Text by Julian Ryall
病院の受付に激怒する患者、JR職員に暴力を振るう乗客……礼儀正しさと他者への敬意を誇りとしてきた日本で、攻撃的になる人が増えている。客による迷惑行為「カスタマーハラスメント」が社会問題化している現状とその背景を中国紙が取材した。
それは病院の受付をしている女性からの悲痛な訴えだった。4月3日付の読売新聞の悩み相談欄「人生案内」に投稿した匿名の女性が、患者から不満をぶつけられる「サンドバッグ」状態になっていることがつらいと綴った。
診察を待たされて怒鳴る人もいれば、順番を飛ばして治療しろと要求する人、笑顔で対応すると激怒する人もいる。女性は最後に、こうした患者に対する「心の持ちよう」を教えてほしいと助言を求めた。
回答者で心療内科医の海原純子は、女性の苦しい状況に理解を示し、最近の受付にはスタッフに対する思いやりを求める張り紙が増えていると述べた。しかし、医療機関の責任者が相談者の女性を守る措置を取ること以外に、アドバイスはほぼなかった。
相手が下手に出ると攻撃的に
礼儀正しさと他者への敬意を誇りとしてきた日本で、無礼な行動の事例が日常的に聞かれるようになっている。そのため、学校や自治体などさまざまな組織が、「イライラしてキレる」国民に対処するための新たな規則を設けるようになった。
中央大学教授で社会学者の辻泉は、こうした状況について「間違いなく私たちの周りで日々増えています」と語る。
実証的な証拠はないとみられるが、丁寧に否定的な反応をされたときに無礼な態度に出たり攻撃的になったりする人が日本で増えている可能性があるという。
「ある状況で自分が弱い立場だと感じている人々が、反論して抵抗すれば、立場が強くなることに気づいたのです」と辻は指摘する。
その戦術を使うのは若者や女性に多いという。相手が企業または組織の一員である場合、彼らが客に反論するのはタブーだという暗黙のルールを知っているから、攻撃的になっても大丈夫だと考えているのだ。日本では、サービス業従事者はたとえ自分が正しくても、「お客様は神様」の精神で接しないといけない。
そうしたキレる人が急増している最大の要因は、日本人が従来よりも大きなストレス下に置かれていることだと辻は言う。
「社会の状況は良くありません。景気は悪化する一方で、人々は物価の上昇を懸念し、将来を考えてストレスを感じています」
「私が若い頃は、未来は明るく見え、自分のキャリアや経済など、何も心配していませんでした」と辻は続ける。
「私は幸運にもうまくいっているほうで、仕事があり、大学での地位も収入も安定しています。しかしいま、多くの人にとっては将来を楽観視するのはとても難しい状況です」
公の場で攻撃的、あるいは暴力的になる人の問題が深刻化しているため、東京都は4月、サービス業従事者やその他の就業者に対する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の定義を規定する条例の策定を検討していると発表した。
都の案では、カスハラの定義を「暴行、脅迫などの違法な行為、または暴言や正当な理由がない過度な要求など不当な行為で就業環境を害するもの」としている。条例に何らかの罰則が含まれるかどうかは不明だ。
「私が若い頃は、未来は明るく見え、自分のキャリアや経済など、何も心配していませんでした」と辻は続ける。
「私は幸運にもうまくいっているほうで、仕事があり、大学での地位も収入も安定しています。しかしいま、多くの人にとっては将来を楽観視するのはとても難しい状況です」
東京都やJRが「カスハラ」対策に
公の場で攻撃的、あるいは暴力的になる人の問題が深刻化しているため、東京都は4月、サービス業従事者やその他の就業者に対する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の定義を規定する条例の策定を検討していると発表した。
都の案では、カスハラの定義を「暴行、脅迫などの違法な行為、または暴言や正当な理由がない過度な要求など不当な行為で就業環境を害するもの」としている。条例に何らかの罰則が含まれるかどうかは不明だ。
奈良県天理市は、学校の決定や方針に抗議して激怒する保護者から教職員が距離を置けるようにするため、保護者の苦情に対応する専門の窓口を新設した。
毎日新聞の取材に応じた同県の教育関係者によると、ある保護者は、学校でのストレスが原因で息子が自宅の壁を蹴って穴を開けたとして、担任の教師を自宅に呼び出し謝罪するよう求めたという。
他にも、毎日朝夕に学校の前に立って職員を叱責したり、放課後に毎日教師が子供を自宅まで送り届けるべきだと主張したりする保護者もいたという。
JR東日本は最近、職員に暴力を振るったり脅したりする乗客への対応法を盛り込んだ新しいマニュアルを作成した。そこには、職員は「お客さまからのご意見・要望に対して、これからも真摯に対応する」としながらも、従業員の安全が最優先され、深刻な場合は警察に通報すると記されている。
日本の航空会社に勤めるある女性は、要求が多く無礼な乗客に対応するのは日常茶飯事だと匿名を条件に語った。
毎日新聞の取材に応じた同県の教育関係者によると、ある保護者は、学校でのストレスが原因で息子が自宅の壁を蹴って穴を開けたとして、担任の教師を自宅に呼び出し謝罪するよう求めたという。
他にも、毎日朝夕に学校の前に立って職員を叱責したり、放課後に毎日教師が子供を自宅まで送り届けるべきだと主張したりする保護者もいたという。
JR東日本は最近、職員に暴力を振るったり脅したりする乗客への対応法を盛り込んだ新しいマニュアルを作成した。そこには、職員は「お客さまからのご意見・要望に対して、これからも真摯に対応する」としながらも、従業員の安全が最優先され、深刻な場合は警察に通報すると記されている。
最悪なのはビジネスクラスの客
日本の航空会社に勤めるある女性は、要求が多く無礼な乗客に対応するのは日常茶飯事だと匿名を条件に語った。
「彼らは気が短く、チェックインの列の長さ、セキュリティチェック、手荷物の制限など、あらゆることに文句を言います」と彼女は言う。
「天候、フライトの遅延やキャンセルなど、私たちにはどうにもできないことに対して苦情を言います。彼らはただ文句を言いたいだけで、誰かに謝罪してもらいたいだけなのです」
最も悪質なのはビジネスクラスの客だという。
「自分たちはビジネスクラスに乗っているから特別なのだと思い込んでいて、空港のグランドスタッフも含めてみんなを見下しています。一日中彼らの苦情を聞き続けて、もう最悪の気分です」
彼女はそうした客に対し、たとえ相手が攻撃的であっても、冷静さを保ち、礼儀正しく接するしかないという。
「天候、フライトの遅延やキャンセルなど、私たちにはどうにもできないことに対して苦情を言います。彼らはただ文句を言いたいだけで、誰かに謝罪してもらいたいだけなのです」
最も悪質なのはビジネスクラスの客だという。
「自分たちはビジネスクラスに乗っているから特別なのだと思い込んでいて、空港のグランドスタッフも含めてみんなを見下しています。一日中彼らの苦情を聞き続けて、もう最悪の気分です」
彼女はそうした客に対し、たとえ相手が攻撃的であっても、冷静さを保ち、礼儀正しく接するしかないという。