ちょっと遅れました! すいません!
5年前の、春。
僕は、クラスメイトに一目惚れした。
いつも元気で、笑顔の絶えない彼女に。
僕は、心の底から恋をした。
それは、僕、
☆☆☆
僕は、男を鑑定した。
その結果は、恐るべきものだった。
シーゴ・クレジャント
Lv.85[Sランク]
異能[
基礎三形
活性[S]
遮断[S]
具現[S]
「ッ、れ、レベル……!」
本来、普通の人間にはあるべきでは無いその表記。
暴走列車にも、その表記はなかった。
冥府は分からないが、今まで鑑定した全ての者に、レベルなんて概念は存在しない。
それが、この男には存在してる。
しかも、今の僕よりレベルが10近く上と来た。
レベルの高さも含めた……その、異常性。やはり、第参巻が影響してるのだろうか?
ディュゥェアルノォーゥト、第参巻。
妄言使い、成志川の保有していた黒歴史ノートのうち1冊。もうひとつのアーティファクト、至高の暗淵の在り処について、多くを記した1冊の書。
……おそらく、めちゃくちゃ頭の良い奴なら、あの1冊だけで至高の暗淵までたどり着くだろう。
阿久魔さんがあの本を持ってたら、まちがいなくその場所までたどり着いてる。
それだけに、今の男に……安心すればいいのか不安を覚えればいいのか、少し悩む。
この男は、至高の暗淵を手にしていない。
今感じる想力は、全て第参巻に内包されていた想力だ。至高の暗淵を手に入れていたのなら……おそらく、こんな程度の想力量じゃきかないと思う。
だから、少なくとも最悪ではない。
悪くはあると思うけど。
「……? れべる? なんだそりゃあ」
『俺が、テメェらとは桁違いだ、って話だろォ!』
侵入者の男、シーゴは駆ける。
その速度は目を見張る程で、僕は咄嗟に右手を突き出し、手のひらを回転させる。
「【廻天】!」
奴の上半身と下半身を、真逆方向へと回転!
男はまるで、巨大な何かに掴まれたかのように硬直。驚いたように目を丸くしていた。
「へぇ! こりゃ久理の力だろ!? すげぇなお前! 災躯に久理、杯壊に界刻! 4つも能力を使えんのか!」
しかし、男は思い切り体に力を込めて、無理やりに僕の能力に張り合ってくる。
僕は歯を食いしばるか……なんつー力だよ、張り合うのが精一杯だ!
「ぐぬぬぬぬ……」
『ははははは!』
僕のうめき声と。
男の笑い声と。
ふたつだけが響き、シオンが痺れを切らして左手の銃口をシーゴへと向けた。
――その、直後の事だった。
「【その体は、異能の茨に縛られていた】」
その空間が、一気に別世界へと飲み込まれる。
あまりに幻想的で、あまりに非現実的。
思わず僕は目を見開いて。その瞬間には、もう、現実は変わっていた。
『……ッ!? て、てめぇ……この能力!』
「ま、待つんだ……それ以上は看過できない!」
男の後ろには、一人の少年が立っていた。
――妄言使い、成志川。
エニグマ先生の彼氏で、シオンと六紗、二人を相手してマトモに張り合った怪物。
僕は思わず目を見開くと、シオンと六紗に両手を引かれた。
「……ん?」
「おいカイ、この空間出るぞ!」
彼女は咄嗟にそう叫び、僕の手を強く引く。
だが、それを妄言使いは許さなかった。
「【この空間を出ることは出来なかった】」
瞬間、この空間から出ようとしていたシオンと六紗が、ピタリと固まった。
二人は硬直したまま目を見開いており、妄言使いは僕らの方を一瞥する。
「悪いね。僕はこの男の敵だが、君たちの敵でもあるんだ。そこを忘れてもらっては困るよ」
「……ッ! あの男――!」
六紗が、能力を発動しようと想力を高める。
妄言使いもまた、その様子に呼応して口を開く。
――その直前で、僕は両者へ割り込んだ。
「だが、僕に死んでもらっちゃ困るんだろ?」
「…………」
僕がそう言うと、妄言使いは無言を貫いた。
六紗の能力発動を、後ろ手で制す。
彼女から不機嫌そうなオーラが感じられたが、僕は無視して話し始める。
「安心しろ、エニグマせん……エニグマなら、正統派最強の異能力者が救ってる手筈だ。今頃はもう、そいつの部下は全滅してる」
なんせ、あのポンタだ。
有象無象なんて、1分かからず全滅してる。
間違いなく、なんの狂いなく、寸分なく。
そこには、エニグマ先生の救出、という事実が残るだろう。
だから――。
「だからお前は――」
僕は、1歩踏み出して。
その瞬間、妄言使いは口を開いた。
「【その地面からは針が出る】」
僕の右足を、地面から飛び出した針が貫いた。
弾ける鮮血と、溢れる痛み。
僕は顔を顰め、妄言使いは続けて言った。
「僕が信頼するのは、世界で唯一、エニグマだけだ」
僕はその瞬間、交渉の余地がないと理解した。
その雰囲気に、その即答に。
なにより、その目に。
直感的に【普通じゃない】と理解した。
「……君がどうやってその名を知ったのか分からない。もしかしたら本当にエニグマに会ったのかも。でも、その異能力者がエニグマを救えた確証は? 君が抱いている確信を僕に証明する事は出来るかい?」
「…………面倒くせぇ男だな」
僕は思わず本音を言って。
妄言使い、成志川は、僕らへ向かって手を向けた。
「そうだね……うん、そうだ。なぁシーゴ。お前は引っ込んでろよ。僕がやる。僕がやれば、殺りすぎる、なんてことは無いだろう?」
『アァ? てめぇ、誰に向かって――』
シーゴは力に飲まれている。
以前よりも、数段威圧感の上昇した言葉をはきかけるが――それを、妄言使いは一言で黙らせた。
「【僕が、闘うと言っている】」
それは、魔法の言葉だった。
人の思考にさえ介入する、最悪の力。
その言葉を聞いた瞬間、シーゴは納得したように口を閉ざした。
「……おいおいおい、マジかよ」
あまりの化物加減に、僕は思わず苦笑する。
妄言使いは、僕らへと視線を向ける。
その目にはきっと、僕らの姿は映っていない。
その目に映るのは、エニグマ先生の幻影だけ。
男は幻影へと、必死に手を伸ばしているように見えた。
「愛する君に、僕の全てを捧げよう」
彼の体から想力が吹き上がる。
それは、どこか悲しそうな色をしていた。
僕は思わず歯を食いしばり、足を貫く針をへし折る。
へし折って、さらに前へと足を進めた。
「……わからず屋が。エニグマ先生も趣味が悪い」
僕はそう呟いて、奴は言った。
「エニグマが救われようと、そうでなかろうと、君たちはここで眠ってもらう。安心してよ、殺しはしない」
「それを、馬鹿にしてるって言うんだよ」
僕らは、一斉に大地を蹴った。
僕は右手を強く握り締め、妄言使いは口にする。
「【神狼・
「【言っておくけど、僕は強いよ】」
真正面から拳が激突し。
凄まじい衝撃が、周囲へとつきぬけた。
次回【妄言使いの大切なもの】
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