ハムスターのなきがら
兄犬が車に轢かれる夢を見て、汗だくで目覚めた。
車は何事もなかったように走り去っていった。
あまりにも後味の悪い夢で、暗澹とした気持ちはますます堪え難いものになった。
年甲斐もなく自分が涙をこぼしていることに気づいた。リビングへ行くと呑気な顔で兄犬が待っていて、頬をなめてくれた。
フランス当局が捜査に乗り出した東京五輪招致買収疑惑における不正な金の流れを把握していたとされるJOC経理部長Aさんの死をまた思い起こした。報道の日から1日も忘れたことはない。電車飛び込みによる轢死であり、自死の疑いが濃厚だったが、訳の分からない圧力により、うやむやにされた。
新国立競技場建設のため長年住み慣れたアパートを追われたお年寄りたちを思った。この際の過度なストレスで命を落とした方も居た。
これらの死は突発的な犬のひき逃げとは異なり、政治がもたらした死だ。それを贖うために、より大きな歴史的フレームを費やさなくてはならないが、まるで不運な犬の死のように処理され、わずかな時の流れのうちに、祭りの喧騒にかき消されて、なかば忘れられた。
昼間、犬たちとの散歩の途中、車に轢かれたハムスターの亡骸を見た。ぺしゃんこに潰されアスファルトに張り付いており、むごいものだった。
近隣の人が片付けるかと思ったが、夜になってもまだ放置されていたので、拾ってきて庭に埋めることにした。
犬たちが掘り返さないよう、スコップでなるべく垣根の周縁に当たりをつけると思いのほか土は固かったが、根気強く掘り進めるうちに命の通った柔らかく濃密な土の香気が満ち、夜気へと溶け込んだ。
此処ならさっきの場所より、ましなはずだ。
誰が飼っていたのだろう。どんな名前で呼ばれていた。どうしてあんなところまでやってきたのか。
飼い主は今も、ゆくえを探しているのではないだろうか。
家族のもとへ帰してやれないのは申し訳ないけれど、今日から我が家の一員になった。
墓標を置くか、花の種でも撒こうと思う。
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