共有する感情
は、今の世の中、あふれているのかもしれない。けれど、そういったものに心奪われない、
いや、心奪われたくないと思っている上杉昇は明らかに不器用なタイプだった。
ストイックなまでに彼の音楽はの思いは一途で、その真摯な姿勢は音楽に対する愛情を
強く感じさせた。
●最近はどんな毎日ですか?
上杉さん:起きて食って寝て、起きて食って寝て・・って感じ(笑)
●あんまり外に出ないほう?
上杉さん:完全にインドア派ですね。出かける用事のない時はずっとうちでゴロゴロしちゃうほう
だから
●音楽聴きながら、うたた寝しちゃったりして?
上杉さん:そう。でも柴崎はオレよりもっと趣味ないみたいで、音楽しかしてないですね。
電話して”今何してた?”って聞いても、ちょっと(コンピュータに)打ち込んでたとか、
そういうことしか聞いたことないから
●柴崎さんと音楽以外のことで遊んだりしないんですか?
上杉さん:前に”雨音”って曲をウチで録ったんだけど、その時にテニス・ゲームをしたくらい。
同じゲームを持ってて、絶対これだけは負けないって言ってたし、オレも自信あったんで、
じゃあやろうって対戦したんですけど。ライヴやるのと同じくらい緊張して(笑)
で、俺が勝ったんですけど、柴崎はそれ以来、テニスゲームはやってないらしいです(笑)
●普段、2人でどんな話してるの?
上杉さん:基本的には音楽の話で、そこからふくらんで人生とは・・・とか、宇宙の果ては
どうなってるんだろうとか(笑)しょーもないことをタラタラと電話で
●最初に会った頃は、どんな話を?
上杉さん:柴崎の第一印象はスゲエ悪かった(笑)当時の僕は横須賀に住んでて、六本木の事務所
まで1時間半くらいかって。初めて会った柴崎に”電車で来たんだって?”って聞かれたから
”そうなんですよ。遠くて1時間半くらいかかっちゃって大変だった”なんて言ったら”あっ、そう”
ってそれだけで。もうちょっと”大変だったねえ”とかなんとか言ってくれよと思って(笑)
●愛想のない人だなあって?
上杉さん:そう(笑)
●でも長くつきあっていくうちにいいヤツじゃん、と思うようになっていくんでしょ?
上杉さん:うーん・・・
●そこで悩みますかね(笑)
上杉さん:なんだこの人は・・というのなら、いっぱいあるんですけど(笑)
うーん・・・。いいヤツじゃんと思ったことかあ・・・むずかしい質問ですね(笑)
●ちょっと心あたたまるエピソードとかないんでしょうか(笑)
上杉さん:あんまり親しくしてなかったからかな。それはでも、柴崎に対してだけじゃなくて、
周り全部に対して自分があまり心を開いてなかったからかもしれない
●だとすると、たとえば悩んだり、いらだった時とか、どうやってそれを解消してたんですか?
上杉さん:MTRとかに曲作ってブツけたりとかね。結構、自分の中で消化しちゃってたかな
●でも今は柴崎さんが音楽のパートナーなわけですよね?
上杉さん:ええ、WANDSをやっていく中で、音楽的に悩みだした頃から、それ以前はコミュニケーション
とるようになっていったから・・・柴崎はどちらかというとテクニック系のミュージシャンが好き
なんですよ。ギタリストでいうとスティーブルカサーとかマイケルランドーとか洗練されたタイプが好きで
自分はパンクとかハードロックのもっとがツーンとしたものが好きだったので、あまり音楽的な接点は
ないと思ってたんですよ。でも少しずついろんなことを話していくうちに、なあんだ柴崎もハードロック
が好きだった時期もあるじゃんとか、そういう自分との共通点みたいなところが分かっていってそこから
お互いもっと接点はないかなと探り合っていったようなそんな感じですね
●だけど、WANDSをやめた当初は柴崎さんと一緒に音楽をやるつもりではなかったんですよね?
上杉さん:まず大前提として、環境をリセットしたかったから。すべてのものから自分を解放することが
自分にとって一番重要だったんですよ。柴崎とまあた一緒にやることで、新たな枠組みをまた最初から
作るようなことはしたくなかった。枠組みのない、何もない中で音を生み出すことを、あまりにもそれまで
してなかったんです。柴崎との接点も、WANDSをやめた時点では今ほどはっきりとは見えてこなかった
こともあるし
●やめてからの表にでてない時期が柴崎さんとの時間ってところでいえば重要だったんでしょうか?
上杉さん:結果としてはそうですね
●上杉さんの作品に柴崎さんの手が加わることで、al.ni.coという形態が生まれるわけですけど。
なぜ柴崎さんと組んでみようと思ったんですが?
上杉さん:うーん・・・それぞれがひとりになって当初はソロ活動みたいなことをしてたんです
オレも実際にスタジオミュージシャンの人を頼んでレコーディングしてみたりして、自分の理想に
近いものもできたんですけど、そうでないものもあって。やっぱり、なかなかコミュニケーション
をとりにくい点もあったから。それを柴崎に頼んでみたら、意外にもこれがイケてるじゃんと
思えたんですね
●意外にも、なんですか(笑)
上杉さん:そうですね(笑)だから逆に言うと、そこで再発見があったというか。
それにやっぱり、つきあいが長い分”この曲はインドの葬式のイメージ”っていうだけで
すべてが伝わるってこともあったし
●以前とミュージシャンとしての理想って変化しましたか?
上杉さん:歌い始めた当初は、ヴォーカリストとしていろいろ歌いこなせるスペシャリストに
なりたいと思ってましたけど、今はヴォーカリストというよりも、アーティストでありたいという
意識ですね。歌うことに限らず、音楽を創る人間として、クリエイティブなものを通して自分っていうものを
残していきたいという意識が強くて。だから、より自分自身の内面を反映させるために、こういう道を
選んだわけで
●そういう上杉さんの気持ちを一番わかってくれたのが柴崎さんなんですね。
上杉さん:そうですね・・そこが、いいヤツじゃんと思ったところですね(笑)
●柴崎さんの音楽的才能は、以前から認めていたんでしょう?
上杉さん:うん。ギタリストとしての彼の洗練されたプレイにはクールさを感じてました。ただ、ちょっと
着眼点がマニアックで、素人が聴いても分からないようなところに彼のプレイ上のこだわりがあったから
それによって認められる部分もいっぱいあるんだけど、損してる部分もいっぱいあるなあとオレは感じていて
あれだけのテクニックがあって、ギターで歌えるようになったら、本当にコワイもんなしなのになあと
思ってたんだけど、最近徐々にギターが歌ってるというか、そういうことをやりだしてるから、これから
もっとすごいギタリストになるんじゃないかなと思いますね。顔はちょっとマルチナヒンギスなんですけど(笑)
●(笑)2人とも音楽さえ、ちゃんとやってればいいっていうタイプ?
上杉さん:そう。音楽バカのタイプというか
●他に何か趣味っていうか、何か見つけたいなあって思いませんか?
上杉さん:スポーツを観るのは好きですけど
●サッカーとか?
上杉さん:いや、プロレスとか。格闘技系が好きですね、K1とか
●だからって自分でボクシングをやってみようかとかは思わない?
上杉さん:思わないですね。オレ、中途半端にはできないんですよ。
やり始めて、本気になっちゃって、そっちが音楽より好きになったら怖いから始められないというか。
ほどほどの趣味で・・ってところで止めておけないと思うから
●やりだすと本気になっちゃいそう?
上杉さん:うん、負けず嫌いなんで・・・