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2025.07.10 12:00

イランが中国製防空システムを取得か ロシアは中東の兵器市場でも退潮

中国広東省の珠海市で開かれた航空ショーで展示された中国製の防空システム「紅旗-9B(HQ-9B)」。2024年11月14日撮影(ONG WEI / Feature China/Future Publishing via Getty Images)

アルジェリアという顕著な例外を除くと、ロシアの戦略防空システムであるS-300やS-400への関心は中東・北アフリカ地域全体ですでにピークを過ぎているのかもしれない。ロシアは名目上シリアに供与していたS-300を、バッシャール・アサド政権が2024年12月に崩壊する2年以上前に撤収させていた。イランのS-300は灰燼に帰し、MEEの報道が正しければ、追加のS-300や、より新しいS-400で代替されることもないだろう。もし中国側もHQ-9BやHQ-22といった防空システムの供与に前向きなのなら、その可能性はなおさら低くなる。

例外的で、また非常に大きな代償を伴うことにもなった動きとして、トルコによるS-400の取得がある。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコは2019年、ロシアから複数のS-400を受領したが、現在に至るまで実戦配備はしておらず、追加取得のオプションも行使していない。これらのS-400は倉庫に保管されたままであり、トルコは物議を醸したこの取得が原因で排除された米国のF-35統合打撃戦闘機(JSF)プログラムへの復帰を試みている。

ロシアはS-300やS-400を湾岸アラブ諸国に売り込んできたものの、1基も成約に至っていない。ただし、アラブ首長国連邦(UAE)や、もっと最近ではサウジアラビアもひっそりと、ロシア製パーンツィリ-S1中距離防空システムを取得している。これらの国々は、中国製の防空システムを選んでいるというわけでもない。サウジアラビアは7月2日、米国製のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイルシステムを運用する初の中隊を発足させた。サウジアラビアとUAEは近年、韓国製のKM-SAM中距離地対空ミサイルシステムを発注しており、2018年にS-400の購入を検討していたイラクもこのシステムを選んでいる。

繰り返すと、ロシア製の高性能な防空システムを近年購入した中東諸国のうち、少なくとも2カ国が地対空ミサイル能力の調達先として中国を頼りにするようになっているもようだ。イランの場合、Su-35の納入遅れの件によって、この先、ロシアを供給国として信頼することは二度とないかもしれない。また、S-300の壊滅的な損失を経験したことで、ロシア製兵器の信頼性そのものに疑問を抱くようになっている可能性もある。もう一国のエジプトの場合は、米国の制裁を受けるリスクがあるため、やはりロシア製防空システムを選ばない可能性がある。

トルコによるS-400の取得は一度限りであり、トルコ側はいまではそれを内心後悔しているかもしれない。とはいえ、NATO加盟国トルコの場合、中国製の防空システムの購入を検討することにもなりそうにない。実のところトルコは2013年に、34億ドル(現在の為替レートで約5000億円)規模の共同生産契約の一環で中国にFD-2000を発注していたのだが、米国とNATOから圧力を受けてキャンセルに追い込まれている。

中東の兵器市場では現在、ロシアがいくつかの理由で失ってきている部分を埋めるかたちで、中国が急速に進出しつつあるように見える。ロシアが今後、失った部分を回復するのは不可能かもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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2025.07.08 12:00

イスラエルはイランの「空の占領」に動くか 負担大きく危険な行動

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

イスラエルは6月の「十二日戦争」でイランに対して得た戦略的優位、なかでも航空優勢を確保し続ける意思を示している。イスラエルはそのために宿敵イランに対して「空の占領(air occupation)」を行う可能性もある。これはほんの数週間前には想像すらしがたかった動きだ。

「地上戦の不在」が十二日戦争の特徴

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は6月末、X(旧ツイッター)への投稿で「イランに対する強制措置計画の作成」を軍に命じたと明らかにし、それには「イスラエルの航空優勢の保持、イランの核開発の進展およびミサイル生産の阻止、イランによるイスラエルに対するテロ活動支援への対応」が含まれると説明した。

「われわれはこのような脅威を阻止するために継続的に行動していく」とも言明した。

カッツは「空の占領」という言葉こそ使わなかったものの、イスラエルが航空優勢の保持や、イランによるこれらの試みの阻止を図るとなれば、必然的に空の占領が求められることになるかもしれない。

イランに対する空の占領に類する先例としては、パレスチナ自治区のガザ地区やレバノンに対するイスラエルの航空支配、サダム・フセイン政権下のイラクに対する米国主導の飛行禁止区域(NFZ)の設定(1991〜2003年)などが挙げられる。だが、イスラエルがイランの領空を占領し、それを長期にわたって維持しようとする場合、兵站面の課題はこれらよりも難しいものになる。

中東専門の学術誌ミドルイースト・クォータリーの編集者ジョナサン・スパイヤーが指摘するように、「地上戦という要素の不在」が十二日戦争の特徴だった。イスラエルの北の隣国レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織で、イランの軍事的に最も強力な代理勢力だったヒズボラは、戦争全体を通じて参加できなかった。これに先立つ2024年9月から11月にかけての紛争で、イスラエルによって致命的な打撃を受けていたからである。イスラエルは、イラン国内に潜伏して戦略目標に対して短距離ドローン(無人機)を飛ばす工作員を除けば、圧倒的に航空戦力に頼ってイランの戦略目標や指導部目標を攻撃した。

次ページ > 「第三圏」とは言えなくなったイラン

翻訳・編集=江戸伸禎

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2025.07.03 13:00

イスラエルの防空システムはイランの弾道ミサイルをどのくらい防げたのか? 戦績と戦訓

イスラエルの最大都市テルアビブで2025年6月21日、イランから発射された弾道ミサイルをイスラエル空軍の防空システムが迎撃する様子(Eli Basri/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

イスラエルの最大都市テルアビブで2025年6月21日、イランから発射された弾道ミサイルをイスラエル空軍の防空システムが迎撃する様子(Eli Basri/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

6月の12日間にわたるイスラエル・イラン戦争では、前例のない2つの空中戦が並行して繰り広げられた。ひとつは、イスラエルの戦闘機やその長射程弾薬と、イランの大規模ながら時代遅れの防空システムとの戦い。もうひとつは、イランの準中距離弾道ミサイル(MRBM)と、イスラエルの先進的にして戦闘で試されてきた防空システムとの戦いである。

この記事では後者の空中戦について取り上げる。この戦いは主に、イランのイスラム革命防衛隊航空宇宙軍のミサイル部隊と、イスラエル国防軍航空宇宙軍の防空司令部との間で行われた。

イランのミサイル戦力とイスラエルの防空戦力

有人機での長距離攻撃を確実に遂行できるような航空優勢も得られそうになければ、そうした攻撃のための航空機もない軍隊にとって、弾道ミサイルは魅力的な兵器になる。弾道ミサイルは、より低い高度をより低い速度で飛行する巡航ミサイルや自爆型のドローン(無人機)と異なり、戦闘機による迎撃はまず不可能であり、最も先進的な防空システムでなければ撃墜が難しい。

イランは1990年代以来、イスラエルを射程に収めるMRBMの開発に注力し、発射準備時間の短縮や命中精度の改善も図ってきた。イランのMRBM保有数は長年、控えめなものにとどまっていたが、2020年代に急増し、およそ2000~2500発まで積み増したと推定される。イランの代表的なMRBMシリーズには、「エマド」、「ガドル」、「デズフル」、「ホッラムシャフル-4(別名ケイバル・シェカン)」、旧型の「シャハブ-3」(実質的には大型版「スカッド」)、終末誘導段階で機動する能力を持つ最新の「ファタフ-1」および「ファタフ-2」などがある。一部はクラスター弾頭も搭載可能なようだ。

イランはこれらの弾道ミサイルを、「スーマル」やその派生型の「パベフ」といった巡航ミサイルの小規模な備蓄、多数の長距離自爆ドローン、そしてミサイル搭載型の戦闘ドローンで補完している。

一方のイスラエルは、1991年にイラクからスカッドミサイルで攻撃されて以来、米国と共同開発した、ミサイル防衛能力を持つ多層式の統合防空システムに投資してきた。イスラエルは国土が狭いので、重層的な防空層で国全体を密に覆うのが比較的容易だった。

次ページ > イスラエルの多層防空システムをおさらい

翻訳・編集=江戸伸禎

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政治

2025.07.02 10:00

軍拡競争で急成長する防衛産業、「価値ある産業」から「力強い成長産業」へ

イタリア空軍のF35A戦闘機。2024年11月21日撮影(Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images)

イタリア空軍のF35A戦闘機。2024年11月21日撮影(Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images)

ある程度の年齢の読者であれば、米国のロナルド・レーガン元大統領が同国史上最も野心的とも言える軍備増強に乗り出したことを覚えているだろう。レーガン元大統領はソビエト連邦を圧倒するために、自国の軍事予算を1980年の1500億ドル(約21兆5000億円)未満から85年までに3000億ドル(約43兆円)以上に倍増させた。政府はB1爆撃機やMXミサイル、海軍艦隊の拡張に多額の資金を投じた。SF映画の題名を取って「スターウォーズ計画」とも呼ばれたこの戦略防衛構想(SDI)は、宇宙配備型ミサイル防衛システムの構築を目指していた。

レーガン元大統領は、平和は強さによってのみ実現できると信じていたが、同大統領の考えが正しかったことは歴史によって証明された。米国はソ連より多くの資金を投入し、革新的な技術を発展させ、最終的にソ連より長く存続し続けているからだ。

NATO加盟国が国防費の増額で合意

今日、私たちはレーガン元大統領の戦略が国際舞台で展開されるのを目撃している。オランダのハーグで先週開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、加盟国は2035年までに国内総生産(GDP)に占める国防費の割合を5%に引き上げ、その3.5%以上を「中核的な防衛」に割り当てることで合意した。これは2014年に設定されたGDP比2%目標の2倍以上になる。

NATOのマルク・ルッテ事務総長は「トランプ大統領なしではこれは実現しなかっただろう」と述べ、加盟国に拠出額の引き上げを迫った米国のドナルド・トランプ大統領を称賛した。同大統領は「この追加資金を本格的な軍備に充てることが極めて重要だ。そしてその装備は米国製になることが望ましい。なぜならわが国は世界最高の装備を持っているからだ」と表明。レーガン元大統領の「力による平和」をほうふつとさせた。

世界中で増加する紛争

なぜ今こうした軍事費の急増が起きているのかを理解するのは難しくない。世界が緊迫しているからだ。豪シンクタンク経済平和研究所が発表した2025年世界平和度指数(GPI)によると、現在、世界では59件の国家間の紛争が進行中で、第二次世界大戦以降最多となっている。

今年最も平和でない国として格付けされたロシアは、ウクライナ侵攻が3年経過した現在も解決の兆しがほとんど見られず、依然として軍事的脅威であり続けている。NATOによると、中国は先進的なミサイルシステムや南シナ海での海軍力増強など「大規模な」軍拡を進めている。また、イランは最近、米国の空爆に対し、カタールで米軍が駐留するアルウデイド空軍基地へのミサイル攻撃で報復し、中東の緊張が高まっている。

次ページ > 防衛産業が「価値ある産業」から「力強い成長産業」へ

翻訳・編集=安藤清香

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