唐突な更新!
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暴走列車は駆け出した。
その速度は、二年前よりずっと速い。
僕らは警戒し、油断など一部の隙も無かったと思う。
それでもなお、奴は容易に駆け入った。
僕ら四人の、目と鼻の先。
攻撃の届くレッドゾーンに、その男は立っていた。
息をのんだのは、一瞬。
わずか、瞬く間にも満たない数瞬。
僕らは拳を握り、言霊を発し、彼に対して攻撃する。
――それらを、男は拳一振りで粉砕した。
【GOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAA!!】
それは、悪魔の一撃だった。
二年前、僕が死んだあの一撃とは、天と地ほどの差があった。
その一撃は、真正面から僕を狙った。
咄嗟に理解する。これは
理解した瞬間、僕らは一斉に動き出していた。
「らぁッ!」
僕の拳に、三つの攻撃が重なった。
ポンタ、シオン、成志川。
それぞれS級の中でもトップクラスの実力者。
火力に自信のある者たち。
それに僕の拳も相まって。
なお、押し勝つには至らなかった。
僕らの攻撃は、奴の一撃とほぼ、相殺した。
それでも【ほぼ】と言い表したのは、奴の攻撃がそれだけ重かったから。僕ら四人の攻撃を合わせても、僕らの方が多少、押し負けた。
正直、理解できない次元のパワー。
押し負けたと気が付いた瞬間、背筋に冷たいものが走り抜けた。
「……ッ!」
頭上を見上げる。
暴走列車は、既に第二射を振り上げていた。
「う、嘘だろ……ッ!」
僕は咄嗟に、次元を展開。
そこにいる全員を連れて上空へと転移すると、ほぼ同時に僕らのいた場所へと暴走列車の拳が直撃。
一瞬にして、その場が巨大なクレーターと化した。
「うっわ、えぐ」
思わずつぶやき、暴走列車が僕らを見上げる。
奴は両足へと思い切り力を込めて――その瞬間、僕は奴へと右手を向けた。
他の奴ならいざ知らず、相手は暴走列車。
油断すれば、即死。
そんなことは身に染みて分かってる。
「最初っから、全力だ!」
手首へと円環が浮かび上がる。
暴走列車は、目を見開くが。
僕の【強奪】は、発動した時点で必中だ。
「【
円環が、暴走列車の体に巻き付く。
二年前も含めて、三度目の強奪行為。
暴走列車も、この力の正体には気づいているはず。
奴は奪われるより先に僕を仕留めようとしたようだが……すでに、強奪は完了していた。
ガクリと、その場で暴走列車の膝が崩れる。
奴は驚いたような声を上げ、僕は笑って手の甲を見た。
【脚】
その一文字が、何より雄弁に語っていた。
「悪いな、お前の『脚力』、奪わせてもらった」
空中で、三人が落下する。
僕は咄嗟に『次元』で造った時空の歪みを三つ出す。
彼らはそれの上に着地し、上空から暴走列車を見下ろした。
……さて、暴走列車。
狡い、とは言うなよ。
むしろ、僕らはお前の強さに敬意を表する。
他でもないシオンが、何の文句もなく共闘を受け入れている。その時点で、僕らがどれだけお前を認めているか、分かるだろ。
その上で、この構図を描いてる。
四人のS級による、集団リンチ。
じゃなきゃお前は落とせない。
僕は、両手を叩く。
初めて使う【指揮】技能。
ポンタ、シオン、成志川の全能力値を、向上。
そして、暴走列車の身体能力を、低下させる。
三人は、唐突な強化に驚いたようだが、この中でこんな芸当ができるのは僕だけだ。
すぐに納得した様子で、僕を見上げた。
「……男。お前、本当に何でもアリだな」
「災躯、界刻、そして薬聖」
「なはは! チートってやつだな! 反則くせぇ!」
反則で結構。
それで未来がつかめるのなら、僕は進んで反則の権化に堕ちよう。僕は拳を握り締め、男を睨む。
回復能力も、機動力も奪った。
これで、ようやくスタートライン。
初めて、お前に対して勝機が見える。
「反則の限りを尽くして――お前を超える」
暴走列車は吠えた。
こっから先が、本当の試合開始だ。
☆☆☆
脚力、機動力を奪われた暴走列車。
奴に残された攻撃手段は、近距離からの殴り。そして……遠距離においては、投擲、だろうか。
奴は、近くに転がっていた瓦礫を手にする。
瞬間、シオンは両腕の銃を構えていた。
「なははははは! だろうと思ったぜ!」
シオンは、両腕の銃を合体。
巨大な銃へと変化させ、奴の投擲を真正面から受けて立つ。
彼女の銃口へと凄まじいエネルギー体が集まる。
それは、僕ら三人をして戦慄するほどの力。
それを前に、暴走列車はただ、シンプルな投擲で答えた。
――太古より、人間は投擲で獲物をしとめてきた。
他の動生物と比べて体格で劣り、筋力で劣り、速度でも劣り。
知能しかない人間に、唯一許された攻撃手段。
それこそが、投擲。
時に、巨大なマンモスさえしとめる矛だ。
それは、純粋な拳や蹴りなどよりも、はるかに強力なモノだろう。
現に、奴の投擲の威力は……もう、考えるだけで汗が出てくるほど。
見ただけでそれがわかった。
されど、シオン・ライアーに焦りは無かった。
「【
そして、シオンの一撃が放たれる。
それは、凄まじい勢いで飛来した瓦礫を、一瞬で飲み込んだ。
威力は変わらず、凄まじい光量が暴走列車を飲み込み、それを放ち終えたシオンは、静かに息を吐く。
「……お、お前」
シーゴと戦った時、果たして彼女は、これほど強かったか?
そう考えて、すぐに答えはでた。
否である。
……こいつ、前に見た時より、ずっと強くなっている。
僕は深淵で修行して、強くなったけれど。
コイツは、そんな反則など意に返さず、純粋な才能で、急速なパワーアップを実現して見せた。
「……これだから、本物は嫌になる」
僕はそう呟いて。
次の瞬間、眼下の暴走列車が吠えた。
【GOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!】
「……どうやら、怒ってるらしいな」
「見りゃわかるっての」
ポンタがのんびりとつぶやいた。
おいこら、お前時間制限在るんだろうが。
僕の指揮技能で多少は消耗も緩和できるが、のんびりしてられるだけの時間は無いぞ。
そんな思いが顔に出たか、彼は苦笑し、飛び降りた。
「どれ、ボクがその炎に油をそそいでくるとしよう」
ポンタが、暴走列車の眼前へと舞い降りる。
その長身は、音もなく、まるで木の葉のように大地に舞い降り。
その瞬間、暴走列車の拳が火を噴いた。
まるで、竜巻。
両の拳が、まるで止まることを知らないハリケーンのように、左右上下から乱打乱打を繰り返す。
それは、ポンタを知らない人間が見れば絶叫してもいい光景だったと思う。
だけど、僕はポンタを知っている。
誰より強く、誰より疾く。
誰よりイカれた、征服王を。
「ほっ」
気の抜けるような声。
と同時に、暴走列車の顔が跳ねた。
衝撃が突き抜けて、暴走列車の拳が止まる。
見れば、奴の頬にはくっきりと拳の跡が刻まれている。
それを前にするのは、百戦錬磨の征服王、イスカンダル。
「悪いが、お前の動きは二年前に見切っていてな」
暴走列車の拳が、完全に止まる。
そして、新たな嵐が、ポンタの拳に宿った。
――それは、悪夢としか呼べない光景だった。
あれほど凶悪だった暴走列車の、一方的な
ポンタの拳は、強く、疾く、そして鋭かった。
ただでさえ手の付けられない近接最強が、僕の指揮技能によってさらに強化されてしまった。その結果がこれだ。
暴走列車の体が、小刻みに跳ねる。
それは、ポンタの拳による衝撃だった。
瞬く間に、十発以上の拳が放たれている。
それら、一撃一撃が、地竜アラガマンド級。
「……笑うほかないってのは、まさにこれのことだな」
僕が呟いて、ポンタの拳がその頭蓋を穿った。
あまりの衝撃。
暴走列車の体中から血があふれ出し。
連打のあまり、ポンタは小さく息を吐く。
「さて、回復能力はうばってあるが――」
ポンタはつぶやき。
そして、次の瞬間【嫌な光景】が目に飛び込んだ。
【SHUUUUUUUUUUUUUUUUUU……】
それは、蒸気だった。
暴走列車の全身からあふれ出す煙。
体表から、爪から眼球から。
ありとあらゆる部分からあふれ出す、災厄の前触れ。
――それが見えた瞬間には、僕は暴走列車の側面にいた。
冥府でお前の偽物と戦って、理解した。
お前の弱点は、その頭。
そして、頭に攻撃を受けると異能【竜血暴走】の力がアホみたいに強化される。その前触れが、この全身蒸気状態だ。
正直、今より強化されたら勝ち目が薄くなる。
だからこそ……強化される直前、この状態を、全力で叩く!
僕は神狼技能を展開。
同時に『異常稼働』と『超加速』を並列使用。
全身から血の蒸気があふれ出す中、痛みを堪えて前を向く。
【GOAA……】
そして、暴走列車と目が合った。
ぐるんと、奴の目は僕を捉える。
巨大な右手が僕へと伸びる。
その光景に、思わず腹の底が恐怖に冷えた。
だけど、同時に希望も見えた。
「【この勝利を、我が金色の太陽に捧ぐ】」
暴走列車の背後。
僕の対面で、想力が弾けた。
あまりの総量に、暴走列車の目がそちらへ向かう。
ああ、そうさ。脅威で言えばそちらが上だ。
なんせ、僕を真正面から打ち負かした野郎だからな!
金色の姿が見える。
その瞬間、僕は男の名前を叫んだ。
「行くぞ、
「ああ! 任せろ、灰村くん!」
金色の想力に包まれた成志川が、拳を握り締める。
僕は拳を開いて、右の脚へと力を込めた。
「【僕の拳は、天をも穿つ】」
「劫略行使――【暴走列車の脚力】」
互いが放てる、最大火力。
その、物理バージョン!
廻天技能で、体の芯を軸に超回転。
勢いそのまま……どころか、さらに強化して回し蹴りをぶっ放す。
拳の何倍もの威力を誇る、この一撃。
冠した名前は、僕の願いを貪欲に表していた。
「【
一撃が、放たれる。
直前まで成志川を警戒していた暴走列車が、焦りを見せる。
首ごと僕へと視線を戻す。
と同時に、全ての防御をこちらへ回した。
「らぁッ!」
奴は、頭部を守るように両腕を固める。
だけど、んなもん知ったことか!
僕の力は、防御を砕く力!
遥かなるGとの戦いで、腐るほど習熟した神狼技能!
その程度の防御、紙のように突破する!
僕の一撃は、防御を貫通、奴の顔面を撃ち抜いた。
それでも崩れぬ、奴の体幹。
まるで、巨大な岩を蹴りつけているような感覚。
いい加減嫌になってくるが、それでも。
「一撃でダメなら、二度、三度!」
僕の声と、ほぼ同時に。
奴の背骨を、成志川の拳がへし折った。
【GOA……!】
ゴキリと、綺麗な破壊音が響き分たった。
奴の体が物理的にへし折れる。
そして、僕は左足の第二射へと切り替えた。
まだだ、こいつはまだ折れない!
骨を折っても、どれだけ体を削っても!
コイツはそれで終わらないから、強者なんだ!
「畳みかけるぞ!」
僕は左足を振りかぶり。
成志川は口を開いて、ポンタとシオンが攻撃に迫る。
……順調、だった。
これ以上なく、上手く事が運んでいる。
正直、このままいけば勝機は目前だと思う。
だけど、なんだ、この嫌な感覚は。
攻撃するほど、嫌な予感が加速する。
コイツの能力が、ダメージの蓄積で能力を向上させる力だってことは理解している。
だから、その【強化】が完了するより先に潰す。
それだけの事。
なのに……なんだ、この感覚は。
心臓が、強く脈打つ。
僕は思わず目を見開いて。
どこからか、声がした。
「ご、御仁……ッ! ダメだ、その男に近づいては!」
それは、聞き覚えのある声だった。
声の方向に振り返るより先に。
信じられない速度で、僕へと暴走列車の手が伸びた。
「な……!」
なんて速度……コイツ、瀕死のはずじゃ!
想定外の事態に焦り、一瞬だけ、思考が止まった。
それは、僕が以前にもこの男に殺されているから、という理由もあったんだと思う。
隙、と呼ぶにはあまりにも小さすぎる一瞬。
思考の隙間に出来ただけの、わずかな瞬間。
――それが、全ての始まりだった。
【――
錆びるような、声がした。
背筋が凍る。
言葉の意味こそ理解できずとも。
なにか、不吉な理解だけは在ったんだ。
【『
咄嗟に僕は転移し、奴の手から逃げおおせる。
体は……無傷。
何の痛みも、ダメージもない。
だけど、全身から冷や汗があふれ出していた。
それは、本能的に理解したから。
この男が――災躯、ではないということを。
「御仁……! その男は【三人目】だ」
「……あ、阿久津さん」
どこからか現れた阿久津さんが、僕の隣に立つ。
彼女の言葉は……僕の嫌な予感を裏打ちさせるに足るものだった。
前方へと視線を向ける。
そこには、
……勘違い、していた。
シーゴが黒歴史ノートを用いて手にした【破壊兵装】。あれが、彼の種別と同じ【災躯】のモノであったから、黒歴史ノートに願って手にする力は、決まって自分の種別と同じものなのだと……そう、考えていた。
だけど、違った。
その考えが、元凶。
全ての勘違いの、始まりだった。
「ナムダ・コルタナ。……ちょうど、二年半前から消息を絶った男。……その男が最期に目撃されたのは、とあるフリーマーケットの場だったらしい」
僕は歯を食いしばり、冷や汗をぬぐう。
おそらくその男は、その場所で【拾】巻を手にした。
そして、運悪く【竜血暴走】の力を得た。
――
ならば、この男の種別は何なのか。
そんなもんは、
「ナムダ・コルタナ……史上三人目の【逸常】使い」
ナムダ・コルタナ[SSランク]
異能[竜血暴走][強奪の悪魔]
基礎三形
活性[SS]
遮断[G]
具現[G]
脚力と……二年前に奪った活性。
そのすべてを奪い返して――男は嗤う。
……どうしよ。絶望しか感じねぇ。
この反則野郎がッッ!
→よく考えたら全員反則。
暴走列車はおそらく、作中で五本の指に入る反則野郎でしょう。
ちなみに時間停止の六紗は反則過ぎるため、勘定しておりません。
六紗はこの決戦に突入させるのを作者が躊躇うくらいの反則権化。
もはや殿堂入りです。
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