ヒトラーのDNA解析で驚くべき発見、英研究チームの発表がドキュメンタリーに
(CNN) ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーのDNAとされる標本を解析した英国の研究チームが、ヒトラーには思春期の遅れや欠如につながる先天性疾患の遺伝的特徴があったことが分かったと発表した。この研究を紹介したドキュメンタリー番組は、英チャンネル4で15日に放送される。 写真特集:ヒトラーが被写体のスナップ写真 英バース大学の遺伝学者トゥリ・キング教授のチームは4年以上かけた研究で、ヒトラーが1945年に拳銃で自殺した地下壕(ごう)のソファから切り取ったとされる布の断片を調査した。ヒトラーの親族の血液から採取したDNAサンプルと照合した結果、この断片にヒトラーの血液が染み込んでいたことを確認したとしている。 ドキュメンタリーによると、解析の結果、ヒトラーはホルモンバランスが乱れる先天性疾患の「カルマン症候群」を患っていた可能性があることが分かった。番組ではさらに、ヒトラーがユダヤ系だったという噂(うわさ)や、特定の精神衛生疾患に関係する遺伝的傾向があったかどうかについても検証している。 ただし、ドキュメンタリーで紹介している研究結果は、この分野の研究者による検証を経ておらず、科学誌にも発表されていない。キング氏は、著名誌に論文を提出済みで、近いうちに掲載されることを期待すると述べている。 ドキュメンタリーによると、研究チームが調べた布の断片は、1945年、ヒトラーが自殺した地下壕に立ち入った米陸軍将校が、血痕の付いたソファから切り取ったもので、2014年のオークションで米ペンシルベニア州のゲティスバーグ歴史博物館が入手した。 最も驚くべき発見は、ヒトラーのPROK2と呼ばれる遺伝子に変異が見つかったことだった。キング氏によると、この遺伝子の変異はカルマン症候群および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こし、男子の場合、思春期の遅れや停留精巣の原因となることがある。 「特徴はテストステロン値の低さにあり、思春期がない、あるいは部分的にしかないのいずれかだ。5%の症例はマイクロペニス(小さいが正常な構造のペニス)と関連している」とキング氏は解説する。 ナチスに詳しいドイツ・ポツダム大学のアレックス・ケイ氏によると、1923年のクーデター未遂でヒトラーが投獄された際の医療記録からは、ヒトラーに右側停留精巣(精巣が陰嚢<いんのう>に降りてこない状態)の症状があったことがうかがえるという。 「カルマン症候群の発見は、20年以上もナチスを研究してきた私にとって重大な発見だ」とケイ氏は述べ、ヒトラーの個人的な人間関係の欠如もこれで説明できるかもしれないと言い添えた。 ヒトラーにユダヤ系の祖先がいたという噂については、今回の研究で解析したY染色体のデータがヒトラーの男系血縁者のDNAと一致したことから、ヒトラーにユダヤ系の祖先がいた可能性はなくなったとキング氏は解説。「父方にユダヤ系の祖先がいたという話が真実ではなかったことが確認された」としている。 研究チームはさらに、DNA検査で疾患リスクを調べる多遺伝子リスクスコア評価も行った。その結果、ヒトラーは統合失調症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症の遺伝的素因が高かったことが分かった。ただし専門家は、ヒトラーに必ずしもそうした症状があったとは限らないと指摘している。