沖縄・玉城知事「心苦しいが値上げせざるを得ない」 10月から31年ぶり水道料金改定

 沖縄県企業局が10月から市町村向けの水道料金を引き上げる件で、玉城デニー知事は27日の記者会見で「約30年、料金を維持してきたが、施設の建設コストが増加するとともに電気料金の急激な上昇により経営状況が悪化した。心苦しいことだが料金改定をせざるを得ない」と述べた。
引き続き、国の補助金の確保や経営の合理化を図るとし「安全安心な水道用水を安定的に供給できるようにする」と理解を求めた。
 企業局の料金改定は1993年以来31年ぶり。市町村向け水道料金の1立方メートル当たりの単価(税別102・24円)を10月から23円引き上げる。半年間の減免措置があり、2025年3月31日までは実質17・79円の引き上げとなる。最終的には26年4月に33・46円増の135・7円とする。
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辻堂ゆめ 連載小説『ふつうの家族』<第85話>

挿画:伊藤健介

連載小説『ふつうの家族』

 あの家族旅行の最中に土産物屋で買ったものだと、浮かれた調子で言う。
 しかし──幼かった子どもたちは知る由もないが、和則かずのりにとっての北海道旅行は、思い出すだけで胸を深く抉えぐられるような、悲しい記憶と結びついている。

 脳裏には、先ほど目にしたばかりの、ミナトの顔が焼きついていた。
 真正面から向き合ってみて、初めて気がついた。
 透き通るような茶色い瞳が、よく似ている。─ ─あいつと。
 大雨のどさくさに紛れて、広中ひろなかが俺のところに化けて出たんじゃないか。そんな馬鹿ばかげた考えが一瞬でも頭に浮かんだのは、和則の記憶の中にある友人の姿が、若かりし頃で止まっているからなのだろう。三十代や四十代になっても定期的に会い続けていたのに、不思議なことだ。あいつが童顔だったからか。もしくは、自分たちが最も輝ける時を過ごしていたのは大学生のあの頃だった、ということなのかもしれない。
 偶然にも今夜、旧友と同じ薄茶色の瞳を持つ青年と出会い、和則の思考は不意に、遠い過去へと引っ張られていく。
 テーブルの上では、海かいがトランプを盛大に撒まき散らしながらシャッフルし、四人分の手札をおぼつかない手つきで配り始めていた。不器用ねぇ、と冴子さえこが笑いながらこぼし、私がやってあげようか、という舞花まいかの申し出を、海が頑かたくなに突っぱねている。

 さて、大富豪とはどんなルールだったろうか。
 旅行先で子どもたちと遊んだ古い記憶を引っ張りだそうとする傍ら、和則はためらいの感情に苛さいなまれていた。
 ──俺が、こんな楽しいことをしてていいのかな。
 北海道の形が印刷された緑色のトランプが、軽快なリズムを刻み、目の前に積み重なっていく。
 ──なぁ、広中よ。

連載小説『ふつうの家族』
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辻堂ゆめ 連載小説『ふつうの家族』<第86話>

挿画:伊藤健介

連載小説『ふつうの家族』


 
「ちっちーのーちっ!」
 五月雨でぬかるんだ狭い路地に、気迫のこもった小学生四人の大声が響き渡る。
 叫び終えると同時に、和則かずのりは右手を素早く手前に引き、『金田』の刻印が入ったベーゴマを解き放った。

 朽ちかけた味噌樽みそだるに、八百屋のおっちゃんからもらってきた古い前掛けを張って作った床の上で、小さな鉄の塊が四つ、勢いよく回る。
 早々に二つが弾はじき飛ばされ 、地面に落下した。負けた二人が悔しがり、大げさに地団駄じだんだを踏む。先に床の中央に陣取ったのは、和則が放ったほうのベーゴマだった。前後左右から敵にぶつかられても、その衝撃をものともせず、まるで布に突き刺さっているかのように、一点にとどまり続けている。
 やっちまえ、と和則は咆哮ほうこうし、向かいに陣取る正彦まさひこを盗み見た。四年一組の同級生である彼をはじめ、この路地の先にある長屋に住む連中には、これまでにいくつベーゴマを取られてきただろう。『王』も『長嶋』も『川上』も、勝負に敗れて全部献上した。そんなにすぐ失くしてしまうのなら、次はもう買いませんよと、どれほどママに
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辻堂ゆめ 連載小説『ふつうの家族』<第87話>

挿画:伊藤健介

連載小説『ふつうの家族』

 仲間内で最強と謳うたわれる赤いベーゴマが、一回、二回と和則かずのりのコマにぶつかり、紺色の帆布の上に力なく転がる。
「よっしゃあ!」
 和則はガッツポーズをし、対戦相手らに向かって手を差し出した。
負けた三人が不服そうに、和則の手に次々と改造ベーゴマを載せる。正彦まさひこの赤いコマが掌てのひらに置かれた瞬間は、天にも昇りそうな心地になった。
 床の中央で、和則のベーゴマは未だ 回転を続けていた。その様子を一瞥いちべつした正彦が、顔を赤くして口を尖とがらせる。
「これ、おかしいぞ。回りすぎだろ。おいカズ、何したんだ?」
「何したって、お前らと同じだよ。周りを削っただけだ」
「同じようにしただけで、俺のベーゴマがあんな簡単に負けるわけないっ」
「頭を使ったんだよ、頭をな」
 和則は正彦にわざと顔を近づけ、自分のこめかみを人差し指でつついてみせる。他のどれよりも大切にしていたベーゴマを奪われたばかりの正彦が、怒りのあまり小鼻を膨らませる。
 ようやく和則のコマが動きを止めた。見事初勝利を収めた改造ベーゴマを、和則は意気揚々と手元に引き上げ、胸を張ってみせる。しかし次の瞬間、あっ、と正彦が声を上げ、先ほどまで和則のコマが回っていた床の中央を指差した。

「うわ、穴が開いてるぞ!」
「何やってんだよカズ」
「もう使えねえじゃん、この布」
 負けた三人が、ここぞとばかりに責め立ててくる。針の穴のような大きさではあるが、確かに布が破けていた。まさかこの分厚い布に穴が開くとは思わず、和則は首をすくめて立ち尽くす。
 正彦ら三人は、なおも騒ぎ立てる。すぐそばに丸椅子を置いて煙草たばこを吸っていたニッカポッカ姿のおっちゃん二人が、どれどれ、と腰を上げ、ベーゴマの床を覗のぞき込んできた。
「ああ、これはやりすぎだ」
「誰に削ってもらったんだ? 坊、もう持ってくるなよ」

連載小説『ふつうの家族』
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