【復刻】新房昭之×虚淵玄×蒼樹うめ×久保田光俊×岩上敦宏インタビュー①/TVシリーズ公式ガイドブック
2011年8月27日発売「魔法少女まどか☆マギカ公式ガイドブック you are not alone.」に収録されたインタビューの再掲です
MAIN STAFF DISCUSSION 1
監督・新房昭之×脚本・虚淵玄×キャラクター原案・蒼樹うめ×シャフト代表取締役・久保田光俊×プロデューサー・岩上敦宏
初期の構成案を今振り返ると
――『まどかマギカ』という企画は、新房監督の「魔法少女ものをやってみたい」という雑談が発端だったと聞きました。
新房 そのことを全然覚えていないんですよね。だから後で「あれ、岩上さんが最初に言ったんじゃないんですか」と聞いたら、「いや、違いますよ」と言われてしまった(笑)。
岩上 積極的に「魔法少女がやりたいんだよ!」ということではなく、「魔法少女ものというフォーマットには、まだ可能性があるはずだ」みたいなニュアンスでしたけどね。
久保田 確かそれが2008年あたりなんですよ。
岩上 そこから虚淵さんとうめ先生にも参加の相談をしましょう、という話になりました。その過程を覚えていないくらい、わりとすぐのことだったと思います。
――みなさんが初めて集まられたのは、いつごろだったのでしょうか?
岩上 そのころの資料や、メールの履歴を見てみると、2008年10月に最初の会議をやってますね。
蒼樹 私はそのときに、初めて虚淵さんと会いました。「ああ、パソコンでメモをとられる方なんだ」って思ったことを覚えています(笑)。
岩上 そこでいろいろと意見を出し合って、出た話を自分がまとめたんです。
虚淵 特に事前にアイデアを用意したりせず、その場で思いついたことを片っぱしから言ったんですよ。そうしたら「いいですね」「そうしましょう」とほぼ全て受け入れられてしまって、「まずい。今の思いつきを全部自分でプロットにしなきゃいけないのか」と慌てました(笑)。
――そういった打ち合わせは、何度か繰り返されたのですか?
久保田 いえ、最初の1回だけです。次の機会までに、虚淵さんが構成案をまとめてくれました。
虚淵 物語の最初はこう見せます、その次にこんな事実を明かします、最後にこの事実を明かしますという3段階くらいの大筋の仕掛けを出したんです。それをさらに割って1クール分の構成案にしました。ただその段階では、まだ6話から8話あたりの流れが曖昧だったはずです。今見返してみると、9話なんてひどいですね!
蒼樹 本当だ。「さやかが決定的に絶望する」って (笑)。
虚淵 とりあえずさやかをいじめておけという発想になっている(笑)。このころの考えだと、さやかが絶望するのは仁美のせいではなかったはずです。そこは実際に脚本にする段階で盛り込んでいった部分ですね。
――構成案だと、全13話なんですね。
岩上 「12話にならないですか」と相談したんです。各2話収録で全6巻という、パッケージを意識して。
久保田 話数は減りましたけど基本的な流れは変わっていないですね。3話でマミが死ぬことも変わっていない。
新房 なるほど。3話の脚本を読んだときにそれほど驚かなかったのは、あらかじめこの構成案を見ていたからなのかな。
蒼樹 文字だとそこまでショックじゃなかったというか。
新房 2クールだったらまた違った流れを見せられていたのかもしれませんね。2クールアニメだったらこんな展開になった、みたいな別バージョンをいずれやってみたいな。
虚淵 そのくらい話数があって、日常のシーンをもっと間に挟んでいければまた違ったんでしょうね。マミが死んだ次の回に何の脈絡もなく温泉に行ったり(笑)。そうしたら旅館の仲居さんにマミさんそっくりな人がいるとか。
岩上 余裕があったら描きたかったものもあるけど、このスピード感がよかったとも思いますよ。1クールで虚淵さんらしいジェットコースタームービーで行く、というイメージは、自分には最初からありました。
仮タイトルでは「魔法少女黙示録」
蒼樹 後で改めて1話から観ると、ヒロインがどんどん変わっていくような印象があります。4話以降はさやかと杏子の話で、終盤になるとほむらが一段と目立ち始めて。最後はまどかがちゃんと主人公になる。
岩上 キャラに関しては正直、脚本を読んでいる段階ではそこまで読み取れなかったんですけど、マミ編、さやか編、杏子編とか、オムニバス的なんですよね。ある意味では『化物語』のように、ヒロインの魅力を順番に見せていく構成になっていて、なるほどこうなっていたのかと思いました。
――ちなみに、主人公のまどかたちを中学生にしたのは?
岩上 小学生って、3次元だとアイドルではなく子役という印象になりますよね。でも中学生だとアイドルとして認識してもらえるので、観てもらいやすいかなと。だから虚淵さんのプロットが上がってくる以前に、前提として「中学生の魔法少女にしましょう」という話はしていました。
虚淵 それに、生きるか死ぬかの判断を、さすがに小学生にさせたくなかった(笑)。
――作品タイトルはどのようにして決まったのでしょうか?
虚淵 最初から、仮タイトルは自分の方で付けていたんですよ。確か『魔法少女黙示録 まどかマギカ』だったはずです。
岩上 しばらく仮タイトルの時点であった「まどかマギカ」という呼び名のままで企画を進めて、2010年になってから、ちゃんとタイトルを話し合ったんですよ。
虚淵 とはいえ、仮タイトルでみんな慣れてしまっていたので、そのままで行きましょう、と。でも「さすがに黙示録はやめよう」という話になって(笑)。そういえば「魔法少女」がつかず『まどかマギカ』だけにしよう、という案もありましたね。
新房 でも自分としては、タイトルに「魔法少女」という文字は絶対に必要だと思っていました。そうでないとやる意味がない、というくらい、そこは揺るがなかった。
脚本は第1稿がほぼそのまま通った
――脚本にかけた期間はどのくらいだったのでしょうか?
虚淵 2008年の年末から2009年の年末にかけてですね。ほかに並行して別の仕事が入っていたので、月に1本ずつ上げるのが精いっぱいでした。しかも「待て、次号!」みたいな感じで、全然先のことは話さずに(笑)。
岩上 ただ、脚本が上がってきても、あまり話し合うことはなかったですよね。なにせ第1稿の時点で面白かったから。
新房 修正をお願いすることは、ほぼなかったですね。
虚淵 それまでは、自分の書いた脚本の3割くらいしか残らず、残りの7割をガリガリ削ってやり直すような現場が当然だったので、「本当にこれで大丈夫なのか?」と毎回、首をかしげていましたよ(笑)。まだ自分はアニメのライターとしてはど素人だというコンプレックスもあったので、なおさら不安でした。
新房 考え方は人それぞれですけど、自分としては、多少引っかかることがあったとしても、勢いがあったほうがいいと思ってます。だから細かいところは最後に考えればいいかな、と。
岩上 多少の調整はいるかもしれないけど読んで面白い、そこが大事ですよね。減点法で「ここはこうですよ」と詰めていくよりは、最終話まで走ってもらいたかったんです。
虚淵 脚本会議で指摘されなかった矛盾点は、宮本(幸裕)さんが、後から気づいてくれましたしね。
新房 編集の松原(理恵)さんもですね。1話ずつ読んでいた自分たちと違って、一気に全部読んだ立場からの指摘をしてもらえたのはありがたかった。
――各話のサブタイトルがセリフからの引用になっているのは?
虚淵 あれは手抜きだったんですけど(笑)。
蒼樹 え! そうだったんですか(笑)。
虚淵 とりあえずつけておいて、後で改めて考えようと思ったんですけど……そのまま残っちゃいましたね。
岩上 サブタイトルをどうするかという話し合いも一度したんですけど、最終的には虚淵さんの案のままでいいんじゃないかと。変えなくて良かったと思っています。
蒼樹 次回予告でサブタイトルを見て、次回のどういう場面でこのセリフになっちゃうんだろうとワクワクできますよね。
キャラクター原案ができあがるまで
――続いて、 蒼樹先生のキャラクター原案がかたまっていくまでのお話もお聞きしたいのですが。
蒼樹 最初の稿は……2008年10月になっていますね。この稿は、決定稿とあまり変わっていないんですけど……その間の2稿目で迷走があったんです。2稿の時期はすごく頭を抱えていました。
新房 我々としては、最初の稿の段階で「いいですね。さすが蒼樹さん」という気持ちだったんですけどね。
蒼樹 でもこっちは不安でしたよ(笑)。あ、キュゥべえは2稿で初めて提出したのですが、 可愛く可愛く描こうとしていますねー(笑)。基本は決定稿と一緒なのですが、耳のリングの部分は宇宙感を出したかったんです。なぜか浮いているという。でもこのころは全体的に、「わけがわからないよ」状態というか、何をどうしていいのかわからない時期でしたね。第1稿を見返してみたら「私は何をしていたんだろう」と思いました(笑)。
岩上 我々は本当に、最初から「素晴らしいなあ」という感想だったんですけどね。あと、うめ先生のデザインは、まどかたちの学校の制服もいいですよね。『ひだまりスケッチ』もそうですけど、うめ先生のデザインする制服は立体にできるというか、コスプレができる衣装になってますよね。そこは意識しているんですか?
蒼樹 コスプレ用ということではないですが、この服はファスナーがどこについているか、とかの構造はある程度考えますね。
――そしてデザイン最終稿では仁美や恭介もいますね。
蒼樹 仁美は決定稿とあまり変わってないですね。恭介はただひとりの男の子なので、描いていて楽しかったです。
岩上 うめ先生の描く恭介、なんだか気合が入っているというか、楽しそうに描いている感じが確かにしました(笑)。
――魔法少女の衣装についてはどうですか?
蒼樹 まどかの服は「まどかがデザインしたもの」という設定から考えていきました。マミさんとさやか、ほむらは武器のイメージからデザインしました。杏子は一番最後にデザインしたキャラで、武器から発想したわけではなく、ほかのキャラとの差別化を念頭に置きました。
虚淵 杏子は動くキャラの想定だったので、最初に衣装デザインをもらったとき、長い服だったのが予想外でした。
蒼樹 ちょっと重たくしちゃったかなと(笑)。
虚淵 いえ、それが動くからかっこいいんです。カンフーものの快感がありました。
新房 ただ、デザインで言うと、さやかの頭の装飾は、やっぱりあってもよかったかな……と今でも思っています。
蒼樹 そうそう、さやかの変身後はヘアピンがなくなるから、その部分に装飾をつけてみたんです。マミは最初からついていますし、まどかはリボンがあるので、それに合わせてみようと思って。でもカチューシャだとそんなにアクセサリーっぽくないというか機能性のイメージがあるので、星とか謎の球体とか、いろいろつけてみたんですけど。だけどシリアスな戦闘シーンなのに、変身したことでお遊び要素がつく感じがいつまで経ってもしっくり来なかったので取ってしまいました。でもやはり、ほかの子と比べたときに地味な感じがするのは、ちょっとかわいそうですね。
新房 ないほうがシンプルでいいんじゃないかと思って、そういう風に上げてもらったんだけど、展開が進むにつれて「やっぱり何かあってもよかったかな」と。
虚淵 でもマントで相当派手になった気がしますよ。
岩上 魔法少女の武器も、最初はうめ先生がデザインする予定だったんですが、結局アニメサイドでデザインすることになりましたね。
虚淵 でも、最初の告知の絵は蒼樹さんが描いてますよね。あの絵での武器デザインが、アニメでも踏襲されてます。
蒼樹 ほむらの弓と、マミさんの銃はこちらがデザインしたものを拾っていただけました。まどかの弓は「Magia」のジャケットで使っていただきました。
『まどかマギカ』キャラは『ひだまり』キャラに近い?
虚淵 蒼樹さんのキャラ原案を見るまでは、自分の頭の中のキャライメージは、『ひだまり』キャラだったんです。 まどかがゆの、マミがヒロさん、みたいに置き換えて想像して。だから毎回デザインが上がるたびにホッとしていたんですよ。「よかった、『ひだまり』とは違うイメージの作品になる!」って(笑)。
新房 そういえばマミはお姉さんキャラだし、なんかヒロとイメージが重なる部分がありますよね。だとすると、マミも体重を気にしているのかもしれない(笑)。
虚淵 いやいや、マミにそういう設定はないです(笑)。
新房 ネタにもされやすいようだし、立ち位置がとヒロと一緒かなと(笑)。
蒼樹 ケーキも出してくれますし(笑)。
新房 別のキャラなのに、こういう一致があるというのは面白いなあ。
虚淵 そういう意味では実は杏子が一番不安でした。こういうやさぐれた感じの娘を蒼樹さんの世界で見たことがなかったので。
蒼樹 確かにそうかも。じゃあ杏子を最初に見たとき、どうでした?
虚淵 いやもう、『ひだまり』キャラではまずないであろう表情を見て、オッケーと思いましたね。
蒼樹 脚本を書くとき、杏子は『ひだまり』キャラに当てはめにくかったですか。
虚淵 めちゃめちゃ当てはめにくかった。だから杏子は『仁義なき戦い』のように、危うく広島弁になるところでした(笑)。でも杏子のイメージカラーは当初、赤ではなく黄色で想定してたこともあって、強いて言えば宮子を重ねていたのかな。
蒼樹 私、虚淵さんからの案にあったキャラのイメージカラーを変えてしまったんですが良かったんでしょうか。
虚淵 結果的に良かったと思いますよ。赤いマミって、今は想像できないじゃないですか。
久保田 最初の稿では、さやかの髪型が違っているのも、今振り返って見てみると面白いですね。
蒼樹 ああ、迷走してるなぁ(笑)。
――そうして決定稿になったものを元に、岸田隆宏さんがキャラクターデザインを起こされたのですが、いかがでしたか。
蒼樹 いろいろ細かいところまで汲んでくれてうれしかったです。輪郭線が2重にとられていたのも、私の絵の印象からなのでしょうか。
久保田 それは蒼樹さんの作品や絵をいろいろと見て、このタッチがいいな、という総合的な判断ですね。作画的なチャレンジではありました。
蒼樹 ああいう描き方ってアニメではあまりやっていないですよね。目の斜線もそのまま採用されるとは思っていませんでした。ねんどろいどでも、その目を忠実に再現してくださっていたし、そうすると『まどかマギカ』感が出るのかな。
久保田 でも最初のうちは、そのタッチが作画陣になかなか浸透しなくて。
新房 9話か10話あたりでやっと絵としてまとまったという感じでした。
劇団イヌカレーが創りだす世界
――『まどかマギカ』のキーになるスタッフさんとして、劇団イヌカレーさんがいます。
蒼樹 まだ脚本会議をしているころの話なんですが、その日の会議が終わって飲み屋さんに移動する途中、監督が「魔女は一般的な魔女の形にとらわれない、幾何学的な形でもいいと思うんだよね」って言っていたんです。「だから『絶望先生』や『まりほり』をやってくれたイヌカレーさんにお願いしようと思ってるんだけど」って。その時点で「監督には何かが見えてる!」と感じました。とても印象的でした。
新房 自分は覚えていないんですけど、そんなこと言ったんだ。そうか、何かが見えていたのか(笑)。
蒼樹 見えてたんですよ監督! 私はそういう発想が全然なかったので「すごい、これは想像できな いものになる!」とワクワクしたんです。
――そしてイヌカレーさんにお声をかけた後、どんなお話し合いをされましたか?
久保田 イヌカレーさんを含めた美術設定の打ち合わせがあったんですが、そのときの議事録を見ると、新房さんが「『まどかマギカ』は、『リリカルなのは』とは違うイメージで、『コゼットの肖像』の延長線にある作品として」と言っていますね。
新房 そういう発言をしましたっけ? ……あれ、でも本当に書いてありますね。
――このときのイヌカレーさんの反応は?
久保田 イヌカレーさんには事前にシナリオを読んでもらっていて、その後でのイメージのすり合わせでしたから。無口な方ですけど、すんなり理解してもらえましたよ。
虚淵 イヌカレーさんは、ご本人は無口かもしれませんが、できあがってくるものはすごく饒舌ですよね。
久保田 世界観、設定的なイメージをとことん作り込んで、そこを絶対に譲らないという頑固なところもあります。それに作り手として全然妥協をしないんですよね。制作を進める中で、イヌカレーさんパートの比重がどんどん大きくなって、彼らだけでは処理ができなくなったときにどうするかが悩みどころでしたね。
新房 BDやDVDでのリテイクも、イヌカレーさんのところだけすごくなっているから。
久保田 時間があれば、どんどんいいものにしてくれるんです。
新房 音楽の梶浦(由記)さんが、9話の結界が素晴らしかったと絶賛していたのですが、今はまだ本人たちには聞かせられないですね。だって今それを言ったら、リテイクでどこまで手を入れだすかわからない(笑)。自分たちでさらにハードルを上げてしまうと思うので、作業が終わった後で伝えようと思います(笑)。
久保田 ただあれだけのものを作っておきながら、彼ら的にはやっぱりまだ心残りはあるんだろうな、とは感じます。
岩上 シャフトの会議室で、最初にイヌカレーさんのイメージ画を見せてもらったときは度肝を抜かれましたね。
虚淵 静止画がメインでしたが、GIFアニメーションで動く1話のヒゲの使い魔もありました。それに脚本の段階では、魔女に名前や設定は何もなかったんです。あれらは全部イヌカレーさんの力ですよね。
蒼樹 公式サイトの魔女図鑑が更新されるのが、いつもすごく楽しみでした。あそこに載っている設定以外にも、実際はもっと考えてあるんだろうな、って想像しちゃいます。
魔法少女たちのキャスティング
――キャスティングについてもお聞かせください。
岩上 オーディションで決めた役なのに、偶然『ひだまり』と同じ役者さんも多くなっていますね。
虚淵 水橋さんは意外でした。マミのようなお姉さんキャラを水橋さんが演じる、ということはけっこう珍しくないですか?
蒼樹 『ひだまり』の宮子とはまったく違うお芝居になりましたね。
新房 ほむら役の斎藤さんに関しては『化物語』の戦場ヶ原ひたぎのイメージがあって、どうしてもほむらとひたぎとでは印象が似てきてしまうのが懸念ではあったんです。斎藤さんが上手いのはもちろんわかっていたけど、それでも「あえて違う役者の方がよいのでは」とも思いました。でもオーディションで斎藤さんのほむらの演技を聞いたら、やっぱり「こうだよね」と納得するしかなかった。
岩上 オーディションのときにはなかったお芝居ですけど、後半の泣き崩れる場面でのほむらまで考えると、やっぱり斎藤さんをキャスティングしてよかったと思えます。
新房 斎藤さんだけでなく、まどか役の悠木さんまで含めて考えると、『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』という作品からの流れもありますね。『ヴァンパイアバンド』では、孤高な吸血鬼のお姫様を演じる悠木さんと、普通の人間の女の子を演じる斎藤さんという2人だったから、『まどかマギカ』とは立場が逆ではありましたけど。そのときに2人の間には阿吽の呼吸ができていたのかなと思います。だから『まどかマギカ』では、主役の悠木さんと、それをサポートしていく斎藤さん、という現場的な役回りも上手く回った気がします。オーディオコメンタリーで、2人もそう言っていましたしね。
――さやか役の喜多村さんについては?
蒼樹 アフレコ後の飲み会で、監督は毎回のように「喜多村さんいいよね」とおっしゃっていましたね。
新房 喜多村さんは、本当に痛い子の芝居がすごかったです。一生懸命だけど不器用で報われない感じというか。
虚淵 ちょっとがんばって明るく振る舞ってるけど、本人は重いことを考えているあたりは、確かにそうですね。
――杏子役の野中さんはどうでしょう。
虚淵 杏子は、蒼樹さんのキャラでありながらヒールというのがどう演出されるのかな、と予想がつきませんでした。でも野中さんの声で、いい感じにハマりましたよね。
新房 野中さんの声なんだから、悪いヤツのはずがない、みたいなね(笑)。
蒼樹 杏子のセリフを声優さんはどう喋るのかなと思っていたら、配役が野中さんに決まって、「ああ、こうなるんだ」と。悪ぶっている時点で、なんだか憎みきれない感じが出ていて。
新房 野中さんに「なんで杏子が私なんですか」と聞かれたことがあって、「野中さんなら嫌われないから」と答えておきました。そういう不思議な魅力があるんです。
放送開始が迫る中で
――そうしてキャストも決まり、2010年秋から、情報が世間に公開され出しましたが……。
岩上 でも最初に世間に出たのは「出ちゃった」系のリークでしたね(笑)。
虚淵 あれは相当早い段階でした。春くらいですかね。
岩上 新房さん、虚淵さん、うめ先生、シャフトさん、というところまで噂として出ちゃいましたからね。当初は、最初に「新房さんとうめ先生で魔法少女ものをやるよ」と告知して、その一ヶ月後くらいに虚淵さんの名前も発表、みたいに段階をつける案もあったのですが。でも情報が漏れてしまったのなら、みなさんの名前は一斉に発表しましょう、と。あとよく言われているような、3話が終わるまで虚淵さんの名前は伏せておこう、ということまではさすがに考えていませんでした(笑)。
虚淵 俺はてっきりそうするものだと思ってましたけど(笑)。
岩上 ただまあ、それはそれで面白かったかも、とは思いますけどね。
虚淵 「絵が可愛いから脚本もそうだと思った? 残念! 俺だよ!」って(笑)。
――放送が近づいた時期に、神社でお祓いをされたそうですね。
虚淵 魔物が絡むものですからね。自分は行ってないですが、お守りだけ買ってきてもらい、アフレコのときに常に持っていました。何か祟りがあるとしたら絶対に自分だと思ったので(笑)。
新房 自分の中ではお祓いというより、ヒット祈願かな。結果的に作品はヒットしたので、ご利益はあったと思っています。
久保田 まあゲン担ぎみたいな意味合いもありますよね。
岩上 スタッフの中に気にする人もいますから。お祓いをやっていないと「お祓いやってないから腕にケガをした」となるけどお祓いしていたら「ケガしたのが利き腕じゃなくてよかった」みたいな、気の持ちようも違うと思いますし。
新房 ちなみに、お祓いには加藤英美里さんが声優代表として来ましたね。
虚淵 あぁ、声優代表ということだったんですね。キュゥべえ役だからかな、って思っていましたよ(笑)。
(2へ続く)
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