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通勤電車の「一枚扉」なぜ見られなくなった? 大手私鉄では風前の灯火に

2025年5月17日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

近年の通勤電車では、乗降用のドアは両側に開く「両開き」が主流です。昔の通勤電車では片側に開く「片開き」が使われていましたが、近年では両開きに押され減少し、特に大手私鉄では風前の灯火となっています。

片開きドアを採用した車両。画像は高松琴平電気鉄道(ことでん)の車両で、かつて京急で活躍していた車両です
片開きドアを採用した車両。画像は高松琴平電気鉄道(ことでん)の車両で、かつて京急で活躍していた車両です

両開きドアのメリットは、片開きドアよりも開口幅を広く取れること。片開きドアの開口幅は1000~1100ミリ程度が多くなっていましたが、両開きでは1300ミリが主流です。開口幅が広ければ、旅客の乗降もスムーズになるので、特に通勤電車では重要なポイントでした。

両開きドアを採用した現代の車両
両開きドアを採用した現代の車両

加えて、ドアの開閉時間を短くできることもメリットです。仮に同じ開口幅で両開きと片開きのドアがあったとして、ドアを同じスピードで動かすと、開閉に要する時間は両開きの方が短くなります。この時間が長いと、旅客の駆け込みが可能となってしまいます。また、片開きでも開閉スピードを速くすれば両開きと同じ時間で開閉することは理論上可能ですが、あまりに速すぎると、旅客が挟まれた場合にケガをするおそれがあります。

一方で、両開きドアは、ドアの枚数が片開きよりも多くというデメリットがあります。単純に可動部が多くなるだけでなく、かつては左右のドアを別々のドアエンジン(ドアを開閉させる機械)で動かしていたため、片開きでは1箇所につき1台だったドアエンジンを、両開きでは1箇所につき2台用意する必要があったことから、製造コスト面も不利。左右それぞれのドアの動きがバラバラになってしまうという課題もあったといいます。

そんな両開きドアも、1950年代に西武鉄道の所沢車両工場が開発した「ST式戸閉機構」によって、ドアエンジン1台で左右両方のドアを動かすことが可能となり、1960年代に一気に普及が進みます。その後も片開きドアを装備した一般型車両が製造されなかったわけではありませんが、2025年現在、大手私鉄で導入される通勤電車は、すべて両開きドアを採用しています。

片開きドアを装備した通勤電車は、特に大手私鉄では、老朽化によって数を減らしつつあります。関東大手私鉄では、最後の片開きドア装備車だった京急800形が2019年に引退。関西大手私鉄では南海の6000系が残存していますが、こちらも置き換えが進められており、そう遠くない時期に引退する見込みです。

南海の6000系。2025年現在、大手私鉄の通勤電車で片開きドアを装備する最後の車両です
南海の6000系。2025年現在、大手私鉄の通勤電車で片開きドアを装備する最後の車両です
関東大手私鉄の通勤電車で片開きドアを装備していた最後の形式、京急800形。2019年に引退しました
関東大手私鉄の通勤電車で片開きドアを装備していた最後の形式、京急800形。2019年に引退しました

一方、JRの一般車両では、片開きドアは主に地方線区を走る形式で採用されています。特にJR北海道では、札幌都市圏を中心に活躍する733系などの新しい電車でも、耐寒仕様としてか、片開きドアを標準採用。その他のJR旅客各社でも、数の大小はありつつも、全社が片開きドアを装備する一般車両を運用しています。

もちろん、JR、大手私鉄とも、特急型車両では片開きドアが一般的。大手私鉄の一般型車両では風前の灯火である片開きドアですが、このタイプ自体が消滅することはなさそうです。

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