医師確保派遣元へ補助・過疎地へ呼び込み策も…順大新病院建設中止を受けて埼玉県が新制度

スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

「スクラップ機能」に登録したYOL記事の保存期間のお知らせ。詳細はこちら
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 順天堂大学新病院の建設計画が中止となったことを受けて、県は医師確保策の再構築を急いでいる。長時間労働の改善に向けて、医師を派遣する医療機関への補助制度を新設した。医師が少ない秩父地域や県北部などに、医師を呼び込む施策も進める考えだ。(立原朱音)

 順天堂大学新病院の建設計画は、過疎地域への医師派遣とセットで検討が進められてきた。同大から2037年までに延べ150人以上の医師が県内各地に派遣されるはずだったが、昨年11月に建設計画が中止となったことで、派遣計画も白紙となった。

 県は新たな医師確保策として、長時間労働が続く医療機関の職場環境改善を図る。時間外労働が年720時間以上に上る医師がいる、人手不足の県内の病院に医師を派遣する県内外の大学病院などに、補助金を支給する。補助額は、常勤の場合は1人あたり年1500万円で、非常勤は日給6万2500円となる。県は今年度当初予算に5億2500万円を確保した。

 また、地域医療の研究を行い、県内の過疎地域などに指導医クラスの医師を派遣する大学向けの補助を拡充する。若い医師の育成態勢を充実させる狙いがある。補助対象はこれまでの6人から、今年度は11人まで増やす。現在、慶応大と千葉大から計4人の医師が派遣されていて、県は別の大学との調整を急いでいる。

 そのほか、2010年度から始めた医学生向けの奨学金制度も継続する。県内の過疎地域などで一定期間働けば、返済を免除する仕組みで、若い医師が都内へ流れるのを防ぐ目的だ。これまでに計584人が利用した。

 制度を利用して埼玉医科大(毛呂山町)に通う、3年の野口麗さん(21)は県北部などで働くのが夢といい、「患者の身近な存在として地域を救う医者になりたい」と語る。3年の諫山あおいさん(20)は「金銭的にとても助かっている。県北部で働く先輩と知り合うこともでき、メリットが大きい」と話している。

10万人あたりの医師最少

 厚生労働省のまとめでは、埼玉県の人口10万人あたりの医師数は180・2人(2022年時点)と全国最少。1位の徳島県(335・7人)と155・5人の開きがある。

 医師の偏在も深刻だ。1980年頃から、夜間の重症患者を曜日交代で受け入れる「輪番制」を行う秩父地域。当初10病院が参加していたが、医師不足から離脱が続き、2010年以降は3病院にまで減った。今年4月にはさらに秩父病院が抜けて2病院となった。

 同病院も、慢性的な医師不足の状態だ。運営法人の花輪峰夫理事長は「秩父の患者が秩父で十分な医療を受けることは難しい」と警鐘を鳴らす。

 県医師会の金井忠男会長は「今後人口減少が進み、手を打たなければ偏在は悪化していく。北部などで病院同士が連携して医療を提供できるような枠組みを、県主導で作るべきだ」と指摘している。

順天堂大学新病院の建設予定地だった県有地。今も草が茂る更地だ(5月21日、さいたま市緑区で)
順天堂大学新病院の建設予定地だった県有地。今も草が茂る更地だ(5月21日、さいたま市緑区で)

建設予定地更地のまま

 順天堂大学新病院の建設予定地だった、さいたま市美園地区の県有地は、更地の状態が続いている。現在は再整備が検討されている県庁舎の移転先候補地となっている。

 近くに住む黒田健治さん(80)は「県庁ができたらうれしいが、あの土地に施設が建つのは想像できない」と語る。児玉洋子さん(72)は「交通アクセスが悪いので県庁が来るとは思えない。便利な商業施設などが建ってほしい」と話す。

 まちづくり団体「一般社団法人美園タウンマネジメント」の岡本祐輝専務理事は、「地域が発展する機会が失われている。早く議論を深めて、土地の活用策を示してほしい」と注文している。

埼玉の最新ニュースと話題
スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

使い方
速報ニュースを読む 「埼玉」の最新記事一覧
注目ニュースランキングをみる
記事に関する報告
6705901 0 ニュース 2025/06/02 05:00:00 2025/06/02 05:00:00 2025/06/02 05:00:00 /media/2025/06/20250601-OYTNI50109-T.jpg?type=thumbnail
注目コンテンツ

注目ニュースランキング

主要ニュース

おすすめ特集・連載

読売新聞購読申し込みバナー

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)