タピオカブーム去っても好調!

タピオカブーム去っても好調!

読んで分かる「カンブリア宮殿」 テレビ東京(テレ東BIZ)

2024.9.13

カエル先生の一言

この記事は2024年8月29日に「テレ東プラス」で公開された「全国に拡大中!“ゴンチャ”快進撃の裏にある常識破りの戦略とは:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。今回、「カンブリア宮殿」に登場されたのは、ゴンチャジャパンの角田淳社長です。

ゴンチャジャパン 社長 角田 淳(つのだ じゅん)

週4回来たくなる店づくり~飲み物1万通り、スピード接客も

街を見渡せばいたるところにカフェがある空前のカフェブーム。そんな中で目覚ましい快進撃を続けるグローバルカフェチェーンがゴンチャだ。

東京・新宿区の新宿ミロード店をのぞくと、目立つのは10代、20代の女性客。中には「週4回は飲んでいる」という熱烈なファンもいる。彼女たちが太いストローで飲んでいるのは、紅茶やウーロン茶に甘味やミルク、フルーツの香りなどを足したアジアで人気のティーメニュー。ゴンチャはティーカフェの専門チェーンなのだ。

ゴンチャが使っている「阿里山ウーロンティー」は、台湾南部の阿里山で栽培される茶葉で、通常100グラム約7000円。普通の茶葉の3倍もする高級茶葉を直接仕入れて使っている。

他にもアジア各地から厳選した計4種類の茶葉を使用。抽出する時はそれぞれの茶葉に合わせ、湯の温度や抽出時間まで変えて、最高の味わいを引き出すと言う。

店内の調理は火を使わず、全て電気で行うオペレーションが強み。路面店だけでなく、火を使えない場合もある駅ナカ店など、出店先の選択肢が広がるからだ。

国内のカフェ業界で店舗数トップを走るのは「スターバックスコーヒー」で1948店。「ドトールコーヒー」1067店、「コメダ珈琲店」1004店と続く(店舗数は各社HPより・放送日時点)。一方、ゴンチャは現在約162店(8月1日現在)と、規模ではまだまだ差があるが、独自の闘い方で急成長を続けている。

茶の抽出を始めたところで、スタッフがその時刻を記したシールを貼った。「4時間でお茶の味が落ちてしまうので必ず廃棄する」と言う。鮮度にもこだわり抜いているのだ。

ゴンチャと言えば約7割の客が頼むトッピング。アロエ、ミルクフォーム、ナタデココに定番のタピオカと4種類から選べる。甘さのシロップはゼロから少なめ、普通、多めと4段階。氷の量も同じように4段階で選択できる。組み合わせは1万通りにもなるから飽きずに楽しめるのだ。
ちなみに一番人気はタピオカ入りの「ブラックミルクティー」Mサイズ(570円)。タピオカは本場・台湾産を店内調理して、人の手と時間を惜しまないやり方でモチモチ食感を生み出している。
カフェチェーンでは珍しいのが、学生証を提示すれば学割価格になるサービスだ。例えば760円のLサイズは560円と、200円も割安になる。だから学食カフェのように学生が通ってくる。

客を待たせない工夫もある。カウンターのスタッフが接客するその後ろで、別のスタッフがトッピング、シロップ、氷を入れてまた別のスタッフにバトンタッチ。すぐさまティーを注げば完成。チームワークを活かした細かい分業制でスピードアップを図っている。

どん底からの快進撃~コーヒーが飲めない&おしゃべり大歓迎

ゴンチャは2006年、台湾で誕生した。漢字で書くと「貢茶」。かつて中国の皇帝に貢がれたような「極上のお茶を」と、命名された。

日本上陸は2015年で、日本法人のゴンチャジャパンを設立。2018年にはタピオカブームが起こり、どの店も大行列で社会現象にまでなった。

だが、2年でブームは終了。その後、新型コロナショックもあり、売り上げを落とす店が相次いだ。

当時を知る社員は「どうなっていくんだろうという不安な雰囲気がすごくあった」(事業開発部・太田昇)、「苦境に耐えるのに精いっぱいで、未来が明るい感じはなかった」(サプライチェーンマネジメント部・粂田凪沙)と言う。

ゴンチャジャパン社長・角田淳(53)の前職は「日本サブウェイ」社長。ゴンチャジャパンの社長に就任したのは売り上げが低迷していた2021年。社内の問題を次々と解決し、自ら「消防士」と名乗ったやり手経営者だ。

この日は全身泥んこになってアウトドアイベントに参加していた。
「大事なのは楽しむこと。だから一生懸命になれる」と言う。モットーは「楽しむこと」。南米出身の母親を持つ角田は幼少期をブラジルで過ごし、陽気でおおらかに楽しむ生き方が自然と身についた。

角田はどうやって客を呼び戻したのか。

〇角田流改革1~大胆にコーヒーを廃止

角田は2024年の4月からほとんどの店舗でカフェの定番、コーヒーを廃止した。コーヒー廃止後、1店舗あたりの売上は増えているという。

「我々はお茶へのこだわりをもって運営しているので、そこに集中したい。例えば、ラーメンは中華料理店ではなくラーメン店で食べたいという考え方のもと、まずは専門店として認識してもらう」(角田)

〇角田流改革2~おしゃべりは大歓迎

角田はゴンチャの店の作り自体も変えた。壁際に仕切りのついた席が並んでいる。二人がけより狭めの1.5人席。至近距離で思いきりおしゃべりしてもらおうと用意した。「仕切りに囲まれて落ち着く」「近くて話しやすい」と女性客に好評だ。
「おしゃべり歓迎」だから、店内はかなりザワザワしているが、それこそ他のカフェチェーンとの差別化戦略の一つ。根底にあるのは角田の「楽しむ」というモットーだ。

「お茶とのひとときがイコール時間を有意義に過ごす、楽しむことかなと思っていますので、皆さんの過ごす時間の価値を上げていきたい」(角田)

倍率13倍! バイト募集に殺到~驚きの商品開発のウラ側

この日、角田は新規にオープンする横浜市の横浜ビブレ店へ。アルバイトのスタッフに「400人の中の皆さんなので、最強チーム。日本一の店舗を目指して楽しめるチームを作ってほしい」と語りかけた。

今回は30人のアルバイト募集に対して400人の応募があり、13倍という倍率になった。この店に限ったことではない。人手不足に悩む飲食業界にあって、ゴンチャではアルバイト希望者が絶えないのだ。

ゴンチャのアルバイトの9割は、もともと客として来ていたいわばファン。しかも特別な職場環境を用意し、希望者殺到という事態になっていると言う。

角田は全国の店舗を周り、アルバイトから直接、日頃思っていることを聞き出し、働きやすい職場に変えようとしている。

東京・目黒区の自由が丘店では、「困っていることはありますか」という問いかけに、「音楽が聞こえづらい」という答えが返ってきた。「働いている時も音楽が聞こえたほうがいい。どんな音楽がいいですか」と角田が聞くと、「はやっているJポップとか」。

「貴重な時間を使って働いてくれているので、楽しんでほしいと思って現場の皆さんの声を聞くようにしています」(角田)

後日、再び自由が丘店を訪ねると、店内にはJポップが流れ、スタッフの顔も生き生きしているように見えた。

また、角田は細かく決まっていた髪の色のルールを撤廃した。
こうした働く人のことを考えた職場づくりがアルバイトの殺到につながっている。

さらにやる気を引き出す取り組みもある。本社に招かれたのは店舗で働くアルバイトの二人。そこに運ばれて来たのは発売を目前に控えた新商品だ。この二人が新商品の考案者。「ブルーハワイ」は渋谷で働く女性スタッフが、「洋梨ベリー」は岐阜の店舗の女性スタッフが考えた。
全国で働くアルバイトに新商品のアイデアを募り商品化するプロジェクト。多くのアルバイトから「やってみたい」という声があり、「それなら」と角田が始めた。

「全部で約200の応募があった中で、勝ち残ったのがこの2商品です」(角田)

8月8日の新商品の発売当日。渋谷スペイン坂店で働く「ブルーハワイ」を考案したスタッフを訪ねてみた。胸には「私が考案しました!」というバッジが。「世界に一つだけです」と言う。
最初に受けた注文は自らの手で作った。まずゼリーをカップへ。続いてライムやオレンジの香りのブルーハワイソースと阿里山ウーロンティーを加え、そこへミルクを合わせてミントブルーのミルクティーに。仕上げにミルクフォームを乗せれば完成だ。

初日から売れ行きは上々。「今日が来るまで楽しみで、やっと今日が来たのでうれしい気持ちでいっぱいです」と言う。

角田の人を大切にするやり方は経営者としての特徴にもなっている。

ゴンチャの世界のトップたちがオンラインで集うグローバルミーティング。
ゴンチャは世界でおよそ2200店を展開する。最も店舗数が多いのは韓国。日本は162店で4位だが、売り上げでは世界2位につけている。

グローバルCEOポール・レイニッシュは「日本は私たちにとって重要な市場です。角田さんは従業員を大事にしているので、それが成功につながっています」と語った。

強力なライバルが出現~初の挑戦が「すごい」結果に

今、ゴンチャのライバルともいえるアジア発のカフェチェーンが続々と上陸している。

中国で6000店以上と、規模ではゴンチャを上回る「コッティコーヒー」。人気のミルクティーはMサイズ、Lサイズ共通で550円とお得感がある。

ライバル増えて競争が激化する中、角田が新たな一手を打った。

6月27日、フィギュアスケーターでタレントの本田望結さんが登場して新商品の記者発表が行われた。「セブン—イレブン」限定で売られるゴンチャ初のペットボトル飲料(181円)だ。
黒糖烏龍ミルクティーと阿里山ピーチティーの2種類。製造するのは飲料大手の「キリンビバレッジ」。店舗と同じ産地の茶葉を使用。試作は60回繰り返し、ゴンチャの味を再現した。

7月2日、ゴンチャのペットボトルが「セブン—イレブン」の棚に並んだ。想定を大きく上回る売れ行きで現在は品薄状態になった。ゴンチャの新たな快進撃が始まった。

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

強さは採用にある。クルーは実際にゴンチャのファンばかり。優秀で、やる気があるのに加え、友だちまで連れてきてくれる。休日、小学生の子どもとスケートボードに行く。子どもたちは失敗を恐れないから上達も早い。自分は怪我をしないようにと用心しながらやるので上達が遅い。失敗しないことは挑戦しないことと同じだ。業績不振のとき、仕事は? と聞かれた「消防士」と答えていた。会社全体に火種があったからだ。店舗数は、コロナ前に比べ2倍に増えている。今後も前向きな失敗を重ねながら、新しいお茶の文化を広げていく。

角田淳(つのだ・じゅん)
1971年生まれ。1995年、アメリカの大学を卒業。大手自動車メーカーを経て、音楽イベントなどのマネジメントを行う。2010年、日本サブウェイ入社。2016年、社長就任。2021年、ゴンチャジャパン社長就任。

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画像提供:テレビ東京
いよいよ全面解禁か 「ライドシェア」関連株が上昇

いよいよ全面解禁か 「ライドシェア」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株 QUICK

2024.9.12

株式市場で「ライドシェア」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は1.4%と、東証株価指数(TOPIX、4.2%安)に対して逆行高となりました(9月6日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

官民連携で検討へ

「ライドシェア」は一般ドライバーが有償で乗客を送迎するサービスです。既に、今年4月、東京都の23区など一部地域に時間帯を限定して導入されています。

関連株が買われた背景は、「ライドシェア」全面解禁などへの期待の高まりです。9月4日、国土交通省は、官民連携の新たな枠組みの立ち上げや、日本版ライドシェアの導入に向けたガイドラインを策定したと発表。公共交通機関を利用するのが困難な「交通空白」の解消を目指します。斉藤鉄夫国交相は「交通空白の解消に意欲と関心を持つ幅広い分野の民間企業などの参画を得て、官民連携プラットフォームを立ち上げて下さい」と訴えました。

また、ライドシェアをめぐっては、6日に自民党総裁選への立候補を正式表明した小泉進次郎氏が全面解禁を訴えました。他の立候補者の茂木敏充氏や石破茂氏も全面解禁に賛同する姿勢を過去に示しています。政府や国の今後の動向がライドシェア関連株の将来的な成長を後押しするとの期待から、物色が広がりました。

GOと資本業務提携【東京センチュリー】

上昇率首位の東京センチュリーは多くの企業との協業を通じた次世代モビリティー事業を手掛けています。ライドシェア関連ではタクシー配車アプリ大手のGO(東京・港)と資本業務提携し、車両や乗務員が配車依頼を受けるタブレットのリースなどをしています。将来的には両社の強みを活かした協業を目指しています。地方進出での協力などを前向きに検討しており、交通空白の解消を目指すライドシェア事業への進出なども期待できそうです。

石垣島で事業展開を検討【FIG】

上昇率2位のFIGはグループ会社のモバイルクリエイトがタクシー配車システム「新視令forクラウド」やメーター連動の決済システムなどを手掛けています。同社は沖縄県の石垣島で、対話アプリ「LINE」を活用したタクシー配車サービスを9月2日から開始し、ライドシェア機能の追加も検討しています。石垣島での事業が成功すれば、他の地域への拡大にも期待が高まります。

すでに事業を始めた企業も

大和自動車交通はタクシー配車アプリのS.RIDE(エスライド)を活用し、東京都内でのライドシェア事業に参入しています。

ビリングシステムはスマホを活用した決済代行サービスなどを手掛けています。ライドシェアが拡大すれば、利用の増加が期待できます。

ディー・エヌ・エーはタクシー配車アプリ大手のGOを持ち分法適用会社としており議決権ベースで株式の25.8%を保有しています(2024年6月24日時点)。GOは1月、株式上場の準備を始めると発表しており、今後の動向が注目されます。

課題はドライバー不足など

全面解禁に向けた議論の活発化が見込まれるライドシェアですが、現状は多くの配車アプリが未対応で、ドライバー不足も課題となっています。特に7月からライドシェアが可能になった「雨天や酷暑時」など需要が急増する時間帯に対応できていません。

東南アジア諸国などではライドシェアが急速に普及し、生活や観光客の足として欠かせない存在になっています。タクシー会社以外の参入など全面解禁が認められれば、将来的に大きく成長する産業の一つになりそうです。

まだ誰も成し遂げていないビジネスは、宇宙にある【前編】

まだ誰も成し遂げていないビジネスは、宇宙にある【前編】

上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・QPS研究所 大西俊輔社長 大西 俊輔

2024.9.11

株式市場への上場も目立ち始めた、宇宙開発スタートアップ。なかでも、福岡に拠点を置くQPS研究所は、高精細小型レーダー衛星による準リアルタイム地球観測技術で世界をリードする。同社の技術の強み、そしてその発展によって、世界はどう変わるのか。なぜ九州にこだわるのか。大西俊輔社長に聞いた。

365日24時間、地表を観測できる小型衛星を作っています

宇宙ビジネスと一口に言っても、私たちの事業がどういうもので、何が強みなのか、一般の方々には分かりづらいと思います。

「丁寧に伝える」という姿勢は創業当初から大事にしてきたことですので、まずは私たちが開発している「小型SAR衛星」についてあらためて話をしたいと思います。
もし、その小型SAR衛星を宇宙に大量に打上げることができれば、世界の見え方すら、変えることができるかもしれません。

そもそも、地球を観測する人工衛星には「カメラ撮影型」と「レーダー照射型」の2種類があるのですが、カメラ撮影型はその名の通り、デジカメで写真を撮るように宇宙から地球表面を直接撮影するもの。

きれいで鮮明な画像で観測できる半面、観測できる時間帯は太陽光が地表に当たっている昼間に限られ、雲や煙があると地表が隠れてうまく写せません。

それに対して私たちが作っている「SAR(Synthetic Aperture Radar)衛星」は、特殊な電波を使って地球を観測するレーダー照射型です。

衛星から地球表面に向かって電波を打ち、地表から跳ね返ってきた電波を受信して画像化する技術なので、太陽光に頼らず、雲や煙も通過するのが強み。つまり、昼夜・天候問わず、いつでも地球を観測できるのです。
ただ、このSAR衛星は自ら電波をつくる仕組みなので大量に電力を使います。カメラ型がスマートフォンくらいの電力量なのに対して、レーダー型は電子レンジほど。家のブレーカーを落とすくらいの電気を常に使うので、バッテリーの維持が重要になるんです。

発電には太陽光を利用するわけですが、蓄電のためのパネルやバッテリーを搭載する必要があり、その分、衛星のサイズは大きくなってしまう。「電力を食うSAR衛星は小型化するのが難しい」というのが、宇宙開発の世界でのこれまでの“常識”でした。

難度が非常に高い、小型化・高解像度化を実現

2~3トン級の大型SAR衛星は、JAXAさんをはじめとしてすでに製造・打上げの実績もありますが、なにせ大きいので打上げの費用も莫大にかかるんです。

1回の打上げで数十億~100億円かかると言われています。

SAR衛星をいかに小型化するか? という課題に対する答えとして、私たちが開発したのが「折り畳み式のパラボラアンテナ」です。傘状の太陽電池パネルを、打上げ時には小さく畳んでおき、宇宙の目標地点に到着したらパッと拡げる。これならコンパクトな状態で打上げができるので、打上げ費用は数億円で済みます。コストが圧縮されることで、より多くの衛星を打上げられるようになります。

QPS研究所の小型SAR衛星「QPS-SAR」の6分の1サイズの模型

こうして私たち独自の技術でSAR衛星の小型化を実現したわけですが、もう一つ、大事にしてきたのが「高分解能」へのこだわりです。

画像を拡大した際に1画素(1ピクセル)あたり46cm程度まで細かく見ることができ、これは世界で2番目のレベルです。2019年初めに打上げた1号機では1画素あたり72cm程度でしたので、どんどん進化しています。

「36機」飛ばせば、世界が変わる!

この小型SAR衛星を使って、何がしたいのか。私たちが目指しているのは「準リアルタイム地球観測」です。

世界中のほぼどこの地点でも、10分間隔で「今、何が起きているか」の観測ができる。Googleマップが実現したのは位置情報ですが、「あそこの3丁目の角の空き地で1時間前に火災が起きた。その後、無事に鎮火したか」といった“変化”の観測まではできません。それが、私たちの衛星によって実現可能になるんです。

近所の情報だけではなく、たとえば日本で台風が発生した瞬間に、地球の裏側ではどんな気象変化が起きているか。それぞれの現象がどんな変化をたどり、どう影響し合っているのか。

まだ誰も想像していない「何か」が見えるかもしれません。

そもそも「地球のリアルタイムが丸ごと見えるようになる」という体験が、人類にとって初めてのこと。一体、何が見えるのか、それによってどんなインパクトが生まれるのか……。私自身にも分からない、というのが正直なところです。もしかしたら、これまでの通説を覆すような展開もあり得るのかもしれません。
この未知の体験にたどり着くのに必要な数は、「36」です。私たちの小型衛星を少なくとも36機、宇宙に飛ばすことができれば、人工衛星網が宇宙に張られ、私たちが目指す準リアルタイム地球観測が実現します。

現在、4年後の2028年5月までに24機を打上げることを目標に準備しており、36機の実現も見えてきました。

もちろん、36機というのもあくまで通過点であり、将来的にはもっともっと多くの衛星を飛ばして、10分間隔ではなく5分間、1分間……数秒間隔というように、より正確なリアルタイム観測へと近づけていきたいと思っています。

小型SAR衛星は開発の難易度が非常に高く、プレイヤーは世界で5社しかありません。うち、上場を果たせたのは今のところ弊社だけです。市場から資金調達できる強みを最大限に活かして一つでも多くの衛星を打上げていこうと、全力疾走しているところです。

これが「地球のレントゲン写真」です

(部屋に飾っているモノクロ写真を指して)これですか? はい、実際に私たちの衛星がとらえたデータをもとにした写真です。横浜や東京、パリの地表の様子を画像化したものです。太陽光が地表に当たらない深夜でも、鮮明に画像化できることがお分かりいただけると思います。

「QPS-SAR」がとらえた横浜の街並み

電波を通じて見える地表は、レーダー反応によって建物や道路、海、人の群衆などの輪郭を浮かび上がらせるので、カメラでの撮影画像とは印象がだいぶ違います。「地球のレントゲン写真みたいですね」と感想を言った人もいました。

同じ地点を10分おきにとらえた画像を比較すると、そこにあるものの“動き”が見えてくる。これがリアルタイム情報になります。

おそらく私は地球上で一番多くこの画像を見比べている人間だと思いますが、結構いろんな“動き”が見えて面白いんですよ。「これ、なんだろう?」と思うものも写っていたりして。

もっと多くの衛星を打上げて準リアルタイム地球観測を実現することができれば、交通や物流の正確な動きを計測して効率化できたり、自然災害が発生した後の現地の状況確認をスピーディーに実施できたりと、社会のさまざまなシーンで役立てられるはずです。

過疎化が進んでいる地域の人手不足をカバーする役割も、果たせるでしょう。

人類未知のインフラを作る。使い方は誰かが考える

くり返しになりますが、なんといっても、昼夜問わず地球全体の時系列データが揃い始めてきたことは非常に画期的です。

私たちが提供する衛星画像が、気候変動問題をはじめとする地球規模の議論の材料となって、貢献できるものと確信しています。

反響は上々で、予想よりはるかに幅広い業種からお問い合わせをいただいています。防衛や観光に関わる省庁のほか、東京海上日動さんが「災害状況を把握するのに使いたい」とおっしゃったり、九州電力さんが大規模インフラの管理のために活用されています。
きっと私が想像もしていないような使われ方のアイディアも、これからどんどん出てくるのだと思います。理想は、「気づかれないくらい自然に、人々の生活の中に浸透した存在」になれること。

もちろん、簡単な挑戦ではありません。ここまで7機打上げてきましたが(取材時点)、打上げに失敗したり、打上がっても不具合が生じて画像取得に至らなかったり、はたまたロケットを打上げる予定だった会社が突然倒産して計画変更を余儀なくされたりと、さまざまな困難を経験しました。

ただ、宇宙という「まだよく分かっていないもの」に挑むとは、そういうことなのだろうと思っていますし、「何かが起きたときには、すぐに頭を切り替えて目の前のことに対処する」という姿勢がすっかり身につきました。

初めて宇宙からの画像が取得できたときに喜びをかみしめたのも一瞬で、わりと淡々と、次にやるべきことを考えていました。「まだ見ぬ世界」を見るために、立ち止まっている暇はありません。

QPS研究所
次回は9/19(木)配信予定です。