342 山白朝子 「私の頭が正常であったなら」
- 2018/07/07
- 07:54
山白朝子(乙一)ならではの哀しい短編集。
哀しいだけではなく「切なさ」が湧いてくるところが、山白朝子ならではだ。
そこが忘れられず、たまに書評で彼の哀しい小説が出たと目にすると、どうも読みたくなる。
もう一つ、乙一にたまに会いたくなるのは、そのトリックや着想の独創性。
独創性はスティーブン・キング並みだ。何でこんなことを思いつくのだろう♪ ってね。
切なさと、驚くべき着想。これら二つを兼ね備えた作家を、私はまだ他に知らない。
「世界で一番、みじかい小説」:幽霊を見るようになった夫婦が、その訳を探ると思いがけない事が・・・
タイトルはヘミングウェイの「For Sale: Baby shoes, Never worn.」からと思われるが、そこへの繋がりはちょっと乱暴かな。
「首なし鶏、夜をゆく」:性根が悪い叔母にいじめ育てられている近所の風子の話。
彼女が飼っている鶏には首が無くて・・・
「酩酊SF」:「同棲している彼女は家で飲んでいると、時折未来にスリップしてしまう」と後輩のNから相談された。
彼女から「血まみれのあなたが、床で倒れていて動かなかい」と言われたNは・・・
「布団の中の宇宙」:何年も新作を出せなかった作家仲間のTが、急に創作を再開した。
その訳は「使い始めた中古の布団の足元の方から、夜な夜な違う「何か」が訪れて・・・」
「子どもを沈める」:高校のいじめグループの3人が、次々と自分の子を殺した事を「私」は知る。
いじめられていた頼子は当時自殺し、「私」もグループの側に居て少しいじめに関わっていた。
3人のうちの幸恵から手紙きて「あなたが結婚すると聞いたが子をなすな。日々頼子に似てきて、私は殺してしまった」と。
だが「私」にも女の子が生まれて・・・
「トランシーバー」:三歳の息子のヒカルとトランシーバーでかくれんぼや通信ごっこをしていた。
だが地震の津波がヒカルも妻も奪っていった。
自暴自棄な暮らしを続けていたが、トランシーバーから「パパ、おしりー」とヒカルの声が漏れてきて・・・
「私の頭が正常であったなら」:別れた夫が目の前で娘と無理心中してしまい、「私」はずっと心療医と妹の世話になっている。
散歩中にある場所にさしかかると「ママ・・・おねがい・・・パパ」と聞こえてきて・・・
「おやすみなさい子どもたち」:客船が沈み死んでしまった「私」は、「あの世」へ行く前に走馬燈を見せられるのだが、
「あれ、あなたの走馬燈がないですね、どうしたんでしょう」と天使に言われ一緒にその訳を調べ始める。
最も切なかったのは「トランシーバー」だ。
三歳のヒカルは覚えたての下品な単語を嬉々として使っている。
「おっぱい」「おなら」「ちんこ」ってね。
そうだった、そうだった。彼らは瑞々しくピカピカに輝いている。
もう一つ乙一の小説の魅力を挙げるなら、「哀しく、切ない」というところで終わらず、
「その先の光を指し示し」ていたり、
「辛いけれど、それもありだよ(前へ行こう)」と後押しをしていたりするところだ。
それも「さらっと」ね。
自分でみなぎらせてね、ということなのだろう。
(2018/7/1)


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哀しいだけではなく「切なさ」が湧いてくるところが、山白朝子ならではだ。
そこが忘れられず、たまに書評で彼の哀しい小説が出たと目にすると、どうも読みたくなる。
もう一つ、乙一にたまに会いたくなるのは、そのトリックや着想の独創性。
独創性はスティーブン・キング並みだ。何でこんなことを思いつくのだろう♪ ってね。
切なさと、驚くべき着想。これら二つを兼ね備えた作家を、私はまだ他に知らない。
「世界で一番、みじかい小説」:幽霊を見るようになった夫婦が、その訳を探ると思いがけない事が・・・
タイトルはヘミングウェイの「For Sale: Baby shoes, Never worn.」からと思われるが、そこへの繋がりはちょっと乱暴かな。
「首なし鶏、夜をゆく」:性根が悪い叔母にいじめ育てられている近所の風子の話。
彼女が飼っている鶏には首が無くて・・・
「酩酊SF」:「同棲している彼女は家で飲んでいると、時折未来にスリップしてしまう」と後輩のNから相談された。
彼女から「血まみれのあなたが、床で倒れていて動かなかい」と言われたNは・・・
「布団の中の宇宙」:何年も新作を出せなかった作家仲間のTが、急に創作を再開した。
その訳は「使い始めた中古の布団の足元の方から、夜な夜な違う「何か」が訪れて・・・」
「子どもを沈める」:高校のいじめグループの3人が、次々と自分の子を殺した事を「私」は知る。
いじめられていた頼子は当時自殺し、「私」もグループの側に居て少しいじめに関わっていた。
3人のうちの幸恵から手紙きて「あなたが結婚すると聞いたが子をなすな。日々頼子に似てきて、私は殺してしまった」と。
だが「私」にも女の子が生まれて・・・
「トランシーバー」:三歳の息子のヒカルとトランシーバーでかくれんぼや通信ごっこをしていた。
だが地震の津波がヒカルも妻も奪っていった。
自暴自棄な暮らしを続けていたが、トランシーバーから「パパ、おしりー」とヒカルの声が漏れてきて・・・
「私の頭が正常であったなら」:別れた夫が目の前で娘と無理心中してしまい、「私」はずっと心療医と妹の世話になっている。
散歩中にある場所にさしかかると「ママ・・・おねがい・・・パパ」と聞こえてきて・・・
「おやすみなさい子どもたち」:客船が沈み死んでしまった「私」は、「あの世」へ行く前に走馬燈を見せられるのだが、
「あれ、あなたの走馬燈がないですね、どうしたんでしょう」と天使に言われ一緒にその訳を調べ始める。
最も切なかったのは「トランシーバー」だ。
三歳のヒカルは覚えたての下品な単語を嬉々として使っている。
「おっぱい」「おなら」「ちんこ」ってね。
そうだった、そうだった。彼らは瑞々しくピカピカに輝いている。
もう一つ乙一の小説の魅力を挙げるなら、「哀しく、切ない」というところで終わらず、
「その先の光を指し示し」ていたり、
「辛いけれど、それもありだよ(前へ行こう)」と後押しをしていたりするところだ。
それも「さらっと」ね。
自分でみなぎらせてね、ということなのだろう。
(2018/7/1)
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