このアルバムがセイレンというよりは、セイレンにおびき寄せられた自分の叫び、っていう感じです
●ファーストシングル「TOY$!」が出たときにはある程度、アルバムのことは頭の中に
あったんですか。
上杉さん:全然ないですよ。一歩一歩っていう感じで
●アルバムの形が見えてきたのは?
柴崎さん:10月ぐらいかな?
上杉さん:コンセプトを考えて作ってないですからね。結果的に、ここ最近の俺や柴崎の音楽性や発想、
考えが表現されてるんで、そういった意味での一貫性はあると思いますけど
●じゃあ、今あらためて気づいたことはあります?
こういうことを表現したかったんだな、とか
上杉さん:生への執着、じゃないですかね。・・・セイ、って言ってもいろんなセイがあるんですけど(笑)
●まあ、そうですね(笑)
柴崎さん:今まで、マキシを出すたびに、”破壊性と創造性とポピュラリティ・・・”とか言われてて、
へえ、と思ったんですけど(笑)こうやって曲を並べてみたら、作ってる時に思ってたよりも、理解される
範疇の広いアルバムになるかな、とは思いますね。
●そうですね。もっとズブズブにディープになるものになる可能性もあるな、と思ってたんですけど
結果的にはポピュラリティのあるロックアルバムになってると思います。
上杉さん:それは、この人(柴崎)のおかげだと思いますよ。僕はドロドロな人間なんで、泥んこ上ちゃん
と呼んでください(笑)
●(笑)まあそれを、簡単に”ポップ”と言っていいのかわからないんですけど
上杉さん:ポップという言葉は、あんまり好きじゃないです、俺は。なんと言われようがいいんですけど
個人的には好きじゃない。メロディアス、とか、そういう方が好きですね
●ホーンやストリングスも入ってますけど、基本的にはシンプルなスリーピースな音ですよね
柴崎さん:自分にできることをやってるだけなんですけど。ギターと歌のユニットなんで、ギターだらけも
アリかな、とも思って
●それと、歌詞の話なんですけど、特に1曲目の「Prologue」が、俺たちはこれからこうやって
いくんだ、っていう宣言に聴こえるんですよ。で、前とはこう違うんだ、とか、1曲ごとに確かめて
いってるように思えるんですね。
上杉さん:そうですね。自分がどんな存在なのか、自分が一番わかってなかったりするじゃないですか?
それを、曲を作るごとに確認しながら、抱えているいろんな苦悩の解決策を探していた、っていう感じ
ですね
●「自分のために歌う」というのがal.ni.coの最初のテーマだった、って言ってましたよね。でも
その過程で、「TOY$!」を出したあとに、ちょっと悩みの時期があったじゃないですか。あの時の
悩みは、時間がたって、アルバムを作ることによって、解消されたんですか?
上杉さん:「TOY$!」を出した時は、自分の中のパーソナルなメンタルな部分を吐き出す、
っていうのが大前提としてあって、極端な話、対外的な評価なんてどうでもよかったんですよ。
人がなんと言おうがどうでもいい、という感覚があったんですけど、どうでもいいと思いだしたら
周りに期待をしなくなって、そうこうしてるうちに、自分自身にも期待をしなくなっていたんですよ。
もう、音楽だけじゃなくて、いろんなことに対して、”だから何なんだよ?”って常に思うように
なっちゃって、目標、夢、希望をいっさい持てなくなっていたんですよね。・・・
本当に極端な話、メシを食おうと思って、電子レンジにチンしに行こうと思った時に、腹へってるんだけど、
何でメシ食わなきゃいけないんだ?って思って、でも食わなきゃ死んじゃうじゃん、って頭の片方では
言ってて、頭のこっち側では長生きしたからって何なんだよ?っと思ってたり・・・本当に、そういう
感じだったんですよ。どうにもならなくて、とにかくそこから抜け出さないと、っていう意識が
ものすごく強かったんで、「晴れた終わり」は必然的に、自分にとって必要なものだったんですね。
で、「晴れた終わり」を出して、ちょっと癒された部分があって、その時の自分を客観視できるように
なってきて「カナリア」ができて。
・・・それは、当初は「晴れた終わり」に対する答えを出そうと思ってたんですけどね。
その答えは、どの曲とは言わないですけど、アルバムの中に入ってるんですけどね
●ああ、それは気づかなかった。問いかける歌詞が多いから、まだ答えは出ていないのかな?
と思ってしまったんですが。
上杉さん:いや、あるんですよ。
●もう一度探してみます。じゃあ完璧かどうかは別にしても、何かひとつの答えを得たという
充実感は、今あるんですね?
上杉さん:そうですね。自分がロックキッズだった頃に”いつか、本当にロックを感じられる
アルバムを作れたらいいな”って夢に思い描いてたものが、10年たって、やっと形に
なってきたかな、って感じはしてます
●そして、アルバムタイトルの「セイレン」なんですが、これって、ローレライの伝説に
でてくる、あのセイレンですよね。
上杉さん:美しい歌声で船を遭難させちゃう人魚の、鳥バージョンなんですけど。顔だけ人間で
下半身が鳥で。音楽に影響を受けて、それを吐き出しる、というか・・・このアルバムが
セイレンというよりは、セイレンにおびきよせられた自分の叫び、っていう感じです。
●そういう、おびきよせられてしまうような強い大きな存在を意識してる、っていうことですか。
上杉さん:ロックって、中毒性がありますよね。ロック中毒になっちゃうと、けっこう危なくて・・(笑)
●つまりそれがロックってことですね。
上杉さん:そうですね。俺は、ロックというアートをやりたいんですよ。
柴崎さん:自分の感性や感覚を信じて、やっていくしかないですから。今何が流行っているのかな?
とか、そういう意識とは関係ないところで、聴こえてきたものを音にするっていうやり方で
やっていきます。
●現時点での、達成度はどのあたりですか。
柴崎さん:まだまだ、じゃないですかね。こんな時代だからこんなにいい音楽があったのか、という
ものがけっこうあったりするんで、自分のフィルターを1回通して作ってるという意味では、
自分らのオリジナルだと言うことはできるんですけど、それが過去にまったくなくて、最新鋭かどうかって
いうのはわからないし
●単純な最先端志向とは違うんですね。
上杉さん:俺は新しいものを作ろうと思ったら、ゲテモノ扱いされることを恐れてたら作れないと
思うんですよ。たとえば、最初に地球が丸いって言った人は、キチガイだって言われたわけじゃないですか?
だからそういうことを恐れずにやっていきたいなって個人的には思いますけど。でも不快なものは絶対に
作りたくないですから、自分で聞いて気持ちいいもの、ですよね。ちなみに今、チベットの音楽にすごく
興味があって、そういうワールドミュージックと言われてるものを、ロックに取り入れたいと思ってるんですけど
●そういう意味で、このアルバムでal.ni.coとしての自信が確立しました?
上杉さん:アーティストとしてはそうですね。ただショウビジネスのとして考えた時に、そこの
自信とはちょっと違うと思うんですよ。
●考えます?ビジネスのことを
上杉さん:一応考えますね。売れてやろうとかそういうことよりは、いい音楽なのに
どうしてこれが売れないのかな?とか、そういうことは考えます。人の曲を聴く時も
●で、ライブがありますね。この音がライブでどうなるのか、すごく楽しみにしてます。
柴崎さん:・・・当たって砕けろ、ですね(笑)
上杉さん:くだけて、そのままどっかへ行っちゃうかもしれない(笑)正直言って、
今は考えないようにしてます。当日考えますよ。