第15話 出会いー1
あの日から数日、我が家に一級祓魔官試験合格通知が届いた。
「だが夜虎。これは仮免許……という奴だ」
「仮?」
「あぁ、そうだ。魔力試験、実技試験、そして面接試験。これを突破したのち、実地試験。つまり本物の罪を倒すことで正式に認められる。お前の場合は霊度3の罪を倒す必要があるな」
「それならもう倒したんだけど」
「ははは! そうだな。だが……あれは父さんと母さんと夜虎だけの秘密だ」
どうやら、そのまんま車の免許試験のようなものなのだろう。
確かに罪を倒すまでは祓魔官とは言えない。
だが都合よく罪が現れるわけでもないので、お預けということだがこれで罪と戦う権利は得たらしい。
「だが、お前にはそれよりも大事なことがある」
「え?」
「それは……」
~
「入学式だぁぁぁ!!」
というわけで、俺は今日、小学校の入学式です。
この村唯一の小学校で、全校生徒は大した数はいない。
同級生も数人しかいないだろう。
「夜虎! こっちむいてぇぇ」
綺麗な母さんとデカい父さんはめちゃくちゃ目立つ。
なんだろう、ちょっと恥ずかしい。これが思春期だろうか。
そのあともつつがなく、入学式は終わり、胸にお花をつけた俺は父さんと母さんに連れまわされて写真をずっと撮られた。
桜が散りかけている。
出会いと別れの季節、春。
前世ではついぞ叶わなかった友達というものができるのかもしれないな。
そんなワクワクとともに、俺は地元の小学校に入学した。
その日は、特に授業などはなかったのでそれで終わりだ。
父さんは用事があるとかで、どこかにいってしまったので、俺は母さんと帰宅する。
白虎家邸。
裏には山、周りは田んぼ、木々が生い茂る自然豊かな田舎村。
そこにある我が家は、瓦葺きの日本家屋だ。
改めて見ると、本当に大きい。
もう6年住んでいるのに、いまだに入ったことがない部屋もある。
まぁリビングと寝室以外行く必要もないしな。さすがは平安から続く由緒正しき祓魔師の家系。
そんな家の資産を食いつぶした魔力回復薬とはやはり相当高価なものなのだろうな。毎日100万円単位で消えてたからしかたないか。
「夜虎、お母さんちょっと食事の支度するからテレビでも見ててね」
「はーい」
今日は随分と早く食事の準備をするなと台所を除いてみると、めちゃくちゃ高そうな肉があった。
材料を見るに、すき焼き用だろうか。今日は俺の入学式だからそのお祝いかな?
すき焼き大好き、テンションあがるなぁ。
そして俺は暇だなとソファに座りながらテレビをつけた。
ニュースがやっていた。
「…………ん?」
速報。赤文字で目を引く文字の横には、こう書かれていた。
北欧連合総長――永遠の銀氷、シルバーアイス家、スウェーデンから来日。
シルバーアイス家――この前祓魔局の局長であり、貴人家当主の千歳さんが言っていた世界を牛耳る五大貴族の一角の名前だ。
その中でも北欧、どうやらスウェーデンに拠点を持ち、ヨーロッパ全土を守護する祓魔師、あちらではエクソシストともいわれる一族の名前だった。
「へぇ……来日したんだ。観光? いや、留学って書いてるな」
テレビでは多くの取材陣が、まるで他国の首相が来日したときのように空港に詰め寄っている光景がうつされていた。
目の前には、めちゃくちゃデカいプライベートジェット、そしてレッドカーペット。アナウンサーがその貴族の来日を報道している。
それだけでどれだけ五大貴族がこの世界で力を持っているかがわかった。
前世でみた大統領の来日みたいなものか。
そして次々降りてきた間違いなく日本人ではない外国人。全員エクソシストだろうか。
俺がなんとなしにテレビを見ていると、その子は降りてきた。
「うわぁ……天使みたい」
思わずそうつぶやいた。
まるで天使が地上に降りたならきっとこんな姿をしているだろう。
そう思わずにはいられない。
銀色で少しウェーブのかかった髪、青い瞳に、雪のような肌。
可愛いというものを具現化したような美少女が、屈強な男たちに囲まれて、レッドカーペットを歩いている。
年は俺と同じぐらいだろうか。
『見えますでしょうか! 今! シルバーアイス家のご息女! オーロラ・シルバーアイス様が来日されました!! シルバーアイス家の来日は、実に20年ぶりとなります! 今後も日本との良好な関係を構築するべく首相をはじめ……』
「オーロラ……シルバーアイス」
その名を俺はつぶやく。
名は体を表すというか、まるで七色に輝くオーロラのように、目を奪われる少女だった。
そこにいるだけで、空気が変わってしまいそうなほどの……美しさ。
「すごい子もいるんだな、お姫様みたい。……オーロラ姫か、まるでおとぎ話だな」
オーロラ姫が、長すぎるベンツに乗ったところで、俺はテレビを切った。
しかしずっと無表情で、一度たりとも笑わなかったな。
なんだが……少し悲しそうにも見えた。
「よし、修行でもするか」
夕飯まで少し時間があったので、庭で魔術の修行をして、汗をかく。
そのあと、お風呂が沸いたので夕飯前に先に入ることにした。
お風呂に入りながら、俺はまたあの少女を思い出す。
あれが世界を守護する五つの貴族の一角、紫電家と並ぶシルバーアイス家か。
いや、今はもう並べないんだったか。ヨーロッパ全土を守るとなるとその強さは想像できない。
「どんな血継魔術を使うんだろう……見てみたいな」
きっと今頃高級ホテルとか、日本の首相とかと挨拶して、全力の接待を受けてるんだろうか。
もし何かあれば外交問題どころか、戦争とかになりそうだしな。
でもこういった人脈を作ることが明日の日本を作るのだろう。たぶん千歳さん辺りがとても大変な思いをしてそう。あと御屋形様とか。
ピンポーン。
「夜虎、出てくれる?」
「はーい」
家のチャイムが鳴った。アマゾンかな? 母さんは結構ネットショッピングを多用する。
まぁ、ここ田舎だしな。便利な世の中である。
「どちらさま…………は?」
玄関の扉を開けた先。
一体何人いるのかわからないサングラスの黒服がずらっと並び、黒塗りの高級車もずらっと並んでいた。
やくざの集会ですか? カチコミですか?
俺が混乱していると、その黒服が作った道をまっすぐこちらに歩いてくる人が二人。
お姫様のような幼女と、その幼女と手を繋ぐスーツの美女。
しかもその幼女は、ため息するほどこの世の者とは思えないほど幻想的に美しく、それでいて。
「オーロラ姫?」
この世界を支配する五大貴族の一人だった。
永遠に溶けない銀色の氷結魔術の使い手――北欧連合総長シルバーアイス家のご令嬢。
オーロラ・シルバーアイス、白虎家に突然の来訪。
なんで?