旧皇族の竹田家出身で明治天皇の玄孫(やしゃご)にあたる作家、竹田恒泰氏が産経新聞の緊急インタビューに応じた。読売新聞社が15日朝刊で掲載した「皇統の安定 現実策を」と題する4項目の提言(①皇統の存続を最優先に②象徴天皇制 維持すべき③女性宮家の創設を④夫・子も皇族に)を、「天皇になれない人にまで範囲を広げようとしており、それは皇統ではない」と批判した。読売の「将来的な女系天皇の可能性も排除することなく、議論の着地点を模索してほしい」との主張にも、竹田氏は「国家の礎を危うくしかねない」と指摘した。
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前提認識に重大な誤り
読売新聞社の提言を読んだが、前提認識に重大な誤りがある。
皇室のご公務の担い手不足につながる「皇族数が減少している」という問題と、皇位継承者の資格者がいなくなるという「皇族の中で男系男子が少なくなっている」という問題はそれぞれ独立している。この別の話をいっしょくたにしているところが問題だ。
提言を紹介した記事の「太平洋戦争の戦地を訪れて慰霊したり、災害現場で被災者に寄り添ったりする皇室の活動は深く敬愛されている。皇室典範は、天皇の地位は『男系の男子である皇族』が継承すると定めているが、男系男子にこだわった結果、皇室を危うくさせてはならない」という部分は、別の問題を同列に論じている。
ご公務の担い手をどう確保するかという問題について、読売新聞は女性宮家まで創設して、その夫や子も皇族にすべきという。だが、女性皇族がご結婚され、民間人となった後も、ほぼすべてのご公務を継続することができる。
例えば、英国とゆかりの深い女性皇族がご結婚されたとしても、英国王室を招いた宮中晩さん会においでいただいてもいいし、公的団体の名誉総裁を務められることも可能だ。
現に私の祖父、恒徳(つねよし)は昭和22年に皇籍離脱して民間人となった後も、多くの慈善団体の名誉総裁や名誉会長を歴任した。「民間人になったから辞めてほしい」と言ってきた団体はなく、逆に新たな依頼が寄せられ、70歳を過ぎても30以上の名誉職を務めていた。
読売新聞の記事では、民間人になったらご公務ができないような前提に立っているが、その前提は事実と異なっている。
宮中祭祀(さいし)については、竹原興社会部長名で「女性皇族の離脱を食い止めなければ、国民の幸せを祈る祭祀や海外訪問を通じた国際親善などを担う方もいなくなってしまう」と書かれている。しかし、宮中祭祀は天皇陛下お一人で完結するものだ。竹原氏の認識は根本的に間違っている。
民間出身の女性皇族を冒涜
記事には矛盾もある。
政府の有識者会議が令和3年の報告書で示した、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する▽旧宮家の男系男子が養子縁組で皇室にする復帰する-という案について、記事は養子縁組を「これまで一般人として生活してきた人が皇族になることへの国民の理解が得られるかどうかなど、不安視する声も少なくない。慎重に検討する必要がある」と指摘する。
ところが、提言では女性皇族の「夫・子も皇族に」といっており、明らかに矛盾している。
さらに上皇后陛下、皇后陛下をはじめとする民間出身の女性皇族にも失礼だ。民間人として生まれ、皇族となって立派に役割を果たしてこられた。民間から嫁がれた女性皇族に対する冒涜(ぼうとく)でしかない。
なし崩しに「女系天皇」誕生の恐れ
「女性宮家の創設を」「夫・子も皇族に」という提言内容も危険だ。
もし、女性皇族の結婚相手が「国民的に好感度の高い男性」だとしたら、その間に生まれた男の子を「皇位継承者にすべきではないか」という意見が出てくるだろう。例えば、大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手やフィギュアスケート男子の羽生結弦さんのようなスーパースターだ。
「女性皇族の結婚相手を皇族とするが皇位継承権を与えない、男子が生まれても皇位継承権は与えないということにすれば男系は守れる」という意見もあるが、私はそうならないと考える。
皇族の中に皇位継承を担える男子と、担えない男子が混在することになり、20~30年後に「男性皇族の男子には皇位継承権はあるのに、女性皇族が結婚して生まれた男の子に皇位継承権がないというのは差別だ」という話になりかねない。女性皇族の結婚相手が好感度の高い男性だったら世論の8~9割が賛成して、なし崩し的に皇統の断絶につながる「女系天皇」が生まれる可能性がある。皇統を守るというのであれば、将来爆発するような「時限爆弾」を今から設置するというようなことはやめてほしい。
「皇統の存続を最優先に」としながら、女系天皇を容認するような読売新聞社の提言は、皇統の存続につながらない。
天皇の男系の血筋のことを「皇統」と呼び、それを受け継がない天皇が成立すれば皇統とは言わない。読売新聞の提言は「歴史的に天皇になれない人にまで天皇の範囲を広げてもいいのではないか」と言おうとしているように見える。
国民の分断が生まれかねない
読売新聞社の提言通り、女性宮家を創設して子供が生まれ、その子供が天皇に即位したらどうなるか。
ある人は「私は天皇として認めます」と言うだろうし、別の人は「男系の血筋を引かないものは天皇ではなく私は認めない」という人も出てくるだろう。
日本国憲法は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と定めている。一部の人が認める、一部の人は認めないという天皇がどうやって「日本国民統合の象徴」としての役割を果たせるのか。
読売新聞社の提言は「血統はどうでもいい。それでも国民に寄り添える人がいればいいのだ。これまで天皇になれない人も天皇にしてしまえ」という乱暴さを感じる。
国家の礎を危うくする提言であり、とても承服できるものではない。現状認識もずさんで、同じ日本人として恥ずかしさを感じる。
有識者会議の提言で示された「養子案」をしっかり実行すれば、皇族や宮家の数だけでなく、皇統を担える男系男子も確保することができる。危険性のある女性宮家の創設などではなく、養子案を進めることが皇統を守るために選択する道だ。
読売に何が起きているのか、「皇統の安定」提言は「立法府の総意」をぶち壊す 八木秀次