新入社員は米国、本部長はオランダ。「そんな会社あるんだ」
杉本さんは現在、どこで、どのようにお仕事をされていますか。
杉本 ガイアックスには2022年1月、人事支援チームのメンバーとして入社しました。中途採用やバックオフィス関連の業務を担当しています。3月までは日本にいて、出社したり自宅からリモート勤務をしたりしていたのですが、4月から米サンフランシスコを中心に、海外でフルリモートで働いています。
サンフランシスコでの杉本さんの「仕事場」
海外駐在員というわけではなく、日本の地方都市から東京オフィスの仕事をこなすのと同じように、海外で働いているということですよね?
杉本 はい。当社のオフィスは東京にしかないので、そちらに関連する業務を海外にいながらこなしています。特に海外向けの仕事をしているわけでもありません。当社は出社する必要は全くなく、日本のどこに住んでもいいし、その延長で海外でもOKとなっています。 管 ガイアックスでは今、社員の9割がリモートで働いています。しかも4割弱は、杉本さんのように海外あるいは地方での勤務です。
実は私もその一人で、2015年からリモートワークを始めました。でも「リモートワークならなにも東京にいる必要ないんじゃないか?」と考え、2019年に働きながら世界一周しようと思い立ち、アジアからスタートしました。その後、アメリカを経由し、ヨーロッパに到着。縁あって、今はオランダに住んでいます。
会社としてはいつからリモートワークを導入されたのですか。
管 2015年の末、私がソーシャルメディアマーケティング事業部の部長となったときに、部署内で始めたのがきっかけでした。当時私は部内最年少で、自分より社会人経験が長い人たちをマネジメントすることになったのですが、自分が「指示をする」ことに違和感を覚えたんです。むしろ重要なのは、みんなに気持ちよく働いてもらうことで、メンバーが望む働き方を考えたところ、リモートワークがいいのではと思いました。
当社は独立採算制で、給与も部署ごとに基準が違います。各部署が一つの会社であるような感じなので、部署ごとに独自の取り組みができる社風があります。
管さんと杉本さんのビデオ会議の様子
杉本さんは入社前から、海外でリモートワークするつもりだったのですか?
杉本 もともと「子どもを産むまでに、自分がやりたいことをやる」と思っていて、「海外に行く」はその一つでした。大手人材会社やスタートアップ企業で働きながら海外での現地就職を検討していたところ、SNSで管さんが発信されていた働き方に出会いました。
日本の仕事をしながら海外で生活できるというのは、衝撃でしたね。「そんな生き方があるんだ」と。それまで海外生活は私にとって夢や憧れでしたが、それが一気に現実的な選択肢になりました。
リモートワークでも上司との距離「近く感じる」
不安はありませんでしたか。
杉本 「入社初日から海外勤務でいいよ」と言われていましたが、むしろ私のほうが「本当にいいの?」と、思い切れませんでした。まずは他の社員と実際に会ってつながりをつくることは大事だと思いましたし、前職はオフィス出社が当たり前だったので。
だけど実際に出社したら、他に出社している社員がほとんどいなかった(笑)。それでようやく「来なくていいよ」と言われていたことが実感できました。これならば海外で働くことも大丈夫だろうと。
コミュニケーションなどに問題は生じませんか。
杉本 それがあまり感じません。私の上司は東京にいるのですが、「レビュー」と呼ばれる、オンラインの1on1が週に1度設けられています。多くの会社では仮に出社して顔を合わせていても、上司と1対1でじっくりと話す機会は数カ月に1度の評価面談の時だけだったりしませんか? 私の場合は、出社していた過去の職場の時より、リモートワークの今のほうが上司との距離が近く感じます。 管 リアルと比較して、リモートワークで一番困るのは「非言語のコミュニケーション」ができないことです。オフィスで同じ空間にいれば、たとえ会話しなくても、メンバーが体調悪そうとか、表情がいつもより暗いとか見て取れますよね。1on1ではそこを補えるように意識しています。
勤務時間はどうなっているのですか。
管 私の部署の業務は裁量労働制に該当するため、特に勤務時間帯は定めていません。一日の規定の労働時間を満たしてもらい、同時に所定労働時間内できちんと働いてもらえれば問題ありません。会議の開催時間はどうしても日本がベースにはなりますが、参加メンバーの合意で調整します。 杉本 日本とサンフランシスコは時差が16時間(サマータイム期間)あり、日本のオフィスアワーの午前9時~午後6時が、サンフランシスコだと午後5時~午前2時になります。私は夜型人間で、自分にとって集中しやすいため、日本時間に合わせて働いています。遅めの時間帯に働けるのは、個人的にはすごく良いです。
ビザはどうされていますか。
杉本 私は観光ビザです。滞在先の国の企業で就労する場合は就労ビザが必要ですが、日本の企業から給与が支給される状態で、就労場所に制限がない場合、滞在先での在留資格は観光でも学生でも問題ないと認識しています。管さんは長期滞在できる個人事業主ビザで滞在していて、社員それぞれが持つ滞在資格の中でやっています。
重要なのはテキストとミーティングの補完関係
海外でのリモートワークで注意すべきことはありますか。
管 リモートワークで生産性が高まるのは、テキストベースで仕事を進められる場合です。時差の話が出ましたが、共有すべき情報がテキストできちんと残っていれば、みんないつでも把握できます。その場合、それぞれが最も効率的に働ける時間帯に業務をすれば生産性が高まります。だからこそ、テキストがきちんと共有される仕組みが必要です。 杉本 そうですね。新しいプロジェクトに入ることが多いのですが、私もそのたびにチャットツールの過去のテキストのやりとりを最初から最新まで目を通します。プロジェクトによっては数年分あるので、時間はかかりますが、全てに目を通すことで過去の経緯を知ることができたり、同じ失敗を避けることなどもできたりするので、結果的に効率的になることが多いと思います。
これは時差のある海外リモートワークにも有効ですが、例えば中途採用の社員が多い場合なども同じことがいえるのではないかと思いますね。
管 もちろん、テキストだけで全ての業務がスムーズに回るわけではありません。なので1on1では、テキストでのコミュニケーションへのフォローも重要です。
例えばテキストでのやりとり中に、メンバーで意見が割れたとします。その際、最終的に意見が採用されなかったメンバーが本当に納得しているのか、テキストだけだと分かりにくいですよね。そんな時に1on1で「もしモヤモヤしていたら遠慮なく言って」などとフォローするようにしています。
リモートワークで、離職ゼロに
ここまで柔軟な勤務を可能にしている理由はなんでしょう。
管 「優秀な人を採用して、働き続けてもらう」これに尽きます。実は、以前うちの事業部の離職率は40%で、実態として、2年半ぐらいで全員入れ替わるぐらいの感じでした。だから「選ばれる組織になろう」をスローガンに、リモートワークを本格的に始めました。すると2年後、辞める人がゼロになりました。「働き方を自由にすること」が選ばれる組織になるうえで最も有効な手段なのだと分かりました。これは今後も継続していくつもりです。 杉本 ここで働きたくなる気持ち、分かります。一度この生活をしてしまうと、オフィス出社を求める会社への転職は100%無理だなと思います。
サンフランシスコでは24時間オープンのコワーキングスペースで働いていますが、そこは、市の中心部に建つビルの上層階にあって、天気が良ければきれいな街並みが一望できるすてきなところなんです。利用料は自己負担になりますが、自分は好きで海外で働いているので気にならないです。仕事に縛られず、自分の好きな場所で暮らすことがこれほど満足感を得られるものだとは思いませんでした。
今後、どんな働き方や暮らし方をしていきたいですか。
杉本 どうでしょうね。同僚に、来年からパートナーとアメリカに移るという女性社員がいるのですが、彼女のように海外で子どもを育てながら働くのもいいかもしれません。 先ほど「子どもを産むまでに、やりたいことを」と言いましたが、今は「子どもを産んでも、やりたいことを」と思うようになりました。そう思えるようになったのは、この海外フルリモートの働き方を始めて、人生の選択肢が広がったからかもしれません。 管 人が、企業をつくります。杉本さんは業務としても、多様な人たちが働きやすい環境づくりをしてくれていますが、自由な働き方という面でも、モデルケースになってくれています。私からするととても頼もしく、これからもどんどん魅力的な人を集めてほしいなと期待しています。 編集注:国境を越え業務をする場合には、それぞれの国の法律や税制度、国際的な取り決めなどにのっとり、適正なビザの取得や税法上の対応などが必要になります。 本記事についての簡単なアンケートにご協力をお願いします。 アンケートはこちら
取材:星谷 なな 編集:岡 徳之(Livit) 掲載日:2022年8月30日