オランダでは売春は合法である。ただし、売春の強要は違法となっている。本人が希望すれば、売春することができるということである。「飾り窓の女」は観光名物になっている。私はオランダの売春を合法は、マリファナが合法であるのと同様に個人の責任において、個人が自由選択できる、オランダの「個人責任の原則」、「自由選択重視」の象徴のように思っていた。ところがである。このドキュメンタリーでみた「事実」はそうなってはいないのである。
オランダ人の多くは売春は体を売っている人たちが自由意志でこの職業を選んでいる、「好んで」この職業を選んでいる、と考えているそうだ。実は私もそう思っていた。日本での悲惨な「身売り」的なイメージはなかったのである。形の上ではそうなっていて、自由意志で売春を選んでいる。だが、実際はこの仕事をはじめざるおえない状況に追い込まれたり、やめられなかったり、するのである。他の国々と同じではないか。
今、オランダの売春にかかわるほとんどの人が(女性も男性もいる)、東欧のブルガリア、ルーマニア、ハンガリーからきているという。顧客の1度の値段は20-50ユーロ。私は、あまりに安いのでショックであった。ただ、私が思っていた日本でのイメージように「一晩」ではなく、「一回」である。あるもと売春に携わっていた女性(オランダ人)はボーイフレンドに騙されるようにして、売春をはじめた。彼女の告白によると1日最低20人からの客を1週間に6日間とらなければならず、10年間働いたという。この間になんと66000人の男性とセックスした計算になるという。この人数はオランダで一番大きいアヤックス・サッカースタジアムの収容人数より多い。とても人間的とはいえない!彼女はセックスの数が多く、バギナの炎症で医者にかかり2週間、安静といわれたが飾り窓部屋代(以下の写真窓一つ分の小さな部屋である)を払わなければならないので、休めなかったという。また、あるルーマニアからきている女性は(番組では現役として紹介されていた)、娘によい教育を受けさせるために働いているという。ただ、毎月の仕送りは400ユーロのみ。1日20-50人の客をとり、1日1000‐1500ユーロ稼いでいるのにである。飾り窓部屋代に月4500、斡旋料もあるらしく、別に住み場所や食事、化粧品、衣装で相当の金額が使われる。計算上、彼女が1人の客をとっても2ユーロ(300円足らず)のお金しか彼女の手元に残らないのである。
↓飾り窓の女
一方、実際に売春をしている人以外の売春関係者は犯罪グループを含み大金持 ちになっているらしい。番組ではブルガリアのなんの産業もないある小さな町で、「オランダ長者」たちが大きな屋敷をもっている様子が紹介されていた。すべ てオランダでの売春の斡旋で儲けたそうだ。1人2ユーロしか手元にのこらない売春婦にたいして、10年間づつ働かせてわかっているだけで売春婦1人あたり 最低160万ユーロ(約2.5億円)稼いでいた斡旋業者がいるという。しかし、オランダでは売春が認められているのと同様に、斡旋も違法ではなく、「犯罪」と するのは難しいのである(日本の売春禁止法は、売春も売春の斡旋も禁止されているはずである)。
オランダで売春が合法になっている背景は「違法化すると売春を巡り返って犯罪グループが利益をえることになり(禁酒法下のアメリカのことイメージ?)、売春にかかわる人々を守るためである」という建前である。これも実際は犯罪グループが「オランダでは簡単に売春で儲けられる」ということになっている。東欧からの人身売買(HumanTraficking)の先がオランダになっているのである。つまり、売春が合法であるからEU諸国になっている東欧から簡単に人々が入国し、働くための書類がそろうのである。オランダに行く経路もスロバキアやドイツを通過するとほとんどフリーパスだそうだ。でも、オランダの売春産業で、働いたところで、客一人2ユーロだし、女性たち自身が恥ずかしい職業である、といっていた。しかも、売春とは知らずにオランダにきた人が多くいるのだ。
オランダのつまなない、見映えだけの「個人の責任」や「自由選択」の原則の売春の合法はやめて(オランダの政治によくある私の苦手な特徴で「大義名分」が好き)、オランダでも売春は違法すべきである。食肉用の動物の権利保護とか、環境保全とかだけいっている場合ではないだろうに。
私はまったくもって法律の素人であるが、正義に背いて違法になるのではなく、人が作った法律(ルール)にあわなければ違法になる、ということは知っている。つまり、正義だけでは犯罪を裁き、弱きを守ることはできない。オランダでは私には政治的な権利はまったくないが(納税とか私にあるのは義務ばかり)このドキュメンタリーが韓国で映画「トガリ」が起こしたように政治を動かし、新法となることを祈る。
正直、人権(動物愛護、環境保全)とか声高々にいっているオランダで、合法のもと、売春でこのように人が人を搾取するような事実が起きている以上、違法化できなければ他のEU諸国に対して、いや世界中に対してお恥ずかしいのではないか。
*このドキュメンタリーの(超美人)プレゼンテーター・ジャーナリストのjojanneke van den bergeに私は番組の印象をメールに書きました。生まれてはじめてのことです。
↓夜のアムステルダム、RedLight地区