「新築住まいを諦めきれない」30代夫婦が抱える金銭のリアル…子ども2人も私立へ行かせたいが夫の退職金はゼロ
転勤や進学などに伴い、これから転居が増えてくる時期。今回は転居によって環境が変わってしまった安島さん(仮)のケースをご紹介しましょう。安島さんは、2人の子どもを中学から私立に進学させたうえで家を購入しても老後資金は大丈夫かのご相談でした。教育費が足りなくなるなら家の購入は諦めても構わないと考えているものの、新築住まいへの憧れは捨てきれず相談時にはかなり悩まれていたことを思い出します。実際に安島さんに行ったアドバイスを見ていきましょう。
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目次
夫の会社には退職金制度がない
まず、安島さんの家計収支や保有資産などについて見ていくことにしましょう。夫は35歳、本人は36歳、未就学の子ども2人の4人家族。毎月の収入は夫31万円、本人19万円、児童手当2万円の合計52万円、ボーナスは年間130万円です。一方、毎月の支出は39万7000円なので毎月では12万3000円の黒字です。ボーナスは90万円を貯蓄に回して、残りは子どもの行事や保険料の年払い費用などに使用しています。
保有する金融資産は貯蓄が1050万円、投資信託が149万円の合計1199万円でした。その他、2人の子どものための学資保険が600万円あります。安島さん曰くお金が余ると使ってしまうのでなるべくギリギリまで先取り貯蓄をして教育費、マイホームの購入などに備えたいとの希望も述べていました。なお、ご主人の会社に退職金はなく、また安島さんの勤務先も退職金は微々たるものなので勘定には含んでいないとのことでした。
世帯収入を考えると毎月10万の貯蓄がベター
簡単な家計収支を試算しながら安島さんには以下のようにアドバイスしました。相談時は転居されたばかりでしたので、家計収支が変動するのは致し方ないことです。ただ、安島さんの希望を叶えるには早めに支出をコントロールして平準化を計るようにしなければなりません。家計収支は支出がやや多いように思えますが、世帯収入を考えると毎月10万円を先取り貯蓄して残りのお金で生活して行くように管理するようにしましょう。
安島さんはギリギリまで先取り貯蓄してと考えられていますが、2人の子どもはまだ未就学児。子どもの成長とともに支出が増えて行くことが予想されているため、ギリギリより多少余裕を残した上で確実に貯蓄ができることを第1に考えたからです。毎月10万円、年間では120万円、ここにボーナスからの貯蓄90万円を加えると年間210万円になります。退職年齢を60歳とすれば、安島さんの退職までの24年間で5040万円の貯蓄が可能になります。現在の金融資産が1199万円、学資保険が600万円、準備できる貯蓄が5040万円ですから、安島さんが60歳までに総額6839万円の金融資産を準備することができます。
2人の子どもは私立へ行かせたい
大きな支出である2人の子どもの教育費は、中学から私立への進学を安島さんは考えていることから、小学校180万円、中学校300万円、高校300万円、大学500万円の1280万円。塾の費用も考慮すれば1人当たり1500万円位と思われます。ただ、教育費はデフレ経済下でも右肩上がりで増えてきたうえ、安島さんの子どもは2人とも未就学児であることから教育費は1人当たり1650万円、2人で3300万円としました。
60歳時点の金融資産額は6839万円から2人の教育費の3300万円を差し引くと残りは3539万円になりますが、安島さん家計支出には毎月5万4000円、年間64万8000円の教育費が計上されています。試算では毎月の教育費を考慮していないため、安島さんが60歳になる24年間では先の3539万円に1555万2000円が加わることになります。
このため教育費を支払った後の60歳時点の金融資産額は5094万円(2000円は切り捨て)になり、この金額が安島さん夫婦の老後資金になります。2人の子どもにどれだけのお金をかけるかは安島さん次第となり、今後も住み替えがあればその費用もかかるため金融資産額は5000万円を下回るかもしれません。それでも2人の老後資金としては不安になる必要はないと思われます。
マイホームも希望…適正価格は4000万円以内
では安島さんが希望するマイホームの購入も考えてみましょう。マイホームの購入を3年後とします。3年後の金融資産額は年間210万円×3年で630万円、現在の金融資産額1199万円を加えて1829万円になっています。この金額からマイホーム購入の頭金1000万円、諸費用300万円を出して、住宅ローンは3000万円を借りるとします。物件価格は4000万円です。金利2.0%、返済期間30年(ご主人が68歳時に完済)とすると毎月の返済額は11万円強になり、現在安島さんが支払っている家賃より約1万5000円アップすることになります。
頭金を300万円増やして1300万円、住宅ローンは200万円増やして3200万円、購入価額を4500万円とすると毎月の返済額が11万8300円程度。現在の家賃より2万9000円ほどアップすることになります。少々背伸びすれば4500万円の物件も手が届きそうですが、ある程度余裕を持つなら物件価格は4000万円以内に抑えるべきでしょう。それでも月1万5000円の支出の見直し(抑制)が必要になるのです。
頭金1000万円、諸費用300万円を老後資金として残すことができる5094万円から差し引くと3794万円が残ることになります。仮に教育費、想定外の支出が発生したとしても3794万円残っていれば、それらの支出を負担しても老後資金として3000万円前後は残ると思われます。
マイホームの購入は教育費の目処が立ってから
さらに、ご主人が55歳時点で2人の子どもが大学院に進学などしていなければ、卒業して自立しているでしょうから、生活コストを下げることができ、もう1度貯蓄ペースを上げることも可能になるはずです。住宅ローンの借りすぎに注意すれば、安島さんの希望通り2人の子どもを中学から私立に進学させてマイホームの購入も無理ではないでしょう。
安島さんご夫婦の年齢を考慮すれば、子どもの教育費、マイホームの購入、自分たちの働き方など、さまざまなことを考える世帯だと思われます。試算では収入は現状維持としましたが、年齢からすれば昇給はあり得ることでしょう。昇給を考えれば、先の試算に余裕を生むことになるため将来の不安を減らすマネープランにすることも可能です。反面、この先何があるかわかりません。子どもの教育費はもう少しお金をかけたいなどと考えるならば、試算ではマイホームの購入を3年後としましたが、購入は焦らず教育費の目処が立った時点でも良いでしょう。あるいは50歳以降にキャッシュで購入できる範囲でという考えたかもありえると認識されておくと良いでしょう。
相談時に気になった「死亡保障」の不足
安島さんの相談には含まれていませんでしたが、アドバイスを行うに際して気になったのが保険です。相談時に加入していた保険では、明らかに死亡保障が不足しているからです。下の子の年齢を考えると、ご主人は保険金額1500万円、保険期間15年の死亡保障を追加で加入しておくと安心できるはずです。現在加入中の保険に上乗せされると良いはずです。安島さんは死亡保障1000万円、保険期間15年の保険を現在の保険にプラスしてください。保険は掛け捨ての定期保険で十分なはずです。反面、割り切れるならがん保険は解約。医療保険はそのまま残す形で問題ないはずです。
転居されて家計を整えるのは大変かもしれませんが、毎月10万円、年間210万円の貯蓄を目標として、ご夫婦で今後何にお金をかけるべきなのかをじっくりご相談されてくださいとお伝えしました。