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中二過ぎる夢を見た。

イタ恥ずかしすぎた。

悪夢だった。

あまりの悪夢に飛び起きた。

作者は察した。

ああ、こんな小説書いてるせいだ、と。


書いてる作者すら泥沼に飲み込む作品が、今日も始まるよ!

第三章【始まりの因縁】
306『第四席』

 ダリア・ホワイトフィールド。

 その名前には覚えがあった。


 僕の一つ下、第四席の生徒。

 そして、六紗優、シオン・ライアーに次ぐ有名人。

 僕のクラスにも、ここ一週間でその噂は流れてきていた。


 ――その少女は、稀に見るほどの美少女だった。


 雪のように白い肌と、髪の色。

 海のように、空のように青い瞳。

 そこにいるだけで癒されるような存在である、と。


 そんな話は聞いていた。

 クラスの男子が話していたから。

 ……だけど、こういう噂も聞いていた。


 ただし少女は、常軌を逸した負けず嫌いである、とも。



「待てと言っているだろうがァァァァァぁぁァ!」



 後ろから、女が追ってきていた。

 冥府から生き返って、既に体力も戻ってる。

 なんなら、あの当時よりも全能力値で勝ってるとすらいえる。

 それでも少女は、今の僕に付いてきていた。


「活性使ってんだぞ……」


 追われる者より、追うものの方が早いとは言う。

 追われる側が逃げ道を考える間も、追う側は何も考えず走ればいいだけだから。

 だから、鬼ごっこでも何でも、速度が同じであれば追う側の方が有利になる。それはわかってる。だけど。


「私は代々続く異能の名家! ホワイトフィールド家の者だ! S級に負けるのならばまだ許せる……だが! 貴様は別だ灰村解! 貴様のような名も知らん馬の骨に負けるとあらば、私はここで腹を切る!」

「どうぞお好きにィ! 迷惑かけずに勝手に死んでろ馬鹿!」

「馬鹿といったか貴様! 入試の二教科で私以上の点数を取っているからと調子に乗るなよ下郎! その首此処で切り落としてくれるわ!」

「面倒くせぇ奴だな!」


 つーかなんで僕の点数知ってんだこいつ!

 僕は考えた。

 現時点で、距離は徐々に縮まっている。

 それが何を現すのか、僕は理解していた。


 ――この少女、こと、身体能力だけで言えば僕と同格か、あるいはそれ以上のものを持っている。


「……ったく、嫌になるな」


 これでも結構鍛えてるんだが。

 僕は小さく息を吐き、考える。

 さて、どう逃げようか。

 ではなく。

 さて、()()()()()()


 正直、上位十名の座に興味はない。

 そんなに僕が気にくわないなら、第三席の座はこちらから差し上げよう。そう思えるほどだ。

 なんせ、VIPルームの飯は、入試の時の約束でずっと無料だからな。序列十位以下になろうと、そうでなかろうと、僕が何らかの不都合を被ることはない。


 ……それならやっぱり、第三位は捨てるべきか?


 だって、第三位がもとで、こんな迷惑を被ってるわけだし。

 それならいっそのこと、この少女に第三位を上げてしまおう。

 そして、次の対戦までの間に、なんとか序列底辺の生徒を見つけ、彼女からもらった第四位も売り払う。

 でもって、僕が目指すのは最底辺。

 絶対に誰からも勝負を挑まれない。


 つまるところ、序列最下位の座だ。


 そこまで考えたところで、僕は足を止めた。


「はぁっ、はあ……、なんだ。諦めて私と戦う気になったか?」


 振り向けば、少女は息を切らしてそう言った。


「いんや? 戦わない。ただ、第三席が欲しいというならくれてやるよ。僕はお前に不戦敗する」

「……!? き、貴様! 神聖なる序列戦を愚弄するか!」


 神聖さはどこから来たのか。

 まるパクリにお前は何を感じ取ったのか。

 僕は少々問いただしたくもあったけれど、いきなり襲撃してくるのは決まってヤバい奴だ。あまり話したくもない。

 それにここは校舎内。いつまた他の生徒たちに襲われるとも分からないんだ。さっさと終わらせて、さっさと帰ろう。


 そんな思いで、僕は言った。


「てなわけで、僕の第三席、おまえに」


 やるよ。

 そう言いかけた、次の瞬間。

 発動していた神眼が、その切っ先を確かにとらえた。


 余裕をもって、首をかしげる。

 数瞬後には、僕の頭があった場所を、彼女の握るレイピアが貫いていた。

 いつの間にそんな物騒なものを……。


「……ッ! 今のを躱したな、灰村解!」

「何故見ればわかることを口にしたんだ?」


 セリフがかっこいいから、ってのは無しで頼む。

 そんな言葉を吐かれたら……ちょっとな。


 気持ち悪すぎて、うっかり()()()()()()()()()()()


 瞬間、僕の目を見た少女は震えた。


 はじかれるように後方へと飛ぶ。

 制服の外に見える彼女の肌は青白く染まっていて、尋常ではない汗がにじんでいた。


「き、貴様……!」

「どっちが楽だろうな? 僕が最下位になることで僕以下を消す方法。そして、物理的に僕より下を消す方法」


 考えてはいたんだ。

 コイツは渡りに船だ、ってな。

 フルボッコにぶちのめして。

 二度と、誰かが僕に挑まないように見せしめにする。

 六紗よりも、シオンよりも【やべぇヤツ】だって周知させる。

 そうすりゃ、最下位になるための諸々の苦労もしなくて済む。


「それと、アンタ。なんで僕に挑んできたんだ?」

「……それは、貴様が私の上にいることが気にくわないからだ」


 ド正直!

 いい性格してますね、誉め言葉の意味合いで。

 下手な言い訳も、取り繕いも一切ない。

 嘘をつかないところは好感が持てると思う。


 だけど、今のが真実、ってわけでもないだろう?


 僕は笑って、言った。



「じゃあ、なんで六紗かシオンに挑まなかった?」



 僕の言葉に、少女は固まる。

 質問しといて悪いけど、その答えは既に得てる。

 さっき言ってたよな。

 S級に負けるなら仕方ない、って。

 だからこれは質問じゃない。


 ただの、挑発だ。


「ああ、悪い悪い。さしもの名家でも、S級に勝負を挑む気概はないって言ってたな。だから、まだ勝てそうな僕に突っ掛かってきてんだろ? S級二人には勝てないけれど、それ以外の生徒の中では一番だ、って誇りたいから」


 傍目に聞いたら、ものすごく性格が悪く映るだろう。

 現に、少女の目に殺意が宿った。

 それでも僕は、言葉を止めるつもりはなかった。


「だからさ、僕の第三位をやるよ。感謝しろよ、第四位」


 少女が、僕より強いとは思わない。

 序列がそれを物語っているからな。


 だけど、仮に戦うとしても、僕は真正面からは戦わない。


 僕は、小心者でね。

 格下を狩るにしても、万全を期す。

 言葉で揺さぶり、挑発し、気を乱す。

 持てるもの全部使って、一部の敗色をも塗りつぶす。


 少女は拳を握り締める。

 その拳から血が滴り、その全身から炎が上がる。

 さすがは第四位、異能の名家。

 最低限、鍵くらいは持ってるみたいだな。


「その言葉、私が勝ったその時に、訂正してもらうぞ」

「そりゃよかった。どうやら、訂正する必要はないらしい」


 僕は一歩、前へと進む。

 彼女の全身から吹き上がる炎。近づくことで熱気が身を焼くが、成志川の【我が太陽に讃美歌を】に比べりゃエアコンの温風だ。


 少女は手に握った手紙を、僕へと投げつける。

 それは僕へと着弾。

 直後に、炎に燃えて消えてゆく。


「今日の、放課後。グラウンドにて貴様を待つ」


 そういって、少女は立ち去ってゆく。

 僕は、序列戦に伴って、学校から支給されたスマートフォンをポケットから取り出す。

 ……どうやら、もう通知があったみたいだな。



【序列戦決定 本日 16:00】

 挑戦者-第四席・ダリア・ホワイトフィールド

 受諾者-第三席・灰村解



 その事実は、瞬く間に全生徒へと知れ渡る。

 異能の名家、ホワイトフィールドの第四席が。

 謎の第三席、灰村解に、勝負を挑んだ、と。


「さて、せいぜい野次馬、増えてくれろよ」


 僕はそう呟き、自分の教室へと転移した。




 ☆☆☆




 ――放課後。

 グラウンドには、多くの生徒が集まっていた。


 第三席、灰村解と。

 第四席、ダリア・ホワイトフィールド。


 学園史上最初の序列戦が、よりにもよって五本の指に入る者同士の戦いときた。

 そりゃ、僕がその他一般人だったとしても見に来てるさ。


 僕は軽く準備運動をしながら考えていた。


 頭上を見れば、なんか、よく分からないけど上空に映像が浮かび上がっている。

 そこには……オッズ、って言うのかな?

 掛け金とかは無いけれど、どちらがより人気があるか、勝利を期待されているか、っていうグラフが表示されている。


 割合でいえば……僕が1、向こうが3、かな?

 まぁ、思ってたよりはマシだと思う。

 それだけ、うちのクラスの生徒たちが僕に票を入れてくれたのだろう。

 ありがたいことだ。


「逃げずに来たことだけは評価する。だが、貴様は決定的なミスを犯した。それは、1つ勘違いをしているということだ」

「よく喋るなぁ、緊張してんのか?」


 前方には、背筋を伸ばして佇む第四席。

 僕は思ったことをそのまま言うと、彼女の額にありありと青筋が浮かんだ。


「……名家は、強いからこそ名家と呼ばれる。一般の異能力者が勝つことは有り得ない」

「それ、S級にも同じこと言えんのか? 第四位様よ」

「……っ、貴様は……!」


 僕の言葉に、彼女は歯を食いしばる。

 S級ってのは、一種の災害だ。

 なにか、特殊な理由がある訳じゃなく。

 ただ、生まれた瞬間から強くなることが決まっていた。

 それに生まれた場所も立場も関係はない。


 それが、S級。

 現に、阿久津さんも六紗も、シオンも、成志川も多分そうだが、僕の知るS級に『特殊な生まれ』の奴はいないよ。


「そして、僕も」


 準備運動を終え、拳を握りしめる。


 それだけで、場の空気が一変した。


 野次馬の、ざわめきが消えた。

 ダリアは喉を鳴らして、僕を見ていた。


 僕は生まれ持った『S級格』じゃない。

 生まれた時点で強くなることは決まってなかった。

 ただ、アホみたいな量の想力だけを持って生まれた。

 それだけの一般人。


 されど、一般人が貴族に劣ると誰が言った?


「先程の、追いかけっこと同じだとは思うなよ」


 彼女へと拳を向ける。

 お前は……まぁ、天才なんだろう。

 でもって、努力もしてきたんだろう。

 でなけりゃ『S級を除いて学園一位』という座には座れない。


 けど、あくまでもその程度。


 同情なんてしない。

 お前の努力を否定もしない。

 お前の才能を馬鹿にはしない。


 だけど、現実ってのはこういうもんだ。


 努力も才能も、時にすべてが無価値になる。

 圧倒的な暴力を前に、全てが泡沫と消える。

 それが現実。

 

 その現実が、僕にとっての暴走列車で。

 お前にとっての、僕なんだろう。


 僕は拳を構える。

 次の瞬間、僕の周囲には無数の渦が浮かんだ。


【次元】技能。


 入試の際に、誰しも目撃した僕の力。

 それを前に生徒たちへと驚愕が伝播し、彼女はレイピアを抜き放つ。


 ダリア・ホワイトフィールド。

 悪いけれど、僕はその現実をぶっ壊すって決めたんだ。

 そのためだけに、走り続けてきた。

 

 そして、道の邪魔になる奴は、容赦なく倒してきた。


 冥府の王、イミガンダも。

 黒き解放の、シーゴも。

 そして、お前も。


 ……悪いとは、思ってるんだよ。


 ただ、僕は立ち止まらない、ってだけだ。

 僕はもう、前しか見ない。

 そうでもしなきゃ、過去の改変になんて手は届かない。



「先に謝るよ。今から、徹底的にお前を潰す」

 


 そう言って、次の瞬間。

 第四席は、僕へと向かって駆け出した。


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