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AI技術は、私たちの生活や仕事に急速に浸透しています。特にデザインの現場では、その影響を日々感じています。
1. はじめに:なぜこの話を書こうと思ったか
こんにちは。ゴフクヤサン・ドットコムの居内です。
SNSや店頭で、自社で制作している着物や帯の柄についてご紹介していると、最近とてもよく聞かれるようになった質問があります。
「この柄って、AIで作ってるんですか?」
ありがたいことに、少しずつ注目していただける機会が増えてきた今だからこそ、しっかりと言葉にしておきたいと思いました。
AIをどう使っているのか。なぜ使い始めたのか。どんな想いで日々“柄づくり”をしているのか。そして、それをどのようにプリントして着物という形に仕上げているのか。
この文章は、自分の立場を主張するというより、「こんなふうにやっている人もいるんだな」と誰かの参考になれば、という気持ちでまとめています。
2. AIで作ったことを、もう特別には書かない理由
Midjourneyという画像生成AIが登場して間もない頃、私はAIで柄づくりを始めました。
当初は「どこまで使ってよいのか」と迷いながら、画像をアップするたびに「この柄はAIで作りました」と毎回記載していました。
けれど、1年ほど前から、PhotoshopやIllustratorといった一般的な制作ツールにも、AIの機能がごく自然に組み込まれるようになってきました。
「AI作画には反対です」とおっしゃる方でも、背景の不要な部分を消したり、服のシワを自動で整えたりと、生成AI機能を当たり前のように使っている場面を、いまではよく見かけます。
かつては職人技だったことが、ワンクリックで済んでしまう。そんな時代になったのだと感じています。
この1年ほどで、「これはAIで作った」「これは人が作った」と明確に線を引くこと自体が、あまり意味を持たなくなってきたように思います。
今では、AIで生成したものであっても、それを強調することはしていません。
ご質問をいただいたときにはもちろんお答えしますが、商品ページには、必要な情報だけを簡潔に記載するようにしています。
皆さんは、AI技術の進化をどのように感じていますか?
日常の中で、どのように取り入れていますか?
3. “作品”じゃないけど、ちゃんと作ってます
「どんな作品を作っているんですか?」と聞かれることがあります。
でも、私は自分のことを“作品をつくっている人”とは思っていません。
どちらかというと、「デジタル職人」という立場で毎日現場で作業しています。
私の仕事は、明確な世界観やストーリーを持って一つの表現を追求する“アーティスト”というよりも、毎日大量にAIに柄を出力させて、その中から可能性のあるものを見つけ、プリントして検証して、精度を上げていく――そんな地道な作業の積み重ねです。
多い日は、1日に数百枚の図案をAIに生成させます。
Midjourneyなどのツールに指示文(プロンプト)を投げ、ひたすら出力された画像をチェック。
大半はそのままでは使えませんが、時々「おっ」と思うものが出てきます。
プロンプトのちょっとした表現の違いで、全然違う方向のビジュアルが生まれるのは本当に面白い。
感覚としては、「紙と鉛筆」のように感じています。
描く動作はないけれど、言葉で線を引いているようなイメージです。
プリントに適さないものも多いため、“刷れる絵”を選び抜くことは重要です。色や構図、素材感まで緻密に指定しながらプロンプトを調整しています。
生成した画像を実際に布へプリントして、滲みやズレ、インクの乗り方を検証します。デジタルと現場を行き来しながら、毎日少しずつ整えていく工程です。
4. AI図案を「刷れる絵」にするための手仕事
「画面の中の絵と、布に刷ったときの絵はまったく違う」。
素材や織りの密度によって色味は変化します。綿と麻では黒の深みも違い、赤の重ね方でも印象は変わるのです。
そのため、AI画像はそのまま使わず、色補正・構図調整・リピート設計などを手作業で再構成しています。この工程こそが、品質を支える最も大切な部分だと考えています。
5. AI図案の商品は「素うどん」だと思っています
具はないけれど、麺と出汁にはちゃんと気を使っている——そんな感じです。
当店の通常商品は、AI作画やパブリックドメイン画像を活用し、デザインコストを抑えて仕上げています。そのぶん価格も抑えめです。
今の時代、それがちょうど良いと感じてくださる方もおられると思います。
これからは素敵なデザインを生み出せるクリエイターの方々と協力して、より豪華でおいしい一杯——“トッピング付き”の作品を作っていきたいと思っています。
6. 季節柄・イベント柄の試みと反応
夏には「金魚」や「風鈴」、秋には「すすき」や「彼岸花」など。
Midjourneyで投げかけると、空気感のある図案が返ってくることがあります。意味ではなく、“雰囲気”を拾うのがAIの面白さです。
SNSでの反応を見ながら、製品化の判断をスピーディに進めています。
7. AIプロンプトに宿る「作り手の癖」
AIは無個性と言われがちですが、使い手の癖は確実ににじみ出てくると感じています。
私は淡い色調や非対称構図、空気感のある密度が好きです。それがプロンプトに現れ、最終的に画像にも反映されます。
プロンプトは筆や絵筆と同じ「道具」。使い方次第でアウトプットはまったく変わるのです。
8. クリエイターさんとの共存と共創への希望
当店の商品、リーズナブルに販売しているのは、そこにデザインフィーがかかっていないからです。
そこに新たな手を加えることで、ひとつの作品として完成します。
ご一緒したい方:
- SNSで活動するイラストレーターさん
- コスチューム制作をされる方
- 映像・舞台用の布が必要な方
- 伝統文化とコラボを考えている方
「こんな柄を布にしたい」——そんなご相談を、ぜひお待ちしています。
将来的には、AIベースの低価格な製品ラインと別で、そこにクリエイターさんのデザインフィーを加えることで、共に利益を得られる仕組みをつくっていきたいと考えています。
※この件は別の記事にしますのでおまちください。
9. 当店の立ち位置
当店が目指すのは、「テック系の着物屋」というポジションです。
正統派や古典的なスタイルとは少し距離があるかもしれません。 でも、だからこそ、今の時代ならではのやり方で、着物に触れるきっかけをつくれたらと思っています。
「こんな着物屋もあるんだ」「こういう形も面白いね」と、どこかの誰かが軽やかに楽しんでくれたら、それで十分です。
私は「ゴフクヤサン・ドットコム」という屋号でオリジナル着物や帯の販売を行っていますが、同時に「デジナ(https://digina.jp/)」という名前で、デジタルプリントに特化した布のプリント事業も運営しています。
顔料、染料インクを使ったインクジェットプリントを用いて、1点から布に直接プリントできる仕組みを整えています。 そのため、小ロット・短納期でのオリジナル制作にも対応できます。
この“自分でプリントできる環境”があるからこそ、AIで生成した図案を日々試すことができ、 より現実的なコスト感で、着物としての形に仕上げていくことが可能になっています。
古典柄や伝統技法をリスペクトしながらも、「今の自分ができる表現ってなんだろう」と模索しながらやってきました。
たくさん売ることよりも、面白がってくれる人にちゃんと届くことを大事にしたい。そんな思いで続けています。
「たまたま今の自分のやり方が、たまたま着物とつながっている」 ——そんな感覚で、日々やっています。
10. 著作権・ガイドラインの整備と対応について
AIを使った柄づくりに取り組むにあたって、著作権や意匠権についてはかなり慎重に向き合ってきました。
発明協会や、弁護士、弁理士などの専門家にも相談し、社内でガイドラインを定めて運用しています。
ただし、そのガイドラインも「これで完璧」とは考えていません。 ルールは変化し続けますし、AI技術そのものの進化もとても速い。
だからこそ、絶対的な基準ではなく、「守りながら、開いていく」という姿勢が必要だと思っています。
もし何かご指摘をいただいた場合には、誠実に、柔軟に対応していくつもりです。
11. 「伝統」との距離感
着物という文化を扱っている以上、「伝統との向き合い方」は避けて通れません。
私自身は、伝統を否定したいわけではまったくありません。 むしろ、多くの職人さんたちの技術や、歴史の重みを尊敬しています。
ただ、それらを守るということと、自分のやり方を貫くということは、別の話だとも思っています。
私は「正統派」ではないし、「本格派」でもない。
でも、そういう在り方もあっていい。
「テック系の着物屋」として、AIやデジタルプリントを使いながら、今の時代ならではの着物づくりを模索しています。
それが誰かの琴線に触れたとき、「伝統」とは別の形で文化が続いていく道筋もあるのではないか。
そう信じて、今日も“ものづくり”やっています。
12. 小さな会社だからこそできること
私は大きなメーカーのように、大量生産や在庫を抱えることはできません。
でもその代わり、1点ずつ作って反応を見ることができます。 作っては出して、反応を見て、また少し変えてみる。
このスピード感こそ、小さな会社の最大の武器だと思っています。
大きな組織では、企画から商品化までに多くの時間と工程が必要になる場合があります。 でも私たちは、思いついたことをすぐ試して、うまくいけばすぐ形にできる。 意思決定が速く、現場の気づきをすぐに反映できるのは、小さなチームならではの強みです。
お客様から「こういう柄が欲しい」と言われたとき、1枚だけでもプリントできる。 試作の布地をそのまま商品に転用できる。 その身軽さと融通の利き方が、今のスタイルを支えています。
AIを使えば、日々たくさんの柄を提案できます。 デジタルプリントなら、製版コストが不要です。
つまり、「つくってみる」という行為そのもののハードルがぐっと下がるのです。
これは、“思いついたらすぐ試せる”という、とても大きな自由をもたらしてくれました。
今後もこの柔軟さを活かしながら、面白いものをつくっていきたいと思っています。
13. 終わりに:これからも試しながら、整えながら
AIを使って柄を作るようになってから、これまでに何千枚もの布をプリントしてきました。
でも「ここを目指す」といった明確なゴールがあるわけではなくて、つくるたびに少しずつ見えてくる「こうした方が良さそうだな」という感覚を頼りに、日々すこしずつ調整を重ねています。
もちろん、商品としてお届けしているものは、ちゃんと確認し、きちんと形に整えてから仕上げています。
でも「これで完成」と思い込まず、手を動かしながら考えて、また試す。その繰り返しのほうが、自分には合っている気がしています。
技術も、好みも、トレンドも、少しずつ変わっていくものだから。
それに柔らかくついていけるようにしていたい、と思っています。
AIでつくっている商品も、「すぐに簡単にできてしまうもの」として扱っているわけではありません。
一つひとつ、インクの乗り方や布との相性を確かめながら、「どうすればもう少し良くなるか」と考え続けています。
ぱっと見はシンプルでも、お客様に手に取ってもらったときに、ちゃんと嬉しい気持ちになってもらえるように。
自分なりに一生懸命、丁寧につくっています。
AIを使うことで、たしかに省ける工程もあります。
でも、だからこそ「省かないところ」を大切にしたいと思っています。
日々の発信やものづくりを、引き続きSNSなどで見守っていただけたら、とても嬉しいです。
好もうと好まざるとにかかわらず、AIという技術はこれからますます、知らないうちに私たちの生活の中に入り込んでくると思います。
だからこそ、私のような小さな会社こそ、恐れたり拒んだりせず、ちゃんと使いこなしていく力が求められてくる。
最近は、そんなふうに感じています。
ちなみにこの記事も、ところどころAI(ChatGPT)に相談しながら整えました。
自分の中にある想いを伝えていく中で、ひとりでは言語化しきれなかった部分を、少しずつ引き出してもらった感じです。
でも、これまでやってきたこと、いま現場でやっていること、そしてこれから挑戦していきたいこと——それらはすべて、実際のリアルです。
今取り組んでいる“ものづくり”も、もしかしたら、この文章と少し似ているのかもしれません。
まとまりきらないままでも、試してみて、手を動かしてみて、そして少しずつ整えていく。
そんなふうに、これからもやっていけたらと思っています。
有限会社ゴフクヤサン・ドットコム
居内 久勝(@gofukuyasan)