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第55話 聖女から学ぶ(その3)

いつもご覧頂きありがとうございます。

 唐突に「避妊」の治療と聞いてビックリの僕と亜希ちゃんである。


 「妊娠」に対する治療、例えば悪阻の症状を軽減するとか、あるいは不妊治療とかなら分かるが、何故「避妊」なのだろうか?

 理由が気になるところである。


「はい。「避妊」の魔法による治療です。

 ちょっと前まで普通の女子高生だった私が言うのもなんですが、敢えて恥ずかしがらずに言いますと、これにはこの世界特有の事情があるのですよ。」


「この世界特有の事象?」


「はい。もしかしたらタク先輩は既に私達の同級生の我孫子から聞かれているかもしれません。」


 と言われて、僕は男の娘好きのマモル君が言っていた事を思いだした。


「もしかして、あの魔法使いが体内の魔力を解放するには「大人の階段を早く登る」必要があるってやつかい?」


「はい、そのとおりです。

 我孫子のやつが言っていたかもしれませんが、魔法士団は若い魔法使いの出会いの場の役割もあるのですよ。

 今いる若い団員さんたちはそれぞれお相手を見つけて、まあ、大人の階段を登る過程は通過されているわけですが・・。」


 と、いいながら聖ちゃんは顔を赤らめる。

 うん、あまり聖ちゃんの口からいろいろ話をさせるのも酷な状況かも。


「あれかな、大人の階段は刺激的すぎてついつい何度も登りたくなってしまうってやつかな。」


「そうなんです。タク先輩ならわかってくれると思いました。

 つまりそういう事です。

 魔法士団は貴族の子女が多いので、流石に成人したばかりで正式に婚約・結婚する前にいきなり妊娠するのも体裁が悪いということから「避妊」の魔法による治療を希望される団員さんがいるんですよ。」


「なるほど。それなら理解できるね。

 ちなみにこの治療院には「避妊」の魔法を使える魔法使いさんがいるのかい?」


「はい。といっても常駐ではなくて、セントラル王国とその周辺の国々を巡回しながら魔法による治療をされている方ですね。

 この世界で多くの方が信仰している宗教の神官さんだそうですよ。

 私はまだお会いしたことはありません。」


「うん?ではどうやって「避妊」の魔法を?」


「はい。実はここでまた初代勇者タケルの登場なのです。

 初代勇者タケルが派遣されたとき、この世界のいろんな惨状に心を痛めていたらしいのですが、その中でもいわゆる望まれずにできた子供たちが親に捨てられて孤児になっている状況を改善しようと、「避妊」の魔法を開発して人族の魔法使いに伝えたらしいのです。」


「うん。明るい家族計画ってやつかな。」


「そうです。

 なので今でも「避妊」の魔法を使える魔法使いや神官さんがある程度いて、教会や治療院などで必要な方には魔法をかけてくれるそうですよ。

 ただ、使い手が少ないので魔法の恩恵を受けることができる人は少ないらしいですが。

 しかも教会や治療院だと有料ですからね。

 まあ、教会ではお布施という体を取るそうですが。」


「なるほど。確かに簡単な魔法ではないだろうからね。」


「そうなんです。ただここの治療院には初代勇者タケルが残した魔法の詠唱文が残っていたので、それを参考にして魔法を習得することができました。」


「おお!魔法の原理が気になるね。」


「はい。実は極めて医学的というか生物学的と言っていいのかどうかわからないんですが、初代勇者タケルの残した魔法のコンセプトは簡単に言うと「受精しなければ意味はない。」って感じです。」


 なにその「当たらなければ意味はない。」的な表現は?

 無駄にかっこいい気がするぞ・・。


「そりゃそうだけど、いったいどうやって受精を妨げるのかが気になるね。」


「はい、詠唱文を読み解くと、いわゆる強化魔法の類でしたね。

 簡単に言うと卵子の表面の膜を強化して、破られないようにする感じですね。」


「ああ、物理的に受精できないようにする感じか・・。」


「そうなんです。受精しないから妊娠もしないって感じですね。

 ただ魔法の効果はそんなに長くなくて、魔法使いのレベルにもよりますがだいたい半年から1年だそうですよ。」


「なるほど。まあ、ずっと効果が続いても、今度は逆に妊娠したいときには困っちゃうしね。

 期間限定のほうが計画的でいいかもね。」


「そうなんです。

 なので逆に魔法士団の女性には人気なんですよ。

 魔法士団を寿退職するまでの間だけ避妊できればOKな感じですね。」


「ありがとう。よく理解できたよ。

 でもその治療は女性が対象だから、流石に僕が治療室にお邪魔するわけにはいかないよね。

 僕は治療室に入るのは遠慮しておくから、代わりにチャロンをお邪魔させてくれるかな?

 あとで治療の様子だけチャロンから聞くことにするよ。」


「わかりました。

 確かに治療を受けられる方は気にするでしょうしね。

 まあ、成人と言っても私より若い人たちばかりなので、若干モヤモヤはしますが・・。」


 と、言い残すと聖ちゃんはチャロンを連れて治療室に入っていった。


 廊下に残された僕と亜希ちゃんは、待合用の長椅子に座って顔を見合わせる。


「意外とこの世界は生々しい事情が多いね・・。」


「そうですね。成人年齢が早いせいか、大人の階段の登り始めも早いようで・・。

 私には少し刺激が強いかもしれません・・。

 まあ、タク先輩はいろんな意味で大人の階段を登り終えているようですけど。

 ていうか、毎晩登ってますよね?」


 と、亜希ちゃんがジト目で僕を見てくる・・。


「ま、まあ僕は既に元の世界でも成人だったしね。21歳だし。

 こっちの世界の子供達から見たらもうオジサンかもしれないよ。」


 とはぐらかす。

 亜希ちゃんと2人きりの時のジト目攻撃は精神的に厳しいぞ!

 今こそチャロンのサポートが必要かも?


「ふん。そういう意味じゃないんですけどね。

 それより、先輩とチャロンさんは毎晩のようにお楽しみのようですが、実際のところ避妊はどうされてるんですか?

 むしろ先輩が最も避妊の魔法を必要としているのではないですか?」


 と、遠慮なくぶっこんでくる。

 2人きりだとグイグイくるね?


「いや、その、実は、チャロンは種族的に子作りというか妊娠できる期間が限定的らしくて、今はその期間じゃないんだよね。

 なので、現状はあまりその点は気にしなくていいらしいんだよ。」


「なるほど。つまりやりたい放題って訳ですか。」


 ぐふう!そんなにはっきりと言わなくても!

 さっきから亜希ちゃんの攻撃がグサグサと刺さってくるぞ!

 誰か僕のメンタルに回復魔法をかけてください!


「ま、まあ言い方はアレだけど、現状はそんな感じだね(汗)。

 でもそのうち気をつけないといけない時期がくるから今日はいい話が聞けたかな。

 今後の参考にするよ。」


「そうですね。でもあれですね。

 避妊の手段が女性側にしかないのが現実として気になりますよね。

 避妊の魔法の恩恵を受けれない女性は望まない妊娠を防げないわけですから。

 元の世界にあるような、男性が使う衛生用品のような物も必要だと思いますね。」


「確かにそうだね。もしかしたらこの世界には未だゴム製品の製造技術がないのかもね。

 知識としては過去の召喚勇者もあっただろうけど、それを実現できるスキルや材料がなかったのかもしれないね。

 きっと、それが僕達をこの世界に召喚する理由の1つなんだろうね。

 元の世界の知識を活かしてこの世界の発展に繋げて欲しい、という感じかな。」


「まあ、そうなんでしょうけど・・。

 それも身勝手な話ですけどね。

 本当は自分達の努力と工夫で発展を目指すべきだと思いますけどね。

 私には勇者召喚という奥の手に甘えているとしか思えませんね。」


「うん。まあ、そうだね。僕もそうだと思うよ。

 地球でもいろんな人たちが努力を重ねていまの生活レベルや繁栄を築いてきたわけだからね。

 でも、こうやって召喚されてしまった以上は、この世界への貢献ポイントを獲得して、魔王さんとやらに帰る方法を教えてもらわないと。

 今日の話はこの世界に貢献できそうな点を見つけることができた、と前向きに捉えておこう。

 幸いにも亜希ちゃんの同級生には魔法使いや錬金術士もいるから、何か便利なものが作れるかもしれないよ。

 皆で協力すれば何かいいものができるさ。

 それが僕達とこの世界にとってWIN-WINの関係になるならそれでいいんじゃないかな?」


「タク先輩は前向きでいいですね・・。

 きっと、そういうところにチャロンさんも他の女子も・・・。」


 と、亜希ちゃんが言いかけたところで、聖ちゃんとチャロンが戻ってきた。


「終わりましたよ。お待たせしました。」


 と、聖ちゃんが僕達に声掛けする。


「お疲れ様でした。そんなに待ってないから気にしないでね。

 治療はうまくいったの?」


「はい。無事に魔法をかけ終わって、治療希望の魔法使いさんはもう帰られましたよ。

 それより、魔法使いさんから新しい魔法使い用の服ができるんじゃないか?という噂が魔法士団内で流れていて、何か知らないか?って聞かれたんですよ。

 何でもとてもカワイイ服だとか。女性の魔法使いさんの間ですごい話題になっているそうですよ。

 もしかしてタク先輩がデザインしたっていう服ですかね?」


 と、聖ちゃんに質問される。

 なんと、もう噂になっているのか?

 きっとマモル君が宣伝してくれたのかな?


「あー、多分そうかも。

 きっとマモル君が魔法士団で早速宣伝してくれたんだと思う。

 マモル君もとても気に入ってくれていたしね。」


「そうなんですね。」


「うん、それに服飾工房のチーフデザイナーや調達部のケン君からも早く作りたいって言われているんだよね。

 著作権の問題があるから早く商業ギルドに登録に行ってくれって言われてるんだよ。」


「ああ、今朝の聖女用の服のデザインのお話と一緒ですね。」


「そうそう。

 今日服飾工房に聖ちゃんの服を頼みに行くなら、聖女用の服も一般販売用として興味があるかどうか聞いておこう。

 ていうか、きっと興味があるって言うと思うので、今までデザインした服を全て登録しておくほうが早いかな。

 チャロンや亜希ちゃんの服も含めて。

 こっちの世界でどんなデザインに需要があるのかわからないからね。」


「そうですね!是非そうしましょう!

 この巫女服?はきっと獣人族の女性に流行る気がします!」


 と、チャロンもノリノリである。


「わかったよ。あとでチーフデザイナーと話をしてみよう。

 さっきの魔女っ娘服の今後の話も聞いておきたいしね。」


 と、聖ちゃんとチャロンに答える。


「ところで聖ちゃん、今日の聖女のお仕事はもう終わりなのかい?」


「実は、今日はもう1つ仕事あるんですよ。」


「おお、次はどんな魔法なの?」


「はい、次は「浄化」の魔法です。」


「おお!「浄化」の魔法!

 いかにも聖女っぽい魔法だね!」


「ええ、まあ、そんな感じですね。

 作業場所がここからちょっと離れた場所にあるので、歩いて移動しましょう。

 ご案内しますので、皆さん私に着いてきてくださいね。」


「「「はい。」」」


 と、僕、チャロン、亜希ちゃんはそろって答えると、聖ちゃんの後ろに並んで移動を開始した。

 3人とも初めて見るであろう浄化魔法への期待にワクワクしながら聖ちゃんについて歩いていく。


 その間、ウキウキな僕達は、茂みの影から僕達の様子を伺う黒い影に全く気づいていなかった・・。


最後までご覧頂きありがとうございました。


感想など頂けると励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします。

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