挿絵表示切替ボタン

配色








行間

文字サイズ

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
57/170

過去編ラスト!

およそ2話分の文量です。

第二章【秘匿の消えた世界】
223『妄言使いの大切なもの③』

 その少女は、同じクラスの所属だった。

 少女の名前は、エニグマ。

 親の都合で、外国から日本へとやってきたらしい。


 あれ以降、彼女は何かにつけて僕に関わった。


 体育の体力測定。

 テストの結果。

 思いつく限りの全てで、僕に挑んで。

 そして、彼女は全敗した。


 その度に不満を漏らして地団駄を踏み。

 僕は、その度に彼女を無視し続けた。


 そして、同時に観察し続けた。


 彼女と出会って、もうすぐ1年が経過しようとしていた。

 中学1年生の、冬。

 いい加減、エニグマという少女について、理解ができていた。


 彼女は誰にでも明るく、優しく、元気で。

 まるで、太陽のような存在だった。


 彼女はクラスの中心人物。

 告白された数は数しれず。

 男女ともに多くの友達を作り。

 学級委員を自ずから立候補。

 生徒会にもその名を連ねる。

 充実した学園生活を送る、俗にリア充と呼ばれるべき存在。


 僕は、その姿に吐き気すら催した。



 その姿はまるで、死んだ『彼女』のようだったから。



 容姿が違う。

 性格が違う。

 それでも、どこか似ていた。

 その小さな体から溢れる、温かさ。

 そこにいるだけで、他の人を笑顔にしてしまう気質。


 ……あの子も、そうだった。

 そこにいるだけで、みんなが集まる。

 みんなが笑い、みんなが楽しそうにしていた。


 エニグマを見ていると、どうしてもあの少女の姿が過ぎる。

 ……きっと、僕の嫌いは、彼女の容姿や性格に対するものではないのだろう。



 僕は、エニグマがあの少女に似ているから、嫌いなのだ。



「ちょっと! 待ちなさいよ、成志川!」


 帰り道、後ろから少女の声がする。

 学校で僕に話しかけてくる少女は、一人だけ。

 僕は振り返ることなく歩き続けると、彼女は僕の前へと回り込む。


「待てって言ってんでしょうが! あんたその年して耳遠いわけ!? 帰りの会で学園祭の案だしするって聞いてなかったの! ただでさえ友達が少ないんだから……せめてこういうのに参加しないとだめじゃない! 戻るわよ!」

「…………」


 下らない、気持ち悪い。

 何だ、なぜ僕に話しかけてくる。

 どうして、そこまで僕に関わろうとする。

 内申点稼ぎか?

 学校一の問題児を更生させたって、実績が欲しいのか。

 分からない、分かりたくもないけれど。

 お前はその表情の裏で、いったい何を考えている。


「……ご苦労だな、毎度毎度、お優しいことで」

「あら、ほめてくれるの? ありがとう成志川!」


 嫌味に、真正面から言葉を返され。

 僕は思わず、歯を噛みしめた。


 しかし少女は、僕の内心など知ったことかと歩いてくる。



「さ、帰るわよ。みんな、アンタのこと待ってんだから」



 少女は、僕の肩へと手をのせた。

 その手はとても、暖かくて、優しくて。

 僕の視界に、ノイズが走った。


『触らないで、気持ち悪いって言ってんでしょ……』


 断片的に。


『は? いや……ごめん、ちょっと無理だわ』


 蘇ってきたのは、過去の光景。


『近寄らないで!』


 それは、僕が忘れたかった少女の、最期の姿。


『あんたなんか先生に言いつけてやる! 分かるでしょ、アンタと私、どっちが信用されるかなんて!』




【お前なんて、誰も信じないに決まってる】




 瞬間、目の前が、赤く染まった。

 気が付けば、僕は彼女の手を払っていた。

 少女は驚いたように後ずさり、その場にへたり込む。

 その目には驚きが見て取れた。


 ……なにを、驚いている。

 僕は、こういうやつだ。

 女にも、老人にも、子供にも。

 何の容赦もなく手を上げる、人間失格の悪魔だ。


 僕は頬を吊り上げ、笑って見せた。



「僕は! ……僕は、独りだッ」



 それが、僕の見つけた、たった一つの正しい生き方。

 残酷で、何一つ救えなくて、救いもなくて。

 様々な言葉に着色された、腐り果てた現実。

 それを、死ぬまで活き続ける、僕の生き方。


 幸福感も、快楽も、食欲も睡眠欲も。寿命でさえも。

 何もかもが、腐った肉を飾り付けるだけの概念に過ぎない。

 どれだけ見た目を装っても、その内面は、実情は変わらない。


 現実は、残酷だ。


「僕が、何をしたっていうんだ! なにか、悪いことをしたか! 何か罪をかぶったか! 否、断じて否! 僕は何の理由もなくここに立っている。この地獄の最果てに立っている! それが現実、理由なく弱者が冷遇され、殺される! それが現実だ!」


 みんなが僕を待っている?

 冗談を抜かせ、僕は誰にも、必要とされちゃいない。


 生まれつき捨て子だった僕自身が、それを何より証明してる。


 親はいなく、兄弟もおらず。

 友達も、恋人も、何もいない。

 僕には、何もない。


「お前はいいよなァ! 何一つ不自由なくて! いままでずっと、幸せに暮らしてきたんだろう! そして、これからも……ずっと、死ぬまでお前は幸せだ! ははっ、僕と大違いじゃねぇか!」


 その言葉に、少女は大きく目を見開いた。

 彼女は立ち上がる。

 彼女は何か、言いかけて。

 口にだす直前で、その言葉を飲み込んだ。


「……あんたがそう思うのなら、そうかもね」


 その言葉は、僕の苛立ちを増長させた。

 僕は【遮断】を使い、その場を立ち去った。

 彼女の隣を横切る際に、最期の言葉を吐き捨てて。



「二度と、僕に関わるな。お前の幸せが、僕を不幸せにする」



「ちょ、ま、待ちなさいよ――」


 エニグマの声が、背後から聞こえた気がした。

 だけど、僕はもう止まらない。

 まるで、彼女から逃げるように。

 言いたいことだけ吐き捨てて、勝ち逃げるように。

 僕は、その場を立ち去った。



 ――その日から、僕は学校に行かなくなった。




 ☆☆☆




 学校へ行かなくなって、一週間。

 僕は、まるで嫌なことから逃げるように、戦いに明け暮れていた。


 ただ、ひたすらに戦った。

 格上にも戦いを挑んだ。

 異能者という異能者、片っ端から勝負をした。

 何度も負けて、何度も勝って。


 勝って、負けて、負けて、勝って。

 負けて、勝って、勝って、勝って。


 気が遠くなるほどの、戦いの連続。


 全てを終えて。

 まだ、一週間しか経っていないと気が付いた時。

 僕は、一種の絶望を覚えた。


 ああ、僕は……あの少女から逃げられない。

 戦っている間だけ、嫌なことを忘れられる。

 忘れていられる。

 だけど、戦いは刹那だ。

 終われば、全てを思い出す。


 思い出さずには、いられない。


「…………はぁ。恥ずかしいこと、言っちまったな」


 僕は、その場に座り込んで呟いた。

 場所は路地裏。

 降りしきる雪が頭につもり、体を芯から冷やした。

 戦いつかれて、少し、冷静になれた気がした。

 すると……どうだ。

 何も知らない少女に向かって、少々言い過ぎた気がしなくもない。

 というか、そんな気がする。

 僕は立ち上がろうと力を籠めると……ズキリと、右足に痛みが走った。


「痛……ッ、こ、れは……骨がイカレてやがるな」


 さっきの戦いで、持っていかれたか。

 これでも、S級に近しい実力は持っているはず。

 それでもなお、やはりこの国の異能力者は強いのだ。

 海外を超越しているとさえ思う。

 さすがに霧矢ハチと同等の異能力者は見当たらないが……それでも、脅威には違いない。


「クソ……保険証なんて、あったか」


 生憎、活性の力は得意じゃないんだ。

 骨に傷が入れば、一般人と同じく、病院の世話になるしかない。

 僕は足を引きずり、最寄りの病院へと歩き出す。

 路地裏から表通りへと入り。

 たまたま、そこで一台の救急車とすれ違う。


「……っ!?」


 それは、何の変哲もない光景だったろう。

 されど、僕は目を見開いて、その姿を追った。


 僕の力、【妄言此処に極まれり(フレーバー・テキスト)】。

 それは空間に作用する力。

 ゆえに、僕は空間の把握能力を異能に組み込んでいる。


 加えて今は、戦闘直後。

 異能を解いて、間もない状態。

 まだ、空間の把握能力が、かすかに残っていた。


 だからこそ、気が付けた。



「……エニグマ?」



 気が付けば、僕はその救急車を追っていた。




 ☆☆☆




「あら、アンタ成志川じゃないの! 一週間ぶりね!」


 夜の、11時過ぎ。

 既に消灯時間は過ぎている。

 それでも少女は、起きていた。


 月明かりに照らされて。

 その金髪は、美しいくらいに輝いていた。

 だけどその姿は、儚く見えた。


「…………」

「なんか言いなさいよ……。まあ、いいけど」


 少女はそう言って、窓の外へと視線を向けた。

 彼女は優しく、微笑んでいた。



「私ね、あんまり長く生きれないのよ」



 その言葉に、僕は心臓を鷲掴みにされた。


「……なん、で」

「なんか、そーいう病気でね。本来、この年まで生きてこれたことが奇跡、ってね! まー、そういうわけで、藁にも縋る気持ちで、日本の名医のところまで来たんだけど……やっぱり、ダメみたい」


 少女は、表情を一切崩さず、そう言い切った。

 その姿が、その笑顔が。

 まるで、張り付いたようなその態度が。

 僕は、どうしようもなく気にくわなかった。


「……なんで、あの時、言い返さなかった」


 僕は問う。

 僕が恵まれているとは思わない。

 同時に、彼女も恵まれているとは思えない。

 なら、あの時、あの瞬間。

 僕の言葉に、どうしてお前は……!


「なんで、って」

「お前は! ……お前は、僕とは違う」


 僕がお前と違うんじゃない。

 お前は、僕とは違うんだ。

 小さくて、それでいて、僕にとっては大きなニュアンスの違い。

 僕は抗える立場にあった。

 僕は戦える立場にあった。

 僕は……生き方を選べる場所にいた。


 この場所に立っているのは、すべて、僕の選択によるものだ。


 悪いことは、何もしていない。

 だけど、ここに立つ以外の未来を、選べたかもしれない。虐めを真正面から打ち負かして、幸せに生きた未来だってあったかもしれない。

 真っ当に生きて。

 異能なんて知らなくて。

 友達に囲まれて、彼女も作って。


 それこそ、霧矢の言ったように。

 楽しく、元気に過ごしてた未来も、あったかもしれない。


 だけど、お前は……。


 お前には……選べる未来が、なにも無い。


 僕は拳をにぎりしめる。

 何が不遇だ、何が不幸だ……ッ。

 この少女の前で……僕は、なんてことを口走った!

 拳から血が滴る。

 噛み締めた唇から、血が溢れた。

 それを見て、少女は笑った。


「ったく、他人と自分を較べて、幸、不幸だなんて……つまんない考え方してんじゃないわよ」


 僕は、少女へと視線を向けた。



「私はね、他人と比べるのが大っ嫌い」



 それは、少女の本音だった。

 僕か憧れた、太陽のような小さな少女。

 僕が忌んだ、暖かくて優しい少女。

 そんな彼女の、僕の知らなかった心の底。


「誰かがやってるから、自分もやらなければならない。そんな考えはクソッタレよ!

 他人は他人、自分は自分! 自分が幸せだと思えば幸せだし、自分が不幸と思えば不幸なの! 幸不幸の天秤を他人に預けるなんざ愚の骨頂よ!」


 夜の病室で、少女は叫ぶ。

 僕は喉を鳴らして、少し上を見た。

 そんな僕を、エニグマは見つめていた。


「あんたの過去に興味は無いわ。ぶっちゃけ、老い先短い人生で、人のことに興味を抱く暇ないからね! だけど、あんたはそれを不幸に思って、悩んで、苦しんで、そんでもって生きてんでしょ? なら、他人と比べる必要なんてない。あんたは不幸だ」


 気がつけば、僕の視界はぼやけていた。

 自分の頬に涙が伝って。慌てて拭いた。

 少女は、笑っていた。

 その頬に、大粒の汗を流しながら。

 それでも、嬉しそうに笑っていた。


「それに、勝手に私を不幸だと思わないでくれるかしら! 私は今が、とっても楽しい! あと、どれだけあるかも分からないこの人生! 思う存分生きてやるって決めてるんだから!」

「……そういえば、世界征服、とか言ってたか」


 そう笑うと、少女は笑った。

 彼女は浅く息を吐き、眉を寄せながら、それでも楽しそうに笑っていた。


「ええ、そう、よ。……でもって、アンタはその手伝いしてもらうん、だから。……なんか、強いんでしょ? 世界征服には、うってつけ、じゃない」


 既に、彼女の言葉は途切れ途切れになっていた。

 僕はその姿に、拳をさらに強く握った。

 だけど、必死にそれを悟らせまいと、笑ってやった。


「そう、だな。じゃあ、早く治せ」

「……ええ! 約束、だから、ね……」


 少女は、力尽きるように瞼を閉ざし、ベッドへと横たわる。

 その姿を見つめ、僕は、押しっぱなしになっていたナースコールから手を離す。


 ……じきに、医者がここに来るだろう。

 それでもきっと、時間稼ぎがいい所。

 彼女は正攻法じゃ、治らない。


 なら、邪道ならば、どうだろうか。



「……願いを叶える、黒いノート」



 聞いたことがあった。

 最近、少しだけ噂になっていたから。


 願いを叶える10冊のノート。

 それらは1冊1冊が、禁忌そのもの。

 膨大な想力がこめられた、願望器。

 それら全てを集めたのならば、きっと、それはどんな奇跡をも可能にする。


 ならば、その内の1冊、一欠片。

 それだけあれば、不治の病程度、治せるはずだ。


 僕は大きく息を吐き。

 想力の限りを込めて、周囲一帯の空間を把握する。


 意識を高め、集中しろ。

 探れ、探れ。

 飛び切りイカれた、想力量を。


 水面下に潜るような感覚。

 大粒の汗が滴り落ちて。

 僕の感知できる空間が、際限なく広がってゆく。


 今までの限界など、とうに超えて。

 周囲10キロ以上を網羅した僕は。


 やがて、目を見開いて口にした。



「【僕は、その場所に立っていた】」



 気がついた時、僕は全く別の場所に立っていた。

 視線の先には、血に濡れた一人の男。

 その男は僕を振り返る。


 その男は、薄紫色の髪をした、優男だった。

 色鮮やかな着物に身を包んでおり、その姿は現代日本においては奇抜が過ぎる。

 しかし、その奇抜さ、色鮮やかさを超えるほどに、強烈な血の色。


「……おや? 君、いつからそこにいたのかな?」

「……聞いたことがある。お前、物の怪の類か」


 瞬時に理解した。

 この男、人間ではない。

 奴の目の前には、貪り食われた無数の女。

 そして、奴の口にはべっとりと鮮血がへばりついていた。

 ――食人。

 その事実に吐き気はするが。

 自分で思っている以上に、冷静な自分がいた。


「ん? まぁーねー。君こそ、普通じゃないと見えるけど。もしかして、例の異能力者、って奴かな? 陰陽師以外の異能者と会うのは初めてでね。間違ってたらごめんねー」

「謝罪はいい。ただ、僕の望みは一つだけ」


 僕は、男の両手へと視線を向ける。

 そこには【(3)】と【(9)】の2冊があり、僕の視線をおった男は、それらのノートを見て笑った。


「いやー、もしかして君もコレ狙い? 実は僕もでさー、売りに出されてたけどお金ないじゃん? だから、買った異能力者殺して、奪ったところ!」

「……なら、僕がそれを奪ったところで、文句は言わないな、物の怪」


 僕はそういい、拳を構える。

 それを前に、その化け物は楽しく笑った。



「うん、楽しませてくれたら、1冊くらいは分けてあげるよ。僕は快楽主義だからね」




 ☆☆☆




 翌朝。

 少女は、病室で目を覚ました。


「……あれっ?」


 身体中を襲っていた痛みは、既に消えていた。

 目を見開いて、体を起こす。

 自分の胸元には、1冊のノートが置かれていた。

 血がついて、汚れているけど。

 その表紙には、【参】の文字が刻まれていた。


「……やっと、起きたか」


 声が聞こえて、前方へと視線を向ける。

 そこには、全身血だらけで、満身創痍の少年がいた。

 その姿に少女は驚き、立ち上がる。

 立ち上がって、彼の元へと駆け出した。



 そして、思いっきりその顔面を殴り飛ばした。



「こんの、アホったれが!!」


「ぶげふっ!?」


 少年は大きく吹き飛ばされて、顔を押えながら少女を見上げる。

 彼女は拳を強く握ると、彼の元へとぺたぺたと歩いてゆく。

 そして、その胸ぐらをつかみあげ、言った。



「無茶すんじゃないわよ! あんたが死んだら私が悲しむでしょうが!」



 その言葉に、少年は目を見開く。


「助けてくれたんでしょ、ありがと! で、この件は終わり! 次はあんたよ、あんた! 覚悟しなさい! 私が完全体になった今、否が応でも独りになんてさせてやるもんですか!」

「……それは、困るなぁ」


 少年は、思わず笑う。

 その目から涙が零れたのは、痛みからだろうか。


「つーわけで! ほら、さっさと退院手続きと、あんたの入院手続き進めるわよ! 早く怪我治して、さっさと世界征服を始めるんだからね!」


 少女はそう言って、少年の手を引く。




 少年は1度、陽に焼かれて地に落ちた。


 地獄を知った。

 現実を知った。

 現実の、汚さを知った。


 されど、現実はなにも、汚いだけではないのだ。


「……あぁ、君は、太陽だ」


 少年は、成志川景は思い出す。

 かつて、霧矢ハチが別れ際に告げた言葉を。



『自分を信じてくれる子は、最後まで信じてあげなさい』



 かつて、その言葉を下らないと一蹴した。

 そんな人はいないと、思っていたから。

 だけど。


(君が、僕を信じてくれると言うのなら)


 自分は、どこまでも少女を信頼出来る。

 世界で唯一、自分を信じてくれる少女。

 自分の、太陽。



 金色に輝く、自分だけの光。



 少年は笑い、彼女に続いて歩き出す。


 少年を覆っていた黒い呪いが、金色の光に溶けて、消えてゆく。

 過去も、トラウマも。

 忘れたわけじゃない、消えた訳でもない。

 それでも、全てを飲み込み、抱えて。


 それでも少年は、前へと向けて歩き出した。




 ☆☆☆




「はぁぁぁぁぁ!」


 僕は、異常稼働の神狼状態で、一気に駆ける。

 速度は僕の方が上。

 相手の口が追いつかぬほど、近距離からの連打で仕留める!

 それしか、格上のこいつを仕留める方法はない……と思う!

 加えて、後ろには侵入者の男までいるんだ。


「悪いが、さっさと終わらせてもらうぞ、妄言使い!」


 僕は叫んで、拳を振るう。

 それは妄言使いの体へと深々と突き刺さり……そして僕は、気がついた。



 殴ったはずの僕の拳が、妄言使いに掴まれていることに。



「そうだね。悪いけど、さっさと終わらせてしまおうか」



 全身が、一気に粟立つ。

 ここにいてはまずい。

 そう理解来た瞬間、僕はなんの躊躇もなく、自分の()()()()()()()()()


 痛みと鮮血が弾ける中。

 僕は妄言使いから距離を取り。


 そして、男は言った。



「【この勝利を、我が金色の太陽に捧ぐ】」



 想力が膨れ上がり。

 奴の頭上の太陽が、眩いほどに輝いた。




過去を消そうとした少年と。

過去を背負って、それでも前を向いた少年と。


次回【成志川景】


二つの想いが、激突する。

ブックマーク機能を使うには ログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
感想を書く
感想フォームを閉じる
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く際の禁止事項についてはこちらの記事をご確認ください。

※誤字脱字の報告は誤字報告機能をご利用ください。
誤字報告機能は、本文、または後書き下にございます。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。

⇒感想一覧を見る

名前:



▼良い点

▼気になる点

▼一言
X(旧Twitter)・LINEで送る

LINEで送る

+注意+

・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
▲ページの上部へ