「メンバーはみんなプロだし、音楽が大好きな人たち。ずっと同じ音楽をやってきた仲間なので、またバンドで動けるのはうれしい。本当は5人全員で動きたかったんですけど、KOJIは魂で一緒にステージに立ってくれると思います。亡くなってはいるけど、ともにあるようなイメージを持っています。KOJIが作った曲を今、練習しているんですけど、改めてすごく良い曲。彼がこういうふうに歌ってみたらどうかなと言ってくれたことを、昨日のことのように覚えています。誰よりもライブを待ち望んでいるのは、KOJIかもしれないですね」。そこにKOJIさんの姿がなくても、メンバーは5人だと強調した。
復活ステージの実現に向けて動き出したのは今年1月。TAKAと石月が共通の知人とそば店で会食し、十数年ぶりに再会した。
TAKAから歌への思いを聞いた石月は「僭越(せんえつ)ですが、TAKAさんの歌声を待ち望んでいる人が絶対にいるから、やれるのであればやったほうがいいですよということを伝えました。そしたら、じゃあ対バンをやろうよとおっしゃったので、いいですよと」とやりとりを説明した。
石月も旧バンドを解散後は起業して会社経営をした時期があり、似たキャリアを歩んだ。「20年前の解散ライブの光景は自分が死ぬときにも思い出すんだろうなって。あの日のファンのみんなの涙が忘れられないですね。ファンタを始めたからには、ファンのみんなにもう悲しい思いをさせたくないし、声が出なくなるまで、体が動かなくなるまでやりたい。だから余計にTAKAさんには歌ってほしかったんですよね」。バンドの復活までの葛藤をTAKAに赤裸々に話したという。
その日の食事後、石月はTAKAのアトリエを訪れた。「席を外して戻ってきたら、TAKAさんの歌声とアコギの音が聞こえて、歌ってるって思って。声、出てるじゃんって」。石月はラクリマの代表曲「未来航路」を歌おうと提案し、一緒に歌った。TAKAのメインパートに合わせてハモった石月は、本人のブランクを感じさせない歌声に衝撃を受けた。「本当にあの頃の歌声と変わりなかった。感動して、やっぱり絶対にやった方がいいですよと伝えたんです」。再会が契機になり、関係者の協力でラクリマ復活の舞台が用意された。
TAKAは、石月からの激賞に「照れますね」とほほえんだ。「石月さんから、歌わせたいという愛を感じた。対バンということから、すごく大きく広げてくださってイベントになった。歌いたいっていう思いがこんな形になっていくんだっていうことに感謝しています」。
TAKAは半年後の晴れ舞台に向け、体を鍛えようとパーソナルトレーナーを付けた。「食事はゆで卵を3つから始めてくださいって言われて(取材日の)今日から始めるんです。歌うのは喉だけではないので、全身で歌えるようにならないと。腹圧が大事と言われました。階段を上り下りすることも推奨されました。イベントの注目度が高いという話を聞くと、これはちょっと、頑張らないといけないなと思って」と張り切っている。
再結成に合わせ、新しいアーティスト写真の撮影にも臨んだ。
「最近は証明写真くらいしか撮ったことがなくて。ポージングをすっかり忘れていたので、カメラマンの方にどういうポーズを撮ったらいいか教えてください、かっこよく撮ってくださいって聞いたんです。いろいろ教えてくださって何とか事なきを得ました。若い頃は1日に何媒体も取材があって、カメラの光をポンポンポンと相当浴びて、目がシャバシャバしちゃうけど、達成感にあふれていました。久しぶりですごく新鮮でした」
慣れていたはずの仕事に戸惑いながら、再結成することを実感している。