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能無し勇者は知恵とLV1魔法でどうにかする  作者: (^ω^)わし!!!
22/23

死にたがりの竜 1

もはやペンネームを習近平に改めるか検討するレベル

 朝と昼、どちらと表現しても差し支えないような時間帯。魔界にしては比較的天気がよいが、村の中央広場は少し冷える。


 「北の山…ですか?西…ではなく?」


 公太郎がジルガとの会話の中で、なんとなく次の目的地を出すと、途端にジルガが難しい顔をした。


 「イリスによると、ゼナの夢見が北を指し示したそうだー。北が吉らしいー」

 「ゼナ様の…」


 リュナの件で公太郎が目覚めてから、すでに3日たっている。


 街をつくるまで3ヶ月というタイムリミットを考えるとかなりのロスだったが、イリスが頑として「大事を取ります」と譲らないこともあり、つい甘えてしまった。


 とはいえ、ずっとまったりしてたわけではない。


 土を回復して農地を拡張したり、魔素避けの風魔法を形成したり、新たな作物を育ててみたりした。簡易的なシャワーやトイレといった施設の建設もしたし、簡単な道具を作成も試している。

 意外にも村人に最も評判がよかったのが、車からガソリンを抜く時に使う醤油ちゅるちゅる…灯油ポンプで、井戸から水をくみ上げる際の主役となった。


 もっとも、魔法効果は永続ではないから、いずれは切れる。放っておけば農地は痩せ、魔素は再び土を侵食しはじめるだろう。

 だが幸い、この村ではゼナが回復と水を、狼人たちのなかには風魔法の心得がある者がいる。現状の維持なら問題はない。


 「ハムタロー!!」


 上空からイリスの呼び声がした。空を駆ける黒い影が、大地を照らす日を遮る。


 飛竜(プテラノ・ドン)だ。


 乗って移動するために飼いならされた小型の亜竜族。大きな翼とかぎ爪を持ち、特徴的な頭頂部の長いフォルム。それがイリスに操られ、公太郎たちの近くへ降下してくる。


 「わっ…ぷー」


 飛竜の羽ばたきで砂塵が舞い上がり、公太郎は腕で顔を庇った。

 小型の竜といっても本体はミニバン車くらいの大きさがある。翼を広げればかなりの迫力だ。


 着地した飛竜は翼をたたんで行儀よく(かが)みこみ、背に乗せたイリスの降りやすい体勢をとる。よく訓練されてるなと公太郎は感心した。


 「ありがとう。これからもお願いね」


 地に降り立ったイリスは飛竜をなでながらお礼をいった。飛竜はそれに答えるでもなく、興味なさそうにプイッと空を見上げている。気位が高い。さすがは、というべきか。


 飛竜はリュナの治療に対するフェルズから贈られた礼だ。まあ、本人は「褒美だ」とかいってたが。

 フェルズが直々に卵から育てたとのことで、そうだとすれば動物は飼い主に似るというのは、どこの世界でも変わらないようだ。


 この飛竜の移動力を期待できるようになったというのも、村でゆっくり3日を過ごす気になった背景である。

 

 数は全部で3体。うち1体は、イリスが今まさに慣らし飛行をして帰ってきた。もう1体は、ジルガの横でクチバシを使って翼を整えている。


 「本当に僕が飛竜を使ってもいいんですか…?」


 ジルガが遠慮がちにイリスへ伺いを立てた。


 「もちろん。ハムタロがそうしろっていってくれたんですよ?」

 「え…?」


 ジルガが申し訳なさそうに公太郎を振り返る。公太郎は両手を胸の前に「大したことじゃない」と上げた。


 「俺には扱えないからなー。それに、学校までの『足』がいるだろー」

 「ハムタロ様…」


 フェルズが「褒美だ」といい出したのにかこつけて、公太郎は村の子供たちを彼の領地にある学校へ通わせてほしいと求めていた。


 ────ジルガの頭能には非凡なものを感じる。最悪、モノにならなくとも、身に着けた知識と教養はイリスを助ける力になるはずだ────


 魔王たる自分へのそんな図々しさが、かえって心地よかったのか、フェルズは二つ返事で了承した。


 しかしながら、この村から学校まではかなりの距離がある。ならば飛竜の出番というわけだ。


 「ありがとうございます、ハムタロ様。僕、がんばって勉強します!」

 「そ、そうかー…」


 少年の邪気のないキラキラしたまなざしが眩しい。こういう時、えてして大人は妙にうしろめたい気持ちになる。


 「感謝なんてする必要ないわよ」


 公太郎の頭上スレスレをからかうようにかすめて、最後の飛竜が滑空してきた。


 「聞いてたのかー、リュナ」


 リュナは見事な手綱さばきで飛竜を操り、ほとんど砂塵を巻き上げずに着地させる。


 「ハン…別に。ただなんとなく、そんな話をしてる気がしただけ」


 トレードマークのツインテールをサッと手で払いながら、リュナが地に降り立つ。銀の仮面がきらりと日の光を反射した。

 痕が消えてからもリュナは変わらず仮面を着けている。リュナがいうところ「アタシの素顔は他人に(特に男に)見せてやるほど安くはない」そうだ。きっと恥ずかしいんだろう。長年仮面姿ですごしてきた事情を考えれば、わからなくはない。


 変わらなかった、とえいばもう一点。


 純白のワンピースで淑女然としていたのはなんだったのか、今はまた赤いビキニアーマーという煽情的な装い。オペラグローブと膝下までのブーツを着用しているのを除けば、見た感じほぼ下着か、よくて水着だ。………寒くないのか?あれ。

 それでも、上から丈の長い白のマントを羽織っているので、女戦士で通らなくもない。痴女そのものの最初よりはまだ常識的だ。


 「ハムタロは飛竜に乗りたくないだけ。アナタに体よく押し付けてるのよ」

 「うへー。バラすなよー」


 リュナは腰に手を当てながら、ジルガに遠慮なく事の真相をぶちまけた。



 さも当然のようにリュナがここにいる理由────


 実のところ、公太郎はフェルズにさらにひとつ要望していた。


 『街ができたら交易をしてほしい』


 フェルズはさすがに、それについては即答を避けた。どんな街がつくられるのか、どんなものがそこで生産されるのか、まだ道筋も見えてない段階なのだから答えようもないのは当然だ。


 だがフェルズは「フン…考えてはやる。本当に街ができたら、の話だがな」といい残し、彼との連絡要員、橋渡し役、兼お目付け役としてリュナを派遣してきたのだ────



 「飛竜に乗りたくないわけではないー。ひとりでは無理というだけー」

 「ならアタシが教えてあげる。さ、行きましょ?」

 「ええー…」


 リュナが自然に手を差し出した。断られるなどみじんも考えてない素振(そぶ)りだ。


 実際、飛竜には乗ってみたくはある。ただ、それなりの心の準備がいるというか。


 どうしたものかと公太郎が額を押さえると、脇のイリスがビシッと手を挙げて反応した。


 「わたしもっ!お義姉さま、わたしもお願いします!お義姉さまみたいに上手くなりたいです!!」

 「もちろんよ、イリス。じゃあ…順番ね?」

 「わぁっ!ありがとうございます、お義姉さま!!」


 姉妹が仲良く微笑みあっている。まずい方向に話が進みそうで、公太郎は焦った。


 「まてまてまて、待ってくれー。今から北の山に向かうんだろー?それはまた今度にしようー」

 「う…。それも、そうですね…」


 イリスが残念そうにうなずく。


 「北の山に向かうのは、ゼナ様の夢見によってですよね?」


 ジルガが誰にというわけでもなく、つぶやいた。


 「やはり…討伐する、ということですか?」

 「討伐ー?なにをー?」


 本題に戻したつもりが、話が(かえ)って不穏なものになりはじめ、公太郎は身震いした。

 答えはジルガではなく、イリスが引き継ぐ。


 「古代竜。1000年以上生きた、大型のドラゴンです」

 「ドラッーッ!!」


 その名詞に、公太郎はひっくり返りそうになった。


 ドラゴン。説明不要の超絶有名…人?キングオブモンスター、誰もがご存じ大人気の魔物である。ぜひとも見たい、会いたい………会いたい…が、え?それと戦うの?これから?現実で?そういう話なの、コレ???



 「お義姉さま…、どう思います?」

 「竜がメスかオスか、次第。オスなら、アタシに勝てる男はいないわ」

 「わぁ。さすがお義姉さま。わたしは、とても…」


  上半身をそらして自信満々なリュナにイリスは素直に感心している…が、メスだったらどうすんだ。


 「実際問題、どっちなんだー?ジルガ、知ってたりしないー?」

 「…ボクは、わからないです。ただ…」


 公太郎としてもほとんど無茶ぶり、答えを期待してない問いかけに、ジルガはまじめに考え込む。


 「以前…ゼナ様がお話をしてくれたんですが、1000年くらい前、人間の勇者が竜と戦ったそうですね」

 「へー?おとぎ話みたいだなー」


 リアルに「1000年前の勇者」とかいう単語が出てくるあたり、さすがは異世界という感じだ。日本だとちょうど鎌倉時代か。歴史マニアでもなければ「この前、義経がさぁ~、チンギス・ハンでさぁ~」なんて会話は日常じゃまずしない。


 「おとぎ話では ないよ」

 「…おばあさまっ!」


 ゼナが眠たそうに目をこすりながら、見送りにやってきた。イリスが嬉しそうに駆け寄る。


 「当時この辺りで 生きてた者なら 誰もが目にした 戦いだ」

 「ゼナも見たってことー?」

 「ボクを いくつだと 思ってるんだ。本人に 聞いたことがある だけさ」


 ゼナが少し頬をふくらませた。そんなつもりはなかったが、年齢にかかわる話は地雷のようだ。だがそれより。


 「本人…?竜に会ったことがー?」

 「竜の魂の分体が 分身みたいなものだが ボクを 訪ねてきた ことがある」

 「マジかー」


 途端に皆がざわつく。


 「ボクは ひとつ夢見を してやった。…なんだったかな?探し物が… とかだった気がする。そういえばその時、 恩寵の宝珠(オリジン・コア)を 謝礼に置いていったよ。前に イリスに あげたやつだ」 

 「恩寵の宝珠(オリジン・コア)ですって…!?」


 恩寵の宝珠(オリジン・コア)のフレーズにリュナが驚きをもって反応した。とても貴重な物だとは聞いてたが、魔王の妹にすらそうらしい。「俺がこの前、飲みました」なんて軽々しくいったらぶん殴られそうなので公太郎は黙っていることにした。


 「ハムタロに飲ませたやつですね。あの時は、持っててよかったぁ」


 イリスが嬉しそうにぴょんと飛び跳ねて、あっさり顛末をぶちまけた。……視線を感じる。リュナがめっちゃ見てる気がする。公太郎はあえて気づかないふりをした。

 

 「ボクが いいたいのは 話が通じないヤツでもない ってことさ」

 「討伐とか戦うなんて話ではないってことー?」

 「そうだ。悪い夢の感じは しなかった。もしそんな夢見なら ボクは 黙っていた。危険すぎる。誰も 特にイリスを 行かせるつもりはない」

 

 ゼナがイリスの肩をぎゅっと抱く。イリスは少し恥ずかしそうに照れた。


 「だけど しつこいようだけど ボクの夢見は 確実ではない。正直にいえば 行ってほしくはない。もしも…」

 「お任せください、ゼナ様!」


 リュナが姿勢を正して直立する。人をからかうような雰囲気は消え、口元は真一文字にひきしまり、戦士の顔だ。


 「イリスは、義妹は、アタシが責任をもってお守りします!」

 「うん ありがとう リュナ。心強いよ。でも そうなったら キミも 戦おうとしては いけない。逃げるんだ いいね?」

 「はい。わかっております」


 …なんかリュナから妙にやる気を感じる。


 まあ、やる気があるのはいいことか。



 そうしてイリスとリュナはそれぞれ出発の準備のため、飛竜のもとへ向かった。


 「ハムタロ」


 どちらの飛竜に同乗させてもらおうか、やはりイリスだな…と考えていた公太郎をゼナが呼び止めた。


 「イリスとリュナのこと よろしくたのむよ」


 ゼナがぺこりと頭を下げる。


  「もちろんだー」


 …と、いってみたものの、なにができるか、できることがあるのかはわからない。とりあえず、気合いだけは入れておこう。


 「ボクは キミが カギを握ってる、 そんな気が するんだ」

 「カギかー」


 いずれにせよ、行ってみないとわからない。


 虎穴に入らずんば虎子を得ず。


 この場合は竜穴か。


 竜穴の先で得られるものは果たして────





 …………竜だけ見たら帰るとかじゃ、ダメ?

TIPS:竜は最強

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