【VRChat】プロフィールのPronouns(代名詞)欄って何? 基本的な使い方の紹介から日本語における応用の提案まで【寄稿】

VRChatのプロフィールに代名詞欄が追加されました!(1)

代名詞欄には、あなたが呼ばれたい代名詞敬称(さん・くん等)、ふりがなあだ名一人称(私・僕等)などを書くことができます。

今回はあまりピンと来ない代名詞欄について理解を深めるために解説していこうと思います。

代名詞(Pronouns)欄の設定方法

VRChatのプロフィールで代名詞を設定することができるようになりました。

そして、2025年4月30日から正式版(1)でネームプレートの下側に代名詞が表示されるようになりました。

ネームプレートの下に「they/them」と表示されている(黄枠)

ウェブサイト上では、Age Verification(年齢確認)とLanguages(言語)の間に、Pronouns(代名詞)を設定する項目があります。

ウェブサイトにおけるプロフィールのPronouns(代名詞)欄

VRChatゲーム内では、Edit Profileの一番下に代名詞を設定する項目があります。

VRChatゲーム内におけるプロフィールのPronouns(代名詞)欄

代名詞を設定するとプロフィールの自己紹介の上に表示されるようになります。ここから代名詞を変更することもできます。

代名詞欄を設定すると自己紹介の上に表示される

なお、代名詞を非表示にしたい場合は “Unlisted” を選択することで隠すことが可能です。

選択肢から “Unlisted” を選ぶと代名詞が非表示になる

代名詞欄は何のためにあるの?

代名詞欄は、三人称単数の代名詞が性別によって変化する言語(英語など)において、自分の性自認に合った代名詞を周囲に知らせるために作られた仕組みです。 歴史的には、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々が、自分の望まない呼び方で呼ばれ続けることで傷ついたり(2)、排除されたり(3)してきた背景があります。 これはただの形式的な設定欄ではなく、本人の尊厳とアイデンティティを守るための手段です。

また、VRChatで特筆すべき点として、男性ユーザーが女性アバターを使用することがあったり、その逆もあれば、そもそも人間じゃないアバターを使用するユーザーもいて、どのように呼べばいいか難しい問題があります。このようなときに代名詞欄が役に立ちます。

では代名詞欄にはどんな内容を書けばいいのでしょうか? 次の2つの章では、具体的に何を書けばいいかについて説明していきます。

英語の代名詞

VRChatのプロフィールでは、代名詞欄の候補からよく使われる英語の代名詞を選択することができます。代名詞欄は「Other…」から自由記述が可能ですが、いくつかの英語の代名詞はSuggestions(候補)から簡単に選択することができます。この章では、これらの代名詞がそれぞれどういう意味を持つかについて説明します。

Suggestions(候補)から英語の代名詞を選択可能
代名詞選ぶポイント
they/them性別を決めたくない、秘密にしたい、男でも女でもないと感じる
he/him男性として呼ばれたい、男性として認識されたい
she/her女性として呼ばれたい、女性として認識されたい
it/its使用はまれ
anyどれでもいい、好きに呼んでほしい
ze/zir と xe/xemhe/she以外の特別な言葉を使ってほしいとき(ノンバイナリー、または独自の表現をしたいとき)
Other…それ以外の代名詞、または英語以外の代名詞など、自由に記述することが可能
VRChatで選択することができる代名詞の一覧とそれぞれの選ぶポイント(4)

1️⃣they/them

英語の授業などでは they/them を「彼ら」「彼女ら」と複数形で訳します。しかし、最近では単数として性別を限定しない人を指すために使われるようにもなりました。(5, 6)

こんな人におすすめ!

  • 自分の性別をはっきりと「男」「女」と決めたくない人
  • 性別を明かしたくない人
  • ノンバイナリー(男性でも女性でもない性自認)な人
they/them

2️⃣he/him

he/himは男性を指す代名詞です。日本語で「彼」と訳します。

こんな人におすすめ!

  • 自分の性別を男性だと考えている人
  • 外見に関係なく男性として扱われたい人
he/him

3️⃣she/her

she/herは女性を指す代名詞です。日本語で「彼女」と訳します。

こんな人におすすめ!

  • 自分の性別を女性だと考えている人
  • 外見に関係なく女性として扱われたい人
she/her

4️⃣it/its

it/itsは本来モノや動物に使われる代名詞です。日本語では「それ」と訳します。

この代名詞を選択することはまれで、どのように使用されているかインターネット上で文献を探すことは困難でした。しかし、ベルギーに住んでいる友人の話では、周囲にit/itsという代名詞を使う人が何人かおり、その人たちの気持ちについて代弁してくれました。以下、引用文です。

「英語でit/itsを人に対して使うことは、幼い赤ん坊や物、非人間の動物に対してしか使わないため、非人間化していると見なされることが多いです。しかし、一部の人々は心の底から『非人間的』だと感じたり、小さな生き物のように扱われるのが好きだったりするため、it/itsの代名詞を選ぶ人もいます。特にVRChatでは、ロボットや動物のアバターを使うユーザーが体現しているアイデンティティに合致するため、it/itsを使う可能性があると思います。」

it/its

5️⃣any

anyは「どれでもいいよ」という意味です。代名詞にこだわりがないという意思表示です。(7)

こんな人におすすめ!

  • どの代名詞でも呼ばれて構わない人
  • 相手が好きな代名詞で呼んでほしいと思っている人
any

6️⃣ze/zir と xe/xem

ze/zirとxe/xemは新しく作られた代名詞で、英語の he/him(彼)、she/her(彼女)に代わる、中性的な代名詞です。they/themを使用することをあまり好まない人のために使用されます(8)

ze/zir の場合

日本語で代名詞欄を活用する

日本語では会話で代名詞(彼、彼女)を使うことがまれなため、基本的に代名詞を明示する必要性が出てくることはありません。

一方で、敬称(さん・くん等)、ふりがなあだ名一人称(私・僕等)を指定するというアプローチもあります。英語圏ではどのような代名詞で呼ばれたいかを気にする人々がいるように、日本語圏ではどのように名前を呼ばれたいかを気にする人々が一定数いると思われます。そんなときに日本語で代名詞欄を活用することができると考えています。この章では、日本語圏のコミュニティで代名詞欄のどのような活用方法があるかについて提案します。

ここからは完全な私見になります。

英語圏において、代名詞はジェンダー表現を契機として広まりましたが、「どのように呼ばれたいか」という関心自体は、言語にかかわらず多くの人々に共通するものです。英語では偶然、ジェンダーアイデンティティがその中心にありますが、日本語ではむしろ名前の読み方や表記に対して強いこだわりやアイデンティティを持つ方も見受けられます。

つまり、代名詞欄は単にジェンダーだけに限らず、「自己の呼称に関する意思の尊重」という広い文脈で捉えることも可能だと考えています。ただし、この活用法は、VRChatの開発者が意図した本来の「ジェンダー表現のための代名詞」という設計思想とは乖離している可能性があります。その点については、あらかじめご理解いただければ幸いです。

1️⃣敬称(さん・くん等)を指定する

敬称(さん・くん)を指定する方法があります。たとえば自分の名前が「ななし」だとして、「ななしちゃん」と呼ばれたいなら「ちゃん」と指定することができます。また「ななしちゃん」という名前で「ななしちゃん」と呼ばれたいのに「ななしちゃんさん」と呼ばれてしまうときにも有効です。

skytomoちゃんと呼ばれたい場合

2️⃣ふりがなを振る

難しい漢字やLeetにふりがなを振るという方法もあります。たとえば著者の名前は「skytomo」ですが、「すかいとも」と呼ばれたいので代名詞欄に「すかいとも」と記述するといった感じです。

注意点として代名詞欄が8文字(英語は16文字)を超えると後ろが省略されてしまいます。

skytomoを「すかいとも」と読んでほしい場合

3️⃣あだ名を指定する

自分がどのようなあだ名で呼ばれたいかを気にする方はそれを指定することもできます。私はこのタイプで、いつも代名詞欄にはあだ名を入れています。

注意点として代名詞欄が8文字(英語は16文字)を超えると後ろが省略されてしまいます。短いあだ名を設定しましょう。

ともさんと呼ばれたい場合

4️⃣一人称を指定する

まれだとは思いますが、代名詞欄に一人称を設定するという活用方法についても触れておきます。日本語では、三人称の代名詞(彼・彼女)の使用頻度が低い一方で、「私」「僕」「俺」などの一人称代名詞を多種多様に使用します。これは個人的な感想であり、ほとんどの方は意識していないと思いますが、日本語の一人称代名詞にはある程度のジェンダーアイデンティティが含まれていると思います。自分のジェンダーアイデンティティやキャラクター性を明示的に伝えたいときには、一人称を代名詞欄に記載するというのは一つの有効な手段かもしれません。

一人称が「私」であることを主張したい場合

代名詞欄を適切に使おう

代名詞欄の使い方を一通り説明しました。実はもう一つお伝えしたいことがあります。それは代名詞欄に関係のないことを書かないでほしいということです。これはVRChatに限らず、すべてのプラットホームにおいて言えることです。

代名詞欄は以下のようなことを書く場所ではありません:

  • 今日の天気や気分
  • 好きな曲やアバターの名前
  • 面白い内輪ネタやミーム的な投稿

それらはステータス欄や自己紹介欄に書くべきです。

代名詞欄に関係のないことを書くことが良くない理由は2つあります。

1つ目は、設計者の意図通りに使われていないという問題です。アバターの作者の意図しない改変が問題視されるのと同様に、エンジニアの意図通りに使用されないことはもう少し問題視されたほうがいいです。

2つ目は、ジェンダーに関わる人々の軽視につながるという問題です。この問題は1つ目より深刻です。画像のALTに画像とは関係のない文字列を書くことで、視覚障害者やインターネット環境の悪い人々などに対して混乱を招くことと同様に、ジェンダーアイデンティティを重要視している人々にとって混乱を招きます。

これらのことから、代名詞欄に関係のないことを書くのはもう少し慎重になったほうがいいと考えています。

記事を書いたきっかけ

先日、VRChatワ―ルドの1つであるNAGiSAに初めて行ったときに、ベータ版で遊んでいる方に代名詞欄のことについて尋ねられました。ひとしきり説明した後に、話し相手の方に「じゃあ、そこに自分の好きな言葉を入れられますね!」と言われてしまいました。私はそれはやめた方がいいと言ったものの、残念ながらその意見は取り入れられませんでした。後日、その方のプロフィールの代名詞欄には「めっちゃ賢い!」と書かれていました。残念ながらそのアプローチはあまり賢いとは思えません。

私はうまく伝えられなかったことを悔やみ、この欄の重要性について広く周知させるために、この記事を書きました。この記事を読んでもなお代名詞欄に関係のないことを書きたい人はいるでしょう。……それでも、この欄は、本当は代名詞を書くところであることを知ってくれれば幸いです。

VRChatグループ『代名詞欄でふざけるな』を作りました

代名詞欄にふざけた内容を書く行為を減らすためにVRChatグループを作りました。自由に出入り可能です。良かったらぜひ入ってください。

https://vrc.group/PNAJ.1393

代名詞欄に変なことを書いている人を見かけたら、こっそりこのグループを掲示してみましょう。

関連する外部リンク

参考文献

  1. VRChat Inc. VRChat 2025.2.1 (OPEN BETA). 2025. https://docs.vrchat.com/docs/vrchat-202521-openbeta, (accessed 2025-04-28). “Profile Editing got a refresh and we added a new field: Pronouns!” 「プロフィール編集が更新され、新しい欄『代名詞』が追加されました。」
  2. Kai Jacobsen, Charlie E Davis, Drew Burchell, Leo Rutherford, Nathan Lachowsky, Greta Bauer, Ayden Scheim. Misgendering and the health and wellbeing of nonbinary people in Canada.
    International Journal of Transgender Health. 2023, vol. 25, no. 4, pp. 816–830, doi:10.1080/26895269.2023.2278064 “Misgendering was a frequent and distressing experience for nonbinary participants, with 59% misgendered daily, 30% weekly or monthly, and only 11% yearly or less. Most (58%) reported being very or quite upset when misgendered.” 「ノンバイナリーの参加者にとって、性別を誤って表現されることは頻繁で苦痛な経験であり、59%が毎日、30%が毎週または毎月、わずか11%が年に一度以下の頻度で誤って表現されたと回答した。回答者の大半(58%)は、性別を誤って表現された際に非常に、またはかなり動揺したと回答した。」
  3. Lori E Ross, David J Kinitz, Hannah Kia. Pronouns Are a Public Health Issue. American Journal of Public Health. 2022, vol. 112, no. 3, pp. 360–362, doi:10.2105/AJPH.2021.306678. “A national US study identified that TGD people were more than twice as likely to be living in poverty (29%) as cisgender people; this is likely attributable to unemployment rates that are three times the national average, earning lower wages than their cisgender counterparts, and experiencing workplace discrimination and harassment that result in being fired, resigning, or being denied promotion.” 「米国の全国調査では、TGD [トランスジェンダー及びジェンダー多様性]の人々が貧困状態にある可能性 (29%) がシスジェンダーの人々よりも 2 倍以上高いことが判明した。これは、失業率が全国平均の 3 倍であること、シスジェンダーの人々よりも賃金が低いこと、職場での差別や嫌がらせにより解雇、辞職、昇進を拒否されていることなどが原因であると考えられる。」 “Corroborating findings from Canada indicate that TGD people face higher rates of employment discrimination (2.2 times) and harassment (2.5 times) than do their cisgender peers, despite workplace protections. Almost 30% of TGD people reported that they were, or thought they were, fired for being TGD, whereas 50% were, or thought they were, denied a job for being TGD.” 「カナダからの裏付け調査結果によると、職場での保護があるにもかかわらず、TGD の人々はシスジェンダーの同僚よりも雇用差別 (2.2 倍) や嫌がらせ (2.5 倍) を受ける割合が高いことが示されている。 TGD の人々の約 30% が TGD を理由に解雇された、または解雇されたと思ったと報告し、50% が TGD を理由に仕事を拒否された、または拒否されたと思ったと報告している。」
  4. Them. Gender-Neutral Pronouns 101: Everything You’ve Always Wanted to Know. 2022. https://www.them.us/story/gender-neutral-pronouns-101-they-them-xe-xem, (accessed 2025-04-29). 代名詞の表を参照。
  5. Jennifer E. Arnold, Heather C. Mayo, Lisa Dong. My pronouns are they/them Talking about pronouns changes how pronouns are understood. Psychonomic Bulletin & Review. 2021, vol. 28, pp. 1688–1697, doi:10.3758/s13423-021-01905-0. “In three experiments, participants read short stories, like ‘Alex went running with Liz. They fell down.’ Answers to ‘Who fell down’ indicated whether participants interpreted they as Alex or Alex-and-Liz. We found more singular responses in discourse contexts that make Alex more available: when Alex was either the only person in the context or mentioned first.” 「3つの実験で、参加者は『アレックスはリズとランニングに行った。”they” は転んだ』といった短い物語を読んだ。『誰が転んだか』という質問に対して、参加者が “they” をアレックスと解釈したか、アレックスとリズと解釈したか、回答を選ばせた。アレックスがより登場しやすい談話文脈、つまりアレックスが文脈内で唯一の人物であるか、最初に言及されている場合、単数形の回答がより多く見られることを見出した。」
  6. Jennifer E. Arnold, Ranjani Venkatesh, Zachary Vig. Gender Competition in the Production of Nonbinary ‘They’. Glossa Psycholinguistics. 2024, vol. 3, no. 1, doi:10.5070/G60111306 “In both experiments we found that for this population, nonbinary pronouns are favored in the same one-character discourse contexts as binary pronouns and tend to be produced at roughly the same rate (or even a little more). This suggests that nonbinary they has been subsumed into the same pronoun production framework as binary singular pronouns.” 「どちらの実験でも、この母集団において、ノンバイナリー代名詞は、バイナリー代名詞[he/him や she/her などのように、性別を男女の二元的にする代名詞]と同じ一字談話文脈において好まれ、ほぼ同じ割合(あるいはそれよりわずかに高い割合)で生成される傾向があることを見出した。これは、ノンバイナリー代名詞が、バイナリー代名詞と同じ代名詞生成の枠組みに組み込まれていることを示唆している。」 “At the same time, we found that participants exhibited speech patterns that signal mild difficulty with using nonbinary they. In both experiments, there were about 8 or 9% misgendering errors, which in all cases emerged as the use of he/him/his for Alex. We never observed any use of an incorrect gender pronoun in the binary condition. In addition, productions of they tended to be more prosodically prominent, signaling a less fluent delivery.” 「同時に、参加者はノンバイナリーの they の使用に軽度の困難を示唆する発話パターンを示していることも見出した。どちらの実験でも、約8〜9%の性別を誤って表す誤りが見られ、いずれの場合も Alex に対して he/him/his が使用されていた。バイナリー[代名詞]で実験した場合では、性別を誤って表す代名詞の使用は観察されなかった。さらに、theyの発音は韻律的に顕著になる傾向があり、流暢さに欠ける発音であることが示唆された。」
  7. Them. Pronouns 102: A Guide to Using Any and All He/She/They Pronouns. 2022. https://www.them.us/story/any-pronouns-all-he-she-they-guide-how-to-use-explainer, (accessed 2025-04-29).
  8. Queerty. All about Ze/Zim & Xe/Xem pronouns. 2022. https://www.queerty.com/ze-zim-xexem-pronouns-20220717, (accessed 2025-04-28). Quoted: “Some non-binary people aren’t particularly fond of the singular “they” pronoun. Instead, they use neopronouns like ze/zim/zirs and xe/xem/xyrs.” 「ノンバイナリーの人の中には、単数形の代名詞 “they” をあまり好まない人もいます。彼らは代わりに、ze/zim/zirsやxe/xem/xyrsといった新代名詞を使います。」
寄稿者紹介

skytomo

いろんなことをやってみたいVRChatプレイヤーです。VRChatを4年やってプレイ時間は2000時間です。これから16年かけてプレイ時間10000時間を目指していきます。

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バーチャルライフマガジン編集部
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