サンドラがみる女の生き方

乳首解放する自由とは?ベルリンの市営プールは女性もトップレス

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それでも女性は乳首を隠す

当たり前ですが、「トップレスでの遊泳が可能になった」だけで、今まで通りワンピーススタイルの水着を着たり、ビキニのトップを着用したりして泳いでもよいわけです。現に、ベルリンの市営プールで全員がトップレスで泳いでいるわけではありません。

ドイツには19世紀からFKK(Freikoerperkultur)と呼ばれる「裸体主義」の文化があります。 サウナも男女混浴 で、「裸」には慣れているはずのドイツ人ですが、今回トップレスでの遊泳が可能になったことについて、驚いている人も少なからずいます。

水着を着用したある女性は「(自分は)トップレスはやはり恥ずかしいですね。引き続き水着を着て泳ぎます」と語り、ある男性は「思春期の男の子などが(トップレスで泳いでいる女性を)からかうといった、失礼な言動をしないか心配だ」と話したそうです。

そこまでして裸で泳ぎたいのか――。日本の感覚だと不思議に思いそうなものですが、不服申し立てをしたLotteさんは、「上に何もつけないで泳ぐのは解放感がある。(つけているのと)全然違う。生地が食い込んで邪魔になることもなく、自由に泳げる」と説明しています。

これを聞いて、筆者は少し納得した気がします。筆者も水泳が好きですが、日本在住ですので、当然ながらいつも水着を着用して泳いでいます。でも数年前、今は閉店となった砧温泉のなかにある小さなプール(女性の浴場に隣接し、プールと浴場間を出入りできる作りになっていた)で裸で泳いだところ、気持ちいい! なんともいえない解放感に包まれました。それまで「水着を着る」のを窮屈に感じたことはありませんでしたが、偶然、裸で泳いでみたら「こんなに気持ちいいんだ」と思ったわけです。

ベルリンの市営プールで、「性別に関係なく誰もがトップレスで泳いでよい」ことになったのは、画期的なことです。でも、ベルリンの全ての市営プールを管轄するBerliner Baederbetriebeの広報を担当する女性は、今回の決定について、「これからもずっと続く最終的な決定ではない」とし、「ドイツには色んな国の様々な宗教の人が住んでいます。もし彼らから(トップレスで泳ぐ女性について)苦情が寄せられたら、そのことを新たに審議し、解決案を見いださなければいけません」と語りました。

ドイツには、イスラム教徒がたくさん住んでいますが、基本的に「男性もいる公共の場で女性が肌を露出する」ことには否定的な立場の人が多いです。今後、新たな展開があるかもしれないというわけです。

“見る男性と見られる女性”のおかしさ

近年、価値観の変化に伴い「女性の乳首」は度々議論の対象になっています。イギリスの女優フローレンス・ピューが昨夏に「胸が透けてみえるドレス」を着たところ、多くの人から批判されました。

これに対して、彼女は、「従来の(男性中心の)ハリウッド的価値観に抵抗する」と述べ、自らのSNSに#Free the Nipple(乳首解放運動)というハッシュタグをつけてドレス姿を投稿しました。同氏は、「どのような女性の身体が魅力的なのか」の基準を「新たに作っていきたい」としています。

考えてみると、たしかに「女性の乳首は隠すべきだが、男性の乳首は隠さなくてよい」ことに、何ら合理的な理由はありません。私たちは「なんとなく」女性は乳房や乳首を隠す(覆う)のが当たり前だと思っていますが、男性中心の価値観に女性自身が縛られているという見方もできます。

筆者のドイツ人の知人女性は、日本のプールにワンピースの水着を着て入ろうとしたところ、胸元にパットがついていなかったことから、スタッフに「(乳首が透けて見えるので)ニプレスを貼った上でお入りください」と言われたそうです。女性の乳首については、気配だけでもここまで細かく厳格なのに、男性は「丸出し状態」です。

SNSでも普段の生活においても、「女性の乳房や乳首は隠すべき」というのがいまだにスタンダードになっていますが、LGBTQの人にスポットが当たっているいま、そこまで「男か」または「女か」で対応を分ける必要はないのかもしれません。(コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)

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プロフィル

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年以上。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」。著書に「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)など。新著は「ドイツの女性はヒールを履かない――無理しない、ストレスから自由になる生き方」(自由国民社)。
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