嘘の夢の話 5月12日
食堂車で食事をしている。食べているのは大戸屋の「鶏と野菜の黒酢あん」のような料理で、美味しいは美味しいのだが、期待していたほどではない。ただ、私が知らなかっただけで食堂車の料理とはどれもこんなものなのかもしれない。
車窓からの風景に目を向けると、田園地帯が延々と広がっている。今どの辺りを走っているのか知らないし、この列車がどこへ向かっているのかもわからない。しかし、自分の意思でこの列車に乗ることを決めたのは確かなので、どこに連れて行かれようが別に問題はない気もする。
窓の外、途切れることなく続く田園風景の中に、一軒の立派なお屋敷が建っているのを私は見る。屋根は紫と緑色、壁は鮮やかな黄色で、なかなか現実離れしたメルヘンな色使いの建物である。そのお屋敷を視界に捉えたのは一瞬だけなのに、私は部屋の窓から手を振っていた人物のことを覚えている。その人物は右手を外に向けて振っており、こちらからは見えない左手には何も入っていない錆びた鳥籠を持っている。


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