順大新病院中止の波紋…医師派遣不透明■予定地活用「未定」
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さいたま市内で検討されていた順天堂大学新病院計画が中止となり、波紋が広がっている。医師不足地域への同大からの医師派遣の継続が不透明となり、医療体制の見直しが迫られている。計画当初から9年以上にわたって、更地となっている建設予定地の活用も大きな課題だ。(立原朱音)
■「反省多い」
16日に開かれた県議会の福祉保健医療委員会。計画中止を受けて県議、県職員からの発言が相次いだ。
計画の調整役を担ってきた県職員は「担当として非常に申し訳ない。深くおわび申し上げます」と謝罪。委員の一人、小谷野五雄県議(自民)は、県内の医師不足に触れ「県として議員として反省するところが多い」と声を落とした。
秩父や県北部などへの医師派遣を条件に県は2015年、病院を新設する大学を公募し、同大の新病院建設が決まった。当初は20年度開院予定だったが、その後、同大は度々、開院延期を申請した。
今夏、建設費の大幅な増額が明らかになった頃から、県庁内では実現可能性を疑問視する見方が広まっていた。同大が中止を報告したのは先月29日だった。
「さいたま医療圏」で547病床不足
■支援策見直し必要
同大が今年5月に示した計画では、今年から2037年までに、延べ156人の医師を県内の病院に派遣するとしていた。同大は、派遣中の2人については任期満了まで続けるというが、今後については「協議する」としており、先行きは不透明だ。医師不足地域への支援策の見直しが必要となっている。
地域の医療機関の病床数にも影響は及ぶ。県は、県内10の2次保健医療圏別に、来年の必要病床数を示している。新病院計画がなくなったことで、さいたま市の「さいたま医療圏」では547床の病床不足となる。不足している医療圏では、入院希望者がほかの医療圏に出向くなどの対応が求められる可能性があるという。
■予定地「活用策検討」
周辺には新しい住宅や商業施設が増えている一方で、建設予定地だった約7・7ヘクタールの土地は更地のままだ。別の病院を誘致するのか、病院以外で活用するのか、「全く未定」(県担当者)という。
予定地の活用策について、県議会で大野知事は「地域の医療ニーズをうかがい、さいたま市と協議を行いながら検討していく」と答弁している。
地域のまちづくりに関する調査などを行う「一般社団法人美園タウンマネジメント」の岡本祐輝専務理事(45)は「新病院への期待は大きく、中止は非常に残念。県には住民の意見を広く聞いて、地域活性化につながる施設作りを検討してほしい」と注文する。
早急に体制整備を◆有識者
◎地域医療に詳しい城西大の伊関友伸教授(行政学)の話
「病院建設の整備費増額はいろいろな所で起きており、仕方のない側面があった。この計画は、建設決定時に県議会などの政治主導で進められた経緯もあり、県が軌道修正をはかるのは難しかったのではないか。周辺病院で医師数は増えていることから、土地の活用については、まちづくりの観点で、病院以外の施設についても柔軟に議論されるべきだ。ただ秩父などの医師確保対策は待ったなしで、県は早急に体制を整える必要がある」