捨てられた本を拾ってきた
先日、図書館へ行った時のことだ。
インターネットで予約していた本を借りるべく、受付カウンターへ立ち寄ったところ、「ご自由にお持ち帰りください」と書かれた段ボール箱を見つけた。
段ボール箱の中を覗き込んでみたら、ずいぶん年季の入った古本が積み重ねられていた。
どれもこれも読んだことがない本ばかりだ。気になって裏表紙をチェックしてみると、「除籍済み」というシールが貼られている。
公共の図書館では、ページが破れていたり、汚れているなどの理由から、たびたび在庫を処分してラインナップを入れ替える。
新刊を入荷したくても展示する場所がないので、誰にも読まれない本を捨ててしまうのだ。
「ひとり何冊までですか?」
「5冊までです」
私は、ぱらぱらとページをめくって状態を確認したあと、なるべく綺麗な本を選んで持って帰ることにした。
それから、自宅へ向かって自転車をこいでいる途中、ふと昔のことを思い出した。
あれは、私がまだ小学生だったころの話だ。
私は、九州地方のさびれた炭鉱町で生まれ育った。夏祭りの盆踊りで流れる「炭坑節」が誕生したと言われる土地だ。
当時住んでいた地域には、古新聞や雑誌などをリサイクルして、トイレットペーパーに交換するサービスがあった。
どこの会社とも知れない怪しげな業者が、定期的に軽トラックで回収にやってくるのだ。
リサイクルの日になると、各ご家庭の玄関先には、ビニールひもで十字に縛られた紙束が置かれる。
そのまま放っておくとちり紙へ交換されてしまうので、近所の子どもたちは、ゴミの山をかき分けて値打ちのありそうなものを探す。
幼いころから読書好きだった私は、漫画や小説に限らず、辞典や図鑑など色んな本を持ち帰った。
しかし、面白そうな本を見つけて帰宅するたび、母親からこっぴどく叱られた。
「なんでわざわざ捨てられた本を拾ってくるの? どうせゴミになるんだから、もとの場所へ戻してきなさい!」
私は、絶対に渡すまいとボロボロの本を抱きしめながら、
「お願いだから、今夜だけでも! ちゃんと最後のページまで読むから!」と駄々をこねる。
「あんた、そんなこと言っておきながら、結局最後まで読んだ試しがないじゃない! 明日までに読まないと火をつけて燃やすわよ!」
今の時代だと虐待を疑われるかもしれないが、しつけが厳しかった我が家では、母親の機嫌を損ねるとしばしば鍵をかけて外へ締め出された。
「そういえばあんた、あの本もう読んだの?」
「読んだよ」
「それで、面白かったの?」
「ううん、全然」
「あんたって、本当に変わった子ね」
それから母は、やれやれといった感じで肩をすくめながら、
「ほら、お金あげるから本屋さんへ行ってきなさい」
と、仕方なくお小遣いを渡してくる。
ちなみに余談だが、学校のトイレで紙がなかった私は、本のページを破ってお尻を拭いたことがある。
お母さん、今まで黙っていてごめんなさい。
この記事は、現在開催中のコンテスト「 #読書の秋2025 」へ応募するために書かれています。
せっかくの機会なので、私の地元である筑豊地方ゆかりの本を紹介します。
以下の3冊は、自信を持っておすすめするラインナップです。ご旅行で訪れた際は、ぜひ手に取ってみてください。



コメント