって、古典の作品の今も色々議論して、その後に出た作品との関連を付けて色々意味合いを考えているところも見られます。そういうガッツのある方々に受け止めてもらえたことは、ものを送る、ボールを投げる側としてはとても嬉しいことだと思っています。
初期案では従来の『サイレントヒル』のように教団が暗躍するアイデアもあった【サイレントヒルfインタビュー】
――本作には宗教的な要素も入ってきますが、狐の嫁入りや付喪神信仰など、日本人は自然に理解できると思いますが、海外の方の反応はいかがでしたか?
ただ、岡本さんと初期案を考えるにあたって、日本を舞台にしている以上は、日本でしか書けないものを書くべきだと。それならばと、私はもうガッツリ稲荷信仰など、日本ならではの神話を取り込んでいこうという決意をしました。
もちろん、『サイレントヒル』シリーズファンなら海外の人たちも、神話もきっと咀嚼してくれるはずという、私からの期待や信頼もあります。きっと、彼らであれば受け止めてくれるという。
今回、舞台が日本になって、やはり八百万の神……多神教の世界なんですよね。ギリシャ神話や日本神話の神々は、どちらかというと人間に近い、感情を表すところが特徴的です。そこの宗教観の違いというところも含めて楽しんでいただけると。
一部、どうしても『サイレントヒル』の神はこういう神だ、と思う方がいらっしゃるとは思いますが、西洋の神と東洋の神は違うので、東洋の神の宗教観で作っているというところが、逆に“f”の特徴かなと思っています。
――神様同士の関係性や、民衆の信仰がどんどん移り変わっていくところは、なかなか海外の方からすると理解しにくいかもしれませんね。
日本の神様って別に人を助けようと思ってやっていないっぽいところがありますよね。敬ってくれるからリターンを返しているだけで、リスペクトがないなら「俺は知らないよ」みたいな気分。なんか神というよりも上位勢力に過ぎないというか。
――上位者というかクトゥルフというか、そんな感じですよね。
――かなり解像度の高い土着信仰をテーマにされていますが、どんな参考文献が?
あとは日本の古い神様って何だろうとか、私なりに色々解像度を上げていって、ああいう形になっていったのかなと。
――ロケハンのようなこともされたんですか?
『サイレントヒル』シリーズというのは舞台も一つの要素で、毎回ユニークなところで作られています。架空の街でももちろんありではありますが、やっぱり本当にある街というと、リアリズムが一つ違うんです。そういう造形はものすごく生かしてもらえたなと思いました。素晴らしいマップを作ってくださってありがたかったです。
―――実際に町中にも稲荷が多く、水周りも水神様や飲み水、生活用水や橋も多いです。30分歩くだけでも、ゲーム中の印象的なシーンがいくつか見つかりますよね。